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”枯れ葉散る木ノ葉の夕暮れ♪”
うみのイルカは公園のベンチに座り嘆息した。
季節は秋に入り、ようやく過ごしやすくなった。
今年の夏は猛暑だった。
「誘惑の秋・・・・」
夏場は食欲が落ちていたイルカだったが、
昨日、久しぶりにウエイトを計ったら、5キロ増えていた!!
このところ、毎日、帰りにコンビニやスーパーでスイーツを買い込んでいた、
しかし!!何故だ、同じ物を食べているはずの恋人のはたけカカシは、変化
がない。
それどころか、イルカの真剣な悩みを笑い飛ばした。
「ふう〜〜〜」
公園のベンチで黄昏ていると、そこに、きゃらきゃらと美しい乙女達が歩い
てきた。
春野サクラと山中いの、
二人はイルカの元の教え子たちだ。
「あ!イルカ先生」
「わあ〜おしさしぶりです」
「やあ〜二人とも・・・」
低い声でイルカは答えた。
何時ものスマイルがない。
イルカはまじまじと二人を見つめた。
スレンダーなサクラにナイスバディないの、
「ねえ、イルカ先生少し変だわ?」
サクラはイルカの周りにどんよりとした、空気を読みとった。
「な、なんでもないよ」
「本当?」
二人はイルカを囲んだ。
「ねえ〜イルカ先生、私たち、今夜これから、シカマルの家に遊びにいくんで
す。ナルトもカカシ先生も呼ばれているから、イルカ先生もいかがですか?」
「え?カカシ先生が?それってどんな集まりなの?」
「奈良家の山で収穫した木ノ子をみんなで、」
「きのこ・・・」
どんより、一人でしていても仕方ない、
イルカは二人に同行した。
奈良家の実家は古く大きな屋敷だった。
庭が広々として、今夜は庭で主のシカクが自慢の木ノ子を調理した。
イルカが到着した時にはすでにそこには、はたけカカシの姿があった。
(カカシさん、昨夜一言も俺に話てくれなかったな、)
「イルカ先生!!」
イルカの姿を見て、
嬉しそうにナルトとシカマルとチョージが駆けよってきた。
「みんな活躍しているそうだな」
自分の教え子たちの成長は楽しみだった。
カカシは黙って皆から少し距離をあけた場所に立っていた。
イルカとカカシが付き合っている事は現在では知られていた、ただ、二人と
もに、場をわきまえて、ふるまうよう注意はしていた。
シカクの煮込んだ木ノ子汁はなんともいえない、食欲を刺激するかおりがし
た。
「うまそう〜〜」
ナルトとチョージは鍋に夢中だった。
カカシとイルカはシカクから酒をふるまわれた。
次第に場は盛り上がっていく。
「先生がたどうぞ」
出来たての汁をお椀によそい、シカクはカカシとイルカにふるまった。
「ありがとうございます」
イルカは少しだけ顔をほころばせた。
いい匂い。
「まさか、今夜ここでイルカ先生と会うとは思わなかった」
「たまたまサクラたちと会って・・・」
「ふうん、たまたま?」
二人の間に少し微妙な空気がただよう。
「さあ〜先生がたさめないうちにどうぞ」
イルカは一口汁をすする。
木ノ子汁の味を今夜つけたのは、意外にもチョージだそうだ。
「どお〜先生?」
「うん、旨いよすごいなあ〜」
「こいつ、味つけ上手なんです」
シカマルが口をはさんだ。
チョージは褒められて、顔を赤くした。
いい仲間だな、
イルカはアカデミー時代の彼らを思い出していた。
うたげも終わり、めいめいに家路に向かっていた。
ただ、イルカの歩く後ろにはカカシがついて歩いていた。
「カカシさん、今夜はご自宅にお帰りください」
「なに?やっぱり怒っているんだ」
「心当たりはないんですか?」
「ああ〜昨夜の事ですね」
「酷いです、それに昨夜はシカマルの家に招待されたなんて、一言もおっし
ゃらなかったですよね」
「だって、先生は5キロふえてしまって、そんなひとを誘えませんよ」
「帰ってください!1」
「いやですね」
「笑う事はなかったと思います、恋人でしょう?」
イルカはヒートしていた。
「じゃあ〜俺の部屋にきて、喧嘩してもしょうもないでしょう?」
カカシはイルカの手をひいた。
結局、俺はカカシ先生に、どこかでさからうことが、出来ないのかもしれな
い。
二人が交際を始めて1年以上、ずっとそうだったのだ。
カカシの部屋。
二人は向かい合い、コーヒーを飲んでいた。
「なにか、かけます、CD?」
「結構です」
「昨夜は、たしかに俺が失礼でした、ごめん」
「許しません」
イルカは腕をくんだ。
笑顔はなかった。
「先生、もとに戻れば、いいんですよね、俺が協力しますよ」
「え?」
もとにもどる、協力って?
また、どうせ、巷で流行っているダイエット本でも買ってくれるのか、
「これから、俺が里にいる日には、少し修行に付き合います」
「修行?」
「ハードですけど、イルカ先生ならこなせます」
かくて、イルカとカカシの秘密の修行がはじまった。
そのほとんどは基本的な身体をつくる体操から、スタートした。
腕立て伏せ、腹筋。うさぎ跳び。
一月後には、二人は森にでた。
「俺についてきて、全力で!!」
カカシは飛んだ。
イルカも飛んだ。
木から、木へとカカシの移動のスピードは想像できないほどの速さだった。
現場の忍の強さをイルカは感じた。
3か月が経過した。
「さあ〜先生、ウエイトを計りましょう!」
「はい」
イルカは、体重計に乗った。
8キロ落ちていた。
「カカシせんせい・・・」
嬉しくて、イルカはカカシに飛び付いた。
その頭をカカシは優しくなでた、
「厳しかったですね、頑張りましたね」
「キスしていいですか、カカシさん」
「はい、う〜〜んと熱くて激しいの」
「わかりました」
”ぐぐう〜〜”
その時、強烈にイルカの腹が鳴った。
「あのう、その前に俺・・・・ラーメンが」
恥ずかしそうにイルカは頭をかいた。
秘密の修行の間、イルカはラーメンも我慢していたのだ。
一瞬、カカシは嫌な予感をおぼえた。
二人のそろった姿を見て、テウチは嬉しそうに、白い歯をみせた。
「もう〜先生がた、忘れられたかとおもいましたよ!」
「すみません、任務が忙しくって」
季節は冬だ。
久しぶりに食べた「一楽」のラーメンは芸術てきな、旨さだった。
「テウチさん、大盛りおかわり!!」
「えっ??!!」
”ずるずるずるう〜〜”
ま、まずいだろう?ここまで、シリアスに、修行をして、成功したというの
に!!
あんた、ここで、ひっくり返すきなの??
カカシは焦った。
最も恐れていた事態だ。
この俺とイルカ先生との3カ月は・・・・
無駄になってしまうのだろうか?
イルカは3杯、食べて、箸をおいた。
ただ、その時見せた笑顔は艶やかで、カカシは生涯忘れられない、ものだっ
た。
だいぶ、世の中は寒くなっていた。
ある日の公園のベンチでイルカはアカデミーの帰り、一休みしていた。
現在、はたけカカシは任務で里を留守にしていた。
イルカはあれ以来、毎日一人トレーニングとつづけた。
きちんと、ウエイトを維持していた。
それにしても、
イルカはぼんやりと思い出していた。
修行をしている時の、カカシさんって、りりしいんだよね!!
あらためて、彼に惚れなおしてしまった。
「さあ、行こう」
イルカは気合を入れて立ち上がった。
どこからか、風に乗って一楽のラーメンの匂いがとんできた。
「おれは、まけない!」
イルカは振り切った。
そこには、少しだけ進化した、うみのイルカがいた。
人は進化するものだ、という・・・・・。
100728.
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それは、カカシとイルカが現在この世界に生まれてくる、何代も、何代も昔の
世界・・・・・・。
イルカ王子は今夜も窓辺に立って、愛しい彼を待っていた。
王子は人の目を盗んで、ある人物と会っていた。
窓の外に、人の気配。
イルカ王子は顔を出した。
「王子!」
「カカシさん!」
銀色の髪の麗しい青年が木を登り、宮殿に忍んできた。
イルカ王子の首からは、彼から贈られた透明の美しい水晶の首飾り。
青年の名はカカシ。
カカシはこの国の剣士だった。
頭もきれ、腕もよく、優秀な男だった。。
二人は男同士、身分の違う恋におちていた。
「はやく」
そっとイルカ王子はカカシの腕をとり寝室に入った。
二人は見つめ合い抱きしめ合った。
叶うことのない恋なのだ。
「カカシさん・・・何時かこの先、私が亡くなって次に生まれ変わる事があれ
ば、その時は貴方と結ばれたい」
「イルカ王子」
優しい王子は瞳が濡れていた。
「カカシさんは?」
「私も同じ気持ちです、」
胸がいっぱいだった。
何度も何度も二人はキスをした。
次の世界では何時かきっと・・・・。
二人は結ばれたいのだ。
イルカは深夜、目がさえた。
不思議な夢だった。
鮮明なそれは、イルカの頭の中でリアルに残った。
(カカシさんと俺が?)
二人は別世界でも恋人同士だった。
カカシが里に帰還するのは明日の予定だ。
イルカは目が冴えてしまい朝まで、ぼんやりしていた。
カカシは里のゲートをぐぐり同行した仲間達と無事帰還した。
「カカシ、急ぐのか?」
「ああ〜お前の暑苦しい顔をもう見ないですむと思うと俺は嬉しいよ」
「何?失礼な、永遠のライバルにむかって!」
ガイは胸をはった。
「報告は俺がしておくぞ」
「有難う。助かる」
カカシは一人になりたかった。
ガイと別れ、アカデミーの建物に走る。
もうそろそろ5時だ。
イルカは一日の授業を終わらせて、職員室でお茶を飲んで休んでいた。
そこにバタバタと慌ただしく、はたけカカシが飛びこんできた。
”ざわざわ”
カカシは里の有名人だ。
他の職員達はびっくりした顔でカカシに注目した。
「か、カシさん・・・・・」
イルカは立ち上がった。
手に持っていた食べかけの大福が、ぽろりと床に落ちてしまった。
「イルカ先生、今夜俺と付き合ってください」
「えっ?」
はっきりと、こんな場面でカカシは言う。
再び周囲はザワメイタ。
「もう、あの場面であれは皆誤解しますよ」
「どうしても先日のお礼がしたくて・・・すみません」
カカシは頬を赤くした。
二人は麦ジュースを飲んだ。
「もう、手は大丈夫ですか?」
「ええ、すっかり。イルカ先生の手当てがよかったです」
”どうしたのだろう”
何時もなら、二人は軽くジョークを飛ばして、笑いあっているというのに、
今夜は二人は互いを意識し合って口数が減っていた。
「あの・・・・イルカ先生、これを・・・・」
カカシは任務先で買った、イルカへのプレゼントをそっとさしだした。
「これは?」
「気にいっていただけたら、俺の気持ちです」
「あけてもいいですか?」
「はい・・・・・・・・・・」
イルカは丁寧に包みを開いた。
箱の中には透明の水晶。
「これは!」
”知っている”
そうだ、あの昨夜の夢の中で、イルカが首からかけていた水晶と同じもの
だ。
イルカはそれを首からかけた。
そんなイルカを見て、カカシは嬉しそうに瞳を細めた。
「俺はあの時、断られると思っていました」
「どうして、そう思うんです?」
「だって、男同士ですもん」
季節の変るのは早いものだ。
もうこの暑かった夏も終わりだ。
だだ、二人の恋は始まったばかりなのだが、
イルカの胸ではあのネックレスが輝いていた。
二人はカカシの部屋で、くつろいで、麦ジュースを飲んでいた。
「おれ、時々、これが全部夢だったら、どうしょうって考えることがあって」
「夢だったら?」
クスッとイルカは微笑んだ。
カカシはイルカの身体を抱き寄せた。
甘い吐息がイルカの口からもれた。
「ねえ、カカシさん。・・・・もし、俺達が死んでしまって、その後生まれ変わっ
てもまた、俺を選んでくれますか?」
イルカの瞳は潤んでいた。
”必ず”
必ず俺はイルカ先生を選ぶのだろう。
もし、今のすべてがただの夢だったとしても、俺は彼に恋をして、彼をずっと
追いかけるのだろう。
永遠に・・・。
どこまでも。
どこまでも。
終わることのない、ラブストーリー。
リピート、
すべては繰り返されていく。
100629.
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薄暗い部屋で彼は横たわっていた。
やっと辿り着いた部屋。
外は雨が降っていた。
彼は靴をぬいで、忍服のベストを脱ぎ捨てた。
指先に血液がにじんでいた。
傷ついた指を消毒して、薬をぬった。
少しの油断が招いた怪我だった。
任務は成功させた。
眠ろう。
寝れば回復するだろう。
気がつくと、昼になっていた。
少し重い身体を起こして、彼はバスルームで熱いシャワーを浴びた。
これから、報告をすませ、そしたら今日一日は俺は自由だ。
まだ、少し怪我をした右の指先が痛む。
まあ、病院に行くほどのものではない。
シャワーで溜まった様々な疲れを流して、カカシは何時もの顔に戻った。
その日、受付はすいていた。
カカシは迷わず、一人の男の前に立った。
「カカシさん・・・」
「おしさしぶりです。イルカ先生」
「あのう、右手は?」
「たいした事ありません、ほんのかすり傷です」
受付の男、うみのイルカは一瞬辛そうな瞳でカカシを見上げた。
「報告書ですね。・・・確認させていただきます」
「お願いします」
カカシとこの受付の中忍のアカデミーの教員とはいいのみ友達だった。
二人が始めて出逢ってから随分たつ、ただ、個人的に付き合うようになった
のは、カカシの部下のナルトがきっかけだ。
二人で時々会っては酒を飲む。
イルカは明るくてよく笑う男だった。
「ねえ、イルカ先生今夜あたり麦ジュースても呑みません?」
「麦ジュース?いいですねえ」
イルカの表情が明るくなった。
麦ジュースとはビールの事である。
イルカの顔を見て、カカシは少し気分が落ち着いた。
うみのイルカは不思議な人物だった。
何故だか、一緒にいて、ほっとする。
中忍と階級は違うが、それを超えて、カカシには大切な存在だった。
カカシは再び自室に入った。
少しだけ、休もう。
全身を倦怠感が襲った。
疲れがたまっているのかもしれない。
イルカとは夕方の5時30分に約束をした。
それまで、
ごろんとベットにカカシは横になった。
「イルカ先生か・・・」
そう、
気がついたら、
俺、彼の事が好きになっていた。
ただ、その気持ちは自分だけのもので、好きという気持ちは己の中にしまい
こんでいた。
”だるい”
少し熱があるのかな?
カカシは瞳を閉じた。
多忙な任務で彼は疲労していた。
うみのイルカは定時で、素早く仕事をあがった。
”今夜はカカシさんと、麦ジュース”
カカシさんと会うの久しぶりだ。
話したいことが沢山ある。
イルカは待ち合わせの店の前に立った。
まだ5時すぎなので、繁華街はそれほど人はいなかった。
約束の時刻になってもカカシは姿を見せなかった。
ぽっぽっと雨が降り始めた。
イルカは店の前で2時間近く、じっとカカシを待っていた。
次第に不安になっていく。
(何かおきたとか?)
(それとも、急ぎの任務?なら、連絡くらいくれるはずだ)
不安を抱え、イルカはカカシの住居を訪ねた。
以前、一度だけ彼の部屋に招かれた事があった。
イルカはカカシの住む建物の階段を登った。
灯りはついていない。
一度、呼び鈴を押した。
応答はない。
イルカは何気にドアノブに手をかけた。
鍵があいていた。
ドアを開くとカカシの履物があった。
「カカシさん、イルカです、どうかされましたか?」
嫌な予感を感じてイルカは中にあがった。
灯りをつける。
室内は乱雑に散らかっていた。
恐らく忙しくて、家事ができないのだろう。
イルカは奥のドアを開いた。
ベットにはたけカカシが横たわっていた。
日頃、カカシが装着している口布ははずされ、端正で麗しい素顔がさらされ
ていた。
(眠っているの?)
寝ているだけなら、カカシはイルカの気配で目を覚ますはずだ。
イルカはそっと手を伸ばし、カカシの額にあてた。
”熱い”
イルカは寝室から、キッチンへ移動した。
冷凍室には氷があった。
氷をだし、タオルをさがした。
冷たいタオルを額に乗せる。
イルカはカカシの右手の怪我が気になっていた。
一応、手当はしてあるようだ。
イルカは一度、カカシの部屋をでて、商店街まで足をのばし、ドラックストア
ーで手当てに必要な物を買いそろえた。
丁寧にカカシの右の指先を手当てした。
それでもカカシは、目を覚まさなかった。
眠るカカシは美しい。
イルカはぼんやりとその顔にみとれていた。
昨夜、降った雨は明け方にはあがった。
カカシは爽快に目覚めた。
「あれ?」
額にはタオル。
カカシのベットの下で丸くなって人が眠っていた。
カカシは飛び起きた。
「イルカ先生!?」
そうだ、俺はイルカ先生と約束をしていたのだ!
カカシは壁の時計を見た。
朝まで、眠りこけたのか?俺は・・・・。
カカシは丸くなっているイルカの身体をかかえて、ベットに寝かせた。
約束の時刻になっても、現われない俺を心配して、イルカ先生はここに来た
のだ。
カカシは怪我をしている右の手を見た。
丁寧に手当てしなおしてくれたようだ。
カカシは眠らず自分を看病しているイルカの姿を思い浮かべた。
どうしょうもなく、それは照れくさいことだ。
全身がヒートした。
カカシはすでに、次の任務地に居た。
今回は1週間ほどで、里に戻れそうだ。
毎日、夜が来るとイルカ先生の事を思い出す。
指も完治した。
「イルカ先生・・・・」
宿の窓からは月がみえた。
(あの人に告白させて)
まるで初恋のように彼の事で頭がいっぱいだった。
翌日。
カカシは古めかしい土産物などを扱っている商店を訪れた。
黒い木彫りの熊や、お面。
その土地の名産物やら、玩具、生活用品と色々とそろっていた。
先日の事もあり、イルカ先生に何かお礼をしたかった。
カカシはケースに入った、ひときわ美しい透明の石のネックレスをみつけ
た。
「いいひとにお土産かな?」
店の主である老婆が声をかけてきた。
老婆の横には白い猫が丸くなっていた。
「これなあに?」
「水晶だ。・・・・この辺りでとれたもので、いいものだ。買うならこれがいい
ぞ」
「へえ〜」
カカシは数枚の札を老婆に渡した。
そろそろ麦ジュースが旨い季節になってきた。
イルカは夜、自分の部屋でテレビを観ながら、缶ビールを飲んでいた。
それは日々の小さな楽しみでもあった。
ビールをみるとカカシさんを思い出す。
熱をだしたカカシさんは痛々しかった。
里のトップ上忍の彼でも普通の人間と変わらないのだ。
イルカは立ち上がり窓を開いた。
空には綺麗なお月様。
あの人も俺と同じ月をみているだろうか?
だったら、いいな。
イルカはころんと横になった。
★後編は来週を予定しています。
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寒い寒い夜だった。
空には三日月が輝いていた。
はたけカカシは木ノ葉の上忍、人気も実力もある男だ。
カカシは任務の帰り、おでん屋の屋台によった。
大根とちくわを肴に酒を呑んで、いい気分だった。
もう時刻は深夜、カカシは重い腰をあげた。
代金を払い、屋台をでた。
人気のない木ノ葉の商店街、
そんな誰もいなそうな道端に、カカシがテレビで観た覚えのあるネコ型ロボッ
トがいた。
手には地図を持ち、迷っているのか落ち付きがない。
「どうした、ドラ●もん」
「みちに迷いました」
「こんな夜中に?」
「はい、この地図にある奈良さんのお宅に行きたいんですが・・・・」
(奈良さん)
地図を見せてもらうとそれは奈良シカマルの自宅だった。
仕方ない。
カカシは道案内をした。
「ご親切にありがとうございます。カカシさん、これはお礼です」
そう言ってネコ型ロボットは丸い鏡をポケットからだした。
「これなあに?」
「これは、何でも覗きたいものが見える「みちゃだめ」という鏡です」
「うわ〜〜〜」
少しいかがわしいが、凄い物を手に入れた。
流石はどら●もん。
カカシはほくほくと自宅に戻った。
それにしても、いい物を手に入れた。
何でも覗けるということは・・・
”うふふ”
カカシは想像した。
彼が見たくて、見たくて、どうしょうもない人物、その私生活がこれで、まるみ
え。
「イルカ先生のお部屋!」」
カカシは鏡を覗いた。
生憎、深夜で暗い部屋に布団をかぶって、ぐーぐーと眠りこけるうみのイル
カがみえた。
「ま、明日にするか」
こんな夜中では暗くて室内も見えないし、朝まで俺も寝るとしよう。
カカシはパジャマに着替えベットに転がった。
”ジリジリジリ”
目覚ましと共にカカシは起きあがった。
まだ、昨夜の酒が頭に残っている。
カカシは急いで着替え、あの丸い鏡を覗いた。
イルカ先生が枕を抱えて眠っている。
ピンクのパジャマが可愛い。
彼の部屋をすこし見てみよう。
カカシは本だなを思い描いた。
鏡はまるでテレビのモニターのごとくイルカの本だなを映し出す。
若い独身の男らしくえっちな写真集があるはずだと思ったが、現実には少年
チャンプが並んでいた。
”もぞもぞ”
その時、モニターがイルカの姿に移動した。
おろして寝乱れた髪が色っぽい。
イルカは忍服に着替えていた。
髪を整え何時もの彼になる。
(おっと、いかん、俺も出ないと)
もっと見ていたかったが、お楽しみは夜に残しておこう。
俺、まるでストーカーみたいだな。
ほんの少し罪悪感が残った。
取り合えず、この不思議な鏡は今日だけ使用して、やめよう。
何でも深入りはいけない。
上忍待合所で、カカシは紙カップのコーヒーを買い、腰を下ろした。
この日は待機だ。
「よお、カカシ、ねむそうだな・・・どうせ飲み歩いていたんだろう?」
髭の上忍仲間、猿飛アスマが、パンと飲み物を手に現われた。
「そおお?」
アスマはパンの袋をあけた。
朝食のようだ。
カカシは昨夜のドラ●もんの事を思い出した。
迷子の彼は無事シカマルの家に行けたのだろうか?
どら●もんとシカクさんはもしかして、友達なのか?
アスマはぱくぱくとあんぱんを食べている。
「なあ、お前、やっぱり、紅の私生活とか気にならない?」
”ぎくっ”
真面目なアスマは紅という言葉に少し身を固くした。
「ま、まあな・・・・」
「紅の部屋、見てみようぜ」
”もじもじ”
カカシはあの鏡を取り出した。
紅の部屋を映し出す。
「これは?」
「見ろよ、紅の部屋だぞ」
花柄の美しいカーテン。
観葉植物。
モニターは壁を映した。
壁一面に並ぶ酒の瓶。
「すげー飲み屋みたい」
「嘘だ・・・・」
アスマは頭を抱えた。
「冷蔵庫を見てみよう」
鏡が映し出したものは、
ビールの缶とキムチ、
他にはなにもない。
”ひゅう〜”
アスマの心に寒い風が吹いた。
美しいくノ一の日常。
現実は寒い。
カカシは家路に急いだ。
今夜はじっくりと、イルカ先生の私生活をのぞこう。
あの素敵なイルカ先生はどんな生活をしているのだろう?
誰でも好きな人の私生活は気になる。
カカシは夕飯も忘れ、不思議な鏡を覗く。
丁度、イルカが帰宅したようだ。
手にはスーパーの袋。
イルカは忍服のベストを脱いで、半纏をはおった。
買い物の袋からは、どざどざとカップ麺。
(やっぱり、ラーメンか)
「今夜は塩にしよう!」
イルカは1個のカップ麺を選び、残りはしまった。
(まあ、酒の瓶よりはいいよな)
イルカはやかんでお湯をわかした。
ずるずると彼はテレビを観ながら少し寂しい夕食をとっていた。
でも、そんなところも素敵だ!!
「やっぱり、1個じゃあ足りないなあ〜」
イルカ先生はお腹をさすった。
どうやら、食事の量を気にしているらしい。
彼は冷蔵庫から、緑色のドリンクをだした。
おそらく、それは青汁。
「健康が一番だな」
イルカはつぶやいた。
インスタント麺で、健康が、とは疑問だ。
やがて、カカシが一番楽しみにしていた。
入浴タイムだ。
イルカ先生は脱衣所で衣服を脱いだ。
カカシは思わず自分の下半身の恐竜さんが、むずむずするのを感じた。
”ごっくん”
衣服を脱いだ、イルカ先生。
スラリとしたボディ、
何故か肝心の場所にはモザイクで映らない。
入浴ですっきりとしたイルカは、お風呂から、あがり体重計に乗った。
「いゃ〜〜増えている!!」
裸のままイルカは部屋に飛びこんだ。
下半身には相変わらずモザイク。
イルカ先生は体重が増量してしまったようだ。
彼はおもむろに、くねくねと体操をはじめた。
四つん這いになり、本人は美容体操のつもりだったのだが、いかにも怪しげ
で、いやらしいポーズ。
「ああ〜もう〜だめええ」
カカシは興奮に鼻血がたれた。
好きな人の私生活は知らない方がいいかもしれません。
100629.
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大自然の緑の森はボクのパラダイス・・・・。
その日、暗部出身の笑顔が爽やかな青年は久しぶりに森を訪れた。
今日はどの木にしょうか?
「ああ、あの子がいい!」
葉が多くおいしげり、いかにも元気そうな枝に太い立派な木。
ヤマトはその木を今日のお相手に選んだ。
時々、こんな風に自分と木を一体化させて、癒されている。
そうすることで日頃のしがらみやストレスからも解放されるのだ。
大木となって1時間が経過した。
さわさわと風が吹く。
「イルカ先生、こっち、こっち!」
「もう〜待って、カカシさん」
ヤマトは仰天した。
(カカシ先輩とイルカ先生・・・)
それはヤマトが最も憧れる、暗部時代の先輩、はたけカカシとその恋人であ
り、中忍のうみのイルカだ。
二人はよりによってヤマトが一体化しているこの大木のもとに立った。
「ここがいいですね」
「ええ」
二人は見つめあった。
こんな深い森の中ならば、最も二人は何処でもお互いしか見えない、恋人同
士。
(そ、そんなあ)
手をつないで、二人は腰をおろした。
「ねえ、キスしていい?」
「もう〜せっかちさん」
「だって〜ここなら、誰も来ないでしょう、ふふふ」
カカシは嬉しそうに鼻をふくらませた。
「もう〜エッチ」
”キャハハハ”
(どおしょう!)
ヤマトは苦悩した。
今、この場ででていくわけにはいかない。
かといって、このまま、この馬鹿なカップルを見るのは・・・。
「ねえ〜イルカ先生、今年のクリスマスはどうする?」
(今からクリスマスって、まだ3月なのに)
カカシの問いにうみのイルカはかわいく微笑んでみせた。
「おれは、カカシさんとならなんでも」
でれでれとカカシは可愛い自慢の恋人の頭をなでている。
「じゃあ、お正月はどうする?」
”って、おい、まだ3月だろうに!”
ヤマトはどついてやりたい気持ちをぐっとこらえた。
「3日間ごろごろ2人で」
「うわあ〜楽しみですう〜」
先輩は大丈夫なんだろうか?
そんなラブな2人はお弁当をひろげた。
そろそろ昼時だ。
ボクもお腹が減った。
”むずむず”
その時、ヤマトは自分の腹のあたりがむずむずと感じだ。
(おトイレにいきたい!)
しかし、動けない!
ヤマトはじっと我慢した。
そんな事はおかまいなしで、木の下の恋人同士は旨そうにカカシの手製の
弁当を食べている。
「せんせい、ほっぺにご飯がついてる」
カカシはイルカの頬についた、飯粒をぺろりと自分の舌で舐めた。
そ、それにしても、あんなに嬉しそうな先輩って、何時からあんなふうに、あ
あ〜う、恨めしい・・・。
「ね、そろそろいいでしょう?」
「ええ、でもまだお昼なのに?」
「知ってますミ●ネ屋で、お昼にすると金運がつくって先週放送していました
よ」
「ほ、ほんとうですか?」
「やっぱり関西の番組はいいですね、目のつけどころが」
「そそうですね」
「じゃあ〜」
”ぶちゅう〜〜”
(ああ〜ついに、ついに!!)
二人は強烈なキスをかわした。
とんだ1日だった。
やっと2人が去った後、
ヤマトは自分に戻った。
半日トイレにも行けず、我慢したあげく、あの二人のらぶらぶを胸が悪くなる
ほど、見せつけられた。
”ひゅう〜”
3月の風が吹いた。
心の中に、
「もおお〜いやあ〜〜〜!!」
10.06.22. |
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イルカちゃんの背中に黄色いリュックがちょこんと背負われていました。
羨ましいなとカカシは思った。
カカシ君は今年5歳になる天才忍者少年。
今日は修行はお休みで、カカシ君の一番大好きなお友達と二人で公園で遊
んでいました。
「イルカちゃん・・・・あの・・・リュック・・・あのね」
「なあに?」
にっこりと春の太陽のような笑顔でカカシを見つめる、カカシの大好きなイル
カちゃんの笑顔。
カカシはもじもじした。
「黄色いヒヨコのリュックかわいいね」
イルカちゃんは4歳、その年ごろの子供らしくヒヨコの鞄が似合っていた。
「ねえ、カカチもしてみる?」
「ええっ!?」
イルカちゃんは自分のリュックをおろしカカシに渡しました。
カカシ君は困ってしまいました。
だって、ヒヨコの絵のはいった黄色い鞄なのです。
「カカチ、どうしたの?かおがあかいよ」
「うん、これはイルカちゃんだから、似合うんだ・・・俺には似合わない・・・」
「なんで?カカチだってにあうとおもう」
イルカちゃんに勧められカカシは勇気をだして黄色いリュックサックを背負っ
た。
小さなリュックは軽い。
「ねえ、おかしくない?」
「ぜんぜん」
「ホント?おかしくない?」
「うん、ぴったり!」
「そ、そお〜」
ははは、
カカシ君は照れてしまいました。
その夜。
カカシ君はお父さんのサクモさんと、スーパーで買ったお弁当を食べていま
した。
「なあ、カカシ、今日公園でおまえヒヨコの鞄もって喜んでいただろう?」
「えっ?」
カカシ君はそうお父さんに指摘され焦っておかずのエビフライを落としてしま
いました。
「子供みたいだな、おまえ」
”はっはっはっ”
父は失礼にも笑い飛ばしたのです。
カカシ君は固まってしまいました。
所詮まだ5歳。
ショックでその晩のお弁当を半分も残してしまいました。
100218. |
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鏡の前で青年はじっと自分の顔を見つめていた。
大きく黒い瞳に鼻には一本の傷。
彼は自分の指で頬をつついた。
そこには吹き出物。
「ああ〜最悪」
彼は吹き出物を消そうと念入りに洗顔をしていた。
明後日はあの人と会うのに。
ああ〜ダルイ。
そういえばこの2.3日は暑くて水分ばかりでまともに食事をしていなかっ
た。
タオルハンカチで青年、うみのイルカは汗を拭った。
季節は夏。
じりじりの太陽。
「イルカ先生!」
「サ、サクラじゃないか」
ピンクの髪の美少女がイルカの方に駆けてきた。
春野サクラはイルカの昔の教え子だ。
美人で頭のきれる生徒だった。
「元気でやっているか?」
「はい、先生。・・・ええっ?顔にぶつぶつが」
イルカは恥ずかしくて手でそれを隠した。
「なあ〜サクラは女性だから詳しいだろう・・・・どうしてもすぐ治したいんだ、
これ」
サクラは腕をくんだ。
「そおね。でも随分大きい吹き出ものね、めだつわよね」
サクラは考えた。
「あっ!そろそろ時間」
「じゃあ先生、私もこれから演習だしそれが終わったら」
「本当か?有難うサクラ。カカシ先生にもよろしく」
「了解」
サクラは元気に駆けていった。
(カカシ先生)
イルカはその場に立っていた。
そうだ、カカシ先生にこんなデカイ吹き出物を見せたくない。
大きな吹き出物はイルカの今の悩みだった。
”いゃん”もうこんな時間。
サクラは演習会場に走った。
この日に限って日頃遅刻してくる担当上忍が先にきていた。
「サクラちゃん遅刻だってばヨー」
「遅かったなサクラ」
サクラと同じ7班のナルトとサスケ、担当上忍のはたけカカシが集まってき
た。
「遅刻なんて珍しいじゃないの」
「カカシ先生には言われたくないわ。・・・ちょっとイルカ先生に会ったのよ」
「イルカせんせいに!」
イルカ先生という言葉にはたけカカシは反応した。
手にしていた本をしまう。
「イルカ先生がどうしたってばヨー」
「そ、それがね、ぷっ!」
サクラは思い出して吹き出した。
「なに笑ってんのよ」
「イルカ先生の顔ににきびが」
”いゃ〜ん、言っちゃった。
何故だか全員、カカシ、ナルト、サスケの表情が変わった。
「一大事ダッテバヨー」
「イルカ先生はデリケートだからな」
「でも大丈夫。私に考えがあるから・・・にしてもみんなやけに熱心ね」
演習もせず、一同は真面目にイルカの話をしていた。
イルカの知らぬところで・・。
イルカは教壇に立った。
一番前のセンター席に座っていた木ノ葉丸がイルカの大きな大人ニキビを
発見した。
「イルカ先生、顔にぶつぶつができてるぞコレ」
生徒達はコソコソ笑った。
「何言っているんだ。ニキビは青春のシンボルだ」
「もう先生は青春は終わっているぞコレ」
”はははは”
生徒達は無責任に笑う。子供は残酷だ。
”ぐさり”
そうさ、俺はもう大人、ニキビじゃない、吹き出物だ。
イルカは汗をぬぐった。
夕方、イルカはアカデミーの入り口でサクラを待っていた。
ところがサクラは一人ではなかった。
「な、ナルト、サスケまでどうした?」
「イルカ先生の一大事ホオッテおけないってばヨー」
「でも〜〜」
「そおですよ、イルカ先生」
”ぬう”
何時の間にかイルカの前には彼がぬぼっと立っていた。
長身で銀色の髪の、イルカの憧れの人だ。
「いゃ〜〜〜」
イルカはニキビを手で隠した。
一番見られたくない人に、
「サクラ〜〜〜」
「みんな一緒に来るって五月蠅くて」
”さあ〜いきましょう”
(カカシ先生)
この少しぬぼっとした上忍、はたけカカシにイルカは恋をしていた。
明後日の夜二人で会う約束をしていた。
ぞろぞろと5名はある場所に向かった。
「山中花店」
花屋である、同時にサクラの親友でライバルの山中いのの自宅である。
いのは店を手伝っていた。
「いゃだあ〜サスケ君まで、きてくれたのねえ」
サスケ命のいのは頬を赤く染めた。
「いのは美容方面に詳しいのよ」
確かに美人のいのなら色々アドバイスがもらえそうだ。
いのはサクラとイルカだけを連れて2階の部屋にあがった。
残されたメンバーは居間で麦茶をご馳走になった。
女らしい綺麗な部屋だった。
「イルカ先生、最近おおきいの毎日でています?」
「う●こか?」
「もう〜〜」
「そういえば便秘しているかな」
「そう、お野菜は食べています?」
イルカは首をふった。
最近は忙しくカップ麺ですませている。
「もう駄目じゃないの〜」
「だめかな?」
「わかったわ、待っていてね」
いのは部屋を出て行った。
やがて巨大な皿にたっぷり透明の物が乗せられてきた。
それは寒天。
「さあ、先生食べて」
「これを・・・こんなに?」
「イルカ先生、治したいんでしょう、さあ〜」
「ああ・・・」
イルカは騙されたと思い大量の寒天を食べた。
「これで毎日、洗顔をかかさないで」
いのはイルカに洗顔ソープをくれた。
「なあ〜本当になおるのか?」
寒天の食べ過ぎでお腹が苦しい。
「私も毎日食べているから。ふふふ」
”そうか”
綺麗な肌だものな。
取り合えず信じてみよう。
イルカは自分のアパートに帰った。
いのからもらった洗顔ソープで顔を洗った。
翌朝。
イルカはミシミシと背中とお腹が痛むのを感じ目が覚めた。
(やばい)
イルカはトイレに駆け込んだ。
”ズズズズズ”
これは言葉には形容しがたいことだ。
巨大な巨大な立派な子供をイルカは産みおとした。
あの大量な寒天は効果絶大だ。
「はあ〜」
イルカは鏡をのぞきこんだ。
ほんの少しだけ顔の吹き出物は消えていた。
感激でイルカは鼻をすすった。
あのはたけカカシとの約束の夜。
二人はお互いの仕事がひけてからお酒を飲む予定だった。
イルカは張り切って教壇に立っていた。
もう顔のぶつぶつとはサヨナラだ。
のりのりで授業を進めた。
今夜が楽しみだ。
イルカは待ち合わせの公園にむかいてくてく歩いていた。
今夜も暑い。
公園のベンチで彼を待つ。
どきどきする時間だった。
やがて規則正しい足音が聞こえた。
ただ、何故かそれは複数きこえた。
「げっ!?」
カカシ先生にはオマケが3人ついてきた。
「イルカ先生!!」
ナルトがイルカに飛びついてきた。
「そ、そんな〜〜〜」
二人きりのはずが、
イルカは目でカカシを睨んだ。
「いゃあ〜すみません、・・・つい先生と会うって話たら、みんな一緒きたいっ
て〜」
”ははは”
カカシは明るく笑った。
「先生、すっかり綺麗になったわね」
「ああ〜サクラおかげで治ったよ」
ぴかぴかになった俺の顔。
サクラといのには今度お礼をしないと。
残念ながら今夜はカカシ先生と二人にはなれない。
「じゃあ〜イルカ先生、折角ですから回転寿司でも」
「いいですね」
わ〜っとナルトたちから嬉しそうな歓声があがった。
「イルカ先生、すっかり元に戻りましたね」
「はい」
「ところであの後う●こはでましたか?」
「あ・・・・・・・」
「もう、皆で噂したんですよ・・・・先生のう●こ」
カカシは食事中に平然と言った。
イルカはうつむいた。
「美人ほど大きいって話ですけど、先生はどうですか?」
興味深そうにカカシはイルカの顔を覗き込んだ。
恋するイルカは答えに困惑した。
片想い、
今はまだ俺一人の想いだ。
大好きな彼の前でイルカはただ赤くなり回転する寿司を見つめていた。
100626
★夏場の話です。 |
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この手で幼い子供を殺した。
それが今回の俺の任務だから。
暗部の任務は非情だった。
そのせいか少しだけ俺は常人の感覚が欠けそうだった。
(イルカに会いたい)
はたけカカシは20歳になっていた。
カカシにはかわいい恋人がいた。
名前はうみのイルカ、子供の頃、二人は出逢い、ずっと寄り添って生きてき
た。
大切なかけがえのないイルカ。
カカシは自宅に戻り、手を洗った。
石鹸をつけ念入りに血のついた手を洗った。
洗っても洗っても血の匂いは消えなかった。
「カカシ、なにしているの?」
ちょこんとイルカがカカシの背後に立っていた。
「なあに?」
「だってもう30分もずっと手を・・。そんなに洗うと手があれるよ」
カカシはタオルで手を拭いた。
イルカの丸くぱっちりとした黒目は少し悲しそうだった。
「イルカ、こっちに来て」
「うん」
カカシは華奢なイルカの身体を抱きしめた。
冷えきった氷の心を、
彼は春のような優しい微笑みで溶かしてくれる。
イルカは何時も何があっても訊かない。
「今、お茶をいれるね。・・・今日、アスマさんからお団子もらった」
「はい、はい」
イルカはお茶をいれている。
俺がまだ人間でいれるのは、イルカがそばに居てくれるから。
彼が待っていてくれるから、
どんな危険な任務でも必ず帰って来れる。
開いた窓から、柔らかな風がただよう。
甘い春先の匂い。
カカシはほっと瞳を閉じた。
何時しか手についた血の匂いはきえていた。
君がいてくれるから。
100305. |
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ミルクをたっぷりといれた、カフェオーレ。
まだ半分目が覚めない頭で、うみのイルカは朝食用にパンを焼いていた。
非番の朝で、本当はもっと休んでいたかったのに、習慣で同じ時刻に目覚
めてしまった。
そうだ、今日はやるべきことが多いのだ。
1年の最後の月の後半は誰もが慌ただしく過ごすものかもしれない。
そういえば、今日はクリスマスイブだった。
まあ、一人の自分には関係のない事だ。
(ケーキくらい食べてもいいかな)
カリカリトーストをかじりながら、イルカはクリスマスの純白のケーキを頭に浮
かべた。
一度でいいから、丸ごと食べてみたいもんだ。
イルカは約半日をかけ、アパートの部屋の清掃を終わらせた。
同じ部屋なのに、空気まで澄んで、気持ちがよかった。
イルカはコートをはおった。
木ノ葉の街並みも遠い西の国のお祭りでここ数年は当たり前のように祝わ
れていた。
きらきらと赤や緑の電飾が鮮やかで、イルカは思わずため息をついた。
一軒のレストランの前に純白のツリーがひっそりと、置かれていた。
派手さはないが、それはとても優美だった。
ぼんやりと佇む自分の肩を誰かがたたいた。
”ぽん!”
イルカは不意の事で飛び上がった。
「やあ〜イルカ先生」
とぼけ上忍参上。
「カカシさん、びっくりしました」
「あなたが、そこにずっと立っているのが、気になって・・・もしかして待ち合
わせですか?」
「いえ、あんまりこのツリーが綺麗で見ていただけです」
「確かに白くて、きれいで、イブには・・・うううっ」
木ノ葉を代表する上忍は、目頭を押さえた。
「どうしたんです?」
「な、なんでもありません」
なりゆきで、二人は街をぶらぶらと彷徨っていた。
どこからか、クリスマスソングが流れている。
「イルカ先生、ここで待っていてくれますか?」
「あ、はい?」
カカシは洋菓子店に消えた。
里で有名な一流スイーツ店。
きっと、カカシさんには、今夜約束をかわしたひとが居るのだろう。
羨ましい話だ。
シングルの俺とは大違いだ。
俺も、誰かとイブを過ごしたい。
独身の誰もがおもうよう、イルカもスイーツのような恋を思い浮かべた。
「お待たせしました」
大きな箱を大切そうに抱えカカシが戻ってきた。
ただ、少し表情がさえない。
「今年はケーキとおせちを予約しました。・・・・でも彼女とは昨夜別れまし
た・・・・くううう〜今夜はやけ食いです〜〜!!」
「えええ!!?」
イブの前日に破局?!
「イルカ先生、手伝っていただけますか?」
そう、カカシが別れた女も黒髪だった。
一人で過ごすにはイブは悲しすぎる。
イルカは手土産にチキンを買った。
なんだか、パーティーらしくなってきた。
「すごい・・・・・」
カカシに案内され始めてはたけ家の前に立ってイルカは躊躇した。
豪邸だった。
まるで、映画のセットのような非現実空間だった。
現実アパート生活のイルカには、躊躇して当然の家だった。
広いリビングの上には、今朝、イルカが夢みた純白のケーキが眩しかった。
カカシはグラスをならべた。
「俺達、まるで恋人同士みたいですね」
「ええっ?!」
「スミマセン!気持ち悪いですよね。俺のような男にイルカ先生が、そんなわ
けないですよね」
「あ、そんなこと・・・・・」
”考えた事もない”
はたけカカシと恋人?
二人で手をつないで歩く姿をイルカは想像した。
カカシは笑いながら、グラスにワインをそそいだ。
丸いケーキは真ん中から半分にカット。
どうやら、一人半分、カカシのやけ食いは本気のようだ。
「あのう・・カカシさんのお付き合いした女性はどんな方だったんです?」
「うん・・・黒い髪で黒い瞳で・・・・ううう」
カカシは目頭を熱くしてケーキにかぶりつく。
本来は甘い物は苦手だった。
そう、このケーキだって、別れた女の為に用意したものだ。
もう、忘れよう。
終わった恋など俺はおわない。
全部食らいつくして、忘れてしまおう。
ワイン1本を呑み、カカシは木ノ葉酒をだした。
”ぐいぐい”
「めりくり、めりくり、イルカ先生」
「めりくり、めりくり、カカシ先生」
気がつけば隣に誰かがいた。
ぱあっと気分が明るい。
のんで、
のんで、
やがて、イルカは横になり眠りこけていた。
(さぶい)
ずきずきと頭が割れそうだ。
寒さでイルカは目覚めた。
ここは何処?
イルカは自分のベットとは違う大きなベットの上で眠っていたのだ。
来ていたはずの服はなく、裸だった。
(しまった!)
同じベットには裸の男性。
(嘘だろう?!)
昨夜は、カカシさんとクリスマスを祝って、ケーキにお酒を・・・・。
それから?!
”うわ〜〜〜〜”
酔った勢いで、俺は、あのカカシさんと!
”たらたらたら ”
額には汗がたれた。
「うう〜〜ん、イルカ先生〜〜すけべ〜〜」
ベットの上では白銀の髪の、超イケメン、素顔のはたけカカシ。
イルカは自分のパンツを慌てて探した。
このまま、「すっぽんぽん」ではいられない。
とにかく、今日のところは逃げ出そう。
イルカのパンツはみつからず、はかずにズボンをはいてイルカは逃げ出し
た。
クリスマスの日の出来事。
ベットの中のイルカ先生はとても、愛くるしかった。
カカシが目覚めた時にはもう彼はいなかった。
ベットの中に彼のはいていた、青のトランクスが残されていた。
イルカ先生はパンツをはかずに帰ったのか?
風邪ひかないといいけど、
青のブリーフからは、とてもスイートな香りがした。
使用済みのそれは、カカシのコレクションとなった。
クリスマスが去った後の里はさらに慌ただしい。
今年も、残すところ数時間。
イルカは、蕎麦を買いに近所のコンビニに立ち寄った。
蕎麦といっても、一人のイルカはカップ麺ですませている。
籠に麺とスナック菓子をいれたその時、がさりとカップ麺がもう一つ籠に投
げ入れられた。
”ギョッ”
コンビニで、はたけカカシと、ばったり”
あれ以来二人は顔を合わせていなかった。
「カカシさん、あの・・・このあいだ・・・・あの・・」
「よかった、二人で新年をむかえましょう」
「あの・・・・」
「ああ、これは俺が買います」
「でも〜〜〜」
「誓いあったイブの事は一生俺は忘れません」
(なに〜〜〜)
誓いあった、記憶はイルカにはなかった。
再びイルカはカカシと彼の豪邸を訪れた。
カップ麺をずるずるとすする。
「カカシさん、イブの事は俺は酔っていて覚えていませんでした・・・本当で
す」
”ゴメンナサイ”
イルカは頭をさげた。
「ぜんぶ忘れたの?」
「はい」
「ひどい〜〜〜新年になったら、二人で暮らす約束もしたのに・・毎朝俺の為
に味噌汁を作ってくれるって、あれは嘘だったんですか?
俺は遊ばれたんですか?ひどい〜〜俺の肉体がめあてだったんですか〜
〜〜」
「そんな?」
「ああ〜この世はおしまいだ」
カカシは箸を置いた。
「約束した内容はわかりませんが、でも・・・」
イルカはそっとカカシの手をとってそっと顔をカカシの頬に寄せた。
”ちゅっ”
軽く頬にキスを残した。
「ねえ、さむくない・・・」
「はい・・・・・」
「もうすぐだから・・・・」
静かな高台でイルカはカカシと共に初日の出を待っていた。
例えようのない、大きなエネルギーにただ2人は思わず手を合わせた。
一人だと思っていたのに、
ついこの間までは・・。
新たなる一年が始まる。
きっといい年になるだろう。
俺にも、カカシさんにも、
そして、あなたにも・・・。
今年も宜しくお願いします。
101219.
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カカシ君は昨夜は遅くまでお父さんと忍術のお勉強をしました。
今年5歳になるまだ子供ですが、もう大人と変わらぬことまで理解できる天
才少年です。
カカシ君のお父さんは里でも有名な忍で「木ノ葉の白い牙」というカッコイイ
名前で呼ばれています。
毎日、朝早くから夜までカカシ君は修行に汗しました。
一日も早く、父のような里を支える忍に成長したい、それがカカシ君の夢で
す。
「父さん、おきて、おきて」
任務から帰った父はそのまま着替えもせずにころんとソファに横になって眠
ってしまった。
カカシは毛布をかかえて、父の身体にかけてあげました。
よく眠っていて、起こすのがなんだか可哀相だったのです。
カカシは小さな手でおにぎりを作りました。
父さんが何時目が覚めても食事が出来るように・・・。
「カカシ先生って意外と健気だったんですね〜」
ファミレスでドリンクバーの紅茶を飲みながら、イルカは、はじめてカカシの
子供の頃の話を訊いた。
カカシの父は里の英雄でした。
どんな形で最後となろうとカカシには世界一、尊敬できる父だった。
「イルカ先生のお父さんってどんな方ですか?」
カカシは冷たい紅茶を一口飲んだ。
「おれにそっくりでした」
”にかっ”
「あっ、了解しました。説明は不要です」
「ひど〜〜い。・・・・父ちゃんはまめな人でお料理やお洗濯も上手でした・・
そのぶん母ちゃんが男っぽくて」
カカシとお互いの両親の話をするのは始めてだった。
「それで今日、俺がイルカ先生をお呼びしたのは・・・」
カカシは腕を組んでイルカの顔を真面目な表情で見た。
「えっ?デートではないんですか?」
イルカはぷっと頬をふくらませた。
そうするとますます愛らしい。
「いえ、デートですけど、不思議な写真を見つけて」
カカシは一枚の写真を懐から出した。
古いもので色あせていた。
それはカカシの父のはたけサクモとイルカが並んで仲良く笑っている一枚。
「とうちゃん?」
「やっぱり!」
カカシの父とイルカの父は昔知り合いだったようだ。
二人の笑顔はとても幸福そうだった。
カカシは怪しいと感じていた。
父はイルカの父と交際していたのではないか?
「あれ?」
カカシはその写真を見ているうちにある疑問が頭に浮かんだ。
イルカの父はイルカにそっくりだというが、鼻にはくっきりと傷がある。
親子して同じ場所に、それはおかしい。
というとこれは?
「やっぱり20年以上前のことって忘れてしまいますね・・・こんな事あったか
な?」
「は?」
「いえ、なんでもありません。・・・・カカシ先生、ドリンクおかわりします?」
「はい、では今度はエスプレッソで」
イルカは微笑んで誤魔化した。
まさか、この古い昔の写真は俺なんですなんて、言えないよな。
それは昔、イルカと白い牙が同じ任務の時のものだ。
イルカはその当時から歳をとっていないなんて、
サクモさんも素敵だったな。・・・まさか息子さんとお付き合いするなんて考え
てもいなかった。
そんな怖い話、カカシ先生には言えない。
口が裂けても・・・。
「大切なお父様の思い出大事にしてくださいね」
優しくイルカは微笑んだ。
カカシの頬が赤く染まった。
うみのイルカ、推定24歳。
謎の中忍。
090525.
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