STORY.PT2.

2010年01月16日
シルバー
寂しい夜には、
あなたの事を思い出して、

窓を開けて
夜空を見上げると

銀色に輝くあなたがいる。

俺を優しく照らしてくれる。


ねえ、カカシさん。

あの空の星たちが二人を見守ってくれているんです。

「イルカ先生はロマンチストですね」
「そうですか?」

俺は照れ笑い。



あれから一か月。

またあの人は任務の最中。



俺は毎日アカデミーや受付をくるくる働いた。




夜が来ると思いだす。


(早く帰ってきて)



こんな寂しい夜には

窓を開けて

見上げるお月様


ほら、

あなたがほほ笑んでいる。

銀色に輝く

美しいあなたが・・・・。


081224.
2010年01月08日
とびっきりの朝に
まったりとした午後1時。

今日はあまり人の出入りが少ない。



イルカはぼんやりと考え事をしていた。

美味しいご飯の事や大好きなカカシ先生のこと・・・。

彼と付き合いはじめてはや3カ月。

見るもの聞くものすべてが新鮮でちょっとした事でもドキドキしたり。


実際、付き合ってみるとカカシという人は想像と違っていた。



エリートでクールなイメージの彼は日ごろは穏やかで優しく何でも気がつくイ
ルカの理解者だった。





そういえば・・・。


イルカは思いだす。
カカシ先生は何時も俺より遅くまで起きていて俺が先に眠ってしまう。
それでいて朝は俺より早起きで、
大人のお付き合いはしているものの、今だにあの人の寝顔を見たことがな
い。

”気になる”


”そうだ、今夜は俺が遅くまで起きていてみよう”

そしてカカシ先生の寝顔を見よう!

「おい、イルカ」

自分の、マイ宇宙にひたっていたイルカは声をかけられてはっとして顔をあ
げた。
「何ぼ〜っとしてんだよ」


受付のカウンターの前に報告書を持った特別上忍の並足ライドウ。
「すみません、ご苦労様です」

イルカはにっこりと笑った。

「罪だよな、その笑顔」
「えっ?」

「何でもないよ。・・・それより今夜お前時間ある?」
ライドウから声がかかるとは。
「合コンだよ合コン」

「好きだよなお前」


ライドウは美人のくノ一を集めたという。


本当のところは合コンにイルカを参加させるという約束でくノ一を集めた。




誠実で優しいイルカの人柄はくノ一たちの間でも人気があった。

「でも〜今夜」
(あの人がくるのに)


もごもご。



”パシッ”

ライドウはイルカを拝んだ。

「一時間いや、30分でいいから。そしたら報酬に一楽大盛りラーメンおご
る!」

「ホント?」



イルカは思わずOKしてしまった。









大手チエーン店の若者に人気のある居酒屋。


イルカは気がつくと美しいくノ一に囲まれていた。

とても恥ずかしい。

緊張する。





合コンは思っていたより楽しくって盛り上がってついつい2時間もいてしまっ
た。



(早く帰らないと)




イルカは自分のアパートに走った。

(カカシ先生待っているだろうな)

(夕飯どうしょう)

”タッタッタッ”




イルカは勢いよくアパートの階段を登った。


「遅くなってすみません」




イルカの恋人は部屋でテレビを観ながらビールを呑んでいた。




「ご飯できていますよ。・・・・お帰りイルカ先生」


息をきらしているイルカをみてカカシは言った。

「のんでますか?」
「えっ?」

「酒と女の匂いがします」

”ぎくっ”


「カカシ先生、俺違います。何も〜〜ああ〜〜!!」


カカシは鼻がきく。


くノ一臭いのだ。



「ご飯できてます。俺はあなたのこと信じていますから。イルカ先生」



カカシはにっこりと笑った。

「何故怒らないんですか?」



イルカはうかつな自分を責めた。


恋人を待たせて合コンにうつつをぬかしていたのだから。







「イルカ先生も呑みます?」


そんなイルカにカカシは冷蔵庫から冷えたビールを出してきた。

「はい、いただきます」

少しだけ今夜のビールの味は苦かった。



イルカはそんな訳で、またカカシより早く寝てしまった。















翌早朝。


イルカは気合で4時に起きた。

実はトイレに目が覚めたのだ。


隣でカカシ先生が寝ている。

(ドキドキ)


そっとその寝顔をのぞきこんだ。





端正な御顔は普段は覆面で隠されている。

隠すのがもったいない美貌は薄暗い部屋でも確認できた。

(まつ毛長い)



安心しきって安らかに眠っていた。



イルカはその美しい顔をじっと見つめた。


ずっと見ていたい。

ずっとこのまま。





イルカはやがて音をたてぬよう部屋を出た。



「今朝は俺が作りますね。とびっきりのモーニングを、カカシ先生」



”もう待たせたりしません”

090825.
2010年01月02日
アップダウンアップ!
近頃俺はナーバスなんだ。

「一楽」で大好きなラーメンを食べながらイルカはため息をついた。

「どうしゃした、イルカ先生。ため息なんてついて」
「別に意味はないけど・・・・少しダルクって」

「それはいけませんねえ〜食欲はありますか」
「ううん〜まあまあですが」
「眠れてます?」
気のよい「一楽」の主テウチは常連客のイルカを心配した。

そうだ、そういえば少しばかり寝付きが悪い。



夜、イルカはパジャマに着替えベットの上に転がっていた。

今日はテレビも観たくない。


悩みなんてたいしてない。

何故だろう?



最近はテンション低い。






イルカはまんじりとしない夜を過ごした。






翌日は非番だった。

イルカは洗濯と掃除をした。

休みにやらないと部屋も散らかったままだ。



今日は手際が悪くナカナカに進みが悪い。



洗濯が終わったら面倒だけれど日常品の買い出し、



こうやって味気ない休日が終わってしまう。



だれかに会う訳でもないし、
遊ぶこともなく・・・。

以前は当たり前に過ごしていたのに、


それなのに、

「ムナシイナ」


なんて一か月前に思った。


そう思った日から、

俺はナーバスだった。











その日、カカシは特別上忍の不知火ゲンマに誘われていた。


ゲンマの話では、夜集まって仲間同士でぱっと、公園でバーベキューしょうと
いうのんきな誘いだった。


「バーベキュー?忍が集まってなんか変だね」


「そうですか?たまにはぱっとしましょうよ」


「他に誰が来るの?メンツ」

「ライドウとアオバにシズネさんにアンコさん、紅さんとそれからイズモとコテ
ツ」

「ふうう〜〜ん何で俺を誘うの?」


「いいじゃないですか、カカシさん」

「う〜〜〜〜ん」


カカシは取り合えず了解した。


ゲンマの話ではいい肉が沢山安く手に入ったという。


ま、俺には野菜と魚の方がいいけどね。











イルカはドラックストアー「マシモトツヨシ」の特売に来ていた。


トイレットペーパーを持つ。


後は歯磨き粉。

「おひとり様お1つまで」


1つ手にとってみる。


「よう、イルカ!」


聞き覚えのある声にイルカの手が止まる。

「ライドウ」


「非番か?」
「そっちも?」
「ま、買い出しだな。・・・・そうだイルカも今夜来ないか?ゲンマたちとバーベ
キューするんだ」

「バーベキュー?」


(わあ〜羨ましい)


「これ見ろよ。紙のお皿にお箸に紙コップ。旨い肉食わせてやるぞ」

「へえ〜いいの俺も」


ちょっと面白そうだ。


イルカも返事を了解した。










そして夜。


会場の公園は木ノ葉の東の公園だ。


緑も多く里の中心にも近い集まりやすい場所だった。


カカシが会場に着くと続々と忍仲間が楽しそうに集まっていた。


「よお〜カカシ」

「自来也様それに五代目まで」

自来也と綱手までいたのはカカシもびっくりした。




カカシはドリンクを貰った。


人だかりが料理の前にできる。


その中にしっぽを見つけた。

(イルカ先生)



アカデミーの教師うみのイルカは黙々と肉を食っていた。

(いいしっぽだ)


一度、カカシは彼のトレードマークのしっぽを手で掴んでみたかった。


(むらむら)



そう思うと思わず彼の背後に忍び寄りくいっとその頭のしっぽを掴んでい
た。
「いゃ〜〜〜〜〜〜」



イルカは肉の入った皿を落としてしまった。

「何すんですか!?」



「あ、ごめんごめん、イルカ先生。ついそのしっぽを一度掴んでみたくて」

イルカの大事な髪を引っ張った犯人は上忍のはたけカカシだった。

「ふざけないでください!カカシ先生」


イルカは焦った、なんでカカシが髪を引っ張ったりするんだろう?

それにしても何て無礼な人だろう。


「すみません、今代わりのお肉取ってきます」


カカシもさすがに悪いと思って頭を下げている。



イルカはぷっとふくれた。





しばらくして、カカシは皿に山盛りの肉を持って現れた。

「酔っていらっしゃるんですか?」

「いえ、ほんのでき心です」


イルカは皿を受け取った。

いい肉だ。

たまらない。


「それにしても、イルカ先生は随分大食いなんですねえ〜


”ズキン”

再び無礼なカカシをイルカは睨んだ。

「でも、あなたを見ていると元気になれます」


カカシはそう言って恥ずかしそうに頭をかいた。

「えっ?」

俺を見ていると元気になるなんて?







それから二人は人の輪から離れて東の公園の中を散歩した。


ブランコを見つけてイルカはかけよった。


二人でブランコに乗る。




そして二人はそれから一時間ほど夢中で世間話に花を咲かせた。



だれかとこんな風に沢山話たのはイルカにとっては久しぶりだ。


とても楽しい。


それにカカシ先生とこんなにじっくり話をするのは初めてだった。



”クスクス”



「それで、トイレでようをたしていたら、ゲンマとライドウが二人で連れション
に来ていい大人が・・・あの二人怪しいですよ」


「二人でまるでアカデミーの生徒みたですね」

「大人の俺には心理が理解できませんけどね」

「カカシ先生ってよく喋るんですね、以外です」

「そうですか?でも相手によるけど。イルカ先生とは話やすいですね」


カカシは照れた。


なんせうみのイルカと言えば里の中で人気のある受付NO1中忍だから。


瞳が大きくて綺麗で可愛くて一緒にいてドキドキした。




「俺、トイレにいきたいです」
「あ、俺もです」



「それ連れションですね、カカシ先生」
「ハハハそうですね。アカデミーの生徒みたいですね」




二人は公園の中の男子トイレに入った。


イルカは隣でようを足すカカシを見てドキッとした。


見てはいけない大きなモノをもろ見てしまった。

カカシの方も視線がイルカの股間を見ていた。


”カア〜〜〜〜ツ!



「いゃああ〜〜〜〜」



イルカは悲鳴をあげトイレを飛び出した。

カカシがその後を追う。

「待ってイルカ先生、別に変な意味で見たわけではありません!!」

「いゃあ〜〜変態!!」



二人は公園の中を走り回った。



「あれえ?カカシさんとイルカじゃない?」
「どれ?」

「二人で追いかけっこしてるぜ」
ゲンマとライドウはお酒を呑みながら公園の中を走る二人を見ていた。

「なんだかあの二人いい感じだな」

「あやしいなあ〜」


思わずライドウがそう口走った。













翌日の朝はイルカはすっきりと目が覚めた。


あの後、カカシ先生は必死でイルカにトイレでイルカのあれを見てしまったこ
とを詫びていた。



イルカは「俺を呑みに誘ってくれたら許してあげてもいいです」とさりげなく次
回の約束と取り次いだ。



(カカシ先生って楽しい)





イルカはからからと窓を開けた。

空が青く雲はふんわり。


とても新鮮な気持ちだった。



さわやかな秋の風が窓から吹きこんできた。

「よし!」



一日が始まる。



俺は久しぶりに目が覚めたみたいだ。


昨日から今日へ今日から明日へ、

アップダウンアップ!




俺は今やっと本当の自分になった。



澄んだ空のごとく爽やかにイルカは一日のスタートをきった。




090812・


今年も宜しくお願いします!
2009年12月26日
日々つのる
その日は冷たい雨が降っていた。

3週間の任務だった。

これで里に帰れると思うと仲間達の顔も明るい。


「森の里」
その名のとうり四方を森で囲まれている。
「カカシ、よかったな、イルカ待ってるぜ」

タバコをふかしながらアスマが白い歯を見せた。
「あんたこそ、紅が寂しいって泣いているぜ」
アスマは柄になく赤くなった。
「いいですよね、皆さん待っている方がいて」
カカシたちに今回同行した、眼鏡のちょっとお洒落なアオバが二人を羨まし
そうに見た。
「アオバ、お前彼女いないのか?」
「はい、・・・・・いいなあ〜って想う人はいても想うだけで、中々縁が遠くて」
”しみじみ”
「自分で縁が遠いなんて云うと本当にそうなってしまうぜ」
「ほんとですか、アスマさん?」
「ああ〜昔、三代目が云っていたよ」
「じゃあ〜俺も縁があります」
「そうだ、それじゃあ〜森の里の森神社に縁結びの祈願してきたら、森神社
って有名だぜ」
「いきます!いきます、今すぐ!!」






思いたったらすぐにでも、アオバは宿を飛び出して行った。


カカシとアスマは顔を見合わせて笑った。
そして二人もその後に続いた。





森の里の森神社は宿からそう遠くない。

古くて立派な神社だった。

「お〜お〜早速拝んでるよ真剣に。若いねえ〜あいつ」

手を真剣に合わせているアオバを見てアスマが吹き出した。


「俺、折角だからここで先生にお土産買うよ」




カカシは神社の売店に立ち寄った。



売店には森の里の限定の菓子や開運グッズが並んでいた。



イルカはこのてのものを喜ぶ。


カカシは日持ちしそうな菓子を買った。

ふと、その時。

キラキラと輝く金色の魚のキーホルダーが目にとまった。


「これなあに?」

売店で店番をしていた老婆に尋ねる。


「ああ、これはな”飲み食い”の神様で持っているだけで食べるのに困らない
お守りだよ」

明るい瞳の老婆は一つとって、カカシに見せてくれた。


それは、まるでイルカ先生にぴったりのお土産だった。


カカシは一つそれを購入した。






買い物を楽しみ恋愛祈願を終えたアオバを連れ三人は木ノ葉の里にむか
う。





森の里から里まで歩いて2日の距離だ。










その頃。


里で待つカカシの恋人は冷蔵庫の中を必死で睨んでいた。


もうすぐ給料日、後2日の辛抱だ。



今月は予想外の出費が多かった。


イルカは節約を心がけたが、

「卵が残り2個。うどん。食パン1枚。きゃべつ。大根少しああ〜〜」


朝、弁当を作るのにも材料がない。


イルカは仕方なく卵を1個ハードボイルドに茹でた。



もし、こんなところを恋人のカカシが見たらさぞや悲しむだろう。



”さあー後2日頑張るぞ!”




”GOOOOOO"


正直なイルカの腹の虫が鳴いた。


イルカは朝食ぬきでアパートを出た。


へろり〜へろり〜


独身生活、一人暮らしは長いけど、今月ほど出費が重なったのははじめて
だ。




まず、友達の結婚祝いに2枚。


それから、アカデミーのお食事会に1枚。



お札に羽がはえているようだ。


きわめつけが、歯医者通い。

虫歯が痛くて、これが大きかった。











イルカはアカデミーに向かった。





今日は天気が悪い。


朝から雨が降っていた。
ついてない時はこんなもんさ。





早くカカシ先生が帰って来ないかな。


帰ってきたら「一楽」に連れていってもらおう。


諸々考えながら、イルカはアカデミーに到着。








この日は朝一番で教員の会議が入っていた。


気が重い。


空腹が辛い。





案のじょう、大した内容の会議ではなかったのだが、空腹のイルカにはしん
どい。



「イルカ先生、今の小百合先生の案に先生のご意見は?」

「はい」


今日は生徒たちの安全を守るという題目だ。


イルカは立ち上がった。

”GOOOOOOOOO"





部屋中にイルカの腹の鳴る音が響いた。





くすくすとあちらこちらから笑い声が聞こえた。


(さいあく〜〜)





顔から火が出そうだ。










そして昼休み雨の降る中、イルカは傘を持って立ち上がった。

青い綺麗な傘は以前、カカシ先生がイルカに贈ったもので、それ以来大活
躍していた。




今年は雨が多い。




「あら、雨なのにお外でランチですか?」


同じく教員の若い女性から声をかけられた。


「ええまあ〜」



この若い教員の名はつばき。


見た目はかわいいのだが、お喋りなのが問題だった。



「たまにはイルカ先生一緒にランチしましょうよ」


「ありがとうございます。俺、今日は外に私用ででますので、また今度誘って
くださいね」


一応口だけでも返事はかえすものだから、イルカはやさしく彼女に云った。



(昼飯卵だけなんて、みんなにしゃべられたら困る)






イルカは傘をさしてアカデミーの校庭をぶらぶらした。




少し寒いが外の空気はいい。

そして人しれず1個の卵を食べた。



雨の中で食べた卵は旨かった。









そして、待望の給料日。


もう一つ嬉しい事にカカシ先生が里に帰ってくる。



イルカはありがたく今月の労働の成果を受け取った。



やっと、これで通常の生活が戻ってくる。






イルカは定時に通なれたスーパーに立ち寄った。



空腹時にスーパーに行くものではない。



そのとうり、給料をもらったイルカは気が大きくなり余計なものまで買い込ん
でしまった。




大荷物を抱えアパートに帰る。



買ってきた米をとぎ野菜で味噌汁を作る。


「ああ〜俺って幸福」



感激で涙がでた。



その時、アパートの玄関があいた。


「カカシ先生!」


嬉しくてイルカはエプロンのまま飛び出す。



「はたけカカシ、ただ今帰還しました」



イルカはカカシに抱きついた。











「それは、今月は災難でしたね先生」

話をきけばカカシの不在の間イルカは不自由な生活をしていたのだ。


「では早速、これをどうぞ」


カカシは森の里の神社で買った魚のキーホルダーをベストのポケットから出
しイルカに握らせた。
「これは?」


「食べるのに不自由しないお守り」


「へえ〜」

「有名な神社のものです」



ありがたくイルカは受け取った。




もし、これが本当ならば素晴らしい物を手に入れた。









それから不思議なことが毎日おきた。




今日も受付をしているとイルカのところへアオバが差し入れを沢山持って現
れた。



「アオバどうして?」

「カカシさんには今回の任務でお世話になってさあ〜」

アオバは明るい顔をしていた。


「やけに明るいけど何かあったの?」

「うへへへへへ」

「やめてよ、その笑い」

「これができた」

”きらりん”


アオバは小指をたてた。


「まじですかあ〜」


昨日ライドウたちとの合コンに参加してそこで可愛い中忍の彼女と知り合っ
たという。


イルカは”よかった”とアオバの肩をたたいた。



差し入れは「タイ焼き」だった。


イルカは沢山あったのでそれを同僚たちにもふるまった。






ちなみに昨日はシズネさんからお団子。

その前の日には紅先生からリンゴをもらった。





ところで、イルカは考えた。



やはりあの金色の魚のお守りのおかげだろうか?




「まさかね」


イルカはそれを小さな布に包み忍服のベストのポケットに大切にしまった。





“今夜はカカシ先生に大サービスしないと”





090722.


2009年12月17日
大切な日のこと
スケジュール表に彼は赤いペンで丸をつけていた。


あの人と出逢って3年目。


そして明日その記念の日が訪れる。



二人の恋の季節は出逢いの春からはじまり。

やがて、ぎらぎらとした熱い夏をむかえた。


二人は夢中で恋をした。



そして今は季節に例えると秋。

少し落ち着いてきたところだ。




木ノ葉の「しっぽ先生」ことうみのイルカは恋人にプレゼントを用意した。


イルカの彼、はたけカカシは読書が趣味だ。




その本は今、木ノ葉で注目されている新人作家の話題作だ。







さあ、そろそろ出かけないと。


今朝は簡単にトーストですませた。



大きく息を吸って吐いてイルカはアパートを出た。







「おはよう!」

「おはようございます!」




寒い季節は終わった。


これから春にむかって行く。




アカデミーに通う道も気持ちよかった。




自然と笑顔になれた。





今日一日が始まる。





清清しいスタート。







そして今夜彼が任務から帰還する。


二人で記念日をむかえる事が出来る。



そう思うとますます笑顔になれた。












その晩。


カカシが帰ってきた。



今では二人は同じマンションで同棲生活をおくっていた。




まるで結婚しているようだった。






彼は部屋に入るなり服を脱ぎはじめた。

「えっ、もうするんですか?」


「はい、あなたと三週間も会ってませんでしたし、早くして寝たいです」



「でも、その前にお風呂もお食事も支度してあります」



帰るなりそれはないだろう。




「イルカ先生って主婦みたいですね」
「えっ?」


「だってちょっと生活感ありすぎです」


ずけずけと恋人は言う。







イルカは今夜カカシを出迎える為、お風呂や好物をはりきって準備してい
た。




「ねえ〜はやくしましょうよ〜」




カカシはイルカのエプロンをはずした。











食事も風呂も何もかも後回しでカカシはイルカを求めてきた。



イルカもカカシと同じ男だから、気持ちは理解できなくはない。


でも、何か違うだろう?



”会いたかったです”

”寂しくなかったですか?”



以前の彼ならまずそう優しい言葉をかけ抱きしめてくれた。



好きですと最近言ってくれなくなった。






カカシはするだけするとイルカに背をむけ眠ってしまったのだ。





ぼんやりとイルカはカカシの寝顔を見ていた。



明日は大切な日なのに。





せっなくなる。














この日、カカシは上忍待合所で待機だった。



待合所でばったりと上忍仲間のマイトガイと会う。
「よおおお〜〜ひさしぶりだあ〜〜」



ガイは林檎をかじりながら笑った。



少しゴリラのようだった。





久しぶりに会い二人は話もたまっていた。





気のおけない仲間だから。
















イルカは夕飯の支度に腕をふるっていた。


お刺身に温野菜のサラダ。



煮物、手のこんだシチューも作った。


後は彼が帰るのを待つだけ。



イルカは部屋も綺麗にかたずけ、リビングでカカシの帰りを待った。




しかし、待機で帰りが早いはずのカカシが待っても待っても帰ってこない。


(急な任務が入ったのかな?)





だとしたら、仕方ないことだ。









夜の8時すぎイルカは一人缶ビールをあけた。






”ドサドサ”


その時、玄関で物音がした。
「カカシ先生!」


イルカは嬉しくって走りでた。



「よおお〜〜イルカ〜〜元気かあ〜」


「が、ガイさん」


イルカは思わずカカシを睨んだ。



こんな大切な日に友達を連れて来るなんて。




「なんか二人で盛り上がっちゃってさあ〜」


「酷い・・・・・・」






今日が何の日だか、あなたは忘れたんですか?



涙が出そうだった。






やがて喰うだけ喰ってガイは帰っていった。









イルカは横をむいて座っていた。

「イルカ先生、そんなに怒らないでもいいじゃないですか」

「知りません!」
「何時も二人きりだし、たまには賑やかでいいと思って」


「俺の気持ちあんたわかっているんですか!?」



イルカはホロホロと泣きはじめた。



今夜は二人が恋人になって3年目の記念日だというのに、


この人ってば!


「待って、イルカ先生」


カカシはその時、あっと口を押さえた。


大切なことを忘れていた。



今日がどんな日か。




完全に忘れたわけではなかったが、


(俺はなんてことをしてしまったのだろう)



「ごめんなさい・・・俺・・・」


イルカはピクリとも動かない。



「どうせ俺は古女房みたいなもんです」



「何を言っているんですか?」


イルカは泣き崩れた。



「俺には、おれにはあなたほど大切な人は他にいません、この先にも後に
も・・・初めてあなたと出逢ったあの日からずっとあなたのことが好きです!」


イルカは顔をあげた。


好きですと、カカシが言ってくれた。


「ホント?」

「ホントにホントです」


カカシは力一杯イルカのことを抱きしめた。


「もう一度やり直しましょう二人の記念日」



嬉しかった。




好きですとずっと言ってもらえなかったような気がした。



最近は少し乾いた関係だった。



「抱いてください」

「イルカ先生」



イルカは瞳を閉じた。









薄暗い部屋の中。


二人はベットに横たわっていた。


「俺の中であなたが居ることが当たり前になっていました」


カカシがぽっぽっと話はじめた。


「何時も世話をやいてくれて、心配してくれて、有難うイルカ先生」

「カカシ先生」



「さあ〜ワインでもあけて、また初めから恋しましょう、俺達」






三年目の二人の夜に。




091209.




2009年12月11日
愛しのカカシカマル
”美容院に俺は生まれて初めていきました”



ある非番の午後。


これが里で有名な若者にトレンドの美容院か。

お洒落だな。


イルカは今日はお出かけモード。

入り口で気合を入れた。


「よし!」


店内からはいい香りがする。

ハイセンスな調度。


受付に美人。


(わあ〜綺麗)


「お客様御予約ですか?」
「いえ、はじめてです」
「今日はいかがされますか?」
「では、カットをお願いします」



「それでは少々お待ちください」

イルカはソファに腰をかけた。


しばらくして、すらりとした一人の青年が現れた。
(げっ!?)


その顔を見てイルカはどぎもをぬかれた。

銀色の髪に端整で秀麗な顔だち。


それはイルカの恋人のはたけカカシにそっくりだった。



「わたしが、カリスマ美容師はたけやま、カカシカマル、はっ!」

「はたけ・・・やま・・カカシカマル?」


名前がカカシ先生プラスシカマルだった。


”うっとり”


イルカはその青年にみとれた。

だって、カカシ先生にそっくりなのだから。





「お客様今日はどのようにされますか。はっ!」


「好きにして」



”ああ〜”

「まずはシャンプー。はっ!」

彼は構えた。



「ああ〜」

彼の長く美しい指がイルカの髪のゴムをとる。

(綺麗な指)


イルカが天にも昇るシャンプーに酔った。


「お客様。本日は私が一押しのスパイラルテクニックを披露します。はっ!」


”ドキドキ”


それにしても、スパイラルテクニックって何?



イルカがそんな言葉を知るわけもなく、



気が着くと物凄い速度てカカシカマルはイルカの髪にロットを巻きつけてい
た。







イルカは鏡を見てぎょっとした。


頭にいっぱいカラーみたいなものが巻かれてあった。


その上から美容師カカシカマルは生暖かい液体をかけていた。


「はっ!それではお待ちください。はっ!」



彼は奥に消えた。



イルカはぼお〜っとした。





気が着くとイルカは別人になっていた。

縦ロールのロンゲはまるでビジュアル系の若者のごとく。


変りはててしまった、自分。

「いかかですか?はっ!」


「有難うございます★素敵」



イルカはまだ夢を見ているよううっとりとカリスマカカシカマルを見つめた。



「これが私の名刺です、メルアドもあります。はっ!」




「カカシカマルさまあ〜〜」










”ああ〜今日もよく戦ったなあ”


カカシは素早く報告をすませ、イルカの待つマンションに帰った。



まさか変わり果てた恋人に涙するなんてこの時は想像もつかなかった。




結果。


イケメン美容師には要注意!!!





翌日、イルカはカカシに叱られ、アカデミーを休み自宅でストレートパーマを
かけたそうだ。





やっぱ、チョンマゲ最高!!


090819.
2009年12月05日
報告
時折、歩くことに疲れた時イルカはその場所を訪れる。

そこは木ノ葉の為に勇敢に戦って亡くなっていった人々の眠る慰霊碑。



そこにはイルカの父と母の名もあった。


数年前の九尾の事件で父親と母親を同時に失った。

まだ子供だったイルカには辛い事件だった。





この日も非番でイルカは朝から白い花を手にそこに立った。



しかし、そこには先客の姿があった。





白銀の髪に少し猫背の上忍のはたけカカシ。

現在はナルトたちの担当上忍。



カカシはその前にじっと立ち手を合わせていた。


まるで何かに語りかけているかのように見受けられた。






イルカは声をかけることが出来ずその場でぼんやり立っていた。


「イルカ先生」

先に声をかけたのはカカシ。


「もう随分前からそこにいらっしゃるから。スミマセン俺はもう帰ります」

「あ、いいんです。俺は今日は一日非番で時間ありますから」


カカシは目を細めた。





イルカはそこに白い菊を供えた。



「御両親にですか?」

「はい、父と母に」

「俺も先生や友に」


この人も同じ想いをしている。


でも誰もがこういう体験はしてきているのだ。









二人はおまいりをすませるとブラブラと木ノ葉の街に出た。


この頃は大分暑さもおさまって涼しい日々だった。

「ねえ、折角ですから飯でも御一緒に」
「いいですね」




イルカはカカシに誘われ案内された小さな店に入った。



昼はランチをやっている居酒屋だった。



「ここにはよく?」

「ええ、旨い魚を安く食べさせてくれます」

「天麩羅は?」


”プ〜〜ッ”


カカシはお茶を吹いた。


「ナルトのおしゃべりが〜」


二人は笑い合った。




「カカシさんとこんな風にお食事するの初めてですね」

「そうですね、ナカナカお誘いするチャンスがなくって・・・・あのうよかったら、
これからも時々俺とお会いして頂けますか?」


「えっ?」


イルカは驚いた。



だってこの人は里を代表するほどの上忍なのだ。


イルカのような平凡な中忍と格が違う。

「御迷惑でなければです」



「俺でいいんですか?」

「はい、お願いします」



それが二人にとってのきっかけだった。



偶然とは時として悪戯をするものなのだ。









深夜のBAR.



今夜は二人で酒場に出た。


「カカシ先生は何時もつままないんですね」


「ええ、でも先生はお好きなものをどうぞ」


「でも何時も御馳走になってばかりで、今夜は俺に支払いをさせてください」
「お誘いしているのは俺ですし・・・・じゃあ〜御馳走する代わりに後で俺のお
願いをきいてください」
「え?いいですよ。借金以外のことなら」

思わずカカシはふきだした。








あの日以来、二人はこうやってお酒や食事を共にする関係になっていた。





イルカはツマミにピザを注文した。


「カカシさん、お酒を呑まれる時はチーズを一緒にとると胃腸の為にいいん
ですよ」
「そうですか」



カカシはイルカに勧められピザを一枚手にした。


薄いタイプのピザはタバスコがたっぷりかかっていた。



「何か落ち着くんですよ」
「はい?」


「イルカ先生とお会いした次ぎの日は俺調子がよくって。何故だろう?」


イルカは照れた。





夜もふけて二人は店を後にした。



「あのう、今夜は御馳走さまでした。・・・・・それでカカシ先生のお願いっ
て?」

イルカは先ほどからその事が気になっていた。



「目を閉じて」



イルカは素直に目を閉じた。



”ふにゅ”



そのイルカの唇に柔らかく生温かいカカシの唇が重なった。

「カカシ先生!なにを?」



”キスされてしまった”


「御馳走さまでした」



「ち、ちょっとお〜」



カカシは明るくイルカに手を振って走っていった。




イルカは一人残された。

まだカカシの唇の感触が残っていた。




イルカはしばらくその場にぼおーっと立っていた。











「あの慰霊碑は運命だったんですね」


二人の夜の情事の後、カカシはイルカの頭を撫でた。

「そうですね、きっと父ちゃんと母ちゃんが引き合わせてくれたのかも・・・で
も」


「でも?」


カカシは首をかしげた。



「あんな店の裏でのキスはけしからんです」


「だってあんまり旨そうで」

「もおお〜〜」



「ねえ、先生明日の朝、俺に付き合ってください。会わせたい人がいるんで
す」
「会わせたい人?」

”誰だろう?”





「明日、父のお墓に行ってもらいたいんです」

「お父様の?」



はたけサクモ。



「木ノ葉の白い牙」



カカシの父は無念の最期をとげた。



しかしその功績は今でも語りつがれている。
伝説の三忍ともなら立派な忍だった。




「ちょっと報告したくって」

「報告?」




そうだ、俺もお父様に御挨拶させてもらおう。





二人は翌日の事を考え眠りについた。








翌朝、二人ははたけ家の墓を訪ねた。


木ノ葉の中心地から少しはずれた小さな丘の上にそこはひっそりとあった。


涼しい朝の空気が気持ちいい。



「父さん、連れて来たよ。俺が心に決めた人を」

「カカシ先生!」

「イルカ先生だよ。前に話したね」



「お父さま、宜しくお願いします」


イルカは墓にむかって頭をさげた。



「だから安心してね」



心に決めた人だなんて、



イルカは少し戸惑った。



「イルカ先生は俺の婚約者だからね」
「ええ〜〜〜!?」


悪戯っぽくカカシは白い歯をみせた。



090710・

2009年11月28日
犬のおんがえし
とあるのどかな町に明るくて元気のよい若者が暮らしておりました。

名前をイルカ。

黒い元気なしっぽ頭に鼻に一本の傷がありましたが、またそこが愛嬌のあ
る青年でした。


ある日、イルカが公園に出かけると近所の子供たちが一匹の犬をいじめて
いるのです。

「こおら、ナルトにサスケにサクラ。動物をいじめたら駄目だぞ」

「え〜だってさあ〜この犬俺たちのお弁当盗んだってばよお」
黄色い頭のナルト君が言いました。

「そうか、それはしょうがないねえ〜」

イルカはお財布から一枚大切なお金をだして子供たちに渡しました。
「これでマックにでもいってきな」

「ありがたい!」

”わあ〜〜〜”


三人の子供たちは嬉しそうに駆けていきました。





そして犬とイルカが残された。

犬はパグでした。


「もう大丈夫だよ」

「すまん、拙者どうしても腹が減っておってな」

「げっ!?犬がしゃべった!」


イルカは大きな丸い瞳をますます丸くした。



「世の中には人間の言葉をしゃべる犬もおるわ。そなた名をなんという?」

「はい、うみのイルカです」


「イルカ、拙者を助けてくれたお礼にご主人様のお屋敷に案内しょう」

「ご、ご主人様?」

”ああ〜飼い主のことか”








気のいいイルカはパグについてノコノコお屋敷にむかった。





「すごおお〜〜〜い」



何という高級住宅なんだろう。

芸能人でも住んでそうな立派な洋館です。




「お金もち・・・・」

「さあ、こっちだ」


少し偉そうなパグにリードされイルカは洋館の門をくぐった。








イルカは大きなテーブルのある部屋に案内された。


そこにはこのパグの仲間の犬が数匹幸福そうに暮らしていた。


(羨ましいなあ〜こんなお屋敷に住めるなんて)



イルカは犬たちが羨ましかった。





そこへ、パグの御主人様が登場した。


「はっ!」

まるで映画俳優のような銀色の髪の美貌の青年。

王子様のようだ。


”ぽおお〜”

イルカは御主人様にみとれた。




「パックンを助けていただき有難うございます。私はこの屋敷の主のカカシ」

「カカシさん」



「あなたは?」

「はい、うみのイルカです。・・・そのう・・職業はサラリーマンです」


カカシは握手を求めてきた。




「さあ、イルカさん。今宵は沢山の世界の豪華料理をたんと召し上がれ」



「え!?」



世界の豪華料理なんて!




”ぐう〜”


思わずイルカの腹はなった。



サラリーマンとは嘘で実は一月前に会社をリストラされイルカは現在無職だ
った。


おかげで最近ろくなものも食べていない。



「であええ〜〜」


”パンパン”



カカシは手をたたいた。




すると奥の部屋から沢山のカカシにそっくりな青年がわらわらと出てきた。

手には世界の豪華料理。


全員執事の衣装を着ていた。


イルカは汗をたらした。



いくら美形でもこんなに沢山いたら暑苦しい。










それにしてもなんという豪華料理なのだろう。


「さあ、イルカさんお好きなだけどうぞ」

「いただきます〜★」


イルカは手を合わせた。


久しぶりの御馳走だった。




大きなステーキに手をのばす。



イルカは気がつかなかったのだが、それを見てカカシがニヤリと笑ったので
ある。







イルカは喰ったお肉に魚に野菜にスイーツ。

どれも絶品の料理だ。


夢中で空腹の腹におさめる。


食べ終えたからの白い皿がどんどん積み重ねられていく。



それには流石にカカシも面食らった。



「ああ〜ゆめみたい〜」


「ま、満足していただけましたか?」


気がつくと自分の隣にカカシが座っていた。


カカシは料理には手をつけずお酒を呑んでいた。




「イルカさん、これは西の国の高級ワインですあなたにも」

「はい、いただきます」



イルカは思い切り呑んで、

思い切り倒れた。










気が着くとイルカは裸でベットの上に寝かされていた。

隣にはやはり裸のカカシがタバコをふかしていた。

お尻が割れそうに痛かった。



涙が出る。


「久しぶりの御馳走でした」

カカシはイルカの黒髪をなでた。


「ひどい、こんなことするなんて・・・・」


「いいじゃないですか、あなただって世界の豪華料理を食べたんですからそ
の代金だと思えば」



「責任とってください〜〜」


イルカは怒った。



いじめられていた犬を助けてそのお礼がとんだことになった。

「いいですよ、お仕事紹介します」


「ええ〜」


イルカは焦った。


何故カカシはイルカがお仕事を探していることを知っているのだろう。




「御免なさい、イルカさん・・・・あなたの鞄の中見てしまいました。鞄の中に
求人広告が沢山入っていて・・」


「そうですか、サラリーマンなんて嘘を申してすみませんでした。それでお仕
事ってどんな?」


働けるのなら、この際、イルカは乗り出した。




カカシは白い歯を見せた。


「この屋敷に住み私と暮らす、永久就職ですよ」

「ええ〜〜〜!」



イルカはのけぞった。



「専業主夫ですよ。三食昼ねつき、おやつもついて漫画もテレビも見放題」




「えっ、ホント?」


なんて凄いんだ。



”キラキラキラ”


まるで素敵王子様にカカシがみえる。





こうして失業中の若者イルカは再就職にありつくのであった。




そして沢山のカカシ執事たちや犬たちといつまでも楽しく暮らしたそうです。


めでたし、めでたし。


090701.
2009年11月21日
かわいてる
喉がかわくな・・・。

珍しくカカシは水を多く飲んだ。


夏場だから喉がかわいても当然なのだが、
「お前、今日はやけに飲むな?」

同行していた上忍仲間の猿飛アスマがカカシに声をかけた。

”ガブガブ”

カカシは水筒の水を飲んだ。


「なんだか、カラカラなんだ」

汗をぬぐう。

今日はやけにかわく。


「カカシ、こういう話を知っているか?・・・心が潤いを失くしている時に人間
は水がほしくなるという話だ。昔三代目からきいた事がある」

「なにそれ?」

それじゃあまるで俺がカラカラで潤ってないってこと?


カカシは笑った。


満たしてくれる相手はいない訳じゃあない。

何人かの若い女との肉体だけの関係はある。



「今夜つきあうぜ」

アスマは優しい。

何時もカカシの話をきいてくれる。

最高の酒の友だ。








夜の歓楽街は賑わっていた。


その中の一軒の酒場はカカシも気に入っている店だった。



カウンターの席でアスマと呑む酒は旨かった。



そこに彼がいた。

「よお、イルカ珍しいな一人か?」

「アスマさん。カカシ先生」



一人で酒を呑んでいた中忍教師は思わず席を立った。


(なんか浮かない顔しているな)



イルカという青年は普段はにこやかなイメージがあったが、今夜の彼は憂鬱
そうだ。



「ここいいか?」
「はい、どうぞ」

カカシとアスマはイルカの隣の席を変えた。




二人で冷酒を注文する。


イルカはビールをゴクゴク呑んでいた。


BGMは他里の音楽だ。

少し照明の暗い店は洒落た内装で日常を忘れさせる。




「お前というか、二人とも今日は沈んでいるみたいだな」


”シュボー”

アスマはタバコにライターで火をつけた。




「しずむ?」

「そんなことないです!」

二人は否定した。



同時に。



沈む理由などカカシには心あたりがなかったから。


「俺は今日は一日普通にアカデミーで何も変わったことはありませんでした」


イルカが思い出すように言う。



そのとうり、

全く平凡な一日だった。

「俺もアスマと任務、暑いから水を沢山飲んだそれだけだよ」

「カカシ先生もお水を?」


「ええ、やけにかわくんで」

「俺も水分ばかりでした」


「おいおい、ふたりとも」


ヒゲ男アスマは何かいいたそうだった。


「なによ、ヒゲ、あんたは紅がいるからね」

「おい、カカシここでその話はやめろよ」

アスマは慌てた。

「イルカ先生、このヒゲはあの紅上忍とお付き合いしているんです」
「えっ!」

イルカは少しだけびっくりした。






3人はだらだらと酒を呑みながら会話を続けた。


ゆっくりと時が流れていく。


「イルカ先生は今、お付き合いしている方はいらっしゃるんですか?」



大きな黒い瞳が少し哀しそうな色にかわった。

「いいえ、俺は一人です。そういうカカシ先生は?」


「俺は遊ぶ相手はいるけど、それだけ」

一瞬、イルカの顔が強張った。



真面目なイルカには遊ぶだけの肉体だけの関係なんて理解できないだろ
う。



「好きな相手はいません」


カカシは言う、本当のことだ。




その晩はそこで会話は終わった。

















雨が降っていた。

今年は雨の日が多い。


地面をたたくような強い雨だ。


イルカは濡れながら木ノ葉の街を走っていた。

アカデミーの帰り道。





何処かで雨やどりしないと。

一軒の本屋に入る。

(ずぶずぶだ)



「あらら、イルカ先生、こんなに濡れちゃって」

その本屋にイルカと同じように雨をしのいでいたはたけカカシがいた。



雨がやむのを待ちながら立ち読みしていたのだ。



イルカは鞄からタオルを出して身体や顔を拭いた。



カカシは本を見るのをやめ、イルカを見た。




イルカは何時も高く束ねている髪のゴムをとった。


髪をおろしてタオルで拭いている。

その姿がやけに色っぽかった。



おろし髪が、カカシのハートにトキメキを感じさせた。



(綺麗だな)



その時、本屋の主が二人によってきた。



「お客さん、お困りでしたら傘をお貸ししますぜ」
「ホントですか?」


それは助かる。


「ただね、一本しかなくて二人で入ることになるけど、それでもよければ」

つまり、あいあい傘なのだ。


主は笑った。



「一本でもいいです、お借りします」


カカシは笑顔になっていた。


”おくりりますよ、イルカ先生”


一本のビニール傘をさして二人は街を歩いた。


傘は大人の男二人ではせまいが、カカシはいい気分だった。


イルカに案内されるままに彼のアパートに。


「カカシ先生、御迷惑でなければ少し休んでいかれませんか?」


「いいんですか?」

イルカ先生のお部屋にあげてもらえるなんて、

カカシは口元をほころばせた。



イルカの好意に甘える。




イルカは大きなタオルをカカシの為に出してきた。

白くて清潔なタオル。

「大分濡れてしまいましたね、まいった」
「カカシ先生、冷えませんか?今、俺の服を持ってきます」


結局忍服も濡れていて着替えまで借りることになった。







イルカは温めた牛乳をカカシに作ってくれた。


「何からなにまですみません」


「いいんです」


イルカはにっこりと笑った。

その笑顔はとても綺麗だった。



カカシは彼の部屋を見回した。



広くはないが、温かみのある調度がそろっていた。



「もう一杯いかがですか?」

イルカは今度はお湯を沸かしコーヒーをいれてくれた。

「本当にすみません、こんな着替えをお借りしたうえにコーヒーまで」

「気にしないでください、カカシ先生に風邪などひかせられません」




”へっくしゅん!”


カカシはタイミングよくくしゃみをした。

「大丈夫ですか?」

「ええ、鼻がでただけです」


「お薬は?」



「俺はなるべく薬品には頼らないことにしています」

「そうですね、身体の為ですしね」



イルカは立ち上がった。




イルカ先生ってまめだな。

カカシはこまめに世話をやいてくれるイルカに感心していた。


でも、こんな風にイルカ先生からあれこれ世話をやいてもらうのは嬉しかっ
た。


「これどうぞ」
「これ、青汁ですね」

”にがい”


「まずいから身体にいいんですよ」

「どんな味がするんだろう」



カカシは生まれて初めて青汁を口にした。




「イルカ先生って世話上手ですね。・・・流石アカデミーの先生だけあって」

「やめてくださいよ〜」

イルカは照れた。



どうしてだか、イルカはカカシ上忍が自分の部屋に居てくれるのが嬉しく、胸
が高鳴った。





お客さんなんて滅多にこのアパートには来ない。

昔はナルトが遊びにきたが、



何時も勤務が終わり夜は一人でテレビを見てPCをいじって終わってしまうイ
ルカの日々。



やがて青汁を飲み干しカカシ上忍は立ち上がった。

「今夜は色々と有難うございました。そのう・・・青汁のお礼をさせていただき
たいです、後日」
「そんなお礼なんて気になさらないでください」


「いえ、是非一緒にお酒でも」


”是非”

”是非”



丸いイルカはますます丸くした。









カカシはすっきりとした気分でアパートを出た。


雨は大分小降りになっていた。






カラカラとしたカカシの喉自然と潤っていた。



まるで、緑のような人だな、イルカ先生は。




やわらかく微笑む笑顔。

そしておおきな黒い瞳。


思い出すとカカシの身体が少しだけカーッと熱くなった。




それは日頃の肉体だけの相手とは全く違う。


もっと、

もっと、


安らかで熱い感覚。


「どこに行こう二人で」


路面の濡れた道を歩きながらちょっと浮かれている自分がいた。



俺は日常に潤いを見つけた。





090628.
2009年11月14日
どろぼ〜〜〜
”ビールがのみたい”

そんな一日だった。



それにしても今日はついてなかった。

朝、アカデミーに行く途中の道でチンピラにからまれ、

遅刻。


授業はくしゃみが止まらず、生徒たちに笑われた。


そして、定時。

俺はある事に気が着いた。

財布をアパートに忘れた。

これじゃあ〜今夜の夕飯の買出しが出来ない。



喉がかわいたので、イルカは鞄から水筒をだした。

”これで我慢、我慢”


部屋に帰ったら、まずお風呂を沸かしてそしてビールにトマト。


やっぱりそれがいい!



イルカは何事もなかったようにアパートに帰った。

「いゃああ〜〜〜〜」

アパートの鍵が壊されていて、部屋に入ると何がおきたのか理解できた。


まさか、泥棒に入られるなんて・・・。


イルカは早速、警備隊に通報した。




「何かなくなっているものはありますか?」
「ええ、それが・・・お膳の上の財布は無事で・・・そのう箪笥の中から俺の靴
下とパンツがすべて・・・・」
”プッ”

警備隊の若い男は吹いた。

(むかむか)

イルカは殴ってやりたい衝動をおさえた。







結局、その晩は一人で部屋にいるも気味悪く部屋をでた。

同じ忍仲間の並足ライドウのアパートを頼った。


「しかし、靴下とパンツなんて変態だよな〜」

酒を呑みながらライドウは笑った。
「しかも、女物ならともかく、イルカのぱんつう〜」

”プッ”

”バコッ”

イルカはライドウを殴り飛ばした。



「殴ることないでしょう〜〜」

「部屋に居るとまた犯人が現れるんじゃあないかって、俺は凄く不安なの
に。・・お前は楽しいのか他人の不幸が」

「ああ、楽しい」


きっぱり。


俺はどうやら泊めてもらう相手を間違えた。








そしてその泥棒事件はまたたく間に里中に噂となった。


勿論、あのライドウのおしゃべりが〜〜〜


イルカは歩くたび、あっちでも、こっちでもヒソヒソ笑われた。

もう〜嫌だ。


「イルカ先生!」

その時、定時でアカデミーを出ようとするイルカを呼びとめる声。



「カカシさん」

「大変でしたね。でも大丈夫。犯人は俺が必ず」
「えっ?」

このはたけカカシという男は里の上忍で、世間では「ビンゴブック」に載るほ
どのたいそうな男なのだが、日頃からイルカにちょっいをだしてくる変り物だ
った。


(むしろ犯人はこの人だったりして)


イルカはカカシを疑った。







静かな音楽の流れる高級なバーで二人は酒を呑んでいた。


勿論、カカシのおごりである。




イルカは何時も誘われると飲み食いするだけしてさっさと帰っていた。


彼はイルカの「おねだり」に弱かった。



「カカシさん、もしあのパンツをあなたが盗んだとしたら、怒りませんから正
直に話してください」

「とんでもありません。そんな木ノ葉の里一番美しいイルカ先生のパンツを奪
うなんて、不潔だああ〜〜!」


店中に響く声でカカシは言った。



「声、おとして下さい」

もお〜


「とに角、暗部を出動させても見つけてみせますよ」

そういうカカシは元暗部。

普段の彼から想像できないけれど。










数日後。

犯人は身柄を拘束された。


お手柄はカカシの忍犬パックンである。

優秀な忍犬はイルカのアパートから、かぐわしいイルカ先生の匂いをかいで
犯人の住む部屋にと、



犯人は何と隣の住人だった。

世の中、恐ろしい事が多い。



隣の男は50代。

妻と離婚して寂しい一人暮らし。
隣に住む愛らしいイルカに以前から興味があったという。


「気持ち悪い」


犯人は捕まったけれど部屋に帰るのが怖い。

そんな男の部屋の隣に暮らしていたなんて、



イルカは引越しを考えた。






「イルカ先生!」

パックンを連れたカカシがイルカの受付にやって来た。

「カカシさん、先日は大変失礼しました」
「え?」

「あなたを犯人だと疑った事です」
「ああ、いいんですよ。もう犯人も捕まりましたしね」

「パックン、お礼するからね」

「悪いなイルカ。拙者はカカシに頼まれただけだ」

パックンは誇らしげに尾をふった。




カカシとパックンはイルカにお礼と言われ、味噌ラーメンを「一楽」で御馳走
になった。


勿論、パックン用にテウチさんにたのんで犬用のラーメンを作ってもらった。



「俺、このさい引っ越そうと思って」

「そうですね、あんな事のあった部屋にはいたくないですね」

「すぐにでも荷物をまとめて」


「いい物件がありますよ!」


カカシは手を打った。



「本当ですか?」


それはついている。




二人はラーメンにビールを呑んで、
アルコールが入りイルカの気分も軽かった。










「ここ、カカシさんのお部屋ですよね」
「はい、4LDKを一人でもてあましていました。よろしかったら引越してキマセ
ン?
家賃はただですよ」

「へ?ただ?」



ちょっと不安だが、この際今すぐ引っ越せて安心するにはここしかないだろ
う。








こうしてイルカは安易にカカシ上忍と同居を始めた。





「いゃ〜〜〜〜〜〜〜」





その後、イルカ先生が無事だったかどうかは私しか知りませんがね。



090629.


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