東京文化発信プロジェクト 「東京監督対談」古田敦也×野田秀樹(2009年2月23日・東京芸術劇場)

古田前ヤクルト監督のブログで、劇作家の野田秀樹と対談があることを知った。
東京都の主催らしい。
早速申し込むと、応募者が多く抽選になるとの連絡がメールで来た。当たればいいな〜と思いながら待ってると当選ハガキが。よしよし、これも日ごろのおこないがいいせいだ!?
場所は池袋なので、会社の帰り、雨の中、中央線と山手線を乗り継いで池袋駅の西口に向かう。


司会は、元テレビ東京アナウンサーの
八塩圭子(サッカーライター・金子達仁の奥さんですね)。
登場した野田秀樹はずいぶんと小柄。古田と並ぶと、元野球選手の古田がふた回りぐらい大きい。


野田秀樹は劇作家、演出家、さらに俳優としても有名だが、現在、演出している舞台「パイパー」に自身も出演中で、この日は休演日とか。舞台で声を張り上げているせいなのか、すっかり声が枯れてちょっとへろへろな状態。
「なんだか中川大臣状態になりそうですね」と言ってのっけから観客を笑わせる。
すかさず古田が「あ、風邪薬のせいですかね」と時事ネタでフォローする。

八塩アナが「きょうは『監督対談』です。舞台監督とプロ野球の監督。野田さんは作家であり役者でもあり、いわば古田さんと同様プレイングマネージャーというところが共通点ですね」と言って話をふる。


古田「プレイングマネージャーといっても、僕は41歳からやったので、プレイヤーよりもマネージャーの比重が大きかったです。マネージャーが9割ぐらいかな。
これが35歳ぐらいからプレイングマネージャーだったら、どけどけ、オレが打つ! みたいなところがあったろうけど、若い選手を育てるのも監督の仕事ですからね」
八塩「『代打、オレ』は話題になりましたけど」
古田「だけど、ここはオレが代打で打席に立とうかな、と思っても、若いヤツが必死で素振りしたりしてアピールしてるのを見ると、そうは言えないんですよ」

ここから「若手」を育てることと「最近の若い人」の接し方へ話題が。

古田「今の若い選手は、情報はよく持ってるんですよ。でもピッチャーなんかでもなまじそういうものを持ってると柔軟性がなかったりします。ここへ投げろ、と言ってもなかなか納得しない。
監督はオレなんだから、打たれたら、負けたらオレが責任を取るんだから、と投げさせる。
それでうまくいって、成功体験をつくってやると、それからは良くなるんですけどね」

野田「若手俳優でも女優のほうが最近、元気いいよね。こういうとなんだけど、女優のほうがよっぽど男っぽかったりする。松たか子ちゃんなんてすごいよ、お兄さん(注・市川染五郎)より雄々しいし」
古田「僕も観に行きましたが舞台でも演技、すごいですからね」
八塩「そういえば『パイパー』では宮沢りえさんのおめでたが話題になりましたけど」
野田「妊娠6ヶ月であれだけの動きを舞台でやりきった女優さんって、いないんじゃないのかなあ。
古田さんも舞台に出てみませんか?」
古田「いえいえ、僕、ヨメはんにいっつも言われるんですわ。活舌がよくない、って(笑)」


対談は「東京文化発信プロジェクト」ということなので、話はどうしてもそっちのほうに振られる。

八塩「ヤクルトスワローズは『東京ヤクルトスワローズ』って球団名に『東京』をつけましたよね」
古田「あれね、実は僕が社長に提案したんです。
東北楽天とか北海道日本ハムとかどこも地域密着球団で成功してるでしょう。
だから『東京』の球団だぞ、ってアピールしたいと。でも社長は最初、OKしなかったんですよ」
八塩「どうしてですか」
古田「ヤクルトは全国に販売網があるのに東京の球団、となるとね、近畿ヤクルト販売とかの会社の人は困っちゃうわけなんですよね」
八塩「東京の球団といえばジャイアンツ・・」
古田「だけど、『水道橋ゆうたら下町やんか、こっちは神宮球場、青山やぞ。表参道もそばやねん。こっちが断然おしゃれやねんで!』って気持ちで・・」
八塩「う〜ん、それを関西弁で言われても(笑)」


野田「僕はねえ、みんなが巨人ファンだったから、逆に南海ホークス応援してたの。野村さんのファンで。
だって野村さんって、相手バッターのことを調べ上げて、打席に立ったとき後ろで、ささやき戦術でバッターのつきあってる女性のこととかぼそっとつぶやいてたんでしょう。ああいうのを子どものとき聞いておもしろい選手だなあ、って思って。
それからずっと野村さんのファンだから、ヤクルトのファンになったの」
古田「10年ぐらい前に初めて野田秀樹さんにお会いしたんですが、そのときもずーっと野村監督の話ばっかりしてるんですよ。『野村さんってどんな人?』とか『ホントに古田さんと野村さんと仲悪いの?』とか」
野田「今、野村さんが楽天の監督だから楽天も応援してる。それからヤクルト。そしてね、僕、おすし屋さんで偶然一緒になった縁で王さんも大好きで、それでソフトバンクもファン。応援する球団がいっぱいあるんだよ」
古田「王さんは、ほんっとに実直な方ですよね。すばらしくて・・」
野田「そうなんだよね」
古田「あ、訂正です。『王さんも』です。野村監督もいい方ですよ」(会場爆笑)。


演劇とスポーツとおんなじところがあって、いわば即興劇だ、という野田秀樹の言葉。
彼は舞台でのいろんなアイデアを考えるものの、使わないままのものが沢山あるのだそうだ。


古田は実のところ、「2016年東京オリンピック誘致」の特別大使を務めているのだという。
それで、東京都主催のこの対談に引っ張り出されたのがわかった。
彼はアマチュアのときソウルオリンピック、プロになってからもシドニーオリンピックの野球に出場しているし、昨夏は北京オリンピックの取材にも行った。
それで、間近で一流スポーツ選手が見られる感激を熱く語るのだが、わたしは実際のところ「オリンピック誘致よりもやることあるだろ!」という人間なので、古田には悪いのだが、再度の東京オリンピック誘致には関心が持てないでいる。まあ、スポーツ界で知名度のある人間を代表して、ということなんだろうが。


古田ファンとしては、こういう楽しい話が聞けるのもうれしいが、やはりいつかは指導者として球界に戻ってきてほしいと思う。それともスポーツ文化人みたいになってしまうんだろうか。それもさびしいなあ。
聞くところによると、2006年のWBCの監督を務めた王さんは、今回のWBC監督は
若松、コーチに古田や野茂を考えていたとか。その布陣での日本代表も見たかったな。
古田は国際試合を経験してるし、野茂はアメリカ、中年米の選手事情に詳しいし。


最後は、古田、野田両氏から「東京オリンピック誘致を盛り上げましょう」ということでまとめられて終わった対談。
東京都主催なんだから仕方ないか、と思いつつ帰途についたわたしは千葉県民なのであった。