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カカシは軽く地面に着地した
「おはようございます。イルカ先生」
「あ、あ、おは・・・ようございます」
ぎこちなくイルカは微笑む。
二人はベンチに腰をおろした。
「ねえ、イルカ先生お腹へりません?」
「はぁ・・・・」
カカシはのほほんと言った。
「ファストフードのお店がいいな」
カカシはパックンを先に帰した。
イルカはカカシの後をついて街中に戻った。
里の中心地にある店は24時間営業だ。
「汗かいちゃいましたね」
カカシは無造作に口布に手をかけた。
「!!」
想定外の美貌にイルカは息を飲んだ。
「ああのう・・・、俺なんかに御顔をさらしていいんですか?」
「あ?いいですよ。イルカ先生ならば」
素直に喜んでいいのだろうか?
イルカは少し困惑した。
カカシはマイペースにマフィンで出来たバーガーを頬張る。
「どうしたの?食べないの・」
「いえ」
イルカも同じものを口にした。
口にチーズとソーセージの味がひろがる。
(おいしい)
少しだけイルカの気持ちが楽になった。
「カカシ先生はよくこのお店に?」
「いいえ、一人じゃあね。外からちらちら覗いていたんですけど、そしたらイ
ルカ先生とい会ったし」
「丁度よかったというんですか?」
「いえ、あなたとならば、朝のコーヒーが飲みたいななんてね」
(どうとればいいのか?)
イルカはコーヒーを口にした。
「あの、カカシ先生はあの公園にはよく行かれるんですか?」
「いいえ。たまたまですよ」
多分嘘だろうな、イルカはそう感じた。
カカシは2杯目のおかわりをイルカの分まで買ってきた。
「なんだか、イルカ先生少し元気ないでしょう?」
「そうみえるんですか?」
「この間、お酒を飲んだ時も時々視線が泳いでいましたよ、右の上にいった
り、左の下にいったり・・・・」
「え?」
「過去と未来をみていたのかな・・もしかして・・」
”過去と未来”
確かにそうなのだろうか?
今までの事やこれから先の事を考えていた。
イルカはただ漠然と答えをさがしていた。
どうしたら、もっと、
どうしたら自分が変われるのか?
表面には隠していても、
カカシ先生にはズバリ見抜かれていた。
その日は朝食をとりその場で別れた。
別れ際に。
「またあの公園で会えたらいいですね」
言葉は不思議だ。
とらえかた次第で良くもなれば悪くもなる。
イルカはその言葉をポジティブに受け止めた。
数日後、はたけカカシは里外の任務にでていった。
イルカはあれ以来、出来るだけ毎日街を走った。
最後にはあの公園に行って、自分も鉄棒にぶら下がった。
走ったその日は穏やかな気分で過ごせた。
その日の朝は小雨降っていた。
イルカは最近購入したスポーツウエアーに着替え、小雨の中をかけた。
走る事にすっかり慣れた。
気がつくとかなりの速度まで軽くだせるように、なっていた。
イルカは街をまわってあの公園に入った。
公園には傘をさしたカカシ先生が立っていた。
「カカシ先生!」
思い切って自分の方から声をかけた。
「やっぱり来ましたね」
「はい」
カカシは自分の傘をイルカに差し出した。
「今朝は牛丼しません?」
相変わらずのほほんと彼は言う。
「卵もつけて」
二人は笑い合った。
好きですなんて、なかなか言えない。
でも、今はここまででいいのだ。
「イルカ先生ほっぺに米粒ついてます」
牛丼屋でカカシはイルカの頬についた米を指でつまみ自分の口に入れた。
(どうしたらいいんだ)
「はずかしい・・・・・」
イルカは赤面した。
カカシは声をたてて笑った。
「好きですよ、あなたのそういうところが、あ、自分から言ってしまいました」
赤面。
混乱。
動揺。
それを見てカカシは嬉しそうに目を細めた。
イルカが走り始めて半年近くが経過した。
何時の頃からか、カカシも参加できる日には一緒に走った。
ラストは公園だ。
二人はベンチに腰をおろした。
「イルカ先生、俺ね、先生の方から好きだって言ってほしかったんです」
ぽっりとカカシは言う。
まっすぐにイルカをみつめた。
「でも・・・・・おれ・・・」
「本心はなかなかいえないか・・・・」
イルカは汗を拭いた。
手を握りしめた。
好きというこの一言が言えない。
自分は駄目と決めつけて、カカシ先生と自分を比較して、口に出せないで、
ずっといた。
「イルカ先生。何でも口に出さないと相手には伝わりませんよ」
その言葉はイルカのこころを動かした。
「気がついたら、カカシ先生が好きで、すきで・・・・・・あなたが・・」
「言った!」
自然とイルカの瞳から涙がこぼれた。
熱い涙。
カカシはその肩を抱き寄せ、強くイルカの身体を抱き寄せた。
自らの前に立ちはだかった、壁は、ぶち壊していくしかないのだ。
さあ、次のステージに行こう!
だって、未来なんて誰にもわからないんだから。
100719. |
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大きな壁だった。
自分の前に四方八方取り囲むように、白く重い壁がたち、何もかもが空虚に
感じる。
ただ、そういう事は誰にでもあるのかもしれない。
例えば、アカデミーで授業をしていても、受付をしていても、
何処かで自分の至らないところや存在の小さな処に落胆している。
イルカはぼんやり自宅のアパートで観てもいない、テレビを流して酒をのん
でいた。
(俺一生このままなのかな?)
教員という職業に不満があるわけではない。
将来里の未来をせおっていく子供たちを育成する、
やりがえのある仕事だ。
自分にはそれにむいているなんて、思っていた。
ただ、このままで終わるのか?
そんな問いかけが頭の中で、もう一人の自分から聞こえてくるのだ。
「ああ、やめた、やめた!」
イルカはリモコンでテレビを消した。
ベットの上に腰をかけ、瞳を閉じた。
身体の力をぬいて、
まとまらない頭の中を整理するよう・・・。
そうしていると、ぼんやりと暗闇の中にある人物の姿が浮かんでくる。
木ノ葉の里の重要人物、はたけカカシの顔がうかぶ。
何時からか、何故だかイルカはカカシと親しくなっていた。
プライベートでも会う仲になっていた。
イルカには不思議なことだった。
カカシさんと自分を比べたら、自分などは平凡すぎて、強くもなく何もとりえの
ない人間なのに・・・。
それなのに、カカシさんはそんな自分に好意を持ってくれている。
会うたび、二人は様々な会話を楽しむ。
任務とは無関係な日常的な話題だ。
気さくに彼は自分に語りかけてくれる。
でも、本当のところはどうなんだろう?
他人の本心はわからないものだ。
そう頭の隅で考えるのが半分。
残りの半分は彼がみせてくれる笑顔やさり気ない優しさに、イルカのこころ
は揺らいでいた。
それは好意というものではない、恋のようだ。
でもその事はけして言葉にはだすまい。
イルカは本心を隠した。
翌朝、暗い部屋をイルカは飛びだした。
少しランニングをして忍としての基礎からはじめよう。
イルカは人気のない街を走った。
じんわりとにじむ汗をタオルで拭う。
ただ何も考えずに、走る。
”やりたい事をノートに書きだしてみたら”
そんな事をある時カカシさんは言っていた。
自分は変わりたい。
少しでも、1pでもいいから今より上をめざしたい。
ただ一人悩むだけでは先には進まない。
喉が渇いた。
イルカは公園に入り、持ってきた水筒を出した。
小さな公園だが、ベンチとシーソーと鉄棒がある。
イルカは思わず、目を見はった。
鉄棒にあのはたけカカシがぐるぐると回転しているのだ。
イルカは声をかけることもできず、
ただ見守った。
鉄棒の傍らにはパグがいた。
カカシの忍犬のパックンだ。
「おい、イルカ」
パックンがイルカに気がついた。
★後編は来週を予定しています。 |
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元気か?
俺は今、カカシさんと共に里外の任務にでているんだ。
へへへ。
任務の内容は極秘で、書けないけれど・・・。
野外にテントをはって生活中。
あの人毎晩激しくってさ、なんかテントだと、燃え上がるんだよね。
カカシさん、目がぎらぎらしていて、昼間とは別人みたいで、
俺は御蔭で寝不足だよ。
それなに、元気なんだ、あの人、川で釣った魚を生で頭から食べるし、山で
採れた謎のきの子も平気で食べるんだ。
俺は現場の人間の強さをみたよ。
そんなんで、俺は元気だよ。
ああ、お前から貰った巣●の赤いパンツ活躍しているから。
じゃあね。
イルカの手紙 2.
元気か?
今、俺はこれをテントの中で書いている。
今日、ちょっとした事件があったんだ。
カカシさんと二人で朝のご飯にツナ缶を食べていたら、信じらんない客人が
来た。
こんな山の中に!
木ノ葉の偉い人、あのダンゾウ様だよ。
生で見たのははじめてだよ。
噂にはきいていたけれど、俺が挨拶するなり、いきなり尻をなでてきた。
もう、カカシさんは、キレそうだし、怖かったよ。
しかもダンゾウ様はおつれに、へそを出したすごい綺麗な男のこを連れてい
た。
サイという名前らしい。
やっぱり暗部って、みんなそっち系なのかな?
ダンゾウ様とカカシさんの会話はきけなかった。
きっと里の内部の、秘密なんだろう。
さすが、カカシさん、かっこいいなあ!!
そんなんで、どきどきしたよ。
じつはね、俺、元暗部に所属していたの。
今まで、内緒にしていたけれど、モトアン!
ただのアカデミーの教員じゃあないんだ。
すご腕の忍さ、
なんてね、一度言ってみたいよ。
じゃあね。
イルカの手紙 3.
ねえ、知っている?
カカシさんの秘密じゃあないよ、
あの人は何をしても不思議じゃあないから、皆今更、驚かないよね。
じつは、俺、子供の頃、アスマさんとよく遊んだんだ。
アスマさんって、毛深いだろう?
それは、昔、二人で銭湯に行った時の事だ、
俺は見てしまった!!
アスマさんのお尻から伸びている、長いふさふさの毛!
しかも、みつあみだぞ!!
なんて、毛深いんだ!
なあ誰だって驚くだろう?
きょうりょく、アスマさん。
ただ、その時の事を俺この間、つい話てしまったんだ、
アンコさんにだよ!
しまった!どうしょう、
アンコさんと言えば、木ノ葉の和●アキコだよ!!
じゃあね。
この続きはまた書くからね。
1104289.
★この手紙はある特別上忍あてに送られたみたいです。
しかし、これは永遠と書いちゃうなあ〜(大丈夫か?)
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イルカの母が家に帰って一週間が経過した。
イルカは毎日、カカシにメールを送ったが、返信はなかった。
カカシは今、大事な任務なのだろうか?
何時もなら、知らせてくれるのに?
イルカの小さな胸は不安だった。
困り果てて父のうみのさんに、その事を訴えた。
「イルカ、よくきくんだ。・・・カカシ君とはもう会ったらだめなんだよ」
「どうして?!」
「カカシ君はこれから、修行を沢山しなければならない、忙しくてイルカと遊
んでいられないんだ」
「でも・・・・・・」
イルカちゃんは悩みました。
カカシが普通の子供と違うのはイルカちゃんにも、理解出来ました。
それでも、会ってはいけないなんて!
それは、酷いです。
自分は何かいけない事でもしたのでしょうか?
悲しくて、イルカちゃんは一人涙をこぼしました。
そんなイルカを黙ってうみのは抱きしめました。
カカシはカカシで、一人自宅のパソコンの前に座っていました。
イルカちゃんからの、メールをながめています。
それは、この一週間、イルカちゃんから、送信されたものです。
(やっぱり、イルカちゃんに会いたい)
それがカカシの本心でした。
「駄目だ!だめ、イルカちゃんの為なんだ」
その時、メールが届きました。
”カカチ、とうちゃんが、カカチとあったら、いけないって、イルカはもうカカチ
にあえないの?”
”ごめんね”
カカシはつい、返信をだしてしまいました。
イルカちゃんの、いない日常は寂しいものでした。
どんなに厳しい修行でも、嫌な事があっても、何時もイルカちゃんに会えば、
あの輝くような笑顔ですべて、忘れさせてくれるのです。
二人がよく遊んだ小さな公園、うみのさんから、作ってもらったお弁当。
御寺の木の下にカカシが作りだした、不思議な二人だけのアジト。
忘れられない事ばかりです。
せめて一目でいいから、イルカちゃんと会って話がしたかった。
カカシはぼんやりとイルカちゃんの写真をみつめていました。
ここ数日、父のサクモは自宅に帰宅しても、あまり言葉もなく、酒を呑んで本
を読んでいました。
はたけの家、カカシもサクモも暗くなってしまったのです。
その日、受付を任されたうみのの元にイルカの通う幼稚園の先生から連絡
が入った。
イルカがいなくなったという。
うみのは早退して、中忍待合所で待機している、妻の元に走った。
二人は幼稚園に駆け付けた。
イルカはお昼の御飯の後、姿がみえないそうだ。
「まさか誘拐されたのでは・・・・・」
うみのは狼狽していた。
「先生、イルカの様子は最近どうだったの?」
落ち着いて妻がに先生に質問した。
幼稚園の教員は20歳そこそこと若い。
眼鏡をかけた大人しそうな女性。
「気にしていたんですが、・・・イルカちゃん最近、誰とも遊ばないで、今まで
よく笑うイルカちゃんが、全然笑わないんです。わけを訊いても答えてくれま
せんでした」
イルカの両親は顔を見合わせた。
「もしかしたら、イルカはカカシ君に会いに行ったかもしれない」
「カカシ君に・・・・・」
二人はイルカ達が遊ぶ公園に行ってみました。
公園には白いのらネコがいただけで、イルカはいませんでした。
父と母は必死で息子を探しました。
夕方、少し暗くなった頃。
二人ははたけ家を訪ねました。
うみのはチャイムを鳴らしました。
出て来たのはカカシ。
「うみのです」
「う、うみのさん・・・・・」
突然、カカシの家にはうみのさんと、奥さんがきたのです。
「何かあったんですか?もしかして、イルカちゃんが・・」
「カカシ君のところかと、お昼すぎからイルカの姿がなくって」
「イルカちゃんが!!」
うみのさんの話によると、イルカちゃんの行動範囲はすべて探したという。
「古いお寺かも」
「御寺?」
「はい、御寺の大きな木の下に、二人だけの秘密の部屋があるんです」
カカシは説明した。
大きな木の下には、カカシの術で作りだしたワンルームの部屋。
冷蔵庫やテレビやゲームなどがそろっている。
二人だけの秘密の部屋だ。
イルカの母親は、まじまじとカカシという少年を見つめた。
はたけサクモの息子はとても、いい瞳をしていた。
カカシは古寺に両親を案内した。
大きな古い木だ。
「この木したなのか?」
「はい、今、開きます」
カカシは木の根元の小さな穴に細い木でできた鍵をさしこんだ。
”ごおおお”
入口が開いた。
それは不思議な世界だった。
5歳の子供、カカシが作りだした部屋。
入り口をくぐると下に降りる階段が見えた。
イルカは、下の部屋で横になり眠っていた。
身体を丸めていて、なんだか様子がおかしい。
「イルカ!!」
すかさず、イルカの母は息子の異変に気がつき、駆け寄った。
額に手をふれると、熱がある。
「イルカちゃん!」
カカシの声で、イルカは瞳を開いた。
「カカチ・・・・・あいたい・・・・・」
うみのはイルカを背負い、木ノ葉病院に走りました。
幸い発見も早く、イルカちゃんはすぐに回復しました。
よく晴れた秋の日曜日。
イルカは母親に連れられ外出しました。
今日は遊園地に行くというのです。
父は用事があるから、二人で家をでました。
イルカは母と手をつなぎ、ゆっくりと歩き始めました。
「このみち?」
母の歩く道は、何度も歩いた、カカシの家に行く道です。
「もうすぐよ、イルカ」
母ははたけ家の門の前に立ち、インターホンを押した。
玄関にでたのは、カカシの父のサクモだった。
カカシも後から顔をだしました。
「では、奥さん今日は1日、息子のことを宜しくお願いします」
サクモは深く頭をさげた。
「さあ、カカシ君、イルカ、いくわよ」
母は微笑んだ。
やわらかく、お日様のような微笑みだった。
イルカちゃんと同じ輝く明るい笑顔だ。
「よろしくおねがいします」
カカシはどきどきしました。
イルカは大好きな母とカカシと三人でゆっくり、歩きはじめました。
小さな小さな恋人たちは再び巡り合えたのです。
100903.
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強く風が吹く・・・。
深夜の音のない世界に風の音だけが寂しそうだった。
ぽっぽっともう先ほどから、空から冷たいものが降ってきた。
それは彼の銀色の長い髪を濡らした。
「ついに終わったか・・・・」
はたけサクモは空を見上げた。
その2時間前。
サクモは、うみのと会っていた。
二人が馴染みにしている居酒屋だ。
何時ものよう、二人は笑い話をしたり、
うみのと会うまでは、サクモは楽しい想像をしていた。
ただ、今夜はうみのの様子がおかしかった。
にこやかな彼が重く、真面目な表情でサクモを待っていた。
一目で何か起きた事を察した。
「実は先日、妻と話し合いをしまた・・・・今後の事、イルカの将来を考えて、
妻に戻ってきてもらうように、・・・私が妻に頼みました」
うみのの妻、すなわちイルカの母親は実家に帰っていた、現在別居状態だ
った。
そんな時、サクモとうみのは出逢ってしまった。
「それで、奥様はなんと?」
サクモはタバコを加えた。
「はい、戻ってきます。・・・・・サクモさん、もう・・こんな風にあなたとは・・・・
会えません・・・・今まで、イルカと私に・・・よくしてくださって、その・・・・」
彼の大きな黒い瞳は涙でいっぱいだった。
「よかったんじゃないですか。イルカちゃんにはお母さんが必要です。・・・う
みのさん、ワタシこそありがとう」
それは二人にとって、別れの言葉だった。
そうだ、初めから、何時かはこんな日が来る事などわかっていたのだ。
許されない、二人の関係。
それでも、あのひとやイルカちゃんが幸福になれるのなら、
サクモは胸をなでおろした。
雨の中、カカシの待つ家にむかっていた。
2階にはまだ、灯りがともっていた。
カカシはまだ起きているのだろう。
「父さん!」
雨の中を傘もささず歩いてきた父にカカシはタオルを用意した。
カカシには、何と伝えようか。
息子のカカシはまだ幼いが、しっかり者だった
サクモと同じ銀の綺麗な髪の少年。
二人は居間に移動した。
「父さん、なにか食べる?」
「じゃあお茶ずけを〜」
カカシの母親はカカシが生まれてすぐ他界した。
父親と二人暮らしのカカシは自然と家事が上手くなった。
サクモはカカシの用意した、お茶ずけを食べた。
「カカシ・・・・そこにすわりなさい」
「はい・・・・・」
重い沈黙だ。
「カカシ・・・イルカちゃんのお母さんが長期任務から戻った」
カカシは大きく目を見開いた。
「ホント?」
「ああ、父さんはもう、うみのさんとは会わない約束をした。だから・・・・おま
えも・・・」
そこで、サクモは言葉を止めた。
カカシはじっと、うつむいていた。
「大人って勝手だよ」
「そうだ。そういうものだ」
「もう会えないの、イルカちゃんと」
「カカシ、イルカちゃんのためだ」
「わかった・・・・・・・」
カカシは、口をつぐんで、一人2階の部屋にこもった。
カカシにはわりきれない。それでもイルカちゃんの為なら仕方ないことなの
だ。
大好きで、大好きで、ずっと一緒にいたい、イルカちゃん、大人になったら、
二人で任務をするのが、カカシの夢でした。
カカシの部屋の机の上には、二人で写した写真。
二人共楽しそうに笑っていた。
もう、この笑顔が見れないなんて、
その晩、カカシは一睡も出来ませんでした。
「とおちゃん、どこにいくの?」
小さなイルカは朝、父に起こされた。
日曜日で、まだ、眠っていたかった。
「さあ〜着替えて、母ちゃんが任務から帰ってくるぞ」
「か・・・あ・・ちゃん・・・」
イルカは夢中で着替えた。
”母さんは今大切な用事があって遠くに任務ででているんだ”
”イルカとうちゃんと、まつ”
その日から、
イルカはずっと、ずっと母を待ちつづけました。
(かあちゃん、)
黒いセミロングの艶やかな髪に大きな瞳、木ノ葉の忍服を着た女性はイル
カに駆け寄った。
「かあちゃん、かあちゃん!」
彼女は強く小さな息子を抱きしめた。
二人共涙を流していた。
かたわらで、うみのも涙を流していた。
「ごめんね、ごめんね。イルカ、寂しかった?」
「だいじょうぶ」
イルカはにっこりとほほ笑んだ。
以前より少しだけ、息子は成長していた。
うみのは妻とイルカを連れレストランに入った。
イルカは胸がいっぱいで、大好きなハンバークが食べられなかった。
「イルカ、どうしたの?残したらだめよ」
「はい、かあちゃん」
イルカちゃんはお母さんに会ったら話したい事が沢山あったはずなのに、
それなのに、言葉がでてきません。
「イルカはずいぶん、お兄さんになったのね」
「カカチのおかげだよ」
「カカチ?」
うみのの妻は少し、黙った。
カカチとは、はたけ上忍の息子の名前だ。
うみのは複雑だった。
まるで本当の兄弟のように、仲がよいカカシ君とイルカは別れる事になる。
それを、イルカに納得させなければ、ならない。
イルカはまだ子供なのだ。
イルカは両親と自宅に戻った。
「綺麗にかたずけているわね、流石あなたね」
「お前、が帰ってくると散らかるけどね」
二人は笑いあった。
「これからは、上手くやらないとね」
「そうだね、母ちゃん」
「ねえ、今夜は私がつくるから、実家で習ったのよ」
「それはすごい」
少し不安だ。
うみのの妻は料理のセンスがない。
イルカは父の部屋に入りパソコンをたちあがらせた。
カカシに、母が帰って来たことを知らせたかった。
返信は帰って来ない。
今日は家にいるはずなのに。
どうしたの、カカチ?
イルカの気分が深く落ち込んだ。
「どうしたの、イルカ?とおちゃんも食べないの?」
母が作ったご飯は不思議な出来物だった。
黒い米の中によくわからない、野菜が混ざっていた。
味は辛いようだ。
「これなあに?」
「これは、混ぜご飯よ」
「あ?????」
うみのは嫌な予感がした。
折角の久しぶりの妻の手料理だ、拒絶できない。
二人黒い米を口にした。
「いゃ〜〜〜〜〜〜」
苦かった。
そのうえ、辛い。
「混ぜご飯」
イルカのテンションは更に落ちていった。
この時の件でイルカは「混ぜご飯」が嫌いになった、ようである。
★後編は来週を予定しています、
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黄色くて、丸くて愛らしい、向日葵の花。
「たくさん、たくさん」
向日葵畑に小さな男の子が2人。
一人は黒く大きなぱっちりとした瞳の男の子。
もう一人は銀色の輝く髪の綺麗な子供。
そこで遊ぶ子供たちは天使のようでした。
二人はもう随分前から、この向日葵の咲く小さな畑で遊んでいました。
歳の頃は幼稚園ぐらいでしょう。
「イルカちゃん、このお花ひとつもらったら、だめかな?」
銀色の髪の男の子が大きな向日葵に手を伸ばしました。
「カカチ、だめだよ。かわいそうだよ」
黒い髪の男の子はイルカという名前です。
上で結んだ髪がしっぽのように揺れています。
「そうだね、でもひとつでいいんだ」
「どうするの?」
「イルカちゃんにプレゼント」
銀色の髪の麗しい男の子はカカシといいます。
カカシはごめんね〜と言って、大きなお花に手をのばしました。
ぱっと明るく微笑んでいるようなお花をイルカちゃんのお部屋に飾ってあげ
たいのです。
二人は向日葵を手に帰りました。
イルカちゃんの住むお家はとても可愛いお家でした。
「あつかった〜」
イルカちゃんは冷蔵庫からカルピスを出して、氷を入れて2杯作りました。
「のどかわいたね、どうぞ、カカチ」
「ありがとう」
二人は1階の和室でお休みしました。
この日はイルカちゃんのお父さんのうみのさんは、任務ででています。
イルカちゃんは花瓶にあのひまわりを飾りました。
「きれいだね」
お部屋が明るくなりました。
「ねえ、オレ明日から父さんと虹の里に任務に出るんだ」
カカシはまだ5歳なのですが、優秀な天才少年はもう大人たちと同じ働きが
できるのです。
「にじのさと?」
「うん、海の上に七色に光り輝く大きな橋がかかっているんだって」
まるで夢の世界です。
イルカちゃんはまだ、木ノ葉の里から出た事がありませんでした。
「イルカもにんむにつれていって」
「もっと大人になったらね」
「カカチとにんむする」
それが、今のイルカちゃんの夢でした。
大好きなカカシ君と同じ任務にでたい。
小さなイルカちゃんは七色の橋に憧れました。
カカシはカルピスを飲みほして、立ち上がりました。
「イルカちゃん、今日はもう帰るね。任務が終ったらまた」
「うん、きょうつけてね」
小さな恋人達は手を振って別れました。
夜、イルカちゃんのお父さんの、うみのさんはスーパーの袋を抱えて帰宅し
ました。
息子の部屋には、大きな向日葵。
「カカシくんだね」
「うん、イルカみたいだって、ぷれぜんとしてくれた」
「へえ〜ロマンチストだね、やるね、彼は」
うみのさんの奥さん、イルカちゃんのお母さんは現在大人の事情で実家に戻
っています。
小さなイルカちゃんには少し可哀相な事になっています。
それでも、イルカちゃんは、お父さんに心配かけないように、何時も明るく、
お母さんの事は口に出しませんでした。
イルカちゃんのお母さんは、人知れず、幼稚園や公園で、そっと影から我が
子を見つめていました。
可愛い一人息子を心配するのは、当然の事です。
(そろそろ、俺が大人にならないと)
うみのさんは、カレーライスをつくりながら、今後の事を考えました。
イルカの為にも・・・・。
「カカチはなないろの、はしのあるさとにいくんだよ」
カレーを美味しそうにたいらげて、イルカは説明しています。
「それは虹の里だね」
「とうちゃんもいったの?」
「ああ、昔一度だけ、もなかが美味しいんだ」
「もなか?ふうん、イルカもはやくにんむしたい」
「アカデミーにはいって、大きくならないとね」
「大人になったら、イルカ、カカチとにんむでる!」
イルカちゃんは夢を見ています。
大きくなった、カカシと二人で沢山の任務をするのです。
甘えん坊のイルカも、カカシ君と出逢って、少し大人になりました。
虹の里。
小さな旅館の窓から、きらきらと七色に変化する美しい橋が見えます。
カカシはじっとそれを眺めていました。
”ほんとに綺麗だな”
夜になるとこの橋はライトアップするのです。
今回の父との任務は短期間で帰れます。
「カカシ、もう遅い、何時まで眺めているんだ?」
「はい、父さん」
父のサクモは片手にお酒の缶を持っていました。
カカシは、布団に横になりました。
何時か、大人になったら、イルカちゃんと二人でこの、虹の橋を見たい。
カカシには将来の夢が増えました。
朝、イルカが目覚めると、お部屋に飾ってあった、あの向日葵の花はもう
しょんぼりしていました。
カカシから貰った、素敵な贈り物です。
イルカちゃんは御庭にそのお花を埋めました。
「さあ、イルカ、行くよ!」
「はい!」
今日は、里に帰ってくる、カカシ君とお父さんのサクモさんをこれから、お迎
えに行くのです。
きっと、カカシは自分の留守中、イルカちゃんが寂しくないように、あの向日
葵の花をくれたのでしょう。
イルカちゃんは急ぎ足で、里のゲートに向かいました。
大きな七色に光っては変化する幻想的な橋は海の上にかかっています。
それは、いままで見たどんな風景よりも美しいものでした。
「ほんとうに、ほんとうに綺麗だね、カカシ・・・・」
「ね、俺が言うとおりでしょ」
小さかったあのイルカちゃんは大きく成長して、現在中忍です。
上忍のはたけカカシと任務でこの土地に立ちました。
「何時までも、見ていたい」
「ふたりでこれたんだね」
カカシはイルカの肩を抱いた。
二人は今、大人の恋人同士。
「夢だったんだ、カカシとこんな風に・・・・」
「叶えるのが、夢なんだ」
「そうだね」
ははは、
カカシは照れ笑いをした。
目の前で、美しい向日葵がわらったのだ。
夢がかなったね。
090117.
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(ああ〜ドキドキするな)
デート前夜、イルカはわくわくしたり、少し不安になったり、様々な想像にはし
った。
デートにはあまり縁のある彼ではなく、
着ていく、赤いシャツがハンガーにかけられ、部屋を鮮やかに飾っていた。
イルカの今回選んだ映画は話題作で、ハッピーエンドのラブストーリーだ。
何故だか、人は恋の始まりには、ハッピーエンドの映画を観るのだという。
映画を観たら、少し気のきいた店でランチ。
それも調べてあった。
気がつくと午前1時を過ぎていた。
眠れない。
イルカはベットから起きあがって、冷蔵庫にむかう。
扉を開くと冷たい空気を感じる。
トマトジュースを取り、部屋にもどる。
そういえば、先日、カカシさんと酒場で会った。
そうか、カカシさんね。
一瞬、イルカははたけカカシと手を繋いでいる姿が頭に浮かんだ。
「なにごと?!」
それは、それは、いけない想像だった。
イルカは頭をふった。
まさかね。
俺は何を想像しているのだろう?
朝から雨が降っていた。
予報では午後からは晴れるという。
待ち合わせは映画館の前だ。
イルカは傘をさし、新品のシャツを着て、映画館の前に立った。
少し早く来てしまった。
まだ、30分もある。
待ち時間がやたらに長く感じた。
赤いシャツのイルカは自然と目立っていた。
彼女は、時間と共に姿をみせた。
淡いピンクの水玉のワンピース姿はとても眩しかった。
「イルカ先生、待ちました?」
「いいえ、今来たところです」
(いいかんじ)
二人は映画館に消えた。
上映中、イルカは緊張が止まらなかった。
由里先生は慣れているのか、落ち着いて映画を観ていた。
女性とのデートに慣れていないイルカには、さりげなく手を握るなどは出来な
かった。
「素敵な映画ですね」
「はい」
何が素敵なのか?
映画の内容は頭に入っていなかった。
イルカはこの日の為にデートにふさわしい、お店の情報を集めた。
上忍の猿飛アスマはイルカの子供時代からの付き合いで、いい店を教わっ
た。
「おんなは、綺麗な店が好きだから、気にいるとおもう」
アスマから、の情報のお店は値段も手ごろで、明るくて内装も綺麗だった。
イルカはその店をデートに選んだ。
ただ、繁華街から場末にあり、二人はぶらぶらと街を歩いた。
その頃には雨はやんでいた。
「疲れた?」
「いいえ」
「もうすぐです」
そうだ、この本やの脇を入った通りだ。
「ROZU」
看板にはそうある。
「素敵なお店ですね」
飾られているのは季節の生花。
彼女は感激の声をあげた。
なるほど、アスマさんが勧めてくれる店だけある。
お勧めのメニューはオムライスやパスタだ。
スイーツにはワッフルが一番だそうだ。
「由里先生、ここのオムライス、美味しいですよ」
二人はオムライスを注文した。
その時、
”コツコツコツ
向かい合わせに座るカップルの前に長身の美女が立った。
ただの美女ではない、
銀色の光り輝く長い髪の絶世の美女。
赤いルージュが怪しく、白のスーツ姿はモデルのようだ。
まるで、雑誌の中から飛び出したような、女だ。
「イルカ〜〜〜会いたかった!!」
女はイルカに飛び付いた。
「ひい〜〜〜〜〜〜!!」
突然の事態にイルカは身体が固まった。
「ちょっと、なによ、あなた!イルカ先生の!!」
デートを壊された由里先生は逆上した。
「違います!このひとは知りません」
「あら、お譲ちゃん、イルカは私とお付き合いしているのよ、大人のお付き合
いよ、うふふ」
美女は勝ち誇ったように微笑んだ。
「誰なの、この女?」
可愛いはずの由里先生は別人のように目を吊り上げた。
「いいえ、他人です・・・その・・・・・」
”どうしょう”
「もう、いいわ、イルカ先生は最低よ!!」
”パシッ”
由里先生のビンタは強烈だった。
彼女は出て行ってしまった。
”ひゅうう〜〜”
心の中に冷たい風が吹いた。
恋は終わった。
はかない、イルカの恋。
”はっ!”
呆然、愕然としているイルカの前には、イルカの恋を妨害した、銀色の髪の
女が座って、にこにことしていた。
「あ、あんただろう、カカシさん!!」
「せいかい!!」
カカシは元の姿に戻った。
イルカは涙と鼻水がでた。
二人の前に、注文してあった、オムライスが運ばれて来た。
「さあ、食べましょうよイルカ先生」
カカシは嬉しそうにスプーンを手にした。
イルカの頬には女に打たれた手形が残っている。
情けない、俺はふられてしまった。
心の空白を埋めるよう、イルカはオムライスを口にした。
確かに旨いオムライスだ。
カカシさんは、きっとアスマさんから、ここに俺が行くという情報を知っていた
のだろう。
そうだ!
「よく、あんたは平気で食べれますね、おかげで〜おれは・・・・くううう
う!!」
口の周りに赤いケチャップをつけたカカシをイルカは睨んだ。
「怒った御顔も素敵ですね」
”ずきずき”
イルカは頭痛を感じた。
「イルカ先生、二人でお食事したら、公園にいきましょう」
”どうして、こうなるんだ!”
「ですから、どうして、こんな事をしたのですか?酷いです」
「好きだから・・・あなたを誰にも渡したくなかった」
はっきりと彼は言う。
イルカは拳を握りしめた。
「いい加減にしろ、このスットコドッコイ!!」
”イルカパーンチ”!
カカシは空高く消えた。
一人残されたイルカは、悲しくて、涙をこぼしながら、残ったオムライスを夢
中で食べた。
遠くで花火の音が聞こえた。
今年の春はあっけなく過ぎていった。
季節がすぎるのも、はやく、夏の半ば。
気がつくとイルカのアパートには彼がいた。
何時からか当然のように、二人は同じ時間を共有していた。
イルカは恋に破れかぶれで、そのあげく、新しい恋人をつくった。
はたけカカシ、まさか、二人がこんな風になるとは想像していなかった。
「ねえ、イルカ先生、何考えているの?」
イルカの前には出来たてのオムライス、カカシさんは料理上手だった。
過ぎていった、恋はもう帰らない。
「どうぞ、温かいうちに」
「いただきま〜す」
カカシはケチャップを口のまわりにつけて、オムライスを頬張るイルカを見つ
め満足そうに目を細めた。
100804.
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桜の花がそろそろ開花する頃。
風は優しく甘く、緑が眩しい。
何もかもが新鮮な春という美しいシーズン。
もう随分前から、アカデミーの校庭のベンチで教員のうみのイルカは彼女と
話こんでいた。
まだ新人の女性教員。
オレンジの明るいストレートの長い髪に緑色の美しい瞳。
背は高からず低からず、そのボディは若々しく、スタイルのよい女性。
名は、由里
性格もよい彼女はたちまち、仲間の同僚達の注目を浴びる。
「いやだ、もうこんな時間・・・ゴメンナサイ、イルカ先生」
「すみません。由里先生、俺のせいです、行きましょうか」
「はい」
二人は昼休みを終えて、校舎に消えた。
「なによ、あの女!!」
そんな若き男女を校舎の影から見守っている男がいた。
はたけカカシ。
木ノ葉の上忍で、世間世ではコピー忍者の異名をもち、他里のビンゴブック
にも載り、里では有名な忍だ。
天下のはたけカカシ。
その彼は現在夢中になっている恋のお相手がいた。
それが、うみのイルカ。
中忍の平凡そうなアカデミーの教員。
カカシは黒目の愛らしい彼にずっと、想いをよせていた。
カカシはイルカの顔見たさに時間を作っては、アカデミーや彼の勤務してい
る、受付に顔をだす。
人のよいイルカは何時も、優しく微笑んでくれた。
この日も、カカシは昼休みを狙ってアカデミーを訪ねた。
だと、言うのに!!
イルカの傍らには見たことのない若い女がいた。
へえ〜イルカ先生もやるもんだね。
女はまだ20歳そこそこだろう。
美人だった。
イルカは正直な性格だ。
少し頬を染めて、このうえない、いい笑顔を浮かべ、女と話をしていた。
”むかむかむか”
カカシは自分でも始末に負えない、感情に襲われた。
胸をさする。
「はぁはぁはぁ」
息も荒く、カカシはそれが、嫉妬というものだと気がついた。
このままでは、あの若い女にイルカ先生が、
そう考えるだけで、息がきれそうだ。
「あっ!いけない!!」
すっかり、イルカに心を奪われカカシは自分のやるべくことを忘れていた。
そうだ、演習を抜けて来たのだ。
その頃、
お昼休みが終わったというのに、担当上忍のカカシが戻って来ない。
カカシの部下3名、うずまきナルト、うちはサスケ、春のサクラは、うららかな
昼休みお腹もみたされ、ころんと3人で横に
なって昼寝をはじめた。
まるで、仔犬が3匹眠っているような、愛らしい姿だった。
「いゃあ〜すまない!諸君!先生は里の一大事で、遅くなって、ってなんで、
あんたたちは眠っているの!!?」
すやすや、
カカシの存在など忘れ、三人は眠りこけていた。
(こいつら、いい根性しているな)
そんな幸福そうな彼らをカカシは叩き起こした。
イルカの事で、少し機嫌が悪い。
「ねむいってばヨ〜先生」
「そうよ、カカシ先生が時間になっても来ないのが悪いのよ」
「そうだ、カカシ、あんたが悪い」
口ぐちに部下たちは文句を言う。
そういうチームワークだけは抜群によい。
「じゃあ〜午後もブリブリ、ビシバシ!!鍛えるからな!!」
自分の遅刻を棚あげして、カカシは、気合をいれた。
「よお〜しやるってばヨ〜!」
「望むところだ!」
「ええ、サスケ君がいうのなら」
そうだ、横道にそれている場合ではない。
カカシは頭の中から、お昼に目撃した、イルカの事を追いだした。
今は演習をやるべくだ。
(由里先生)
まだ出逢って、間もない新人教員はイルカに好意を持ってくれている。
同じように、イルカも彼女に好意をもった。
性格もよく綺麗な彼女は同じように、イルカの同僚たちも、注目していた。
ライバルが多い。
そんな中、イルカは思い切って、勇気をだし由里先生を次の休みに誘った。
日頃おとなしい、シャイなイルカには勇気のいることだ。
イルカはアカデミーの帰り道、里の中心街のカジュアルショップに立ち寄っ
た。
その店には値段が手ごろでお洒落な衣料品が揃っていた。
折角だから、勝負服を買おう!!
(赤い服、赤い服)
イルカは以前三代目から、勝負服は赤が一番だと、教わっていた。
イルカは店内を探し、やがて、赤いシャツを手にした。
「イルカ先生!!」
イルカは、手に持ったまま、驚いて顔をあげた。
そこに、ひょっこりと、はたけカカシが出没した。
(出没?変態みたいですね)
「あ、カカシさんもお買いものですか?」
「はい、その服いいですね!」
イルカの顔は服と同じ色になった。
イルカは服を購入した。
その場のなりゆきで、はたけカカシと二人夜の街にでた。
カカシとは時々、飲む事がある。
(新しい服まで買って、あの女教員とデートとか?)
ストレートにイルカに訊くわけにはいかない。
ここは少し、二人でお酒でも呑んで、イルカ先生から自然に話をききだす
か。
まだそれほど、遅い時間ではなく、酒場はすいていた。
二人はアルコールをオーダーした。
(でも、カカシさんとあのお店でばったり会うなんて、意外だな)
イルカはこの上忍様がイルカに、ただならぬ、好意をよせていることには、
気がついていた。
何ぶん、相手は同性なのだ。
はじめて、カカシから食事に誘われた時は戸惑ったが、実際にきちんと向き
合ってみるとカカシさんは、人柄は悪くなく、どこかとぼけていて、面白い男
だった。
二人はあたりさわりない、会話から、はじめた。
カカシはジョークをとばし、
イルカはにこにこと笑った。
アルコールを沢山のませ、色々訊き出すカカシの計画だ。
「さあ〜のんで、のんで、」
いきおいにまかせ、二人は呑んだ。
「イルカ先生のお買いになられた赤い洋服素敵ですね。何処かにおでかけ
ですか?」
「はい、・・・・・・日曜日に映画にいきます」
「おひとりで?」
「あ・・・・あ・・・・・」
「話題作ですか?」
「ええ、まあ恋愛映画です」
相手は、あの教員だ。
カカシはイルカを彼の暮らすアパートまで送りとどけた。
自宅に戻りカカシは次の日曜日の予定を確認した。
その日は待機だ。
運がいい。
カカシは顔に装着している、覆面をとり、洗面所の鏡をみていた。
自分の素顔。
その顔は、そこそこ、いや、かなりのイケメンだ。
女教員の顔が頭に浮かんだ。
(負けるもんか!)
そうだ!
カカシは変化した。
銀色の輝く長い髪の絶世の美女がそこにはいた。
彼女は怪しく妖艶に笑った。
★後編は来週を予定しております |
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てくてくと、今日も彼はいく・・・。
青空に綿菓子のような雲が美しい。
木ノ葉の商店街に彼は立った。
「イルカ散歩」はテレビコノハでも人気の番組で毎日、レポーターのうみのイ
ルカが街を散策する。
「木ノ葉の商店街で”肉肉屋”を知らないひとはいない、と言います。あっ、皆
さん皆さん見てください、いい匂い!!」
レポーターうみのイルカは小走りにお店に駆け寄った。
”ほかほか”
お店のおばちゃんが、揚げたてのメンチをイルカに手渡す。
”ぱくっ!”
この食べっぷりのよさもイルカの人気のひとつだ。
「わあ〜ほっぺ落ちちゃう!!」
天然に彼は微笑んだ。
この微笑みで「肉肉屋」の売上は確実にUPするだろう。
イルカはメンチをたいらげ、次の目的地をめざす。
「へえ〜いろんなお店がありますね〜あ?あの看板はなんでしょう?」
イルカが立ち止ったのは、街の古びた純喫茶風の店。
もはや都会には見られないたぐいの店。
看板には「シルバー」
イルカは扉に手をかけた。
「いらっしゃいませ!!」
”タランたらりらりん”
”トントントン♪”
そこには銀色の髪の美青年が華麗にステップを踏んでいた。
「ようこそフラメンコカフェに、ウエルカム!!」
「フラメンコですって、みなさん!!」
イルカは大げさに驚いてみせた。
「どうぞ、自慢のブレンドコーヒーを」
純白のカップにどろどろのコーヒー。
イルカはコメントを考えた。
一口、ふくんで微笑む。
「情熱の味がします」
銀色の髪の美青年は瞳を輝かせた。
「わたしの名はカカシンゴ、さあ〜あなたもご一緒にい〜」
「え?」
「ドドスコスコ、ドドスコスコ、あああん!!どどすこ!!」
カカシンゴはしなった。
イルカも仕事なので、一緒に踊った。
”どどすこすこすこ〜ああん!!”
「今日は木ノ葉の素敵なお店を紹介しました。では、みなさんも」
”どどすこすこすこ”
「イルカ散歩」明日は貴方の街にお邪魔するかもしれません。
110228.
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先日、はたけカカシは上忍仲間一、熱い男と会った。
その時、ガイから木ノ葉にオープンしたてで、デートに使える店を教わった。
そうか、そんなにいい店ならば、是非イルカ先生を誘っていきたい。
きっと彼は喜んでくれるはず・・・。
カカシは現在の恋人、うみのイルカと付き合いはじめて、2ヶ月。
二人でいるだけで、この世はパラダイス!!
恋は素晴らしい。
ただ、ほとんどの人は錯覚におちいるという。
そういうカカシもイルカにめろめろだった。
少しはにかみ、頬を染めて、潤んだ黒目で俺を見るあのひとは、たまらな
い。
”うきうきうき”
うかれた足取りでカカシは歩いていた。
途中、道端にバナナの皮が落ちていた。
今時、こんなもので滑る人はいないだろう。
バナナなんかで、よく滑るもんだ。
すべるとしたら、俺の師のミナト先生くらいだ。
などど頭の隅でカカシが昔を思い出していると、
反対方向から大柄な人物が慌てて走ってきた。
自来也先生だ。
”ずるっ!”
なんと自来也先生は派手にバナナの皮で転倒した。
「うそ〜〜〜〜」
昔、カカシはミナト先生に悪戯で彼の通り道にバナナの皮を仕掛けた。
まさかと思ったが、
先生は見事滑った。
「だ、大丈夫ですか?自来也様」
全く、なんとまぬけな事か、
さすが、ミナト先生の師だけある。
カカシはこみあげてくる笑いを押さえ、
大柄な体を支えた。
「おお、すまん、すまん」
「なにか御急ぎですか?」
「ああ〜それが、賭場で綱手が暴れていると報告があってな。かなり酒がは
いっているらしい、このままでは、
里が破壊される」
「つなでさま・・・・・」
恐ろしい。
「丁度いい、カカシ、お前も来い」
「えっ?あのう、ワタシはこれから暗部の極秘任務があります」
勿論嘘だ。
実はイルカと待ち合わせだ。
「では失礼!!」
”ドロン”
カカシはその場から消えた。
二人はその日、待ち合わせていた。
「遅くなってごめ〜ん。待ちました?」
「いいえ、今きたところです」
微笑み合う二人。
「今夜はね、ちょっといい店にお連れします」
「素敵です」
「ええ、ガイから教わったんです」
カカシはガイから、描いてもらった地図をポケットから出した。
そこは木ノ葉の中心地より場末にひっそりとあった。
隠れ家のような、少しときめくような、店だ。
「ホワイトスネーク」
看板にはそう描かれてある。
店そのものは地下に存在する。
カカシが先に階段をおりた。
「静かなお店ですね」
イルカは席に腰を下ろし、店内を見回した。
「そうですね。お花が綺麗です」
店内には生花が飾られていた。
ガイの情報にしては、あたりだ。
丸い眼鏡の店員がメニューを持って現われた。
「じゃあ〜どうしょう先生?」
「あ、これ全部コースみたいですね・・・高そう・・」
「心配しないで」
カカシもメニューに目をとおした。
Aコース・・・・・ビューティ
Bコース・・・・アダルト
Cコース・・・・ママのお勧め
と、だけあり、詳細はなかった。
ふと、カカシの視界には、店の一角の簡単なステージが飛びこんできた。
マイクにスピーカー、その傍らには純白のグランドピアノ。
生演奏があるようだ。
カカシは一番高価なCコースをオーダーした。
折角のデートだ、いいところをイルカにアピールしたい。
「あのう・・・カカシさん、ここなんだか・・・」
「ええ、イルカ先生も気になりますか?」
二人は入店直後から、自分達にまとわりつくような視線を感じとっていた。
カカシはさり気なく他の客を観察した。
(あれ?)
客は全部男だ。
その男達が熱い視線を、カカシとイルカに浴びせてくるのだ!!
(そういう店か!!)
カカシが立ち上がろうとしたタイミングで先ほどの丸い眼鏡の店員が現われ
た。
「それでは、御客様のご注文のCコース、ママのお勧め!皆様、魅惑の世界
をお楽しみください」
わっと歓声拍手がわいた。
”ばっ!!”
ライトが消えた。
次の瞬間、ステージに妖艶なピンクライトが照らされた。
”あぐあぐあぐあぐ”
”俺もイルカ先生もその時の記憶は忘れられないだろう”
ステージには紫の背中のあいた、セクシーなドレスに身を包まれた。大蛇丸
が立っていた。
ママは身体をくねくねとさせ、唄いはじめた。
「ああああああ!!!!」
ガイの奴!!今度会ったら、
ただじゃ、おかない!!
泣きながら、その日のデートは終了した。
その後、青い顔で無言になってしまったイルカ先生を連れてカカシは一楽に
寄りましたが、
イルカ先生は、ラーメンを残し、この分だと、当分口をきいてもらえない空気
だった。
「うおおおおおお」
100727. |
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