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”ずっと好きでした”
ああ〜この想いは何処に持っていこう。
うみのイルカは今年、22歳。
木ノ葉のアカデミーの教員。
黒くて大きな瞳と元気なしっぽを持っている。
イルカが一人想う。
彼と出逢ったのはイルカの元教え子ナルトから担当の上忍として紹介され
た。
銀色の髪に覆面の不思議な人だった。
一時期、ナルトたちの中忍試験の時には互いの意見が対立した事もあった
けれども、
イルカはその上忍にほのかに恋に近い感情を持った。
今夜も一人、アパートで夜がふけていく。
窓を開けると月がでていた。
あの人の髪と同じ銀色の月。
そう思うと胸のあたりがキュッと痛くなった。
この想いは何処に持っていこう・・・。
イルカは缶ビールを冷蔵庫から取り出した。
最近ほんの少しだけれどお酒の量が増えた。
呑んでそのままごろんとイルカは横になった。
時々一人でこんな風に過ごすのが嫌になる。
もう子供の頃からずっと一人でいるので当たり前になっていたが、
何故だか今夜は胸が痛い。
恋はもっと甘いものだと思っていたけれど。
(せつないな)
イルカは目を閉じた。
”チチチチチ”
朝を知らせる鳥の声。
イルカは何時もと同じように決まった時間に起きて身支度をして弁当を作っ
た。
その残りのおかずで簡単に朝食をすます、
アパートを出ると空は水色。
白いふかふかの雲が綺麗だった。
「イルカ、せんせ〜〜〜!」
仕事場に着くとイルカの元教え子のナルトがイルカを見つけて嬉しそうにか
けてきた。
「ナルト、任務から帰ったのか?」
「ああ〜今回大活躍だってばよ〜でもカカシ先生がへたれちやって」
「え?大丈夫なのか?」
「ただのチャクラぎれだってばよ」
「ならいいんだけれど・・・」
イルカはナルトと話ながら受付のある建物に入った。
この日はシフトで一日受付に入る予定だった。
(カカシ先生大丈夫かな?)
受付は人もまばら。
イルカは何事もなかったように笑顔で対応した。
木ノ葉の為に頑張る人たちにすこしでも労ってあげたかった。
もうすぐ昼休み。
そう思った時に猫背で長身の彼が入ってきた。
「カカシ先生!」
イルカは思わず立ち上がった。
「報告書をお願いします」
「あのう、病院にいらっしゃったのでは?」
「あ、ナルトですか・・あのお喋り」
カカシは軽いチャクラぎれだから今回は入院しないですんだそうだ。
イルカは安心した。
「ご心配をおかけしました。・・・・そうだイルカ先生これから昼飯でしょ」
「はい」
「よかったら一楽に行きませんか?」
(ほんとに?)
(本当に?)
イルカはただ嬉しかった。
ずっと想い続けていたカカシと食事ができるのだから。
二人は並んで一楽の席に着いた。
「イルカ先生、それにカカシ先生もおそろいで」
「ええ、俺がイルカ先生に来てってお願いしました」
「え?お願い?」
”お願いだったのか?”
イルカはドキドキした。
二人はしばし一楽の味を楽しんだ。
「いいですね〜一楽とイルカ先生。里に戻ってきたって風景ですね」
「風景?ですか・・・・」
「いや、俺の中ではラーメン→ナルト、ナルト→ラーメン→一楽→イルカ先
生」
”がっかりだ”
俺はカカシ先生にはそんなイメージしか持たれていなかった。
当たり前だ、カカシ先生は木ノ葉を代表するほどのエリート。
それに比べて俺はただの受付中忍。
イルカは黙々とスープを飲んだ。
「でもやっぱり、イルカ先生イコールキュートかな?」
イルカは思わずラーメンのどんぶりを落とした。
「す、すみません〜〜〜〜〜!!」
カカシ先生にラーメンの汁なんてかけられない。
イルカは焦った。
幸い少し汁がこぼれた程度だった。
「本当にすみませんでした」
「何だろう、イルカ先生今日は変ですよ」
「あ、あなたのせいです!」
イルカは少し怒った口調で言い返した。
何故だか怒ってしまった。
”俺って馬鹿”
夜、アパートに帰り、イルカは窓を開けた。
二人でラーメン食べてあの人俺をキュートだなんて、
俺は平凡な男なのに、
(もっと上手くふるまえたらいいのに)
今夜も月を見ていたら、胸がキュンとした。
月は少し丸くなっていた。
その月がカカシ先生の顔に見える。
(一緒にまたラーメン食べれたらいいな)
ビールの缶を開け一口呑んだ。
のどごしがいい。
今夜は少し気分がよかった。
数日後。
イルカは何時もより早くベットをでた.
まだ暗い中を上着をひっかけて、
今朝は健康の為、ウオーキングをしてみようと思ったのだ。
思ったら後は行動するのみ。
暗い街にはまだ誰も居ない。
静かだ。
この先の道をいけば大きな噴水のある公園がある。
そこで少し休もう。
イルカは早足で歩いた。
公園には犬が数匹いた。
「いぬ?」
見た感じただの犬ではない。
大きいのや小さいのも含め全部で8匹いた。
イルカはその犬に囲まれている彼を見つけた。
(カカシ先生!)
こんな早い時間帯にカカシ先生は犬と何をしているのだろう?
「よお〜し、今月のご褒美だ」
カカシは自分の忍犬に時々こうやって日ごろの働きを労いご褒美をあげて
いた。
「今月、一番活躍したのは、アキノとウルシ。よくやった」
「頑張ったよカカシ」
「頑張ったのよ」
(へえ〜)
イルカは何か不思議なモノを目撃してしまった。
成り行きでそれを見守る。
「じゃあ〜頑張った2匹には三代目からいただいた特製ガムだ」
誇らしそうに2匹はそれをくわえた。
「カカシ、拙者も欲しい!」
「俺たちも〜」
他の犬たちはやきもちを焼いた。
「じゃあ〜ガムをあげるから代わりにあそこに居る素敵なお兄さん連れてき
て」
「ホント〜?」
”それって?”
イルカは忍犬たちに囲まれてしまった。
(どうしょう)
カカシの前に連れられていく。
「イルカ先生、どうされたんです?こんな時間に?」
「ウオーキングです。・・・・・カカシ先生こそびっくりしました」
「この犬たちは俺の忍犬です。今朝はご褒美をあげていました」
「こんな朝早くに?」
「あまり他人の目には」
「スミマセンデシタ」
イルカは頭を下げた。
「いいんです。イルカ先生ならば。それに朝から先生に会えるなんて」
にこにことカカシは嬉しそうだ。
イルカは大好きな彼からそんな風に言われ恥ずかしかった。
この日を境に二人は少しずつ接近していった。
一緒に食事をしたり映画にも行った。
イルカには嬉しい事が続いた。
今夜こそ伝えよう。
イルカは決心していた。
夜のアパート、イルカは何時ものように窓を開けた。
空には丸いお月様。
月がにっこりと自分に笑いかけているように見えた。
「言うぞ〜!」
イルカはこぶしを握り締めた。
”ずっとあなたが好きでした”
090731. |
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”たまっている”
”たまっている”
深夜のテントの中、カカシ隊長は眠れぬ夜を過ごしていた。
この地に来て一カ月。
彼はたまりに性欲がたまっていた。
別に誰かをあてがってもらえばいい事だが、
それは出来ない。
だって里には彼の帰りを待っている世界一可愛い人がいるのだから。
後3日たてばこの灰色の戦地から木ノ葉に帰還できる。
カカシはリュックからイルカちゃん人形を取り出した。
これは里のイルカマニアの間で売れている、イルカのフィギュアだ。
着せ替えもできよくできている。
「あなたとしたい。イルカ先生」
「カカシ先生」
うるうると大きな黒目でお人形さんはカカシのことを見た。
カカシは気がつくと人形の服を脱がせていた。
パンツ一枚のイルカ人形。
「だめ〜だあ〜め」
俺は変態なのかも知れない。
でも元気になりそう。
カカシは股間をおさえた。
今夜はイルカ人形に暗部の制服を着せた。
(ああ〜〜〜いい〜〜)
もし、ここにイルカ先生が居たら確実にキレるだろう。
カカシは今回の少し長期の任務にこれを持ち込み毎夜、妄想の中でイルカ
と遊んだ。
「このお人形大きくならないかな?」
どうせなら等身大のサイズに。
そうか、俺が大きくすればいいんだ。
その頃、カカシの居るテントの外ではカカシに夜這いをかけようとするくノ一
達が集まっていた。
カカシほどの有名人ともなれば大騒ぎだ。
女たちはあれこれとアプローチをかけるが、カカシは知らん顔。
「今夜はワタシが」
「いいえ、私が」
例えどのような美人がテントを訪ねようとカカシはあっさり断るのだ。
「つれないけれど素敵なカカシ隊長」
「あ〜あ〜羨ましいですね、カカシさん」
「でもだれもテントに入れないって話だぜ」
カカシの部下2名がテントの外でくノ一のこぜりあいを見て噂話をしていた。
「もしかして、カカシさんって女嫌いとか?」
「ありえる。ありえる」
「じゃあ〜俺がいこうかな?」
「やめれ〜きもい!!」
そんな会話やテントの外での女の争いなどカカシは知らなかった。
知らないとはいい事だ。
カカシは昔、ドラえもんからコピーした何でも大きくなるライトを術で出した。
それをイルカ人形にあてる。
「大きくなあれ〜大きくなあれイルカちゃん」
”どど〜ん!”
見事に小さなイルカ人形は等身大の美しいイルカ先生と変貌した。
もしこの現場を誰か第三者が目撃したらさぞやひくだろう。(ワタシもひいた)
カカシはその等身大の彼を抱いて安心して眠りについた。
そして最後の3日間カカシは人形と乗り切った。
たまりたまった性欲を人形に吐き出したのだ。
あの森を超えると木ノ葉の里だ。
カカシをはじめ仲間たちの表情は明るい。
あるものは愛する家族の元へそしてあるものは恋人のところへ。
無事任務を終え帰れた事が何よりも幸福だ。
カカシは里に到着して早速報告の為イルカのいる受付にむかった。
(早く会いたい)
早く一刻でも早く会って、心に穴のあいた俺をあなたの笑顔でみたして。
受付ではにこにことイルカが嬉しそうに鼻の頭をかいた。
少し照れている様子だ。
久しぶりに会ったカカシ先生は少し瘠せていた。
「おかえりなさい」
「ただ今帰還しました」
「ご苦労様です。お疲れになったでしょう」
一応まわりの目を気にして二人は目と目で会話した。
(今晩いきます)
(待っています)
イルカは張り切って秋刀魚を用意した。
大きくて鮮度のいいものをスーパーで吟味してきた。
「浮気してませんよね」
カカシににっこりと笑いながらも釘をさす。
「そんなことあるわけないでしょう。当たり前です、イルカ先生」
「寂しかった」
カカシはイルカの身体を強く抱きよせた。
やっと本物にありつけたのだ。
「先生、今夜はオールでお願いします」
「望むところです」
そんな訳であとはお熱いお二人でゆっくりとどうぞ。
私はお邪魔なのでここいらで失礼します。
090817. |
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今年の桜の開花はもう来週だという。
早いものだよな・・・。
冬場活躍したセーターを洗濯しながら、イルカはぼんやりテレビを観てい
た。
(今年は一人か)
カカシは任務。
青い海と青い空の綺麗な里にいる。
そうそう戻っても来れないから。
一人で歩いて桜を眺めようかな。
でも、一人で見る花より二人で見る花の方が綺麗だけれど。
そんなことを考えていたのは今朝のこと。
”どうだい、今週末くらいに皆でぱっと花見なんてのは?”
何時もハイテンションのライドウ。
「え・・・・・・」
イルカは返事につまった。
「でも、俺用事があってごめん」
イルカは断った。
誰かとぱっと騒ぐそんな気分ではなかった。
”あんまり騒ぎすぎると、かえってストレスはたまるそうですよ”
何時だったか、カカシ先生がそんなことを言っていた。
適当に一人になってだらけている時間も必要だと、・・・・・確かにそうかもし
れない。
イルカはカレンダーにしるしをつけていた。
それは、カカシに会えた日には赤い丸をしてある。
今月はまだ一つだけしかない。
”あっ?”
イルカは何か気配を感じ窓を開けた。
カカシの忍犬が一匹、
確か名前はウーヘイ。
小さな籠をくわえている。
籠には饅頭と手紙。
カカシ先生からだ。
『青い海の見えるこの地は空も澄み渡っています。ただ人の心は殺伐として
寒いです。長期にわたる戦いが人々から笑顔を奪ってしまった・・・・・後、半
月ほどこの地の治安が回復したら戻ります。あなたに会いたいです』
寂しさが手紙から伝わってくる。
(半月かあ)
イルカは本だなから本を出した。
それは観葉植物の本だ。
この一人で過ごす時間を使用して何かカカシにしてあげれることはないだろ
うか、ずっと考えていた。
ただ、少し前の自分みたいに、しょんぼりカカシ先生の帰りを待つているだ
けだなんて、そろそろ・・・。
”一緒にいて欲しい”
”抱きしめて欲しい”
ただ、以前はそんなことばかり考えていた。
カカシ先生から注がれる愛情ばかりを望んでいた。
でも、今は少しだけ変わった。
”一人で泣かない”
”寂しがらない”
それは一方的に求めるものよりもはるかに深いものだと最近やっと気がつ
いた。
次に会った時までに・・・。
咲き乱れる薄いピンクの花。
人々がその木の下にシートを広げ、賑やかな祭りが今年も行われた。
イルカは一人その間をぬうように歩いた。
だらだらと坂があって確かこの坂を登ったところにならば、人の来ないスポッ
トがある。
イルカは少し汗ばんだ額をぬぐった。
そして上を見上げた。
ピンクの天井。
例えようのない花の天井。
小さな事からはじめてみよう。
それでいい、自分で出来る範囲で構わない。
俺たちの恋もそろそろセカンドシーズン。
イルカは花の天井をカメラにおさめた。
青い海と青い空の下で奮闘するあの人におくる為に。
カカシ先生、俺は今こんなにも元気です・・・・。
090318.
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近頃カカシ先生は、ぼんやりしていて元気がない。
任務が忙しいしイロイロ大変なのでそれは仕方ないことだ。
一緒に食事をしていても、うんうんと言うばかりであとはだらりと横になって
寝てしまう。
(元気ないのかな?)
やはりお疲れなんだろう。
それとも俺にも話せない何か悩み事でもあるのか?
イルカは紅茶をいれながら考えた。
明日は二人にとって、ものすごく久しぶりに休みが合った。
以前ならば、二人で外に出かけお花見をしたり、カラオケや買い物を楽しん
だ。
少し寂しい。
仕方ないことなんだ。
「カカシ先生、この紅茶今日シズネさんからいただいたんです」
「う〜〜〜〜〜ん」
長い返事はメンドクサソウ。
「疲れていらっしゃるんですね」
「いえ、何かごろごろしたくって」
それって、もう若くないってこと?
そのうえ最近夜の生活もさっぱりだった。
(スタミナ不足かな?)
翌日のオフはカカシは外に出たがらずイルカの部屋でごろごろ猫のように過
ごした。
イルカはニンニクや卵をふんだんに使用ったスタミナドリンクを作った。
これは実は自来也様から教わった「えろえろドリンク」
エロのパワーを目覚めさせるものだという。
「何ですこれ?」
「健康にいいんです。どうぞ」
「ありがとう」
”にっこり”
イルカはカカシにドリンクを飲ませた。
”カア〜〜〜ッ”
カカシの体内で今、彼の本能が活性化した。
「はぁはぁはぁはぁ」
どうやら効き目があったようだ。
「ねえ〜カカシせんせい〜〜」
ちょっと上目ずかいで甘えてみせる。
カカシはイルカに飛びかかった。
効果抜群「えろドリンク」
二人はしばらくベットの上で裸で転がっていた。
「実は俺、今少しえっちをおさえているんです」
「え?」
イルカはしまったと後悔した。
カカシがそれをひかえるには、それだけの理由があるのだ。
俺は余計なことをしてしまった。
「大丈夫ですよ。イルカ先生、俺体力がないわけじゃないし」
カカシはイルカの気持ちを察して優しくイルカの髪を撫でた。
「ホントですか?」
「当たり前です。・・・・でも我慢のしすぎもかえって身体に毒ですね」
そう言ってカカシは再びイルカの身体に覆いかぶさった。
「あああ〜〜」
慣れた手で慣れた唇でイルカの身体を知り尽くしているカカシ。
もうこんな風に抱かれるとイルカは抵抗できない。
されるままに彼に身体をゆだねる。
甘い吐息がイルカの唇からもれる。
イルカはぐっすりと眠ってしまった。
カカシはじっとその顔を見つめた。
「好物の食べすぎは身体に毒だけど我慢しすぎも毒だよね」
それに、久しぶりのイルカは色っぽかった、
恥ずかしがり屋の彼は時として大胆な顔を見せる。
そんなところも魅力的なところだった。
ご馳走は毎日食べたいけれど。
毎日食べたらご馳走でなくなってしまう。
と、ちょっと前に猿飛アスマから飲み屋で言われた言葉を思い出す。
「でもやっぱり好きなんだからした方が」
カカシは反論した。
「まあなあ〜しかし少しため込んでおいたほうが結構いいんだぜ」
意味ありにアスマは笑った。
「あんたもスケベだね」
「イルカだって年中されるより、しばらくほおっておけば、自然とあっちから誘
ってくるようになる、そうすればこっちのもんだろう?」
「アスマ、それあんたたちのこと?」
ひくひくアスマは苦笑いした。
まあ、その話はイルカ先生には内緒なんだけどね。
しかし実際イルカを我慢するカカシは自然と無気力になってしまった。
彼からもらうパワーは絶大だった。
これも長く恋人と付き合ううちの、いい関係を作りだす方法のひとつかもしれ
ない。
そんなアスマはその後、じらしすぎて紅の怒りを買って鞭で打たれたそうだ。
よく晴れた冬の朝。
イルカは昨夜眠ったまま一度も目が覚めず朝になっていた。
すっきりとした爽快な気分だった。
カカシは先に起きていてモーニングを作っていた。
「ね、先生、今度休みが合ったら映画を観てカラオケしましょう」
なんともいえないトロケルようなイルカの笑顔にカカシはまたムラッときた。
それにしてもカカシ先生少し昨夜おかしかったような?
腰をさすりながらイルカはバスルームに入った。
それ以来、カカシは好物は我慢しなくなった。
反動も怖いからだ。
090314. |
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「ご苦労様です」
イルカはぱっとほほ笑んだ。
「有難うイルカ先生。・・・お元気でしたか?」
「はい、」
イルカは提出された書類に目をとおす、
ほんの2、3分のことだが・・。
「じゃあまた」
そお言ってイルカの憧れの男性はイルカに背をむけた。
部屋を出ていく。
イルカは後ろ姿を目で追った。
何時の頃から彼という人間を意識し始めた。
あれはナルトたちの中忍試験の後。
イルカははたけカカシ上忍に恋をした。
一人だけの秘めた恋。
でもその想いは伝えることができないでいる。
夕方イルカは仕事の帰りよく行くスーパーに立ち寄った。
夕飯前のこの時間帯のスーパーは活気があった。
イルカは値引きのおかずに手を伸ばした。
その時、同時にもう1つの手がそれを持った。
思わずイルカは手をひっこめた。
「イルカ先生!」
「あっ!」
”どうしょう”
その人物は他でもないはたけカカシ。
二人はひっとうり買い物を終えてスーパーを出た。
でも、偶然にでもこんなところで会えてイルカは嬉しかった。
”ザー”
”ザー”
二人がスーパーから出るとタイミング悪く雨が降り出した。
「どうしましょう?」
「ついてませんね。どこかで雨宿りしましょう」
「はい」
二人はすーぱーの近くの居酒屋に入った。
イルカは胸がどきどきと高鳴った。
なにせ憧れの人と二人きり。
イルカは雨に感謝した。
二人はビールを注文した。
”あとは適当に”
そうカカシから言われイルカは魚や野菜をメインにチョイスした。
「俺の好きなものばかりです」
カカシは少し驚いた。
魚に茄子の料理。
「イルカ先生は茄子お好きなんですか?」
「はい」
イルカはカカシのプロフィールをナルトからきいて知っていた。
「二人で呑むの初めてですね」
「はい」
イルカは恥ずかしくてもじもじしていた。
はい、としか言葉がでない。
「イルカ先生はあまり召し上がらないんですね」
「はい」
「小食なんですか?」
「はい」
今夜のイルカは何時もと違った。
何時も元気で明るいアカデミーの教師、そんなイメージがかかしにはあっ
た。
まさか、自分にイルカが恋をしているとはこの時カカシには想像がつかなか
った。
この晩は話をしているのは、もっぱらカカシの方でイルカは聞き役に回っ
た。
「イルカ先生は聞き上手ですね」
「そんな、カカシ先生がお話が上手なんです」
もっと、ホントは話がしたい。
もっとカカシ先生の事が知りたい。
イルカは夢中で酒を呑んだ。
気がつくと酔いつぶれていた。
「イルカ先生、大丈夫?」
そのまま、イルカはテーブルにふして寝てしまった。
カカシはイルカのことを背負った。
イルカの住まいは知らないからカカシはそのまま自分の住居に連れ帰った。
その頃には雨はやんでいた。
”よいしょ”
やはり細身とはいえ男一人を背負うには体力がいった。
カカシはイルカのベストを脱がせベットに横たえた。
眠るイルカのまつ毛は長い。
(へえ)
カカシは感心した。
可愛いんだこの人。
初めて気がついた。
今夜はイルカの御蔭て久しぶりに沢山話をして楽しかった。
何よりも聞いてもらえることが嬉しかった。
「すき・・・・すき・・・・カカシ・・・・・」
その時、眠るイルカの唇が動いた。
「えっ、どうしたの?」
「すき・・カカシさん」
「えっ?」
イルカは寝言でカカシに告白していた。
勿論夢の中でだろう。
カカシはイルカの頭を撫でた。
”君が今夜無口だったのも、小食だったのも俺が好きだからなの?”
カカシは柔らかくほほ笑んで眠るイルカの唇に軽くキスをした。
今夜は興奮して眠れないかも。
シャワーを浴びながらカカシはうかれていた。
でもそんな姿を残念ながらイルカは知らない。
「カカシさん、もう寝ちゃったんですか?」
遅くに帰ってきてカカシの恋人はカカシの毛布をはいだ。
あの告白の夜から数カ月。
今では二人は仲のよいカップル。
「イルカ先生、明日俺はやいんです〜〜もう〜〜」
「ダメです、起きて、おきて」
気がつくとイルカは憧れの人をお尻にひいていた。
「大好き!」
ベットから起きあがったカカシにそう言ってイルカは抱きついた。
あの夜の奥ゆかしいイルカは何処へ。
苦笑いしながらもカカシはイルカの頭を撫でた。
090622.
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”寒い”
ベッドの中にずっといたい。
誰もがそう思う冬の朝。
起きるまでの1分2分が気持ちいい。
「まだ寝ているんですか?」
昨夜遅くにイルカの部屋に来たというのに、
恋人のカカシはもう忍服に着替えていた。
イルカの布団をカカシははいだ。
「何するんですか!」
「寒いと思うからダメなんです、さあ」
イルカはのそのそと起き出した。
カカシは先に起きていて味噌汁と卵を焼いていた。
出来すぎた恋人というのも時としては大変だ。
イルカは何気に時計をみて驚いた。
だって、時刻はまだ午前4時30分!
いくらなんでも早すぎる。
「寝る、もう一回寝る!」
ベッドに戻ろうとするイルカの腕をがばっとカカシは掴んだ。
「さあ、ゆっくりじっくりお話しながら朝ご飯しましょうよ」
「ひ〜〜〜〜〜〜〜〜」
食卓はホウレンソウの味噌汁、ふっくら卵焼き、そして漬物、
いい匂いだ。
朝食は美味しかった。
「カカシ先生はどうして朝そんなに元気なんですか?」
「う〜〜ん、だってゆっくりできるのこの時間たいだし、うちのおやじも早起き
で毎日俺が朝つくっていたから」
カカシのそれは習慣だった。
もぐもぐイルカは口をもぐもぐさせた。
朝食を食べてもまだ出勤までは余裕だ。
「ねえ、イルカ先生俺、猛烈に今イルカ先生としたいです」
「ええ〜〜〜?!こんな早くに」
全くカカシ先生は何を言い出すかと思えば・・・・。
「朝えっちですよ。今日一日元気で過ごせるように。バスえっちでなくて朝え
っち」
”さあ脱いでぱっと脱いで”
再びイルカはベットに逆戻り。
すっきり元気なカカシ。
朝からスタミナのきれたイルカ。
張り切りすぎた恋人のおかげで、
今朝は遅刻しました。
もう、起きてあげません!
100113. |
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”今夜は久しぶりに皆でそろって夜の街にくりだそうぜ”
なんて、同僚達が盛り上がっていた。
「なあ、イルカも来るだろう?」
「ああ〜でも、俺今日風邪ひいてしまって」
何となく馬鹿騒ぎする気分じゃあなかった。
少し俺はぼんやりしていたかった。
”カカシさん、今どうしていますか?”
もう眠ってしまったかな?
夜、アパートの部屋で一人カップラーメンを食べて、それから窓を開けて空
を見ていた。
恋人のカカシが里外に任務に出て数日経過した。
何時もの事なのに、
今回はどうしてかカカシが遠征していくのが辛かった。
あの人の温かい腕でギュっと抱きしめてほしかった。
空にはまたたくお星様。
きらりと星が流れた。
イルカは目を閉じて手を合わせた。
そして願いごとをした。
「カカシさんに会いたい」
「カカシさんに会いたい」
「カカシさんに会いたい」
気がつくとカカシの事ばかり考えていた。
イルカの恋人は里では優秀な忍だった。
エリートで頭もきれてそのうえ格好よくて、自分にはすぎた相手だった。
なのに俺は今、不満をいだいていた。
里を代表するほどのカカシは多忙だった。
多忙な日々をおくる中でその間をぬうようイルカに会いにくる。
もっと一緒にいたいと思うのは。
贅沢な話なのだ。
「我儘だな俺は・・・」
イルカは立ち上がり台所から酒の瓶を持ってきた。
今夜は一人呑んで眠ってしまおう。
その頃。
はたけカカシは一人テントの中にいた。
味気ない食事をして今はごろんと横になっていた。
里に残した恋人のことを想う。
(寒いな)
そういえばもう2月も近い。
一年で一番寒い季節。
カカシが里に帰還するのは丁度バレンタインの時期だった。
2月14日のバレンタイン、今年は俺のほうからイルカ先生にチョコを贈ろ
う。
カカシは大切にしまってあるお守りをベストのポケットから出した。
緑色の天然石のネックレスは以前イルカ先生が里の不思議な店で購入した
ものだった。
持っているだけで、心が和む。
まるでイルカ先生のようだ。
一緒に居るだけでカカシはやすらいだ。
心許せるイルカは特別な存在だった。
チョコレート喜ぶかな?
イルカ先生、もう眠ってしまったかな?
カカシは荷物の中からハガキを出した。
イルカ先生におくる短い手紙を書いた。
寒い朝だ。
ベットからナカナカ起き出せなかった。
イルカはのたのたとリモコンで暖房のスイッチを入れた。
今朝は少し起きるのが遅くなってしまった。
余裕のない朝は簡単にコーンフレークですます。
カカシと二人の朝は張り切って作るから、炊きたてのご飯に味噌汁、卵焼き
に二人は賑やかに食事をする。
カカシが帰還するのは2月に入ってからだ。
まだ、1月先の話だった。
”頑張らなくっちゃ”
寂しがっていてばかりではダメだ。
イルカは忍服に着替えた。
シャキっとして、そうシャキっと。
数日後一枚のハガキが他里からイルカの元に届いた。
「こちらは寒いです。先生風邪なんかひいていない?
はやくあなたに会いたいです カカシ」
たった一言だったけれどイルカは嬉しかった。
イルカもハガキを買って返事を書いた。
カカシから貰ったハガキは大事に鞄の中にしまった。
イルカは何度もそれを読み返した。
毎日、朝が来てそして夜が来てまた朝になる。
イルカはイルカで多忙な日々を送っていた。
そして気がつくと2月になっていた。
”お帰りなさい”
早くあの人と会いたいな。
相変わらずイルカは夜星に願った。
後少しだ。
もうひとふんばりであの人に会えるんだ。
イルカはもらったハガキを取り出した。
何度もながめているからハガキは少し汚れてしまった。
カカシは任務先でその土地の限定チョコレートを手に入れた。
木の箱に入った少し高級なチョコだった。
今の予定では14日には里に帰れそうだ。
夜になると彼の事を想う。
寂しい想いはしていないか?
食べすぎでお腹を壊していないか?
カカシも同じくしてイルカから貰ったハガキを何度も読みかえしていた。
「俺は元気です。帰ったら一楽に連れていってください イルカ」
思わず口元がほころぶ。
寝る前に必ずカカシはそれを読んだ。
そのハガキを見るだけで、彼の笑顔が浮かぶ。
それだけで胸のあたりがぽかぽかとした。
もう少しで会えるんだ、俺達は。
カカシはハガキを手にしたまま眠った。
里に霙が降った寒い一日。
イルカは仕事帰りに里の洋菓子やに立ち寄った。
”やっと会える”
”カカシさんに会える”
時間にして一か月と少しだが、
恋する二人には長い試練だった。
アパートの自分の部屋にチョコとワインを飾り、
イルカはほろほろと涙をこぼした。
会えると思ったら全身の力がぬけた。
そして2月14日の夕方、カカシが里に帰還した。
イルカはそわそわと約束の場所、「一楽」に向かった。
”てくてくてく”
マイペースに背中を丸めたイルカの恋人は元気そうだった。
イルカは「一楽」の前だというのに、嬉しくてカカシに飛びついた。
「少し痩せましたか。イルカ先生?」
「はい、ダイエットしたんです」
二人は揃って味噌ラーメンを注文した。
身体があたたまる。
そしてハートもあたたまる。
「長かったですね」
イルカの部屋に帰りカカシはぽっりと言った。
「そうですね、会いたかった」
「こっちきて」
「はい」
カカシは力強くイルカの身体を抱きしめた。
イルカを確かめるように・・・・。
つよく。
つよく。
イルカを抱きしめた。
二人は互いを確かめるように求めあった。
時を忘れ日々を忘れて抱き合った。
次第にイルカの中で何かが動き始めた。
「もう15日になっちゃいましたね」
情事の後、カカシは持ち帰った他里のチョコレートを出した。
「これ、毎年イルカ先生からいただいているから、今年は俺の方からバレン
タイン」
「わあ〜〜」
珍しい木の箱に入った星の形のチョコレート。
イルカは何時だったか、流れ星に祈ったことを思い出した。
(カカシさんに会えたね)
「一日遅れましたね」
イルカも用意してあったワインをだした。
「ね、食べてみて」
「はい」
1つ星のチョコを口に入れた。
まろやかな甘さが口一杯に広がった。
「美味しい」
「よかった」
二人はチョコを食べて再びキスをした。
それは、
甘い、
甘い、
スイートキス。
恋はチョコよりも甘い。
また時が来たら彼は任務に出るだろう。
でもそれまでの時間しばらく大切な時をこの人と過ごしたい。
イルカはワインを呑む恋人の横顔を見てしばし安堵して胸を撫でおろした。
やっと会えたんだ。
あいたかった。
俺のカカシさん。
100104.
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そしてカカシの姿をしたサクモはどうしているかというと、
(小さい子供のおもりだな)
イルカちゃんはカカシの手をひいてどんどん歩いて行く。
「ねえ〜何処に行くのイルカちゃん」
カカシになりきってサクモは尋ねた。
「カカチのひみつのおへや」
「秘密の部屋?」
怪しい事をイルカちゃんは言った。
イルカに手をひかれ到着したのは古い寺の裏庭。
大きな木の下。
いかにも怪しい。
イルカはその木の下にある小さな穴に棒のようなものを差し込んだ。
まるで鍵のようだ。
”ゴオオオオ”
大木に小さな子供が入れるくらいの穴があいた。
どうやら入口らしい。
おそらくカカシが作り出したものだろう。
子どもにしては凄すぎる。
秘密の部屋か。
二人は穴に入り地下に階段で下りた。
そこには、まるでワンルームマンション並みの人が生活できる設備が整って
いた。
(カカシはこんなところで遊んでいるのか)
イルカちゃんはよく知っているのか、冷蔵庫からアイスを2個取ってきた。
ひとつカカシに(サクモ)渡す。
(アイス食べてゲームかやっぱり子供だな)
サクモは思った。
それにしてもイルカちゃんはよく食べるな。
ちょっと前にうみのさんと四人ですき焼きをした。
その時イルカは大人顔負けの食べっぷりだった。
黒くて元気のいい大きな瞳はうみのにそっくりだった。
(かわいいな〜)
サクモは口元がゆるんだ。
いかん、いかん相手は幼児。
「ね、カカチなにしてあそぶ?」
「何でもいいよ」
「じゃあ、おいしゃさんごっこ」
「えっ?!」
イルカはクローゼットから白衣を出してきた。
(まさか?)
白衣をカカシに着せる。
(マジですかあ)
カカシは普段小さなイルカちゃん相手にこんなことをしているのか?
ということは、イルカちゃんは患者さん?
怖いもの見たさでイルカのほうをサクモは見た。
イルカも白衣を着ていた。
「さあカカチせんせえ〜」
「あ・・・はい」
カカシの姿のサクモは汗がたれた。
「カカチかおあおい。おくすりのみましょう」
イルカはカルピスを作って持ってきた。
おもちゃの注射器にそれを入れる。
サクモは少しほっとした。
自分の想像していた、いかがわしいお医者さんごっこではなかった。
「はいど〜ぞ」
天使のような笑顔でイルカちゃんはサクモにそれを飲まそうとした。
「これ飲むの?」
カカシになったサクモは苦い顔をした。
甘いカルピスなんて俺が飲めるか。
”クスンクスン”
イルカちゃんは泣きだした。
「い、イルカちゃん、イルカちゃん〜〜」
サクモはわがままな子供に振り回されていた。
”もういいよ、飲めばいいんだろう”
さて、一方カカシとうみのさんは今頃どうしているのだろう。
二人は昼間から入浴中だった。
カカシはうみのさんに誘われ風呂の中。
勿論二人とも裸である。
(父さん何時もこんなことを)
うみのさんはサクモになったカカシの身体を丁寧に洗ってくれた。
「やっぱり広いお風呂はいいですね」
「はあ・・・」
「サクモさん、今日は二人で食べようと栄養たっぷりのお料理をお持ちしまし
た」
ちょっと生々しくうみのは笑った。
サクモの姿のカカシはどうしていいかわからず、コチコチに緊張していた。
うみのにされるまま全身を洗ってもらった。
二人は風呂上がり御揃いの浴衣を身に付けた。
うみのさんはとても美しかった。
何時も上であげている髪を今日はおろしていた。
きっとイルカちゃんも大人になったらこんな風に美しい人になるんだろう。
そしたら、おれの御嫁さんになってくれるかな?
今から約束しておかないと。
絶対結婚するんだ。
カカシは心に誓った。
「さあ、沢山食べて」
うみのさんは皿に山盛りのニンニクそして鰻、生卵を持ってサクモになった
カカシに差し出した。
「わあ〜」
ご馳走だ。
カカシは夢中で食べた。
そして、ぐらりとカカシの世界が回った。
”ぐらり”
サクモになったカカシは倒れた。
子供には刺激が強すぎる食べ物ばかりだった。
「いゃ〜〜〜」
うみのは焦った。
それにしても、今日のサクモは様子が変だ。
いきな赤くなったり、お風呂に入ってもじっとしていて、なにもしてこない。
倒れたサクモをうみのは支えた。
(あれ?)
(ちょっと待って)
うみのは考えた。
サクモをソファに寝かし冷たくしたタオルで頭を冷やす。
「サクモさん・・・・」
「うう〜〜〜」
「あなただれです?」
「え?」
”やっぱり”
うみのは腕を組んだ。
「君はカカシ君だね」
”ギクッ”
カカシは固まった。
ついに正体がばれた。
気がつくとサクモとイルカちゃんは遊び疲れて御昼寝をしていた。
寄り添って眠るこの子はあの人の大切な息子さん。
眠るイルカちゃんは愛らしい。
(はっ!)
思わずイルカちゃんにトキメク自分。
(こんな小さい子供にトキメキ?)
当時から、うみのイルカには魔性めいた魅力があったのでしようか。
トキメキながらもサクモは眠った。
”おじちゃん、サクモおじちゃん”
”ぴたぴた”
「ん?」
サクモは目を開けた。
イルカちゃんが泣きそうな顔でサクモを見降ろしている。
「どうしたのイルカちゃん?」
「カカチがいないの」
”くすん、くすん”
「カカチ?」
ここにいるのに?
サクモはそして気がついた。
俺は元に戻ったのだ。
「大丈夫あいつは今おつかいにいったよ」
「ほんとう?」
「ああ〜おうち帰ろう御父さんが待っているよ」
「うん」
サクモはイルカをおんぶした。
外は綺麗な茜色の空。
明日もいい天気だろう。
(しかしとんでもない休みだったな)
サクモはイルカを背負い家の方向にと歩いた。
(カカシたちはどうしているだろう?)
まさか、うみのさんとえっちなことしてないだろうな。
あいつ許さん。
ふと、反対方向からカカシをおぶったうみのさんの姿が見えた。
「サクモさん」
「うみのさん」
”「クスクス”
二人は顔を見合わせて笑った。
”もし、この先20年くらいたったら、カカシとイルカってどんな風になっている
んだろうね”
可愛い子供たちの寝顔を見ながら、サクモとうみのはビールで乾杯した。
「ああああ〜カカシ先生」
今夜のイルカは最高だった。
とても感じやすくって、
激しくって、
カカシは夢中でイルカを求めた。
”ねえ、見てサクモさん”
”ああ〜やっぱり俺たちの子供だな”
御彼岸に御墓まいりにも行かない息子たちの姿を窓からのぞき、天国から
帰ってきた父たちはふふっと二人の姿を見て笑った。
おまけ。
父さんにはずっと内緒にしていたことがある。
俺のフアーストキスの相手はイルカちゃんではなく、うみのさんだったこと
を。
カカシ。
080318.
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ポツポツと小雨が降っていた。
まだこの季節は雨が降ると肌寒い。
男は傘もささずに商店街を歩いていた。
長身にそしてまるで銀の糸のような輝く長い髪を後ろで束ねていた。
そして見るものすべての心を奪う美貌。
彼は彼に似合わないスーパーに立ち寄った。
惣菜のコーナーで弁当を2個購入した。
(そういえばあいつに土産をもらった)
昼間、息子の家庭教師のユビス先生からせんべえをもらった。
弁当をさげ自宅へ帰る。
大きな二階建の一軒家。
リビングでは彼の一人息子、今年5歳になる少年が何か夢中で読んでい
た。
「おいカカシ」
カカシは父から声をかけられはっと顔をあげた。
男に似て息子も美しい顔立ちをしていた。
男、すなわちカカシの父のはたけサクモ、は息子にちかより額に手をあて
た。
「赤い顔して熱でもあるのか?」
思わずカカシは手にしていた紙を落とした。
それは本ではない手紙のようなもの。
「やるね、ラブレターか?」
サクモはからかうように言った。
「ちがう」
カカシは慌てて手紙を拾った。
恥ずかしそうにうつむく。
これは昨日あの子から送られてきた。
手紙といっても半分はクレヨンで描かれた落書きだ。
「おい飯にするぞ」
「はい、父さん」
カカシはやっと立ち上がりキッチンへ入った。
そしてインスタントの味噌汁を作った。
その間サクモはシャワーを浴びた。
任務で汚れた身体をさっぱりと洗い流す。
明日は久しぶりの非番。
そして大切なあの人がここへ来る。
サクモはうっとりとあの人の事を考えた。
清らかでいてそしてその中に潜むエロチックな二面性を持つあの人。
あの人と出逢ってサクモの生活は色の無いモノクロから明るいフルカラーへ
と変わっていった。
「うみのさん・・・・」
ふと自分の下半身が元気になった事にきずいた。
二人は運命のように出逢い恋におちた。
まるで10代の若者のようにサクモは燃え上がった。
妻のいるあの人とはいけない関係。
後ろめたい大人の恋愛。
サクモは風呂からあがりカカシと味気ない夕食をとった。
思い出したように包みを鞄から出す。
「カカシ、ユビス先生からこれをお前に」
「わあ〜〜」
カカシはお菓子を嬉しそうに受け取った。
優秀な5歳の息子もまだそんなところは子供だった。
エビのせんべえ。
”パリパリパリ”
いい音をたててカカシは夢中で食べている。
ビールのつまみになるな、
サクモも手をのばした。
春先の静かな夜がふけていく。
”チチチチ”1
カカシは窓の外の小鳥のさえずりで目覚めた。
何時も一人で起きて朝食を作るのが日課だった。
母親のいないちいさなカカシはしっかり者だった。
「あれ?」
なんだか、身体が重いような?
それに今朝はやけにベットが狭い。
カカシは起き上がりトイレにむかう。
”わあああああああ〜〜〜””
”何事?”
2階からカカシの悲鳴が聞こえた。
サクモは飛び起きた。
悲鳴はトイレからである。
サクモは階段に右足をかけた。
「え?」
小さな足
それに家がやけに大きい。
「おいカカシ」
「わ〜〜〜〜〜〜!!」
そしてトイレから出てきたのはカカシではなくサクモだった。
パジャマ姿のまま泣きそうな顔をしていた。
どうして俺が?
「トイレに入ったらあそこが大きくてもじゃもじゃ毛がはえていて〜〜」
「ええ?」
サクモははっとした。
そして洗面台をのぞき、
息をのむ。
そこには自分ではなく息子のカカシが映っていたのだ。
「わあ〜〜〜〜〜〜」
親子そろってパニックにおちた。
だが二人とももともとクールな性格なので5分後にはシリアスな顔にもどって
いた。
「父さん俺に何したの?」
大人になったカカシガ言う。
「馬鹿いえ、お前こそ」
小さくカカシになったサクモが言い返す。
「とにかく元に戻すぞ」
サクモとカカシは変化の術を使った。
”どろん”
”どろん”
”どろん”
しかし何度変化しても姿を変えることはできなかった。
「腹へったカカシ」
「もう〜わかったよ」
サクモの姿のカカシは下の部屋に降りていった。
それにしてもカカシの奴。
トイレで俺のモノを見てびびるとは、全く子供だな。
大きくて当然なのに。
サクモもカカシの後に続いた。
幸い今日は非番。
「ああっ!」
そうだ、今日はあの人が家に。
サクモは大事な約束を思い出した。
キュートで素敵なうみのさんが来るんだ。
サクモは頭をかかえた。
一方、カカシはカカシで悩む。
昼間イルカちゃんと遊ぶ約束をしていた。
イルカちゃんはカカシの最も大切な御友達だ。
カカシはそれを楽しみにしていたのだ。
今日は二人であそこに行く。
でも、父さんの姿だったら、
イルカちゃんに嫌われてしまうかもしれない。
”もんもんもん”
親子はトーストをかじりながら朝から苦悩した。
そして、二人はお互いをの代理を務めることに決めた。
「父さん、くれぐれも俺の姿でタバコとか吸わないでよ」
「そういうお前こそ、うみのさんにべったり甘えるなよ」
そんな訳で親子は反対になってしまったのだ。
ぽかぽかと昨日の雨が嘘のようにいい天気だった。
今日はうみのさんがお客様でカカシの家にやってくるのだ。
カカシもうみのさんが好きだった。
明るくて優しくてそしてイルカちゃんに似ている。
うみのさんと今日はゲームして遊ぼうかな?
カカシはソファにころんとなった。
普段広いソファもこの身体では狭い。
カカシはうとうとと眠ってしまった。
その頃うみのは、めかしこみ沢山の差し入れを手に持ちはたけ家の玄関の
前に立っていた。
サクモから渡されている合鍵で中に入る。
「サクモさん」
二人きりで会うのは久しぶりだ。
子供たちに隠れて父たちはデートを重ねていた。
「いないの?」
ソファにサクモが寝ている。
「うふふ」
うみのは艶っぽく笑った。
そして眠る美しいサクモにぶちゅう〜っと強烈なキスをした。
むにゅむにゅ。
柔らかいものがカカシの唇に触れた。
カカシは飛び起きた。
「わ〜〜〜〜〜〜!!」
思わず叫びそうになる。
ダメだ今、俺は父さんなのだ。
「どうかしました?」
イルカちゃんにそっくりな黒い大きな瞳のうみのさんがにこにこ笑っていた。
「うみのさん」
「逢いたかった!!」
うみのは大胆にもサクモに飛びついてきた。
(ああ〜〜いけない)
”ぽとり”
鼻から赤い液体がたれた。
子どものカカシには大人の恋は刺激が強すぎたようだ。
★後半は来週予定です。
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”そばに、・・・俺のそばにいてくれますか?”
イルカは飲みかけのお酒のコップをテーブルの上に置いて顔をあげた。
目の前には真剣なカカシの顔。
「あのう・・・それは、俺とカカシ先生が一緒に生活するという意味のものでし
ょうか?」
「無理にとは言いません」
”あなたが好きです、イルカ先生”
イルカはクスリと笑った。
「少しだけ時間をください」
その日はそこで終わった。
外は雨模様。
イルカはアパートの窓を開け灰色の街を見ていた。
(カカシ先生)
カカシから、そばにいてほしいと言われて10日たった。
現在カカシは任務先。
あなたの事が好き、それはイルカもカカシと同様だった。
やはり彼の事を好きだから、しかしともに生活するとなると。
「ん?」
イルカは窓から顔を出した。
ベランダに見覚えのある犬が口にバラの花をくわえていた。
忍犬だ。
イルカは花を受け取った。
花には手紙がくくりつけてあった。
”イルカ先生、もうすぐ帰れます。
先生の好きなお菓子も買いました”
”ふふふ”
イルカは笑った。
忍犬の頭をなでる。
「ちょっと待って、今返事書くから」
”カカシ先生へ
あなたの帰りを待っています。
それまでに荷物を整理しておきます
イルカ”
それは先日の返事。
イルカは赤い花を部屋に飾った。
情熱的なんだね、カカシ先生って。
付き合い始めたころは二人は男どうしだからとか、上忍と中忍で階級が違う
ことをイルカはネガテイブにとらえていた。
実際ははたけカカシはごく普通の青年だった。
「うまくやっていけるかな?」
ぽっぽっと降る雨をみながら、
これから始まる新生活に思いをよせてみる。
カカシ先生が帰ってきたらまず、なんて言おう。
”俺をそばにいさせてください”
恋は甘く、
恋はせつなく。
本当に相手を想うがゆえに、二つ返事はしたくなかった。
イルカは立ち上がった。
そして荷物を作りはじめた。
準備OK?
090507.
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