STORY.PT2.

2010年10月08日
奇跡の森 前編
その森には奇跡が起きるという・・・・・。





突然、深夜イルカは呼吸困難に襲われた。

動悸が激しく、額から大量の汗が吹き出した。


いったい、自分に何事がおきたのかさえ、理解できない。


苦しくてくるしくて、声すらだせない。


ようやく、のろのろと隣に眠っている恋人の身体に触れる。




「イルカせんせい?」


身体に触れられカカシは目が覚めた。


カカシは息を飲む。


恋人がベットの上で苦しんでいるのだ。




病は突然に人間に襲ってくる。

何もまえぶれもなく忍びよってくるものだ。






カカシはイルカの身体を抱きあげ、自空間忍術で木ノ葉病院に移動した。



深夜でも木ノ葉病院には交代で医師が勤務していた。

イルカはすぐに治療室に移された。






緊急入院が決まった。




それは突然すぎて、カカシでさえも動揺を隠せなかった。







3日後、カカシは担当医と面会した。


イルカには家族はいない、カカシが彼の家族だからだ。


眼鏡をかけた、細身の医師は、イルカの病について説明を始めた。






カカシの中で時間が止まった。


何を聞いたのかすぐには、頭が理解できなかった。



なにもかもが、音のない白黒の世界に見えた。




イルカは肺を患っている。


余命は後半年。









悲しみと怒りがこみ上げてくる。

カカシは病院の自動販売機で紙コップのコーヒーを買い、がぶがぶと飲ん
だ。

冷静ではいられない。

コーヒーの味すらわからない。

やりきれない、怒りに紙コップを握りつぶした。




額の汗を拭う。





”俺はどうすればいいのだろう”







うみのイルカと出逢い、恋人同士になって、もうすぐ1年。



現在では二人は同棲生活をおくっている。




にこやかで、優しいイルカはカカシを常に笑顔で支えてくれた。



彼がそばに居てくれるだけで、カカシの生活は明るく楽しいものと変化した。



どんなものにもかえがたい、

かけがえのない恋人、それがイルカなのだ。




その彼が余命半年なんて、そんな馬鹿な事があってはならないのだ。





「カカシ・・・せんせい・・・」



一人、病室のベットの枕元に立つカカシに小さな声でイルカが声をかけた。

カカシは現実に戻った。








「気がつかれましたか?」



カカシは彼の手を握った。

少しだけ手が小さく感じた。



「すみません、お忙しいのに・・・おれ・・・・」

「気にしないでください。綱手様からお休みをいただきましたから」

「それは?」


休みをもらうほどの事なのだろうか?

イルカは言葉にはださなかったが、心の中を不安が襲った。



カカシは笑顔を作る。





本当は力いっぱいイルカの身体を抱きしめたかった。


その前に、カカシは自らの言葉で、イルカに病の話を伝えなければならな
い。



酷な事だが、

本人の為にも隠しておけない。







もし、自分が後、半年の命だとしたら・・・・。



うみのイルカに出逢う前の俺ならば、自然と受け入れる事が出来た。


でも、今は違う、大切な守るべき、生涯の恋人ができたのだ。


そのイルカを残して、死ぬわけにはいかない。





おそらく、イルカもカカシと同じように思うのだろうか?










うみのイルカは、静かだった。



話をカカシから、告げられ、余命を知っても彼は表情をピクリとも動かさな
い。



「イルカ先生、俺は最後まで諦めません。・・・俺に出来るすべての力を使っ
てもあなたを必ず・・・守ります」


カカシはベットに身体を横たわらせ、人形のようにじっとしているイルカの手
をしっかり、握る。

その手は小さく震えていた。












その夜、


はたけカカシは火影である、綱手の元を訪ねた。



天才医療忍者の綱手なら何か策があるかもしれない。



イルカの病の件も報告せねばならない。



「イルカが・・・・そんな事に・・・・」


「はい。後半年と・・・・」


カカシの声は自分では気がつかないが、震えていた。



カカシは泣けない。

それは、若くして暗部という特殊な環境におかれた彼には泣くという感情は
切り捨てなければならなかった。



それでも、もし涙が流れるのなら、


今、ここで思い切り泣けたらどんだけよかっただろう。





「カカシ、イルカにはサクラをなるべく治療に通わす」

「ありがとうございます」


「三代目が、昔、木ノ葉の里から西の方角にある大国の「奇跡の森」という
話をしていた。その森は奇跡をおこす」

「奇跡の森?」

「ああ〜本当かは、わからないが、その森はどんな難病でも癒してしまう力
があるという」



「詳しく教えてください」

カカシは乗り出した。



どんな方法だって構わない。


イルカを救いたい。




「その森については、現在知っているとしたら、猿飛アスマぐらいだろう」






カカシはその足でアスマの部屋を訪ねた。


時刻は遅く、連絡もなしで、ドアをたたく迷惑な客はカカシだった。

アスマはパジャマ姿だ。

ドアを開き、カカシの青い顔を見て、緊急だと見てとれた。


「すまない。こんな時間に起こしてしまって」

「まあいいよ。・・・・座ってな、その話は昔俺も三代目から聞いた覚えがあ
る・・・少し待っていてくれ」





アスマは奥の部屋に消えた。


その部屋には彼の父である三代目の残したものも保管されていた。



アスマは三代目が書き残した、古びたノートの束を出した。


そのノートの中にその命の森の文面をみつけた。


探すのには、3時間ほどかかってしまった。






カカシにはほんの少しだけの希望が見えた。











イルカは2週間入院した後、現在は自宅で一人静養をしていた。


以前のように食欲はなく、あの柔らかな笑顔は何時しか消えていた。





それでもカカシが帰宅すると彼は笑い顔を作った。



その笑顔は本当は悲しいものだ。

カカシも笑顔をかえす。







あなたが居てくれて、俺がどれだけ支えられた事か、


今、痛いほどわかる。


あなたが、俺にとってはこの世界のすべてだから。



そのあなたを失う事は同時に自分も失うのと同じだ。








カカシはベストを脱いだ。



急いで帰宅したので、汗をかいていた。




全身が暑い。



シャワーを浴たいが、その前に、



「イルカ先生、商店街でたこ焼き買いました。好きでしょ」

「はい・・・・ありがとう」



少しの間なのに、イルカは酷くやつれていた。




「ねえ、イルカ先生、明日、ナルトをここに呼んでもいいですか?」

カカシは明るい声で務めて言った。



「ナルト・・・」


イルカは複雑そうな瞳をした。



(ナルトに会いたい)







イルカは心から思った。




それでも今の衰弱した自分を見られるのは抵抗があった。




「先生がお嫌なら断ります」

「あの、ナルトに病気の事は?」



「知りませんよ。・・・受付にも教室にも先生の姿がなければ、ナルトだって心
配するでしょ」


「ナルト・・・・」



イルカにとっては、カカシと同様にナルトは自分の家族のような存在だった。



「ナルトには先生は今、体調不良でしばらく静養する必要があるとだけ、伝
えてあります」

「会いたいです」


イルカの瞳は濡れていた。






病とはその本人一人にしかわからない、孤独な闘いである。



イルカは少し気持ちが弱くなっていた。





また、元のように、アカデミーの教壇に立ったり、木ノ葉の仲間たちと会いた
い。





カカシは任務で外出する事の方が多い、




イルカは一人で部屋で何もできず、苦しい時間を過ごしていた。




それでも、夜になれば彼が帰って来るのだ。




今は動けないので、掃除もろくに出来ていない。


食事は彼が戻ってきてから、消化のいいものを作ってくれた。




一緒に居てくれているだけで、イルカには十分だった。


それ以上は望まない。



世界で一番大好きな恋人。




ベットサイドに今朝、カカシがイルカの為に林檎を用意してくれていた。


イルカは気力を出し、一口食べたが、口の中がまずく、美味しいとは思えな
かった。


★後編は来週予定をしております。

2010年10月06日
熱視線
「さあ〜今日もビシバシ行くぞお〜〜!」



元気に彼は教室の扉を開く。


ざわざわと騒がしかった教室が静かにかわる。



明るくて元気なうみのイルカ先生。


自慢のしっぽをフリフリ今日も授業!!




(なんだろう?)


イルカは時々、何処からか誰かにじっと見られるような気がする。

最近は頻繁に・・。


熱い視線を感じる。


生徒ではない。


(怖い)














教室の反対側の部屋で、一人の老人と青年がひそひそ小声で争っていた。



一人は三代目火影、猿飛ヒルゼン。

もう一人は、最近うずまきナルトの担当上忍となった、はたけカカシ。




覗き男2名。




「ねえ〜三代目もう〜代わってくざさいよ〜」

「嫌じゃね」

「だって、もう〜〜授業終わってしまいますよお〜ねえ〜若いギャル紹介しま
すから」

「むふふ・・・カカシ、そんなにイルカが好きなら、ワシを倒してみろ」

「そういうわけには〜〜」


相手は三代目、他の誰かなら、とっくに「雷切」で倒している。




「わかりました・・・じゃあ〜来週は俺の番ですよ」

「おお〜ギャルをヨロシクナ」




もう〜二人共好きなんだから。




覗きが趣味なのは、自来也だけではなかった。


三代目もはたけカカシも・・・。


受け継がれていく、意志。



101003.


「担当上忍はたけカカシ」を観て。


2010年10月02日
しめしめ 後編
「悪いがイタチ、俺は今、プライベートなんだ、お前の相手をしている暇はな
い」

クールにカカシは言って見せた。

この男の身体には興味はないのだ。

相変わらずイタチはアソコをぶらぶらさせている。
「ほお、そんなにいちご牛乳が羨ましいのか、なら、特別に売ってやってもい
い」
「イルカ先生、待っていてください!」

お互い全く台詞がかみ合っていない。




カカシは変態は無視して衣類を脱いだ。
忍服のベストを脱いで上下の服を籠に入れた。
最後にパンツに手をかけた。
視線を感じ振り返る。

うちはイタチが、まじまじとカカシの身体を何か言いたげな目で眺めているの
だ。
「なによ、なんか文句あるの?」
「何故、顔の覆面をとらないのだ?」

「どうでもいいでしょ!」

「いや、普通はとるだろう?」

「五月蠅いわね!」

カカシはパンツを下ろした。

イタチに見られるのは不本意だが、一刻も早く風呂場に入る為だ。

「いや〜〜」
イタチは恥じらって顔を手でおおった。

自分はアソコをぶらつかせているくせに。

(変態め!)


変態のイタチをスルーして、イルカが待つ(イルカ先生は待っているかは別
だ)浴室へとカカシはダイブするように、風呂場に飛びこんだ。






愛しいイルカ先生は広い大浴場の中にある、泡のでる小さなスペースで、う
っとりと目を細めていた。



「イルカ先生」

「えっ?カカシさんどうして?」

裸に顔に覆面だけなんて、そんな漫画が昔あった、イルカは怪しげなカカシ
を見て少しひいた。

「一日に2度もお会いするとは、やはりふたりは赤い糸で結ばれているので
すね」

「あかいたこ?」

わけのわからない事を云いながらもカカシはちゃっかりイルカの横に入浴し
ている。

イルカは髪の毛をシャンプーしたのだろう。

甘い香りが、気持ちよい。

「イルカ先生、お背中をお流しします」

「えっ、それは・・・困ります」

イルカは顔を赤くして、困惑した。

上忍のはたけカカシに背中を洗ってもらうなんて、もしそんな現場を誰かに
目撃されたら、大変だ。

「もう、遠慮しないでくださいよ〜俺と先生の仲でしょ」

「でも〜」

「その代わり、俺も先生のお背中を流します、これならいいですよね」

はあ・・・。


カカシは嬉しい展開、イルカには少々困った展開になった。



カカシはイルカを先に座らせた。

細身の背中には傷がある。

それさえも、萌えるのだ。

(たまらない〜)

その時!!


「みなさあ〜〜〜ん、大変です〜〜火事ですよお〜〜!!」


平和な銭湯の男風呂に、面をかぶったお調子者が現われた。

黒いロングの衣装は暁のものだ。

トビが銭湯を走りまわっていた。

「火事?!」
「いや〜〜!!」


こんな場面で火事だなんて!!


ざわざわ。


銭湯の客はパニックにおちた。



裸のまま客たちは出口に走った。


その中にカカシとイルカも、大事な部分を手で隠しながら、出口に避難して
いた。





その一部始終をVTRに収録している人物がいた。


その人物は暁のリーダーペイン。

ペインは自分が大好きな木ノ葉のかわいい中忍教師がこの暁の湯に、入る
ように、イルカのアパートの風呂を壊した。

思惑どうり、イルカは銭湯に来たのだ。


イルカファンの彼は、ファンクラブに入っている。

ただ、それはトビから聞いた話なので、本当のところは、わからない。

男風呂の盗撮は彼の楽しみだった。

「いやあ〜燃えてますねえ〜たいへん!たいへん!」


銭湯から黒煙があがるなか、トビは走りまわる。



「こらあ〜!トビ!!おめえも消すの手伝え!!」

燃え上がる「暁の湯」でディダラと鬼鮫が消火活動をしていた。

とんだ大惨事だ。







イルカはぶるぶると裸で震えていた。


「だいじょうぶですか?」

鼻をふくらませ、カカシは、このチャンスをのがしてはならんと、心の隅で思
っていた。


「カカシさん、こわかったですう」

イルカはぽろりと涙を流した。

「もう大丈夫、俺がいます。さあ〜俺のこの胸にどんと、来てください!!」


「カカシさん!」



イルカは頼もしいカカシの胸に飛び込んだ。




カカシは、しめしめと、彼を抱きしめた。




二人は炎上する「暁の湯」の前で大勢のギャラリーに囲まれながらもしっか
りと、抱き合っていた。



しめしめ。









翌朝。






カカシはテレビをつけた。


テレビコノハのニュース番組だ。

燃え上がる銭湯の前で裸で抱き合うカカシとイルカの映像が流れていた。



二人の姿が里中にオンエアーされてしまった。



カカシはテレビの前で、声もでなかった。


アナウンサーの若い男性が、お面の男、トビにインタビューしている。

「もう〜とんでもないですよね〜カカシさんいいところ一人で持っていくし、イ
タチさんは逃げ遅れたみたいだし〜

あははは」

楽しそうに彼は語る。


その時、トビの制服から、ぽろりと、マッチの箱が落ちた。



あの火事は放火だったようだ。


テレビの映像が乱れ、放送は中断された。





カカシはテレビを消して、寝室に入った。

「昨夜はよくお休みできましたか?」

「はい、御蔭様で」



イルカはカカシの部屋のベットから身体を起こした。




昨夜のあの火事の後、一人になりたくなくて、イルカはカカシの部屋に泊め
てもらったのだ。



そういえば、持ち帰りの仕事を忘れていた。


頼もしいカカシに連れられて、イルカは彼の部屋へ。

着る服もないままイルカはカカシの世話になった。

同じベットで眠ってしまったのだ。



カカシとイルカのエキサイトな一夜だった。



しめしめ。




これで、俺の高感度も120%UP!!


それにニュースには、二人が抱き合う姿まで、流れているのだ。

これは、決定的、スクープだ。


絶対、イルカ先生と恋人になってやる。


嬉しさに鼻をふくらませ、カカシは味噌汁を作った。


091123.
2010年09月24日
しめしめ 前編
夕刻のコノハマートは買い物客で混雑していた。


背中を丸めて少しオトボケた木ノ葉の上忍、はたけカカシ(独身)はこのスー
パに牛乳と卵を買いにきた。

この日はこれが、特売で同じようにそれを手にする買い物客が目立つ。

人間の心理は面白い、特売といわれたら、それほど普段より安くないのに、
購買意欲を持ってしまう、俺もその中の一人だけれど・・・。


籠を手にふらふらと店内を歩いていたカカシは、ゴクリと唾を呑みこんだ。


しっぽをふりふりと、買い物をするあの人を発見したのだ。

早速、出来るだけ自然な笑みを浮かべ彼に近寄る。

「イルカ先生!お買い物ですか?」

「あ、カカシさんも?」

にこにことカカシを見て微笑みを浮かべる彼は、めんこかった。
彼も籠にカカシと同じようなものを入れていた。

彼はカカシが恋する、「夢の恋人」うみのイルカ、中忍で、職業はアカデミー
の教員だ。

黒く澄んだ瞳は、近くであらためて見ると、吸い込まれそうだ。

「イルカ先生、ここで逢ったのは、二人の運命です!おお!なんて素晴らし
い運命だ!、これから二人きりで何処か静かで、素敵なレストランでディナ
ーでも」

スーパーで会っただけなのに・・・。


カカシは誘いをかけた。


にっこりとイルカは微笑む。

「ごめんなさい。・・・・今夜は早く帰りたくて、また次回誘ってください」



”そうですか、残念です”


レジの方にスタスタとイルカは逃げるように去っていった。


”あ〜〜あ”

イルカ先生、行ってしまったよ”


カカシは彼の後姿を目で追った。







二人が出逢ったのは、ある任務だった。

その時、カカシは部隊長だった、その部隊の中にうみのイルカはいた。た
だ、カカシとは別行動をとらせてしまい、

彼は任務で傷をおおい、その後教員となる。


初めて見た、イルカはきらきらと輝いていた。


カカシはズボンをおろしてしまいたい衝動に襲われた。




その後、時が経過して、カカシはナルトの担当上忍となる。
その事もあり、時々二人はプライベートで会う。





カカシは毎日、ネットの「イルカ日記」というブログを読んだり、密かに彼の写
真を集めた。


すなわち、彼にとっては、恋なのだ。

一般的に見ると、少しストーカーかもしれない。



気がつくとイルカにハマっていた。











スタスタと憧れのイルカ先生は買い物袋を手に店を出た。



カカシは手の籠をその場に放置して彼の後を追った。





やはりその行為はストーカーのようだった。











「あ〜〜〜あ」

本日もよく働いた、頑張ったね、俺。


イルカは今夜のうちに仕上げないとならない、持ち帰りの仕事を抱えてい
た。


冷蔵庫に購入した牛乳と卵をしまい、リビングテーブルには、カップラーメ
ン。

今夜はこれですませよう。

テーブルには、資料の山。



そういえば、カカシさんには少し悪かったな。


ま、仕方ないよな。

夕飯の前に入浴を済ませないとならない。

イルカは立ち上がった。



浴室に入り、お湯をバスタブに、と思った時、彼は恐ろしい現実を見た。


風呂場が何者かにより壊されていた。


「いゃ〜〜〜〜」



大好きなお風呂に入れないなんて、


通報する気持ちより、入れない現実の方が酷だ。



イルカにとって、ご飯と同じくらい大切なバスタイム。





風呂抜きの生活などあってはならないのだ!




「そうだ、銭湯に行こう!」



イルカは素早くタオルやシャンプーを袋に詰め、部屋を出た。







一方、


カカシは刑事のように、イルカのアパートの辺りをうろうろしていた。


断られた。



あきらめきれないで、来てしまったの、俺。






カカシは2階の階段から駆け降りるイルカの姿を見た。





(どうしたのだろう?)



手には布の袋。



カカシも当然後を追った。







イルカは少し額ににじんだ汗をハンドタオルでぬぐった。




商店街の方向に迷わず歩く。


同僚から口コミで聞いた、最近出来たばかりの「暁の湯」を探す。



商店街のはずれに、そこそこ綺麗な建物を見つけた。


「あった」


イルカはその銭湯に入った。








(イルカ先生が銭湯だなんて?)



カカシは風呂屋の前で、唾を飲みこんだ。




あの麗しすぎる彼が一人で銭湯に、



カカシにとっては一大事だ。



心の隅でカカシは考える。


(俺も一緒に入って、彼の背中を流してあげたい)



「おおおっ!」


想像しただけで、カカシは、舞い上がった。

こんなチャンスを逃すものか!

彼のなやましい肢体を想像しながら、カカシもその建物に消えた。









「暁の湯」



お風呂の入り口は小さな受付がある。



青い顔の大柄な男は黒のロングコートのような衣装。コートには雲のマー
ク。



カカシは一瞬、フリーズした。



それは、悪の組織「暁」の干柿鬼鮫だ。


相手も少しだけ、フリーズしたが、作り笑いを浮かべた。

営業スマイル。


「大人1名様、いらっしゃいませ」





カカシは値段を確認して小銭を彼に手渡した。

タオルだけは、購入するはめになった。




ここ「暁の湯」は暁がサイドビジネス(たんに資金稼ぎ)として経営していた。




鬼鮫は、この店で週に2回、働いていた。






カカシはイルカを追うのに夢中でもう、鬼鮫はどうでもよかった。






脱衣所の扉を開く。



もうイルカ先生は入ったのだろうか?




ロッカーや、扇風機のある脱衣所をうろうろしていると、更なる、フリーズが
カカシを襲う。



黒髪、すらりとした、美貌の彼が全裸で腰に手をそえたスタイルで、瓶牛乳
を飲んでいた。


「お、おまえは・・・」


「はたけカカシ、久しぶりだな」



苺色の牛乳を飲んでいた男はカカシの姿を上から下まで、舐めるように見
た。



「うちはイタチ、こんなところで」



「いちご牛乳は旨い。羨ましかろう」


彼は陶酔した顔でそれを飲み、微笑んだ。
よほど裸体に自信があると見た。




カカシの視線は彼の、男根についいってしまう、

ふん、俺の方が立派だ!

カカシは腹の中でつぶやいた。



★後編は来週を予定しております★

2010年09月17日
ラブアフェア
まわる。

まわる。


世界がぐるりと回転する。




気がつくとはたけカカシは「木ノ葉病院」のベットに横たわっていた。



戦闘後に例のチャクラぎれを起こした。

彼は病院に運ばれた。






「気がつきましたね」


”カカシ先生”


天使のような優しい微笑みを浮かべて、カカシの恋人はカカシの顔を覗き込
んだ。





五代目の好意で、イルカはカカシの看護をしていた。


「もう〜心配しました」

「大丈夫、ただのチャクラぎれだから、休めばすぐ元気になります」


「ならいいんですけど」


二人はお互い見つめ合う。


甘いムードは味気ない病室さえ楽園に変わってしまう。

カカシの恋人には不思議な力がある。

癒しの力。










カカシは医師より、一週間の休養をとるよう命じられた。


イルカも休みを許可され、カカシの世話が出来る。



ある意味こんなラッキーな事はない。




これで、存分にイルカ先生に甘えられるのだ。







翌日、カカシはイルカと共に退院して自宅に帰ってきた。



今回は少し長めの任務だったが自分の不在の間はイルカが掃除をしてくれ
ていて、室内は綺麗だった。






イルカはカカシを寝かせ買い物に出た。


当分の二人の食料を買いだす為、

冷蔵庫にはろくな食材がなかった。






久しぶりに再会したイルカは何時にも増して、色っぽく見ているだけで、じゅ
りとヨダレが出そうだ。





早く夜になり、いや、その前でもいいから、彼と肌を重ねあいたい。



それはカカシの本音だ。


頭の中には、色々なえろ計画と妄想でいっぱいだ。







やがて沢山の荷物を両手にイルカが帰ってきた。

イルカは買い込んだ食材を整理している。



カカシはベットから抜け出し、イルカの背後に立つ。



「どうかしましたか?」

「せんせえ〜〜」

背中からイルカの華奢な身体を抱きしめる。



「もう〜病人が何しているんです?こんな昼間から、駄目です」


冷たくイルカはカカシを引きはがす。




「いいでしょう?半月、半月もあなたと離れていたんです、ねえ〜半月分を俺
はこの休暇で取り戻したいんです」

「あんた、俺を殺すつもりですか?」




「もう〜解りましたよ、大人しく寝てます・・・でもその前にご飯」


「はいはい」





口では冷たく言ってもイルカも内心では、まんざらでなかった。



はなれ、ばなれの毎日は寂しいものだった。



それに一週間も、カカシと二人きりだなんて、こんなラグジュアリーな時間は
なかなか味わえないだろう。





二人は互いにイチャイチャする事を頭で想像していた。







柔らかめに炊いた白米に茄子の味噌汁。と秋刀魚の塩焼き。

「イルカ先生〜ああんしてえ」

「全く甘えん坊ですね。ナルト達に見せたいですねえ」


文句を言いながらもイルカは笑っている。





イルカは秋刀魚を箸でほぐし、彼の口にと運ぶ。



好きな相手を自分の手で、世話するのは、楽しいものだ。

甘い空気に部屋がピンク色に見えた、勿論錯覚だが・・・。





「そろそろ8時ですね。テレビはまた明日にしてお休みください」


「えっ?まだ8時でしょ?」

カカシは不満そうに口を尖らせて見せた。


「そうです。・・・・1日も早く回復していただきませんと、俺が火影様に叱られ
てしまいます」




そうだ、イルカはカカシを看護する為に休みを許されたのだ。




ちゃんと、通常のはたけカカシに復帰せねばならない。

復活するぞ。

カカシは決意した。


「眠れないです」


「もう〜我儘ですね、半月分の我儘ですか・・・・・仕方ないですね、眠れない
なら、俺がお話をしてあげますね」

「お話?どんな?」
「怪談です」
「駄目です〜〜それだけは」

冗談ではない、怪談ほど怖い物はない。


「なんかリクエストは?」

「最近、イルカ先生は何をしていたんです。俺の不在の間」


「俺はイケイケにイケメン忍者に囲まれ、毎晩デート三昧です」

「なに〜〜〜〜〜?」


カカシは瞳を大きく開いた。


「嘘です。・・・一人で激安スーパーに行ったり、銭湯に通っていました」



「まあ、随分と楽しそうですね」


自分が留守の間恋人は楽しそうなのが、少しクヤシかった。






「それで、激安スーパーでワインを買いました。カカシ先生が帰還したらお祝
いに2人で呑みたいから」


「それはいい!是非!」
「是非って、今?」


「はい、任務の間はお酒なんか呑めませんから、それに適度なアルコール
は健康にもいいです」

カカシは健康という言葉を強調した。

「そうですね、少しならば・・・」



イルカはワインとグラスを用意した。





恋人と過ごしている、そんな素敵な夜になりそうだ。




ワインはロゼで口当たりがよかった。



二人はぐいぐいと呑み過ぎてしまった。






「ねええ〜〜せんせえ〜脱いでえ」


「脱ぐ?」


赤い顔でイルカは首をかしげた。

酔いがまわってきた。



「イルカ先生のナイスなボディが見たい」


「ででも〜〜〜」



カカシはにぱっと笑って見せた。


「大丈夫、一人で処理くらいできますから」

とんでもない事を彼は口にした。




「駄目です。、一人でなんて、駄目」





イルカは当惑した。


恋人に不自由な思いはさせられない。


イルカは息を吐いた。


身につけていた衣類を脱ぎ捨てる。



均整のとれた美しい身体にカカシは飛びかかった。













存分に、会えなかった半月を取りかえすように二人はお互いに身体をぶつ
け合い、求めあう。

まるで、行為はサカリのついた獣のように、


抱き合った。




抱いて抱かれて、二人は寝食も忘れ行為に溺れた。


いったい今が何日だとか何時なのかですら、もう二人の頭からは除外され、
あるのはお互いの、欲望のみだろう。

愚かなほどに抱き合いたい。



一週間後。

イルカはついにダウンした。




カカシはバージョンアップしてイルカとは反対に元気になった。





イルカの事は綱手様には看病疲れと報告するつもりだ。









カカシは爽快な気分で外出する為にシャワーを浴びた。

五代目に顔をみせなければならない。

熱いシャワーを気持ちよく浴びて忍服に着替えた。




「あれ?」

少し服が大きくなったような?

まさかね。






カカシは鏡で自分の顔を見て驚愕した。




彼の顔の頬はコケ別人のごとく瘠せていた。







チャクラは回復したというのに。





(ちょっとやりすぎたかな?)





カカシは力つきて、眠る恋人を起こさず、部屋を後にした。







五代目火影である綱手は報告に現われたカカシを見て、目を疑った。



一週間静養したはずだが・・・。


「カカシ、一週間も休んで何だその顔は?」


カカシは明るく笑う。

瞳だけはやけに輝いていた。



「はい、いい機会ですから、ダイエットしてみました」



全く、平然と彼は答えた。


「ど、どんなダイエットだ、バカモノ!!!」


”ズドオオン”



”どうせイルカとイチャイチャ過ごしたのだ、このエロ写輪眼めえ”




綱手は激しい怒りをこめ、木ノ葉最強の綱手パンチをカカシにおくった。




カカシは飛んだ。

空高く。





イルカを介護に回した自分の判断はミスだった。

流石はエロ仙人の孫弟子だ、自来也がインテリエロだとしたら、カカシは変
態エロだ。
ああ〜ナルトの将来が不安だ。「シャンナロウ」どころではない!



今更後悔しても仕方ない綱手姫だった。






その後、イルカ先生はげっそりとして、一週間も寝込んだそうだ。


カカシは強力な綱手パンチに飛ばされ、気がつくと宇宙空間を彷徨ってい
た。

あ〜〜あ〜

091108.




すみません、文字色が調整がつかない。ごめんなさいです、















2010年09月09日
ハッピーバースデー
びしゃびしゃと激しい雨が地面をたたきつける。



二人は静かに傘をさし、雨の中を歩いていた。

会話はない。



「お話したいことがあって」

数日前、受付に報告に顔をだしたカカシがイルカにそう伝えて帰っていっ
た。





はたけカカシとは、現在プライベートで時々会ってお酒を飲む仲だった。



少しとぼけているが、心の優しい素敵な人だった。



イルカはそんな彼に恋をしていた。



同性であるにもかかわらず、



上忍のカカシに興味を持ってしまった。







はたけカカシは里にとっては重要な存在だった。



アカデミーで子供を相手に忍術を教えている自分とは格が違いすぎた。



それでもイルカは彼の事がスキなのだ。






「もうすぐです、イルカ先生」


カカシが口を開いた。



雨の音でかすかにイルカの耳に届いた。







小さな居酒屋だ。

場所も繁華街からはなれた、場末にあった。



古めかしい調度が懐かしさを感じさせた。


ほっとするような不思議な空間だ。



「カカシさん、お久しぶりです」



「高さん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」




カカシは50代くらいの小柄な店主に丁寧に頭をさげた。





高さんは二人に白い清潔なタオルを渡した。



「奥の部屋にどうぞ」

「ありがとう」




小さな店だが、個室があった。


ゆっくりするにはいい感じの部屋だ。

広すぎず、狭すぎず、大きなお膳と床の間には季節の生花が飾られてあっ
た。


ここなら話はしやすい、でも話って?




「あのう・・・ご予約されたのですか?」


「まあね、ここ、昔、暗部時代の仲間の集会場所だったんですよ」

高さんはその暗部仲間の父親だったのだ。




「暗部の?」


「はい、でも高さんの息子さんは、3年前に亡くなってしまいました・・・でもこ
こには時々来たくなるんです。ホットするんです」







二人はタオルで濡れた忍服や頭を拭いた。





”ちょっと失礼します”

強い雨で傘をさしていたのに髪が濡れてしまった。


イルカは束ねている髪のゴムをはずした。


さらりと、艶のあるセミロングの髪がおろされる。



その姿をじっとカカシは見つめていた。










イルカは手早く髪を拭いて、再び束ねた。



なんだか、失礼な振る舞いをしてしまった。




「イルカ先生は食べれない食材は混ぜご飯だけですか?」

「はい、後はなんでも」


「わかりました。ここは旨いですよ、魚も新鮮で旬の野菜を使った、家庭的な
料理が多いんです」



二人は向かい合わせて席についた。






カカシは黙っている。




やがて、料理が運ばれてきた。






(話たいってなんだろう?)





カカシ先生に話かけたかったが、タイミングがとれず、イルカは黙々と料理
を口に運んだ。





「イルカ先生、失礼かと思いましたが、先生の評判を何人かの人にお聞きし
ました」

「えっ?」



酒を片手にカカシは真剣な表情をしていた。





「いえ、変な意味でなく、もっと先生の事を知っておきたくて、あなたのお友達
からお話を」

「・・・・・・・・・・・」



「でも、皆さん、同じでした。明るくて、面倒見もよくて、裏も表もない誠実ない
い仲間だと」


「それは褒めすぎですね」



イルカは恥ずかしくて額ににじみでた汗をハンカチで拭いた。







「先生、すぐお顔にでますね・・・・それから少し忍らしくない時があるって」



「確かに」




そうだ、俺は忍らしくない一面がある。





内勤に努めるのは彼の少し人のよすぎる性格が、らしくないという、中には
そういう言われ方もしている事をイルカは知っていた。





アカデミーで子供に忍術を教える、それがまた彼には相応しかった。





「でも、カカシ先生どうして?」


イルカは少し鈍い。




「それは、俺が今まで出逢った事のないような人間だったから・・・他には」



そこで、カカシは口をつぐんだ。





高さんが静かに襖を開いて入ってきた。



「高さん、これは?」



「カカシさん、今夜はお祝いの日ですから、特別に作ってみたんですが、甘さ
は控えました」



(お祝?)


それは純白の美しいショートケーキ。





カカシがこの晩、イルカを誘ったのは、特別な日だからであった。



「お誕生日、はっきり言っていだだければよかったのに」



赤いキラキラとした苺のショートケーキ。


「いえ、流石に恥ずかしくて言えなくて」




カカシは紅くなり、うつむいた。








うみのイルカと出逢ったのは、カカシが担当した部下、ナルトがきっかけだ。



一度は二人の間で意見が異なり、対立した事もあった。




その後、食事や酒の席を共にした。



カカシはカカシで、イルカに恋をした。



優しくて、瞳の綺麗な彼に、



ただ、告白する、きっかけができないまま今日まできてしまった。






自分の誕生日を一緒に過ごして欲しかったのだ。




想いを伝えたかった。




「本当に綺麗なケーキですね」


「俺は甘いの苦手だけど、こういうプレゼント、っていいですね」


「ケーキまでだしていただけるなんて、素敵なお店です」




「昔は本当にここでよく仲間と会いました。未成年なのにお酒飲んだりして」


「へえ〜」


暗部といえば、里でもかなりの優秀な人材の揃った特別な世界だ。

でもそんな人達もイルカ達が若い頃と変わらない事をしていた。






イルカはカカシの特別な夜に招待されたのだ。



イルカは戸惑う、何故なら、彼が好きだから。








「ま、もういい加減、お祝いの歳ではありませんが、もし一緒に祝ってもらえ
るなら、大好きな人と過ごしたかったんです」


「だ・・い・・・すき・・・・」




その言葉にイルカの顔は紅くなってしまった。





好きな相手から、そんな言葉をかけられるなんて、





「イルカ先生の事をお調べしたのには、もう決まった相手がいるかどうかでし
た」


「決まった相手?」


リアクションもできず、イルカは正座したまま、動けない。




カカシ先生は?


それは?



イルカはハンカチで再度額の汗を拭いた。


「好きなんです。・・・ずっと伝えられないでいました」




カカシは一言、一言、ゆっくりと、はっきりと、イルカに伝えた。




俺は何かに化かされてはいないか?



イルカは信じられないという、そんな顔をしていたのだろう。



「ずっと、ずっとあなたの事を想い続けていた。男同士なのに、そ・・・その
う・・・・・」




”もじもじ”




カカシの瞳は潤んでいた。


「あなたが好きです!」



ついにカカシは告げた。



ずっと胸にしまってあった、告白の言葉は案外平凡なモノだった。






イルカはケーキを黙々と食べた。


口の中でクリームが甘く溶けていく。



カカシは残りの酒を飲みほした。



「あなたの事は大切にします、・・・・そのう、上手くいえないな、恋人になっ
て、先生」



言葉が上手くでない。





カカシも額の汗を拭いた。






イルカはクリームのちょこん、とついた頬で、柔らかく微笑んだ。



「俺でいいんですか?」



「あなたでなければ駄目です」



イルカはそっと手を伸ばしカカシの右の手を握った。

「ね、お祝いですよ、今夜は二人の特別の夜なんだから」


それが、答えだ。















あれから、10数年が経過した。



二人は共に歩んだ。



時に歩き疲れたり、喧嘩も何度も繰り返した、


いくつもの試練を乗り越え、

支えあって励まし合って、



気がつくともう二人は40代。




現在は木ノ葉の住宅街に家を所有していた。










外は音をたて、激しい雨が降っていた。




イルカは一人、ケーキを焼いていた。



あの告白の夜から、何度めの誕生日だろう。




そういえば、あの日もこんな風に強い雨が降っていた。








イルカは焼けたスポンジに生クリームを丁寧にコーティングした。




甘い物が苦手なあの人の為に、甘さを控えた特製のクリーム。

作り方は高さんに、教わったのだ。







今でもあの夜の事は忘れられない。



まるで、昨日の出来事のように、鮮明に頭に残っていた。



きっとカカシも同じだろう。




後、何年、こんな風にお祝いできるのだろう?



かけがえのない、ただ一人の人の為に。



今年も無事に祝える、自分に幸福をかみしめている。





ハッピーバースデー、カカシさん。


あなたに出逢えてよかった。



100214.















2010年09月03日
リクエスト
カカシBD.
今年も厳しい夏が終わった。




9月。


彼の誕生日がやって来る。


「ねえ、カカシ先生、今年はプレゼントは何がいいですか?」

夕飯で、ビールを飲みながら、イルカは微笑んだ。


「そうですねえ〜別に俺は・・・」



カカシは物欲は薄い方だった。


あまり何かと聞かれても、すぐに思い浮かぶ物はない。


それでも、毎年、カカシの誕生日を恋人のイルカがお祝いしてくれる。

とても嬉しい事だ。






「ねえ〜考えておいてくださいね」


イルカは考えた。


プレゼントって難しい。


やはり、その人に気持ちを込めるのが一番だけれど、

実用的な物や夢もあるといい。




「俺は、夢のあるプレゼントがしたいです」


イルカはそう口走った。



その後、後で後悔するはめになってしまったのだが、









「それは、どういう意味ですか?」

”ふふふふ”



カカシは含み笑いを浮かべていた。

瞳も少しだけ、えろかった。



「もう一度、言います。3歳の仔イルカ。10歳の仔イルカ、20歳の若いイル
カ、俺は沢山のイルカ先生と遊びたいです」


なんという発想だろう?




この人は、





「それって、不純な動機ですか?」


「そんな、仔イルカ相手にそんなまねしないです。・・・抱っこしたり一日中可
愛がってあげますから」


「でも〜〜〜〜」


「いいでしょう?一日、イルカ先生に囲まれて俺の誕生日をお祝いするんで
す」


(ああ〜仕方ないね)








誕生日、当日。



イルカは多重影分身で6人に増えた。

更に変化。



3歳、10歳、20歳、26歳、35歳、40歳。



大サービスだ。


「おおっ!」



これが、夢のイルカハーレム!



カカシは手をたたいて歓喜した。




「カカシせんせえ〜サービスします」



イルカ達は声をそろえた。






こうして今年の誕生日は忘れられないものとなった。




なお、成人しているイルカに関しては夜のサービスもあったそうだ。


カカシ先生、お誕生日おめでとうございます。



091012.
2010年08月27日
美しき日々
”ああ〜暑かったってばヨ”




これはまだ、うずまきナルトがアカデミーを卒業した年の夏の出来事・・・。




カカシ先生との演習でみっちり1日修業したナルトは一人家路に向かって歩
いていた。

途中、商店街に立ち寄って今夜の食料を買う予定だった。





”ヨイショ”

”ヨイショ”



白く長い髭の翁は重そうにカートを引いて歩いていた。


荷物は大きく、重くそしてこの、うだるような暑さだ。



「爺ちゃん大丈夫だってばヨ-」

どうやら、髭の爺さんは困っている様子だ。


見て見ぬふりはナルトには出来なかった。

「俺が手伝うってば」



ナルトは爺さんの荷物を引いた。


「おう〜助かったわい〜すまんのう、ボウズ」



「いいってばヨ。・・・それにしてもこれ何だってば?やけに重いけど?」

「ああ〜そのう〜婆さんが、焼き芋したいっていうもんでのう・・・気がついた
ら買い過ぎてたんじゃ、カカカ」

爺さんは笑った。

「げっ?真夏に焼き芋?」

ハードすぎる。



想像するだけで汗が出る。





ナルトは老人を自宅まで送り届けた。





大きく立派な屋敷だった。

「すげ〜!爺ちゃん、お金持ちだってばヨ-!?」


ナルトは広い庭を見て感激した。


「ボウズ、有難うな。助かったわい」

”そうじゃ”


白い髭の爺さんはポケットから何かを取り出した。


「これはお礼じゃ」

「何?」



ナルトはそれを受け取った。



チケットのようだ。
2枚ある。





『コノハ 超ハイテクプール。なんでもナガレンジャー』





そう書かれてあった。




「うわ〜〜っ!プールだってばヨ-!やった!!」



ナルトは大事にそれをしまった。












「しかし、イルカ先生はこんな暑い日でもラーメンなんですね」

「はい」



こちらは「一楽」


ナルトの担当上忍、はたけカカシと最近彼とお付き合いを始めた恋人のアカ
デミー教師のうみのイルカ。


二人は仲良くお食事タイム。




ピンクのハートマークが二人の間を飛びかっていた。




「でも、カカシ先生、つけ麺は邪道です」



「そうですか?」


「やっぱりラーメンは熱くないとね」

”ふふっ”



愛らしく微笑む。


そんな彼の横顔を見ているだけで、カカシは嬉しかった。



「イ、イルカせんせ〜〜!見つけたってばヨー」





この声は?

カカシは振り返った。





二人の間に割って入って来たのはナルトだった。


「なんだ、カカシ先生もいたのか」

「なんだとは、失礼な!」


”プンプン”




カカシは折角のイルカとのデートを邪魔され気分を悪くした。




「なあ〜イルカ先生、プール行こう!今度の日曜日」

「プール?」


イルカはちらりとカカシの顔を覗き込んだ。



ヒクヒクと彼の頬のあたりが痙攣している。



「なあ〜チケット2枚あるんだってばヨー。行こう先生!」

「へえ〜凄いねえ。行こうか」




「ああ〜約束だってばヨー!」



(ナルトが羨ましい)



カカシはハンカチを噛んだ。












”ズーン”


夜、カカシはイルカの部屋の片隅で膝を抱えていた。

「もう〜どうしたんです?ああ〜暗い!」


「二人きりでプールなんて・・・酷い」


「相手はナルトなんですけど?・・・心配?」


「もういいです・・・焼きますよ。きいい」




イルカはカカシの頭をよしよしと撫でた。











日曜日、当日。




この日も朝から気温が上昇していた。


炎天下をイルカとナルトは地図を頼りにプールを探していた。




里のはずれにあるらしい。



「あった!ナガレンジャー!!」



看板を見つけナルトが走りだした。




「しかし、不便な場所だな・・・・・」



二人は入り口でチケットを渡し。早速、水着に着替えた。



イルカは赤い色の海水パンツ。

ナルトはオレンジの海水パンツ。



ただ、プールはこの夏場というのに他に客の姿がない。

少しだけそれが不安だった。














”ゴオオオオ”



強く、激しく流れる水音がダイレクトに2人の耳に飛びこんできた。




大きな流れるプールだ。



勢いが,ありすぎる。



プールというより滝のようだ。





二人はチケットをよく読んでいなかった。



チケットには「なんでもナガレンジャー」と書かれてあったのだから。




「ナルト、ちょっと早すぎないか?これ?」



「そうかな?行くぜ!!」


”どぼん!”


”やめておいた方がいいぞ”

と、イルカが止める前に元気なナルトはプールに飛び込んだ。



「うわああああああ〜〜!!」



悲劇はおきた。








黄色い頭がどんどん、流されていく。




「ナ、ナルト〜〜〜〜!!」



ナルトは流されてしまった。



「い、今、いくからな!」



その流れすぎるプールに必死でイルカも飛びこんだ。





”ゴオオオオ!”





イルカはナルトを助ける為、必死で泳いだ。



流されながらも、イルカは全力で泳いだ。






3周回って、やっとナルトの身体を掴んだ。




(何て、酷いプールなんだ)







二人は、プールから這い上がった。




へろへろだった。




とにかく、無事でよかった。







「ああ〜死ぬかと思ったってばヨー」

「無事でよかった、あっ?!お、お前??」


”うわ〜〜〜つ!”




ナルトは飛び上がった。


あの激しすぎる流れの勢いでナルトは海水パンツを流されフル●ンだった。



「あっ!イルカ先生もフル●ンだってばヨー!!」

「いゃああ〜〜〜〜」






イルカも海水パンツを流されてしまった。




”こ、この事はカカシ先生には内緒だからな!”



イルカは何度もナルトに言い聞かせた。








今でも夏になるとイルカはあのプールでの事件を思いだす。





あの夏から何度目の夏だろう?






イルカとカカシは現在も恋人同士だった。




ただ、あのプールの事件だけは、ナルトと二人だけの秘密だ。




口が裂けてもカカシ先生には言えない。




イルカはあれ以来プールには行かない事にした。




”フル●ン”

屈辱だ!!



100604.






2010年08月20日
俺と胃痛 秋葉系
気持ちがいいけど、少し暑い5月のある昼下がり。



カカシは川べりのベンチに腰かけていた。



恋人のイルカが今朝、持たせてくれた「愛情弁当」

(ふふふ)


「おい、なんだよカカシ、飯行かないのか?」
「そおですよ。今日は丼行こうって話だったのに」


文句を言うアスマとゲンマ。








俺だけのランチタイム。



至福の時間。




かわいいイルカ先生の手作り弁当。



さあ、いったいどんな可愛いお弁当なんだろう?







カカシはランチボックスの蓋を開いた。




”ポロリ”




”コロコロコロ”




缶が転がった。




「あ?」



カカシはスープらしい缶を拾った。


「ええっ?!」



それは、スープなんかではない!



『ラーメン缶』


「うそ〜〜〜〜〜!」



そしてタッパーに、「白飯」






イルカには悪気はない。


ただ、彼は他人と少しセンスが違うのだ。




「俺も丼にしておけば、良かった・・・・」




ふとタッパーの下にメモが。


(もしかして)




”任務頑張ってください”


とか、”スキスキカカシ”なんて書いてあるかも知れない。





”わくわく”



”どきどき”



カカシはメモを開いた。



『ご飯にラーメンの汁をかけて食べると旨いです』







イルカ先生の馬鹿!!





カカシは半泣きしながら、タッパーの白飯にラーメン缶の汁をかけた。




しかしそれは案外旨かった。







おまけ。

美味しいデザート。







カカシは見落としていた。


ランチボックスにはまだ何か入っていた。




小さな缶。


(また缶なのね)






「水羊羹」


”いいね”


夏場らしいね。




しかも「梅羊羹」




「イルカ先生の大馬鹿!!」






”きりきり”




今日も何処かで、誰かの胃が鳴る音がする。



0805頃
昼休みぼんやり昼飯を食べながら。



2010年08月12日
快楽寺
「よおお〜〜っ、久しぶりだなあ〜青春しているかあ?カカシ」

”ズーン”

イチャパラを上忍待合所で読みふけるカカシの目の前に、上忍仲間のマイト
ガイのドアップが迫ってきた。

「五月蠅いねあんた」

読書を邪魔されカカシは苦い顔。



季節は夏も後半、残暑が厳しかった。


ガイのようなタイプは暑い時期には会いたくない。



「ところで、コホン。いい話があるんだ。・・・・フフフ、ライバルのお前には特
別に教えてやってもいい」

どうせ、下らない内容だろうな。


ガイは続けた。


「今、木ノ葉のナウいギャルの間で話題になっている・・・そこに行くだけで究
極の幸福が手に出来る、有難い寺がある」


「ふ〜ん。いわゆるパワースポットね」


何処かで聞いたような、

”はい、はい”



ガイはパンフレットを持っていた。


「快楽寺」



変わった名前の寺だ。



「どうだ、この寺に深夜にお参りすると、この世のすべての快楽を味わう事
が出来るというんだ」


”ぴくぴく”



カカシの耳が大きくなった。



(この世のすべての快楽!)





「でも〜あんたと二人で深夜の寺なんかに行くのは・・・」


「だと思ってな、イルカを誘っておいた」

”やられた”




イルカ先生とガイを二人で深夜の御寺になんか行かせたくない。










この世の中のすべての快楽とは何だろう?


ま、俺にとっては、イルカ先生との夜のお楽しみだけどね。


それ以上に上があると言うのか?



パンフレットの地図を確認したが、かなりの山中だ、危険かもしれない。


「明日、楽しみです」



イルカは瞳を輝かせてカカシの顔を覗きこんだ。



部屋にはリュックまで用意してある。



「でも、イルカ先生、その寺は本当は怖いお化けがでるかも知れないです
よ」

「また、そんな事言って、そんな事ありませんよ」


楽しそうな恋人を止める事は出来なかった。












「さあ〜諸君、目的地まで走るのだ!」


蒸し暑い夜でも、ガイは元気だった。


「あんただけ走りなさいよ」


冷たくカカシは言った。


「イルカ先生、俺達はのんびり楽しく歩きましょう!」


カカシは半分位はイルカとデートのつもりだった。
「カカシ先生、ガイさんの言うとおりです。やはり走らないと!」
「おお〜流石、イルカだ」

GO!



そうだ、ある意味熱血なのはイルカ先生も同じだった。






意気投合したガイとイルカは山道を駆け上がって行く。



「しかたないね」



カカシも二人を追った。









どれくらいの距離を走っただろう?


三人の足で一時間ほど経過した。



地図からいけば、もう目的地は近いはずだ。





辺りは闇一色、夏場なのに虫の声はなかった。





時折生温かい風が吹いてくる。



”ひゅうう〜〜”

”ひゅううううう”




悲しげで不気味な音が何処からか聞こえてくる。

「これ、何の音でしょう、カカシ先生?」
「風の音ですけど、・・違います?」


「そうですか?俺には人の泣き声に聞こえたんですけど?」

二人は囁きあった。

「え?音なんかするのか?」

”ずる”

ガイの一言で緊張感が飛んだ。



『快楽寺・500M』



わずかに、古びた道しるべの看板をカカシは見つけた。










そこは、今にでも倒壊しそうなほどの古寺だった。





こんな寺に何があるというのだろう。



三人は鳥居をくぐった。



その刹那!



”ピカッ!”





七色に輝く不思議な光の世界に三人は移動していた。





色とりどりの美しい花が咲き乱れ、その側には浅い川が緩やかに流れてい
た。


遠くからは、美しいメロディが聞こえてくる。



「あっ、あそこ!」



大きなテーブルには山の豪華料理。



三人はしばし、腹を満たすことに夢中になった。





(綺麗なお花?浅い川?)

カカシは考えていた。


それは、誰かから昔、聞かされていた。







やがて、腹を満たした、ガイとイルカはまるで吸い寄せられるように、川の方
に歩いて行く。



「駄目だ、二人共!・・・その川を渡ったら、終わりだ!!」




カカシは叫んだ。









”ス〜〜〜ッ”




気がつくと三人は、古寺の入り口で倒れていた。




そうだ、あれこそが、あの浅い川の向こう側こそが、「死後の世界」

昔テレビで観た覚えがあった。思い出した。





それが、究極の快楽だというと・・・恐ろしい話だ。

となると、この今のカカシの生きる世界には、本物の快楽はないのだろう
か?
カカシは、頭をふった。




彼らは会話もなく、寺の中で呆然と過ごした。





外からは、まだあの不気味な風の音が聞こえてきた。









明け方、カカシ達は寺の前で記念撮影をした。




「やはり、俺にとっての究極の快楽はあなたなんですけどね」

「もう〜こんな所で、ガイさんの前で〜〜」


「いいぞ、二人とも恋はガンガンバンバンするのだ、それが青春だぞ!」


ガイは愉快そうに声をたてて笑った。

「そういうあんたはどうなのさ?」

「う〜〜〜ん」

「あんたの快楽って何?」


少し意地悪くカカシは訊ねた。





”ひょい”


ガイは逆立ちをしてみせた。



軽々と山道を下る。


それが、彼の答えだ。


修業こそ、ガイにとって究極の快楽だったのだ。













もうすぐ街中に入る。




カカシたち一行は24時間営業のレストランに入った。





終わりよければ、すべてよし!








カカシとイルカ、アンドガイの珍しい組み合わせで朝食を注文した。




ガイとイルカは、寺の事など気にもせずに、朝の魚定食をぱくぱくと食べた。





パワフルで元気な処も二人の共通点だ。






カカシは何気なく、入り口から、持ってきた朝刊を眺めた。



今夜のテレビ番組表にはあの「快楽寺」の特集記事。


「あはは・・・」


馬鹿馬鹿しい。




カカシは新聞を折りたたみ、自分も箸を手に持った。



100730.


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