から梅雨三都物語(2005年6月25〜26日) その1

大阪の国立国際美術館で開催の「ゴッホ展」を見に行ったが、せっかくの関西への旅なので、当地在住の友人に会うことに。それで京都、神戸、大阪を廻る、文字通りの三都物語となりました。


入梅してしばらくたつものの福岡は雨がいっこうに降らず、このままだと給水制限になりかねない。関西も少雨のようだ。予報では京都は最高気温が35度。この数字を聞いただけでもクラクラしてしまいそうだ。
関西へは飛行機で行くことが多いが、今回は新幹線。会社のそばにあるチケットショップでのぞみ指定席にも乗られる切符を購入する。
11時22分発ののぞみでまずは京都へ向かう。ちょうどお昼時は列車の中、キオスクで買っておいたサンドイッチを食べつつ、恩田陸の文庫本「上と外」を読む。
以前のぞみに乗ったときは広島駅の少し前ぐらいで「ただいま世界最速の時速300キロを突破しました!」という誇らしげな車内アナウンスが流れたものだが、今日はなかったな。スピード優先も一因といえる福知山線の大事故があったばかりだし。


京都駅に降り立ったとたん、むわっとする熱気にとり囲まれた。まるで空気が重たくなっているよう。相当蒸し暑い土曜日になりそうだ。
改札口にはTさんが迎えに来てくださっていた。関西には各私鉄・JR・バスで共通して使える「スルっと関西」というプリペイドカードがあるのでTさんのすすめで購入。
地下鉄に乗って同志社大学へ向かう。
というのも同志社のキャンパスには詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)の詩碑が建立されており、以前から是非見に行きたかったのだ。
同志社大学キャンパスマップ

尹東柱は1917年生まれの朝鮮の詩人。ソウルの延禧(ヨンヒ)専門学校を出ると、文学を志して日本に留学、最初は立教大学に入学、のちに同志社大学へ移る(彼はクリスチャンであり、ミッション系の大学の進学を選んだのではと思われる)。
しかし京都で「朝鮮独立運動」の嫌疑をかけられ逮捕、福岡刑務所に送られ、1945年2月、27歳の若さで獄死する。
わたしは10年程前から、彼の残した詩を読んで鑑賞、討論しあうささやかな研究会に入っている。尹東柱が福岡の地で命を落としたのを縁に感じ、大学教授や韓国の文学に関心を持つ市民が集まって発足した。「韓流ブーム」などが起きるはるか以前である。


「序詩」の詩碑。写真ではわかりにくいけど、ハングル文字と日本語訳がきざまれています

詩碑は、赤煉瓦の重厚なチャペルのすぐわきに建てられていた。よく探さないとわからないような、校舎の片隅にあるのではないかと思っていただけに、ちょっと意外だった。そばには池と、ここを訪れた人が憩えるような木のベンチもある。
碑に刻まれているのは彼の代表作でもある「序詩」。わたしが韓国語で暗誦できる詩だ。
尹東柱の筆跡を刻んだ詩を改めて声に出して読みながら、彼はどんな学生生活を送っていたのだろうか、と思う。現在の同志社大学は整然と建物が並ぶ、美しいキャンパスだが、60年以上前はどうだったのだろう。
彼の詩集が編まれたのは戦後になってから。人々がその才能を賛美し、美しい詩に共感を覚えたとき、すでに尹東柱はこの世のひとではなかった。外国語にも翻訳され、少なからぬ日本人が彼の詩に心惹かれていることも、もちろん彼は知らない。その事実に、わたしは改めて彼の無念さが胸に迫る。


そのあと、Tさんの案内で河原町今出川まで歩き、韓国風喫茶店という「李青」へ。
気をつけないと入り口がよくわからないが、室内は李朝風家具などでまとめられ、アンティークで落ち着いた感じの雰囲気。カヤグム(朝鮮の琴)の音楽がBGMで流れている。
わたしが「韓国モノ」に昔から興味があるので、わざわざTさんがこの店に案内してくださったのだ。Tさんのお父様も1980年代初めに工場技術者として韓国に赴任、お父様を訪ねてTさんも訪韓、釜山や慶州を歩いたのだそうだ。
わたしは冷たい柚子茶(ユジャチャ)を注文。あまずっぱくて、こんな蒸し暑い日にはぴったり。

柚子茶(ユジャチャ)です

つい居心地がよくてお店に長居してしまったあと、Tさんとバスに乗り、地下鉄乗り場へ向かう。多忙な中、午後を丸々つきあっていただいたTさんには感謝でいっぱいである。
阪急電車で三宮まで行くつもりだったが、ホテルのチェックインが遅くなりそうなので、いったん大阪で下車することに。南方駅近くの宿泊ホテルで手続きをすませると、また急いで駅に向かう。日差しも強く、暑さにいささかぐったり。
京都から大阪まで特急電車で約35分なので、福岡でいうと天神から久留米までの感じだろうか?(もう少し距離があるかな。柳川ぐらいまで?)。
さて、6時半少し前に三宮駅に到着、Yさんと落ちあう。Yさんとも16年来のつきあいになる。なんたって弱かった頃からのスワローズファン同士である。彼女が連れて行ってくれたのは三宮駅のそばの隠れ家的お店。中はイタリア料理店だった。
パスタもピザもおいしかったが、特に気に入ったのは、「シチリアのオレンジジュース」、ほのかに酸っぱく、香りもよかった。
しっかりデザートまで食べた後、Yさんと次に向かったのはコーヒーがおいしくておすすめという喫茶店。ふたりでヤクルトの話やら、彼女がしょっちゅう旅行に行っているイタリアのことなどをついつい話し込む。
気が付けばもう10時半近いので、わたしはホテルへ戻ることにする。しかしこの喫茶店、こんな時間帯でも大にぎわいで、おじさんやおばさんのグループが大勢テーブルにいるのが、なんだか不思議だ。福岡だと若者ばっかり居る気がするのだが。

「から梅雨三都物語 その2」へ

旅のページのトップへ