STORY.PT2.

2011年12月03日
犯罪
二人は出逢ってすぐに恋におちた。


自然と交際が始まり半年になる。



人には話せる内容とそうでないものとあり、そういう俺にもカカシさんに話せ
ない事はある。





それはカカシさんも同様なのだろう・・・。

カカシさんは子供時代の話をしない。


伝説の三忍と肩をならべる、一流の忍、はたけサクモの息子に生まれた彼
は一般人と育ち方が少し違うのかもしれない。





父の話も母の話も彼はしない。



それでいい。


お互い大人なのだから。






その晩泥酔したカカシがイルカのアパートを訪ねた。



何か起きたのか?

こんなに酔っている彼は珍しい。


イルカはカカシを座らせた。

「今、冷たいお水を持ってきます」

「いいよ、ここに来てイルカ先生」



立ちあがろうとしたイルカの腕をカカシは強く掴んだ。


「あ・・・だいぶ酔われているみたいですけど・・・」

「まあね、なんだか俺過去の世界にタイムスリップをしたみたいで・・・・」
「過去?」



何を言い出すかと思えば・・・・。




「お水飲みましょう、落ち着きますよ」


やんわりと言ってイルカは水をとりに立った。



冷えた水を喉をならしカカシは飲んだ。


「父さんのお墓に何者かが、落書きを・・・」

押し殺すような声でカカシは言う。


その言葉は衝撃だった。


イルカの心臓がどくどくとなった。


「酷い・・・・ひどすぎです」

「そう、酷い」


カカシは拳で床を叩いた。

「例え白い牙がどんな最ごだったとしても・・・俺にとってはたった一人の父親
です・・・犯人を殺してしまいたいです」



ぽろぽろとイルカの瞳から大粒の涙。

「イルカせんせい、イルカ先生?どうしてあなたが泣くの?」



「だって・・・だって」


カカシは黙って愛しいひとの身体を抱きしめた。

イルカの体温は温かい。



強く。

強く。

自然と唇が重なる。



「この、今の世の中狂っています」


「はい、確かに、してもいい事と悪い事の区別がつかない、若い者だけでなく
大人もおかしいです」




「ええ・・・」


「明日、余計なことかもしれませんが、俺がお父様の御墓の落書きを消して
きます」

「イルカ先生」


”ありがとう”










二人ははたけ家代々の墓の前に立っていた。


丁寧にイルカは薬品をつかい、赤や黄色の言葉にするのも、腹立たしい落
書きを消した。


「俺には最高の父でした。・・いまは・・・昔は許す事ができなくて、子供だっ
たから、父の気持ちも理解できなかった。でも、今なら・・

ありがとう、父さん、この人が俺の大事なイルカ先生だよ」



「カカシ先生」


イルカは頬を染めた。






「さて、犯人はどうしてあげましょうかね」

カカシは腕を組んだ。


冷たい表情をしていた。

「五代目に報告した方が・・」


「いえ、ここだけの話にしておいて」




カカシは大きな布をわざと墓にかぶせた。










数日後、はたけ家のある墓地で小さな爆発が起きた。





例の落書き犯である。


男は30代、仕事もせず、親のお金でギャンブルばかりしているような男だっ
た。



男ははたけ家の御墓に悪戯をしようと、布をはずし、爆発でもう少しで死ん
でしまうところだった。









「あのう・・・カカシ先生、この話少し過激です、それに暗いです」


カカシのノートをイルカはとじた。



「そうですか?まあ、爆破させて復讐して、少し大人げないですけどね。ああ
〜創作難しい」




カカシは時々こそこそと何か書いている。

彼の尊敬する自来也先生のようなものはできないが、






「あ、こっちに一応18禁のも作りましたよかったらどうぞ」



真剣な目でカカシはノートをイルカに差し出した。



イルカは唯一人の読者なのだ。



ぺらぺらめくり、イルカの顔は赤く変色した。


「いゃ〜〜〜〜〜〜」






少しイルカ先生には過激なえっちだったかな。

ま、いいか。


100730




2011年11月26日
家政夫は見た!!3.(全3話)
今回の仕事の為、住んでいたアパートは引き払ってしまった。


イルカはペットショップの同僚である、並足ライドウの部屋にしばらくやっか
いになる事になった。

現在、ライドウは知人のラーメン店で働いていた。

「まってたぜ。・・いろいろ災難だったな、ま、座れ」

「って何処に?!」

彼の部屋は雑誌やごみや、脱ぎ捨てられた衣類などで、座るよちもない。

イルカは少しそれらをどけて座るスペースを作った。

「ふう」

深く溜息がでた。
「そうだ、グッドニュースだ!!」

「あ?いい事、彼女ができたとか?」
「違う、うちの店の子猫や仔犬の買いてが決まったんだ」
「本当?」

あの店に残った、動物たちの事はずっと気がかりだった。

「よかった・・・・よか・・・・」

イルカは涙をこぼした。


「まさか全部まとめて飼うなんてな〜」

「でも、だれが?」

全部飼うなんて、考えられない。

「あの、作家の自来也先生だよ」
「あのえろ本の?」

名前はイルカも知っていたが、本は・・・えろいらしい。

時々テレビにも出演している有名人だ。






イルカは胸をなでおろした。



全身の力がぬけ、どっと眠気が彼を襲った。






昨晩はショックで一睡もできなかった。




‘ころん”


イルカは横になった。

「おい、大丈夫か、あんた?」


ライドウは呆れ顔でイルカを見降ろした。



(新しい仕事場、大変だったんだな)




やがて、イビキをかいて眠る友にライドウは毛布をかけた。
















慌ただしい日々がつづいた。


イルカは毎日職を求めて活動していた。



なかなか、思うようにも話はすすまず、


空白で不安な時間だけが進んでいた。





気分が重い。



イルカはパソコンをおとして、気晴らしにテレビをつけた。


昼の情報番組だった。



観るというよりは、流すというかんじだ。



司会者は背の高い30代くらいのタレントだ。



最近の売れ筋、スイーツの特集だ。


ぼんやり、イルカはその画面を見上げた。


いきなり、映像が変わった。



司会者は真面目なおもだちで、伝えた。

「ただいま、心配なニュースが入りました・・・俳優のはたけカカシさんが、車
の走行中、後部車から追突されたそうです・・・現在〜〜」






はたけ・・・・カカシ?



イルカは大きく目を見開いた。



何かの間違えではないか?




テレビの映像には大きな病院。



レポーターが早口で何かを伝えている。



聴き取れたのは重体という言葉だけだ。


「カカシ・・・・・さ・・・ん」


まさか、彼は自分では運転をしないはずなのだ、


なんで、どうして、


イルカは自分の息が荒れていることに自分で驚いた。


額には冷たい汗。




「どうしよ・・・・・」



イルカはのろのろと立ちあがった。



鞄から携帯を取り出し、ライドウに出かけるむねメールで知らせた。







イルカは駅にむかって駆けだした。


JRの駅から、電車に乗った。



テレビで観た病院ははたけ邸の近くだった。





なにも考えられない。




カカシさんとは、ほんの半月ほどの関係で、

それだけなのに、



あそこから、飛びだした俺が何をしているのだろうか?






二人で、船に乗ったあの楽しかった日をイルカは思い出していた。



”信じてほしい”


そうあのひとが言う事を信頼できずに俺は逃げたのだから・・・。



新宿駅からイルカは私鉄に乗り換えた。




あの報道を観て、そろそろ3時間が経過した。




病院の入り口にはマスコミ関係者の姿が確認できた。




うまく、病院にはいらないと・・、


イルカは裏口を探そうとした、


その時、

「イルカ君!!」



聞き覚えのある声にイルカは振り返った。



カカシのマネージャーのエビスさんだ。





「えびすさん、どうしよう・・・・おれ・・・」


イルカは身体が震えた。



「大丈夫さ、カカシさんなら」

「ホント?」

「無事手術を終えて、今、眠っている・・・」



「よかった・・・でもどうして、自分で運転を?」


「今朝は、一人にしてほしいと、アンコちゃんをおいて出ていってしまったん
です」


エビスは丸いサングラスをはずした。

優しそうな瞳だ。


「なかに入りましょう」
「はい・・・」







目立たぬよう裏口から二人は中建物に入る。



「手術って、カカシさん・・・」

「命はとりとめたけど、しばらくは入院して、仕事は無理ですね、少しリハビリ
もしないと・・・」


「そうなんですか・・」

「ありがとう、イルカ君」

「・・・・・・・・・・・・・・・」




少し沈黙があった。

やがてイルカが口をひらいた。

「なんで俺はどうしていいのか、自分でもわからないんです」

「それでも、ここまでかけつけてくれた。カカシさんがこの事を知ったら、どん
な顔をするでしょう」



エビスはイルカの連絡先を確認した。



「彼の意識がもどったら、また来てくれますか?」

「はい」



イルカはうなずいた。













その話を友はとても不可解な表情で訊いていた。



「だって、お前、その男はお前の肉体がめあてなんだろう?男同士なんて理
解できないから、家をでてきたんだろ?
おかしいよ、病院までいくなんて」


「そのとおりなんだけど、・・・どうしても・・・どうしても会いたくて気になっ
て・・」


「うう〜〜〜ん」


よくわからない奴だ。



イルカは人がよすぎるところがある。


それは注意すべきだ、


ライドウは考えた。

(なんだかんだ、好きなのかな)














そろそろ、お昼だ、

やかんで、お湯を沸かし、イルカはカップの麺にお湯をそそいだ。


この待っている3分間は、わくわくする。



携帯が鳴った。


エビスさんからの連絡だ。












イルカは再びはたけカカシの入院先に出向いた。



現在はたけカカシは、個室に移動して、面会もできる。


意識はしっかりとしていた。




小さな花束を手にイルカはコンコンとドアを叩いた。

「なに〜〜だあれえ〜〜?」

とぼけた声が懐かしい。



「うみの・・・イルカです」

「うそお〜〜はいってえ〜〜はやくうう〜〜」


イルカは思い切ってドアを開いた。



ベットの上でカカシは手紙を読んでいた。


部屋には沢山の花や見舞品が並んでいた。

まるで楽屋だ。



「おひさしぶりです・・」


イルカは頭をさげた。



しばらく二人はお互いの顔をみていた。


言葉がでない。





「まさか、きみがここに・・・・もしかしてここは天国?」


「いいえ、病院です」

クスッとイルカは笑った。


カカシもつられて笑った。


「当分はぼくは何も出来ない、リハビリして・・・必ずまた、復帰するよ、待っ
ている、応援してくれる人たちの為に・・」





沢山のはたけカカシを心配するファンや仲間からの手紙やメールでカカシは
パワーを貰った。




「あれ?」


カカシはイルカの手に小さなかわいい花束に気がついた。


「それみせて」

「これ?」


恥ずかしいな。


イルカは照れた。


「黄色い花だね」
「へ?」

「これ仏壇とかによく飾られている花に見えるけど」

「わあああ〜〜」

まさか、
イルカはうっかり、菊を買ってしまったのだ。






「あ、ありがとう、また逢えるなんて、あの日、船に乗った日の事がずっと頭
に残っていて・・・またいけたらなんて」




「そうですね、楽しかったです」



なんだかもう昔の事のようだ。


「あのう・・・・」

「なに?」


「もう一度、私を雇っていただけないでしょうか?」

「まじで?」


「あなたの恋人は無理でも、リハビリはお手伝いできます」




カカシは目頭が熱くなった。













一月後、


はたけカカシは多くのファンが見守る中、退院した。



車椅子をイルカはひいた。




テレビカメラにむかい、カカシは全国のファンに頭をさげた。



ふかく。


拍手と歓声の中、


アンコの運転する車にカカシは乗せられた。











「あはは、毎日、忙しくてさ、・・・うん大丈夫ありがとう、勝手ばかり言って」



電話で久しぶりにライドウと話をした。

「なあ、やっぱ、好きだろ?はたけ、イケメン刑事が?」


「そんなんじゃない〜」

「ま、がんばろうな、」

「ありがとう、また連絡するから」











イルカの毎日はくるくる回る。



はたけ邸の家事に犬とその主人の世話まで、するのだ。




そのスケジュールには、カカシと共にリハビリを含んでいた。


今では立って歩けるように、カカシは回復した。



季節は厳しい寒さを終え、桜の咲く頃、風がふんわりしていた。





「ねえ、でかけたいから、イルカ付き合って、近所だよ」

「はい、車をだしますか?」
「ううん、歩く」
「はい」




ゆっくりはたけカカシに付きそい、イルカは表にでた。

気持ちのよい、晴天だ。
散歩するにはもってこいだ。






「うちの裏に住んでいるご近所さんに会いたくてね」


近所の知人はやはり芸能人なのだろうか?








カカシの足取りは近頃では、もうすっかり、すたすたと早足で歩けるようにな
っていた。



イルカはカカシの後について5分ほど歩いた、大きな純和風の屋敷が見え
た。


屋敷の主は!

イルカは表札をみて、息を飲んだ。


「自来也」という表札。




あのイルカの勤めていたペットショップに残されていた、動物を飼ってくれ
た、その人なのだ。




広い日本庭園には、のびのびと犬や猫が寝そべっていた。





大柄で着物姿の白髪の先生がひょこんと顔を出した。


「おお、カカシ〜元気そうだな?」

「い、イルカ、自来也先生だよ・・・あれ?どうして泣いているの?」




「なんでもないです」



庭に入ったイルカをネコや犬が囲んだ。



カカシは不思議なものを見た。



動物たちは、イルカの事をまるで知っているようだった。


(みんな・・・みんな)




イルカは集まってきた犬や猫を抱きあげたり、頭をなでた。








イケメン、刑事(デカ)はたけカカシは事故から1年後、


多くのファンに、むかえられ、復帰を果たした。




そのかげには、リハビリと正面から戦う、彼の前向きな、姿勢があったか
ら、だろう。

またその彼をささえた、周りの人々の御蔭でもある。







イルカはそのまま家政夫を続けていた。





この先の事はどうなるのか、
よくわからない。



それでも、今はとても清々しい気分だった。





カカシさんからは、相変わらずえっちな事を言われたりするけれど、




気がついたら、彼が隣に居た。


隣で笑っていた。



素敵だな。



二人で何時も・・・


笑っていた。



100924.









2011年11月19日
家政夫は見た!!2.(全3話)
何故、自分が採用されたのか?

イルカには、疑問が残った。


それでも、仕事があるのなら、やるしかない。



一週間後。


イルカはアパートを出た。

世田谷のはたけ邸に
越した。



主人のはたけカカシはこの日は撮影で不在だった。

代わりエビスともう一人のマネージャーの眼鏡の青年がいた。



知的できれものの彼は薬師カブトと名乗った。



「どうぞ、ここがあなたの部屋になります」

「うそ〜〜〜〜」


自分はただの家政夫なのに、


イルカは驚愕した。


広い部屋には、ダブルベットに
テレビに冷蔵庫までそろえてあった。


「あのう・・・本当にここが私の部屋なのですか?」

「ええ、カカシさんかなり変人ですから、うふふ頑張って君も1カ月はもつか
な?」
「はあ???」

一か月??

何の事だろう?





「ああ〜それから、カカシさんはご主人さまとは呼ばないように、」

「それでは、なんと?」


「カカシさん、ちやんと彼の目をみてね、ふふ」


カブトは思い出し笑いをしているようだ。


何で笑うのだろう?









ぼんやりイルカは不安が生まれた。


もしかして、通う仕事を間違えたのか?



「あ、早速だけど、掃除がたまりまくりでね、汚くて、頼みます」




「かしこまりました」


イルカはエプロンをつけた。

赤い犬の
イラストのエプロン。




気合を入れこの広い洋館の清掃にかかる。



キッチンに溜まったごみをまとめ、

散らかった衣類は洗濯をかけた。


とても1日では終わらない。





予定では、カカシさんが帰宅するのは、来週の予定だ。



それまでに、綺麗にしておこう。




イルカは汗をぬぐって、清掃にはげんだ。





カカシの大切な犬たちの世話もある。

イルカは八匹の犬の食事を用意した。



庭にイルカが姿を見せると、犬たちは甘えた声で鳴き、駆けよってきた。

それは、イルカの特技の一つで、動物と子供に、彼はうけがいい。



”くううおおん”

”きゅうう”

(かわいいな)

イルカは皿を並べた。





大きな犬や小さな犬。



ご飯を夢中で食べている犬を見て、イルカは思い出していた。


イルカが勤務していた、ペットショップの事。



(この犬たちは幸福だな)



売り手のつかない、犬や猫たちは・・・・・。



イルカの同僚が飼い主を探しているが、果たしてみつかるかどうか?





ああ〜〜



イルカは頭を振った。




ふと、1匹の犬がイルカの足元に寄ってきた。




確かこの犬は

「ぱっくん?」


抱っこしてあげた。




くりくりの目でイルカを見る。
犬種はパグだ。


言葉は伝わらなくても、


何がいいたいか、イルカには理解できた。




「寂しかったんだね。でも大丈夫、これからは俺がいるからね」



イルカは1匹、づつ名前を呼んで、頭を撫でた。



犬達は自然とイルカの事が好きになった。












数日後。


はたけカカシは撮影を終え、帰宅した。


まるで、別の家のように、そこは綺麗だった。

「へえ〜やるね、君、エビスの話ではうちの犬とも上手くやっているそうだね」


「いえ、それほでは・・・」




カカシはじっとイルカの黒い瞳を見た。



その瞳の中には、熱いものを感じだ。



(この熱さはなんだろう?)






「そうだ、君の事はなんと呼べばいい?」

「うみのでも、イルカでもお好きな方で」



「うん、ではイルカ、そう呼ばせてもらうね」


「はい、カカシさん」

「GOOD!」








その晩の夕食はカカシの好物の、秋刀魚と茄子の味噌汁だ。



実際、芸能人にしては少しばかり地味なようなきがする。



その他にイルカはカイワレとツナのサラダを作った。


イルカはすべてをトレーに乗せ、キッチンに運んだ。





カカシはダイニングのコンポのスイッチを押した、


流れて来たのは、少し昔の海外の音楽だ。



少し悲しげな曲だった。

イルカは何処かで聴いた事があるはずなのに、誰の曲なのか思いだせなか
った。






二人は向かい合わせで、夕食をとった。



「ね、イルカはどんなものが好物?」
「はい・・ラーメンです」

「そう、じゃあ〜今度日本一上手い店を案内するよ」



「?」




ずいぶんと、フレンドリーな人だ。





家政夫と食事を共にするなんて、




カカシは遠くを見た。

「俺も・・・・よくたべていた、カップ麺」


「本当ですか?」

カカシは白い歯をみせた。



「ま、こんな私でも、初めから有名ではなかったのです」


”そうだよね”



イルカはもくもくと秋刀魚を口に運んだ。




油がのっていて、いい味だ。




「ところでさ、イルカ、明日俺久しぶりのオフだから、イルカは俺の買い物に
付き合ってね」
「はい」



買い物?


カカシはご飯をおかわりしていた。




自分が作るものを、喜んでもらえることは光栄だ。







イルカのかいわれのサラダもカカシは一人で完食した。















はたけカカシは免許はあるものの、車の運転は禁止されていた。


あまり彼は運転にはむいていないようだ。




もし事故でもあったら、人気俳優だけに取りかえしがつかない。



カカシの外出には、運転手が同行する。




彼のドライバーは、意外にも美しい女性だ。


少し奇抜なナイスボデイの彼女はアンコという、




愛車は、スポーツタイプだ。


アンコはA級ライセンスを取得している。




イルカはカカシと二人で後部座席に座った。





「とばすけどいい?」

「だあめ、イルカも乗っているから、安全運転してよ・・また捕まるぞ」

「は〜〜い」



「彼女スピード狂でさあ〜時々暴走するから」




”ぞおお”



「カカシ、今日はどこに行くのかしら?」

「うん、横浜の駅までお願い」


「了解」





イルカは窓の外を眺めていた。



空は蒼く、白いふわふわな雲、なかなかの天候だ。




平日という条件もあり、道路もすいすいと進んだ。






カカシは横浜のデパートが目的のようだ。
「アンコ、待ち合わせ5時にここで」
「わかったわ」




人気俳優はたけカカシの少し後にイルカはついて、デパートに御供した。



カカシは目立たぬよう、ブルージーンズ眼鏡をかけて、いた。


自分では地味にしたつもりが、彼は目立つ。




すでに何人か彼の追いかけの女性の姿をイルカは目撃した。






エスカレーターでカカシはメンズ売場に降りた。





追いかけの女性もその後についてくる。


追いかける側は楽しいが、その反対の立場の人間の気持ちはどうだろう?

もっとも、追いかけるくらいなのだから、相手の迷惑など、考えたこともない
のだろう。








カカシはメンズカジュアルのショップで立ち止まる。


カカシはジーンズを2枚選んだ、


行きつけなのか、店長がとんできた。


「イルカ、これ試着してみて、店長みてあげてね」
「かしこまりました」

カカシと同じくらいの年齢の眼鏡の店長は、イルカをドレスルームに案内し
た。




何で俺が試着するのか?



イルカはGパンをはいた。

カーテンを開く。
「なかなかじゃない」

カカシは笑う。
「あのう〜〜これは私にですか」
「そうだけど」
「困ります、ワタシはただの家政夫です」




「これ制服の代わりだから、気にしないで」



「は・・あ・・・・」



イルカのはいているG パンは少しくたびれていた。









サイズは2枚ともぴったりだった。



イルカが着替えする間、カカシはシャツを選んでいた。



「これどうかな?」

「よくわかりません」


(まいった)


カカシはGパンとシャツをイルカに買いそろえた。



イルカには不安が残った。

そんなに、よくしてくれるなんて?

何故?




「どうかした、元気ないね?」
「いえ」



「あ、そろそろお昼かな?・・船に乗ろう」

「船?」

「東口からシーバスがあるから」


そうなんだ。






海だ。


何年ぶりだろう?


デパートから船のある海側をでて、二人はシーバスに乗った。

目的は山下公園だ。





デパートから追いかけてきた娘たちもそれを追う。




ほんのり塩の匂い。




「こっち、こっち」


カカシは慣れているのか、二人は野外の席を確保した。






風が心地よい。






船からは、美しい、MM21地区が一望できた。




なんだか、日常がら離れられた、そんな時間だった。






「時々、海がみたくなる・・・・」

「そうですね・・・・」


「俺、よくこの公園のベンチで一人で本を読んでいた・・・・」
「カカシさんが一人で?」


「疲れたと思ったら、こんな風に海を眺めたり船に乗ったりとすこしは癒され
るから」



風がイルカの髪のしっぽをゆらす。





カカシは哀しい目をしていた。


何かを思い出した。


ただ、それが何だか、自分でも理解できない。



誰にでもある、誰にも語れない、自分。




海辺の公園には犬を連れた人たちが散歩をしていた。



そんな中をふたりはぶらりと歩く。




「イルカ、アイス食べる?」

カカシはアイス売りを発見した。



嬉しそうに、彼はアイス売りの男に駆け寄る。


「あ、あんたテレビの人!いけめん刑事だなあ!!」
「あはは」

「うちの女房も娘も大ファンだ、サインくれよ」

「うんいいよ」



カカシはサインをねだられている。




「はい、お待たせ」


二人はベンチでアイスを食べた。


もう季節は10月をこえたのに、まだ暑い日がつづく。







細い迷路のような中華街の中をイルカはカカシの後をついて、ただあるかさ
れた。




一人では、無理な道だ。




カカシとはぐれぬよう、イルカは早足になった。



艶やかな、異国の香りのする街。





まるで、迷宮だ。



ふとカカシのサブマネージャーのカブトから
「一月はやめないでね」

なんて、意味ありな言葉をかけられたその事をイルカは思い出した。









ラーメンが好き。

その俺の言葉で、彼はここに来たのだろうか?




「ここ、日本一だから」


その中華街の一角にある、店は確かにスープも麺も絶妙だ。


イルカが今まで口にした中でNO1だろうか?





イルカは夢中でそれをすする。

店は「一楽」



ふと気がつくと、店の壁にははたけカカシのサインや写真が飾られてあっ
た。




「次はどこにいこうか?」

「カカシさん、もう3時すぎましたよ」
「そうだね」
「わんこのご飯が」


「それなら、エビスが、ホント、1日24時間、って少ないね。時間が止められ
る忍者とかになれればいいのに」



「忍者?」




「そうだ、こんどドラマで忍者になる」

どんな役割も出来るそれが、役者の魅力だろう。





二人はお土産に中華菓子を買い、再びシーバスに乗りこんだ。





(楽しかった)






少し疲れたかカカシは帰りの車の中で眠っていた。

安らかで美しい寝顔だった。







はたけ邸に帰宅してイルカは夕飯の仕度を始めた。



カカシのリクエストでお好み焼きを作った。








屋敷にはカカシの二人のマネージャーが留守番をしていた。

黒メガネと丸眼鏡の二人。






運転手のアンコは帰ってしまった。






イルカは4人前を焼きあげた。


「いかがでしたか、初デート?」
「で、でええとお?!」


イルカは仰天で声をひっくりかえす。
「もう〜嫌だな?ばっちりに決まっているじなないの!100年の恋のように」

(100円の恋?って何?)





イルカは悪寒がした。



イケメン俳優は、あっちが好みだとは、



恐怖支配でイルカは絶句した。


同時に落胆した。














夕飯後、一人、キッチンで後かたずけをするイルカにエビスが近寄ってき
た。



「あのう・・・・イルカさん、今日はどのような一日ですか?」
心配そうに彼は言う。
「はい、今日はデパートで制服を買っていただいたり、中華街でラーメンをご
馳走に」


「それだけ?」

「はあ?」

「そうですか?ほんと?」

「あのう・・・なんのことを?」
「いえ、お尻を撫でられたとか、キスをせまられたとか、ホテルに誘われたと
かないんですか・」

「ギョ!!」



し〜〜ん


しばし、二人の前に思い沈黙。



「どういう意味です、エビスさん?」


「いいんです、イルカさん、本当に彼に気にいられたみたいです。大事にして
います、あの人なりに」



「待ってください。どういう意味?」


なんだか、わからない!!

イルカはエビスに問い詰めた。



はたけカカシは男色も好きなのだ。



それで、俺にあんなによくしてくれたのだ。


”許せない”






怒りがイルカの中でこみあげてき。た




彼がいい人だと、思いこんだ俺がバカだ。



馬鹿馬鹿しい!!




イルカは拳を握りしめた。





「待ってくれ、誤解だイルカ!!」



そこにはエビスとの話を聞いてしまったカカシがいた。




「イルカ、俺、女の人が好きになれない。・・・・でも君は今までこの家に来た
誰よりもよく働いてくれて、うちのぱっくんたちも、懐いている、
だから・・・変な事はしない、約束するから、信じて」

”信じて”


かみしめるよう、彼は言う。




その瞳は酷く悲しい色をしていた。




「これで、出ていくのは、それは君の自由だ・・・俺にはとめられない」




彼は重く肩をおとし、そのまま自室に消えた。






翌、早朝。



イルカは荷物をまとめ、屋敷を後にした。



★3につづく










2011年11月12日
家政夫は見た!! 1話(全3話)
東京の高級住宅地に彼の暮らす豪邸はあった。


クラッシックな洋館は、まるでサスペンスドラマの舞台のようにみえた。


この豪邸に越してきて3年。

彼はもともとは貧しい暮らしをしていた、という。



職業は俳優だ。


たぐいまれない美貌に、プラチナブロンドの髪、

長身で均整のとれたボディ。


更にその声は甘く、耳元で囁かれたら、大抵の女はおちるだろう。



そんなイケメン俳優も今年で30歳。



そんな彼、はたけカカシのマネージャのエビスは連日頭痛に悩まされてい
た。



この日も仕事の為、カカシの自宅を訪れた。


1階のリビングは、散らかり放題だった。



エビスはカカシとはほぼ同年代。

細身で黒い眼鏡が印象的だ。




「あはは、エビス、早かったじゃない?」


「カカシさん、また逃げられたんですか?」




俳優はたけカカシは今、しがたシャワーを浴びたのか、素肌に純白のバスロ
ーブ。
手には、缶のトマトジュース。



「去るものはおわない・・・・それも俺さ」


ふうう〜。



カカシは深く溜息をついた。



昨夜の事はもう忘れよう。





完璧、な彼には一般男性とは全く反対の趣味があった。


彼は女が嫌いだった。


勿論それは、隠された事実だ。


近しい者だけが知る、人気俳優の趣味。


つまり、男、男が好きなんだ〜〜!!



「ねえ〜エビス、早くネットに募集かけてよ、・・・俺は家事できないからね
〜・・・よく働いて明るくて、今度は黒髪のかわいい子にしてね」


これで、何人目だろう。



この屋敷の家政夫が逃亡したのは。



エビスは心の中で溜息をついた。




求人はネットで募集をかけた。





この世界には、現在不況のおり、職のない人間があぶれていた。


そんな訳で、仕事内容が家事でも、条件をよくすれば、希望者は多数だ。



その中から、
カカシが気にいる男性を選んだ。






彼の選んだ、家政夫は、大抵、彼の危険思想、および、セクハラの嵐に負
け、泣きながら逃げていく。

悲しい話だが、結構はたから、冷静にみれば、笑える話だ。




ネットからの希望者は、履歴書と全身写真を送る。



カカシがその中から選び、面接も自分でおこなった。



「あ〜〜あ〜〜現われないかな?天使のような〜かわいいオトコ」



”もごもご”



エビスは何か言いたげだったが、言葉をのみこんだ。
















ネットカフェで、一人の青年が、パソコンの画面をくいいるように、見つめて
いた。




少し疲れた表情だ。



先月末で、彼が勤務していたショップは閉店した。




現在は無職。


一日も早く転職を希望するが、


そんなに簡単ではない。




彼が勤務していたのは、小さなペットショップだった。

あまり流行らない、ペットショップの現実は厳しいものだ。






彼は動物が好きだ。


店の最後の日、


店で売られていた、仔ネコや仔犬たちは、何か運命を悟るような、悲しい瞳
をしていた。


イルカ(彼)は、自宅に帰り、一人泣いた。


やりきれない、悲しみと、何も出来ない自分の無力さ、に腹だたしい。



同僚は、ネットでネコや犬の飼い主をさがしていた。



朝から、イルカは求人サイトをみていた、不思議な募集をみた。


仕事。家事。住み込みで、食事もついて高給だった。




「家政夫」どうして男性なのか?、
考えても謎だ。

イルカはネットカフェをでた。











数日後、沢山の募集が、カカシに届けられた。


「ああ〜〜300件も?それは、楽しみだ」



エビスは履歴書のをダンボールにつめて、カカシに差し出した。


「あ、これ駄目、これも〜わあ〜だめ〜〜いやだ〜まっちょ!!」


カカシは楽しそうに写真を吟味していた。



(けして、カカシさんは悪い人ではないけど、これが困りますね)



「ねえエビス、ご飯、犬たち待ちくたびれてるよ」
「はい、ただいま」





はたけ邸の広い庭には、彼の愛する八匹の犬が飼われていた。




犬はカカシにとって
大事な家族だ。


カカシは、早くに両親と死に別れ、兄弟もいない。


大きな犬や小さな犬もいた。


ただ、この犬たちは少し人見知りをした。



家政夫、の条件の中に、この犬たちと上手く付き合えるか、という条件もあ
る。






カカシは何枚か写真をみたが、理想とは遠いものばかりだ。





「ま、いいさ、今夜収録が終わってからじっくり選ぶから」




これからカカシはテレビ番組の収録があった。


外では運転手が待たせてある。



「いこうか」

「お急ぎください」


外は細かい雨が降っていた。












うみのイルカはぼんやり、アパートで本を読んでいた。


きゅーひ〜4分間クッキング、今月号は、節約レシピだ。


彼の住む、部屋は古い和室だ。


家具はあまりなく、少し殺風景だ。


壁には犬のカレンダー。




そろそろ、お昼だ。



腹の時計が時間を知らせる。

時計並みに正確に、イルカに時間を教えてくれるのだ。




「かっぷめん、たべよう」


そういえば、このところ毎日そればかり。


「ああ〜たまには、テレビの旅番組とか、ち×散歩にでてくる旨そうなコロッ
ケとか〜食べたい!!」



言葉にすると寒い。


痛い。



イルカはお湯をわかし、カップにそそいだ。



その時、彼の携帯電話が鳴った。




先日応募した、家政夫の件だ。


面接が決まったのだ。




「はい?もう一度お願いします」


面接地は、東京屈指の高級住宅地。




たぶん、大金持ち。




でも、なんで、面接が夜の9時?


考えると謎だな。

でも、取り合えず、動くか。
人間アクションが大事!!





「あっ、ラーメン!!」


気がつくとカップ麺はのびていた。



少しふやけた麺をイルカはすすった。






家政婦、かせいふ?火星?

家事をするんだよね。




イルカは結構と掃除や洗濯が上手だった。



料理も本をみれば大抵作れる。



でも、実際、どんな家なのか、行かないとわからないな。













面接の当日。



イルカはスーツできめて、地図を片手にJR新宿から私鉄に乗り換えた。












「ふんふんふん♪」


カカシは夕飯はエビスが買ってきてくれた、コンピニ弁当をもりもり食べた。



実際、人気芸能人の食生活なんて、たいしたものではない。



カカシの手元には一枚の写真。




黒い澄んだ大きな瞳の青年が仔犬を抱いている写真。



いかにも、カカシの好きなタイプだ。




相変わらず1階のリビングは散らかりまくりだ。



エビスも時々はみかねて、掃除をするが、かたすそばから、カカシはちらか
してくれる。



男二人、コンビニ弁当は、寂しいものだ。



「たまには、秋刀魚食べたいなあ〜茄子の味噌汁と」



ぽつり。



「はい?」


「ん、なんでもない」





この3年で逃げた家政夫は数えきれない。





なかなか、難しいものだ。





写真の青年は光り輝いてみえた。


カカシは一目みて、彼の虜になってしまった。


(惚れっぽいなあ)








午後、8時45分。



同時にはたけ邸のインターホンが鳴った。


門のモニターに黒髪の青年。




エビスは首をかしげた。


何時もなら、庭で犬たちが騒ぐのに、

今夜はおとなしい。


なんでだろう?



「本日、面接にお伺いしたうみのと申します」

ぺこり。


真面目そうな彼に、エビスは複雑だった。




たとえ、カカシが彼を気に行っても、彼が、それに答えられるか、別問題。








大きな屋敷に高給な調度品。



高給ホテルのラウンジみたいな部屋でイルは案内された。



きょろ、きょろ。



緊張で全身が強張った。


(笑顔、エガオ)







自分にいいきかせる。





‘じゃん、じゃんじゃんじゃん♪”



派手なロックミュージックと共に部屋の扉が開いた。



サングラスにコート姿。


銀色の神秘的な髪。


「い、イケメン刑事!!」





それは、カカシの主演しているドラマだ。


イルカも観ていた。




あの、ドラマのイケメン刑事がイルカの目の前にいた。

それはそれは、めんくらった。




「ありがとう、俺の番組を観ていてくれて」


くるり。


彼は派手に一回転した。

イルカの前に膝をつく。


「お呼びですか、わたしはあなたのナイト」



(げっ!!)




何言うんだろう?この人?




面接で、一応面接なので、イルカは言葉にはださず、微笑んでいた。





カカシはコートの中からイルカの履歴書を取り出してみせた。


「うみの、イルカさん。・・・・25歳。あなたは先月まで都内のペットショップに
お勤めですね」
「はい」

「なぜその仕事を?」

「動物が好きです」

「そう、学校は都立木ノ葉高校、で、パンツの色は?」


「えっ?」

”ぱぱぱ。ぱんつの色?”




どそくさに、なんという質問だ。



面接でパンツの色が、学歴や経歴と関係あんのかよ!



「はい・・・しろです」
正直者のイルカはつい、


もじもじ。

イルカは答えた。



「合格!!」


カカシは満足そうに微笑んだ。




「合格って?」

なんか、話が理解できない。


もしかして
テレビのドッキリかなんかか?

イルカはカメラをさがした。



「どうしたの?」



「これ、やらせですね?こっちは真面目なのに!!」
イルカは少し怖い目をした。

「違うけど、イルカさんは住所は台東区だけど、すぐに越せる?」




真顔ではたけカカシは言う。

「すぐに?」


「うん、俺家事ができなくて、毎日コンビニのお弁当だし、それに犬の世話も
大変で」




「あのワンコたちですね」


イルカは門の中で、カカシの飼う犬たちと会った。



「いまは、世話は二人のマネージャーがしてくれてるけど・・見た、うちの犬」


「はい、とてもお利口さんでした」



「ふうん」



カカシはにこっと笑った。


★2話につづく






2011年11月03日
HI^HA~HA~~後編
コンコン”

カカシが一人、カップ酒を呑んでいると、暗部時代からの後輩、テンゾウが
訪ねてきた。



「わあ〜先輩、いい匂いですねえ〜」
「ああ、これ旨いんだ、どうだテンゾウも」

「はい」


”ぱりぱりぱり”

テンゾウは激辛せんべえを頬張る。


「この少しニンニクのきいているところ、たまりませんねえ」
「ああ〜そうだろう?」

テンゾウはそういうのに、何故イルカ先生は?

まあ〜好みはそれぞれだ。






二人は酒を呑み、ダンボール箱の残りのせんべえをツマミに夜を明かした。









(うっ)



ズキズキと頭をハンマーで殴られたような、痛み。



酔いつぶれ、カカシはその場で横になった。


隣にはテンゾウがイビキをかいて、気持ちよさそうに眠っていた。




(手と足がシビレルようだけど、お酒のせいかな?)




カカシはゆっくりと身体を起こした。

ずこ〜ん”!





それは、かつて経験のない、激痛。



お尻が半分に割れそうだ。





カカシはトイレに走った。






「ひい〜〜〜〜〜はぁ〜〜〜〜〜〜ひ〜〜〜〜はぁはぁ〜〜〜」



口からどころではない、


お尻から炎だ。



意識が遠くなる。



カカシはその場を動けずに便座で失神をした。


(尻がわれるう〜)






”ドンドン”




「先輩〜どうしたんですかあ?」





何時までたっても、トイレから戻らない、カカシに気がつき、テンゾウはトイレ
のドアを叩いた。



「どうしましたか?」


「ひ〜〜ひ〜〜」

か細い、カカシの苦しむ声。



カカシ
痛みと戦いながら、

こんな姿を里の皆に知られたら困る。


どうしょう!
頭が混乱した。



俺は里の笑いものに、


当然、イルカ先生にも、


ああ〜〜



ぐったり。









カカシの住居のドアには、鍵はかかっていなかった。




イルカは靴をぬいで、中に突入した。



リビングにはカップ酒の瓶や、ウイスキーのボトルが転がっていた。




あの激辛せんべえもある。





そのうえ、カカシのへやには、イルカの恋敵がいた。



何故かトイレの前で、ぼんやりしている。
「ヤマトさん」


ヤマト、テンゾウは振り返る。



「はっ!?」



振り向いた、彼の唇は3倍にも腫れあがっていた。



あのせんべえのせいだ。





「イルカ先生、大変です、先輩がトイレからでてきません」



「もおおお〜〜あの馬鹿!!」




イルカはトイレのドアを壊した。




怒りにまかせて、ドアをひねったら、壊れただけだが、








「か・・・・カカシさん・・・・・」



便座にすわり、イルカの恋人は気を失っていた。




哀れな姿だ。



コピー忍者、から便所忍者に、変貌したようだ。


それでも、俺はこの男が好きです。

(イルカ談)








カカシは本人が望まない「木ノ葉病院」に運ばれた。



ヤマトが背負い、運んだのだ。




白く、かたいベットの上、


カカシは意識を戻した。



傍らには、天使のようなイルカがいた。



「イルカ・・・せんせ・・・」



イルカには表情はない。




幸い、カカシの顔には、腫れはなかった。




(うっ!)



カカシは自分の下半身に、違和感を感じた。



そっと手で大切な場所に触れた。



ぽってりと、彼のアソコは腫れあがり、恐竜さん、こんにちは、どころではな
かった。






ああ〜〜〜



再びカカシの意識は遠くなる。

「当分大人しくしてください、えっちも無理ですね」



さめた、イルカの声が傷ついたカカシの心を刺した。









冷たい事を言ったものの、


毎日イルカは病院に顔をだした。


カカシの入院は極秘だった。





まさか、お尻から炎を吹いたとは、誰にも言えない。



そんなカカシの尻にイルカはお薬をぬってくれた。










今日はイルカはりんごをむいた。



カカシはようやく食事がとれるよう回復していた。



病室の窓から、梅の木がみえる。


そろそろ今年も、愛らしい花が咲くだろう。




もう、春なんだ。





「どうぞ」

「ありがとう・・・」



イルカはむいた、りんごをカカシの口に運んだ。



今週末、カカシは退院できる。



そしたら、二人で散歩がしたい。




「イルカ先生、今回もすみませんでした」



「いいんです、もう慣れました〜〜あっ!!」


ベットから半身を起した、カカシの頭を見て、思わずイルカは息を飲んだ。





「どうしたの?」

「なんでも〜〜」



カカシの頭部に小さな禿げを見つけた。



窓からは柔らかで優しい春の風。




それでも、俺はこの人が、このひとが好きだと、おもう・・・・。



101223.


2011年10月29日
HI~~HA~HA!!
午後3時の休憩タイムに、うみのイルカは口から火を吹いた。



彼の手には激辛せんべえ、これはイルカの恋人から貰った任務の土産。



同様に彼の仕事仲間達も辛さに涙をこらえた。




”ごくごくごく”


イルカは水を大量に呑みほした。



それでも、口火事はおさまらない。
食べかけのせんべえは、赤い色をして、その辛さを主張していた。



袋にはトウガラシのイラストがリアルだ。








その頃、


うみのイルカの恋人のはたけカカシは里の仲間達に、任務先の土産を配っ
ていた。



あのトウガラシのせんべえだ。

「これ、ガイの分ね。・・・あ、こっちはアスマに渡しておいて」

「ほお〜これはまたからそうだな?」


「も、寒い里でさあ、辛い物が名産だってさ」


”うむ”


ガイは袋を見てうなった。


「なに?」


「あまり辛いもんばかり食べると、髪の毛が抜けると、アオバが言っていた
ぞ」

「まじい?」


もう皆に配ってしまった。



今更回収もない。




困った。まだ自宅のダンボールに一箱あるというのに!!










数日前、某里。




木ノ葉の上忍、はたけカカシは1件の土産物店にいた。


店の看板娘は美しかった。



綺麗なセミロングの黒髪に大きな黒い瞳。(カカシはこのタイプに弱い)




カカシは、娘に勧められ、
大量に買い物をしていた。



勿論、そのような事実は恋人には話せない。





想像するだけで、きれる恋人の姿が浮かんだ。





”こええええ”




優しい笑顔の中忍、イルカは時として、悪魔に豹変する。




だから、浮気は無理なのだ。













夜間。


カカシは恋人の部屋を訪ねた。




イルカのキュートな口びるは、赤くはれていた。



「どうされました、イルカ先生!」



「あんた、このせんべえ自分で味見しましたか?」


無表情にイルカは激辛せんべえ、の袋をかかしに突き出した。


「あ、これは、俺が・・・・」



「ひい〜〜はあ〜〜はあ〜〜口から炎のファイアーです!汗も止まりません
よ!・・・酷いです、カカシさん」



土産物屋の美しい娘に騙されたのだ。



なるほど、みれば赤く、いかにも辛そうだ。




匂いが鼻をついた。



カカシは試しに、1枚袋から取り出した。




「これは、わああ〜」


確かに辛い、


だが、この辛さ癖になる。




「カカシさん?」



イルカも同僚も皆、火を吹くほど、苦しんだというのに、



カカシは平然とそれを食う。


「おかしいですね。唇もはれないし、本当に何でもないんですか?」




この違いは、もしかして、上忍と中忍の違いだろうか?



いや、カカシだけが違うのかもしれない。









翌日、

イルカはお昼のサンドイッチを買いにコンビニに立ち寄った。


店にはマイトガイがいた。

「ガイ先生、あれ?!」



ガイの唇は2倍に腫れあがっていた。



まさかあれを、ガイも食べてしまったのだろうか?




そうだ、違いない!!


「ガイさんも、カカシさんのお土産を?」

「うむ、なかなか旨かったぞ、あれは、昨夜一人で全部たいらげたら、朝、口
がな」



”おかしい”




珍獣、ガイ先生の唇でさえ、腫れあがったというのに、




(カカシさん?!)



とても嫌な予感がして、イルカはコンビニを飛び出した。



昨夜、カカシは自分の部屋には泊まらず、自宅に戻ったのだ。













カカシは機嫌をそこねた、恋人をなだめ、次回のデートはステーキに、しまし
ょう、と言い残して去っていった。







自宅にはまだダンボールで例の赤いせんべえが残されていた。





皆が、辛くて駄目ならば、俺が全部、


カカシは酒を用意した。








★後編につづく。


来週を予定しております。












2011年10月15日
ビンタ 後編
寒い朝だ。


カカシは部屋の窓を開いて、空気を入れ替えた。


昨夜はじっくりと入浴した。

全身(特にアソコは念入りに)をピカピカに洗いあげた。




この日の為に高価なスーツを購入した。





午前10時、カカシは待ち合わせの公園に向かう。


そこは、カカシの住居から近くて、緑が美しく噴水もある。





カカシは日頃の習慣で片手には「イチャパラ」を持っていた。









”きらきらきら”





デニムのパンツに純白のセーターのイルカ先生は眩しかった。

きっとパンツも純白かもしれない。


(むらりむらむら)





カカシは欲望をおさえ、爽やかな笑顔をつくった。



「さあ、いきましょう」



気がつくと、無意識のうちにカカシの右手はイルカの形のよい尻を撫でてい
た。

「いゃあ〜〜〜」

イルカは飛び上がった。


痴漢?って、カカシさんが痴漢を!!


イルカは額に汗がにじんだ。



「す、すみません、腰を抱こうとしたら」
「こ、腰ですって?抱く??」




”しまった”




えろパワーさく裂のカカシにイルカは、ひいた。
しかも、この日カカシはいかにも高級なスーツに覆面なのだ。
怪しい。





「冗談ですよ、ははは」



カカシは頭を冷やした。



今回のデートは失敗できない。


それはSランク任務のようだ。






「ディダラ展」


不思議な粘土細工を二人は観賞した。



イルカはやっと、リラックスした。




そろそろ昼時間。
「イルカ先生、そろそろ一休みしませんか?この辺に焼き肉の旨い店がある
んです」

「わあ〜〜〜」



なんということもない「焼き肉Q」の事である。


アスマならではの選択だ。










カカシは焼き肉やに入り、ぎょっとした。


そこには、彼の部下のナルトと、仲間のシカマルとチョージが夢中で焼き肉
を食べていた。







(なんでこうなるんだ)





カカシはナルト達と合流することになった。




イルカは自分の教え子たちと話がはずんでいる。






特に、ナルトときたら、イルカにべったりだ。


「あのう、イルカ先生、お腹も満たされたところですし、これから二人でお散
歩にいきましょう」



「そ、そうですね」


「俺も行くってばヨー」


「なんだ、それ?!」


カカシは ナルトを睨みつけた、ナルトも負けずに睨みかえしてきた。






二人の視線は激しく、火花が散った、それは同席したシカマルたちにも、わ
かった。





「ナルト、ここからは大人の世界なんだ、R18って知っているな?」




「なんだよ〜〜それ?!」




イルカは顔色を変えた。





「カカシさん、ナルトにむかって、なんて不潔なことを!!」

「違います」




(まずい、イルカ先生は怒っている)








「イルカ先生、カカシ先生は何時も、演習の時も任務先でも、えっちな本を読
んでいるっばヨー!!」




「えっ?!」


まだ子供のナルト達の前で、そんな破廉恥な!!



イルカはカカシに少し幻滅した。






カカシとイルカ、ナルトの3名は公園に入った。








シカマルとチョージは空気をよんで、遠慮した。








「さあ、イルカ先生どうぞ」


ベンチにハンカチをひいて、スマートにエスコートする。




二人掛けのベンチは狭く、イルカとナルトだけが座っている。



「なあ、カカシ先生、アイス食べたいってばヨー」



”ひくひく”




ナルトの参入でアスマのデートシナリオは、変わってしまった。




このままでは、折角のデートが台無しだ。






なんとか、ナルトを引き離したい。



「わかったよ、ナルト、先生の代わりに好きなアイス買ってきて、冬場もアイ
スか・・・・」



カカシはお札をナルトに握らせた。




「わかったっばヨー!!」




元気にナルトは走りだした。



(今だ!)




「さあ、イルカ先生、こちらへ!」


カカシはイルカの手を取って走りはじめた。


「待って、待ってください、カカシさん!!」



イルカは当然困惑した。



悲しい気分になった。






カカシはその異変に気がつき立ち止った。


「い、イルカ、せんせ・・・」



”ぱしっ”!





イルカはカカシの頬を平手で叩いた。



「ナルトが、可哀相です!!」



”ぷんぷん!”




イルカは一人、公園を後にした。




”ひゅゆううう〜〜”



渇いた風が吹いた。





木枯らしだ。






俺は、イルカ先生の事ばかり考えて、自分の部下をおざなりにしてしまった。



何て馬鹿なんだろう。





イルカ先生はマジに怒っている。




もう口もきいてもらえないかもしれない。


(でも、怒たお顔も素敵だ)







カカシは肩をおとして、しばらくその場から離れられなかった。







冷たい風の吹く中、カカシはとぼとぼと木ノ葉んの街にでた。

行くあてもない。


本当なら、公園でデートの後はカラオケに誘う予定だった。









どれくらい、カカシは歩いたのか、もうあたりはうす暗くなっていた。




カカシは小腹がすいて、何気に「一楽」に立ち寄った。


「いらっしゃい、カカシさん」


「やっぱ、来たってばヨー」



一楽には、イルカとナルト。



「どうして、二人共・・・」


「ナルトが、ここに居れば、カカシさんが来るって、それで、二人で待っていま
した。」

「なるとおお〜〜」


だきしめたい!!


カカシは鼻水をすすった。


「さあ、今夜はカカシ先生のおごりだから、しっかり食べような!!」

「ああ!!」






第一回目のデートは波乱もありつつも無事成功した。








「・・・シさん・・カカシさん」



うとうととこたつの中でカカシは眠っていた。

「あ?」



「こんなところで寝たら、風邪ひくです。さあお布団に」


やんわりと、優しいカカシの恋人は微笑んだ。




「今、俺、二人の夢をみていました。・・はじめてデートした時の」


「なんでしたっけ?もう3年もまえですしね」



イルカはカカシにコップに牛乳を入れてだしてくれた。


「あの時のビンタ、超たまりませんでした・・・癖になりそう」


「もう〜〜変態!!」





美術館デートの後、カカシは失敗に失敗を重ねながら、それでも諦めず、イ
ルカにアプローチをつづけた。







ただ、当時よりも、めきめきに成長して、カッコよくなったナルトが、現在のカ
カシのライバル。




「ね、あんときみたいに、ビンタして」

「はあ?」





変態パワーさく裂。


そんなカカシに笑いをこらえ、イルカは指でちょこんと頬をつついた。






101103.




2011年10月09日
ビンタ 前編
深夜の木ノ葉酒場は、盛り上がっていた。
この店は忍達の間で評判がいい。
上忍、中忍の階級も関係なく、
楽しめる、
憩いの酒場。





大柄で、髭、口にはタバコをくわえた、上忍、猿飛アスマは時分の連れの顔
をしげしげと見た。


彼は同じく、木ノ葉の上忍、ではたけカカシ、

カカシは今夜は落ち着かない。


酒をのみながら、ソワソワしたと思えば、

思い出したように、にやにやしたり、

かとおもえば、重い溜息をついたり、


もともと、カカシは変わり者だ。

これくらい、よくあることだ。

「よお、カカシ。・・・・今夜はどうしたっていうんだ?」

「うふふ、ふふふ」

「いい事でもあった?お前その笑いきもいぜ」

「それが・・・どうしたもんだか、わからないんだ、俺」



カカシはツマミのホッケを箸でつまんだ。

「相談事?」

「ま、そうなんすよお〜猿飛くん」


(どうせ、しょうもない相談に決まっている)


アスマは冷酒をおかわりした。

カカシは、頬を染めている。
瞳は不気味なことに潤んでいた。

「じつは・・・今、好きなひとができた。でも・・・デートに誘いたいんだけど、ア
スマ、どうすればいい?」


カカシは真剣だ。

いい年をして、デートに誘えないなんて、


「おまえが、恋?」


変わり者のカカシは、これでも若い頃から、女からモテタ。


むしろ、アスマより自分のほうが、デートだって経験しているはずなのに?




まあ、カカシはたいがい1,2回、会って、別れていた。

「いつもどうりでいいんじゃねえ?」
「いつもって、何よ?」

どうやら、マジだ。



「あ、だから映画とかにさり気なく誘うとか、お食事に誘うとか、はじめは、そ
んなもんだろう?、そう、
いきなり、ホテルとか誘うなよ」


カカシは本気になれる相手と出逢ったのだ。


気になるのは、その相手なのだが、




どんな女だろう?


「おまえさんの、お相手はさぞ美人なんだろうな」
「当然だ、あの受付で微笑む顔をみるだけで、任務の疲れもとぶ、今時珍し
い、清楚なひとだ」

(受付?女はいないはず)





アスマは、想像した、



ある人物の笑顔がうかんだ。




恐らくカカシのハートをいとめたのは、

アカデミーの教師でもある、うみのイルカだろう。






アスマはイルカとは付き合いが長い。


アスマの父、三代目ヒルゼンがイルカを本当の息子のよう、可愛がっていた
のだ。



「カカシ、目を覚ませ、相手を間違えたな、あきらめろ」


「目さめてるぜ、なんであきらめんだ?・・・・俺はあの人の為になら、何だっ
て出来る、腹筋100回、腕立て伏せ200回。大嫌いな天麩羅だって食べてみ
せる、本気も本気だ、マジ100ドル!!・・・それなのに、あきらめる、意味
がわからない」


「うう〜〜〜ん」



まいった、相当本気なのだ。(マジ100ドルってなに??)


「イルカ先生について、知っている情報を教えてくれ、好きなタイプとか、今
現在恋人がいるとか、アスマ、おまえなら知っているだろう?」




「しかしなあああ〜〜」


アスマは冷酒をがぶりと呑みほした。



にがい顔のアスマ。


「よし、そのかわりに、紅のいけない秘密を提供する」(※さてその秘密と
は?)

「なにいい〜〜」


アスマは昔から、美人の紅に気があった。

”いけない秘密って何!”






アスマはくらいついた。





「わかった、協力する、ただし、イルカを不幸にするような事があれば、俺も
親父も黙っていないからな」



「了解!!」














この数日は少し朝と晩の気温がさがり、



イルカは朝、やっとのことで布団からぬけだした。




まだ眠い。


ぼんやり頭で、昨夜の出来事を思い出す。




アカデミーの帰り道、本屋に立ち寄った。


この日は愛読しているコミックスの発売日。


新刊が早く読みたい。




書店の中をうろうろしていると、


ばったり、上忍のはたけカカシに出逢った。



「こんばんは、イルカ先生」

「あれ?カカシさんも同じ漫画を?」

カカシの手にはイルカと同じ本。


「発売日が楽しみだったんですよ」

「面白いんですよね、」

「はい、最高です」

「あのう、よろしければ、この本について語り合いませんか?」

くすくすとイルカは笑う。
「すみません今夜はちょっと」


また、イルカは会計をすませ本屋をでた。





このコミックスはアスマからおそわったものだ。







今夜はイルカは本を買った後に予定があった。



久しぶりに、猿飛アスマと会うのだ。



あの里を襲った、九尾事件で、イルカは両親を亡くした。

そんなイルカに三代目はよくしてくれた、勿論アスマも弟のように仲良くしてく
れた。

イルカにとって大切な人の一人だ。



イルカは時々アスマと会い、悩み事や話を訊いてもらっている。

アスマは話を訊くのが上手い。









イルカはてくてくと、木ノ葉の歓楽街を歩いた。



初めて入る店で、地下にあるグレードが高い。

着替えてくればよかった。



イルカは忍服のままだ。




約束の時間がせまっていた。









イルカは階段を下り、高級感のある、店に入店した。



ピアノの演奏が耳に飛びこんできた。

日頃、イルカが同僚と、通う居酒屋とランクが違う。



「こっちだ、イルカ!」



一番奥のテーブルで、アスマは相変わらずタバコをふかしていた。

アスマは去年、禁煙に失敗した、余談だが・・。





「お久しぶりです、アスマさん・・・なんか凄い高級なお店で、俺緊張しますよ」



「そおか?ま、たまにはいいんじゃない?座れよ」



「はい」


イルカは腰をおろした。



何故だか、他には客はいないようだ。





ちょこんとイルカは腰かけた、


アスマはまじまじと、このアカデミー教師を見た。



確かにイルカは、ほんわかして、くりくりとしたおめめは、愛らしい。


にこやかで、優しい人柄のイルカは生徒たちからも人気もあった。




「のもうか」



イルカはビールを注文した。




二人はお互いの近況を報告しあった。



「元気そうでなによりだ。お、そういえば・・この間、美術館のチケット2枚もら
ったんだ。俺はそういうの柄じゃないから、どうだイルカ?」



アスマはさり気なくあらかじめ用意したチケットをイルカに渡した。




「わあ〜〜ホントにいいんですか?」


イルカは素直に喜んでいる。




そろそろ、あいつの出番だ。





店の扉が開き、


はたけカカシが颯爽と現われた。
今夜のカカシは違う。

忍服ではなく、気合を入れ、暗部服だ。
(余計怪しいだけだね)



「おう、カカシじゃあないか、偶然だな」

「アスマ、それに、イルカ先生じゃないですか?」





イルカは立ち上がった。

先ほど本屋であった時は忍服なのに、暗部の服とは、特別の任務なのか?



「今夜はよくお会いしますね」


”どかっ”


すすめられもしないのに、



カカシはイルカの隣に腰をおろす。




「こちらのお店はカカシさんはよく?」
「はい、イルカ先生も?」

「俺ははじめてです」



イルカは緊張した。








アルコールもまわり、三人はいい気分だ。


何時しか緊張もやわらぎ、イルカはツマミに注文しピザを食べた。

薄い生地で、ぱりぱりして、なんともいえない。



「なあ、イルカ、さっきの美術館のチケット、カカシといったらどうだ?」



「え?カカシさんと?・・・・でも・・・・」


”もじもじ”




突然のアスマの言葉にイルカは躊躇した。




「チケット?なあに?」

「ああ、木ノ葉近代美術館で、「ディダラ展」があって、美術館はお前の家の
近くだよな」

「そうなんですか?」


「でも・・・」

「イルカ先生ご一緒しましょう」


「あ、迷惑では?」

「全然です!!」


アスマの計画は進んでた。










寒い朝。




アパートの部屋でイルカは気合をいれて、朝の支度。



昨夜は調子に乗ってお酒を飲み過ぎて、頭が重い。






(カカシさんとおでかけ)



その場の成り行きとはいえ、はたけカカシは里の超エリート忍だ。



自分のような,アカデミーの教員と付き合ってもよいものか?





酒場での彼はとても飾らない、ソフトな人柄だった。




変わり者と里では噂されていた。



素顔は、かなりの美男で、スキャンダルも多いと、週刊誌で読んだことがあ
る。




ただ、それは、よくある噂だろう。




若くして、エリートの彼はその分、ねたみも買った。





イルカは昨夜、カカシとメールアドレスを交換した。






二人が約束を交わしたのは、2週間後である。




気がつくと、毎日、カカシからメールが届いた。



イルカも答えた。


「寒くなると、美味しいラーメンがいいですね」





”不思議だな”





同じコミックスのファンで観ているドラマも同じで、こんなにも共通点があった
なんて・・・。









イルカは毎日のメールが、楽しみだった。










カカシはアスマから聞きだした情報で、イルカと同じ本を読み、ドラマもチエ
ックした。


汚いとは思ったが、どうしても彼と親しくなりたかった。



「おい、カカシ、くれぐれもイルカに、いきなり襲いかかったりするなよ」


アスマはたしなめた。



「え〜だってええ〜〜デートなんだから、公園でちゅう、するくらいするでしょ
う?」


「バカモノ!!だからお前は変な噂がたえないんだ・・・それに少し、デリカシ
ーを持て」

「へえい」


「イルカは繊細で、恥ずかしがり屋なんだ」










デート前日、カカシはアスマと打ち合わせをした。




初デートにふさわしい、デートコースをアスマは計画した。







★後編へ
果たして、紅のむふふな秘密とは?


後編は来週を予定しております。







2011年10月01日
黄色いひよこ
イルカちゃんの小さな背中に黄色のリュックサックがちょこんと背負われて
いました。

羨ましいな、


カカシは思いました。




カカシ君は今年5歳になる、少年忍者です。


今日は修行はお休みで、大好きな、お友達のイルカちゃんと二人で公園に
でかけていました。


「あのね・・・イルカちゃん・・あの・・・」

「なあに?」

大きなぱっちりとした瞳に輝く笑顔、カカシはその顔をみるとどきどきするの
です。


もじもじ。


「黄色いヒヨコさんのリュック、それ可愛いね」


イルカちゃんは4歳です。

その年代の子供らしいのです。


「ねえ、カカチもつける?」

「ええっ?!」


背中のリュックをイルカちゃんはカカシ君にわたしました。



”どおしょう”



カカシ君は悩みました。



だって、ひょこの可愛いイラストが、いかにも子供らしいのです。


「どうしたの?カカチ、かおがあかいよ」



「うん、・・・これはイルカちゃんだから、似合うけど、オレにはにあわな
い・・・」

「なんで?そんなことないよ」


イルカちゃんに勧められ、カカシは勇気をだしました。


どきどきする。




「ねえ〜おかしくない?」

「どうして?」

「ホント?」
「うん、とおちゃんにこんど、カカチのもかってもらう」



「ほんと?」


「ぴったり!!」



「そおお〜」

ははは。



カカシは照れくさそうに笑った。









その晩。




カカシ君は御父さんのサクモさんと、スーパーで買ったお弁当をもぐもぐと食
べていました。

「なあ〜おまえ、昼間公園で、ヒヨコの絵の入った鞄をせおっていただろ
う?」

「はっ!!」


おもわず、食べかけのエビフライを落としそうになりました。


「なんだか子供みたいだな、」


はっはっはっ。

父さんは無神経にも笑いました。




”ずううん”





その晩、カカシ君は夕飯を半分残しました。




100208.
2011年09月24日
ギヤンブル
とある、ど田舎の村に欲張りなイルカ爺さんが暮らしておった。


イルカ爺さんは食べるものには目がなく、時々近所の畑から人様の作った
野菜を盗んでいただくこともあった。


そんな爺さんだが、何時も笑顔をたやさない、憎めないキャラクターだったそ
うだ。





冷たい雨が降る憂鬱な月曜日の朝。


イルカ爺さんは、朝●バを観ながら、頭にある事を思い出しました。


近所のお地蔵様にお供えしてある、饅頭。

これを、いただこう!!

こんな雨では人も通らない。




傘をさし、爺さんは散歩をよそおい、地蔵様にでむいた。








お地蔵様には、すらりとした、珍しい銀色の輝く髪の美貌の青年が、饅頭
を、もさぼり食っていた。

青年は黒いマントをはおっていた。



「なんだ、ちみは!!??」




(この饅頭泥棒め!!)

自分を棚に上げ、イルカ爺さんは青年を威嚇しました。






「わたくしは、修行の旅をしております。職業は王子、名はカカシ、・・・旅の
途中、大切な財布を盗まれ、空腹にたえれず、人様のものに手を出してしま
いました・・」


まるで、某、水戸●門的な話である。


彼は麗しい王子様。




(そうか、ここで恩をたんまり売っておけば、むふふ)





イルカ爺さんは、頭の隅で計算しました。




にこにこと人の良さそうな微笑みをうかべる。



「それは、ご苦労なことでしたね。・・・・よろしければわたしの家でお休みくだ
され」


「かたじけない、ご老人」


王子、カカシはしっぽのある、翁を見上げた。



歳は70歳くらいだろう、


若い頃はさぞ美しかったのだと、カカシはおもった。







冷たい雨の中、カカシはひょこひょこと老人に付いていった。






王子とは、真っ赤な嘘で、



カカシは、魔法使いだった。




「ご老人、お名前は?」


「わたしゃ、うみのイルカじゃ」



「では、イルカ爺様、明日、私の国の家来がお金を届けるまで、宿をお借りし
たい・・・・お礼はたんといたします」





怪しく美貌の青年は微笑んだ。










爺さんは王子を自宅に案内した。




煉瓦で出来た煙突のある家。





欲張りな爺さんは意外なことに、他趣味だった。


家には、沢山の書物や絵画が飾られてあった。



カラオケのセットまで揃っていた。


「おおお〜この本!!!」


カカシは一冊の本を手にした。



その本は、カカシの宝と同じ、むふふな本だった。




「さあ〜王子様。ジャムティーがはいりましたよ・・・身体が温まりますぞ」


「これは、珍しい!!」




紅茶の中にジャムをいれた飲みモノは爺さんの暮らす国では、ごく平凡な飲
みモノだった。





「今夜は久振りのお客人、ラグジュアリーに秋刀魚でも焼きましょう!!」





「おおおお」



秋刀魚!それは素晴らしい!!


カカシの大好きな魚だ。







「では、ちぃと、近くのまーけっとにいってきます、王子様はごゆるりと・・・」







爺様は食材の調達に出た。













本棚には様々な書が並ぶ、推理小説、コミックス、

昔、カカシの住んでいた国で流行っていた、同人誌もならんでいた。




ふと、カカシはあるファイルに目を奪われた。


メモリアル。



一冊の古いアルバム。



カカシは手にとって、それをめくった。



そこには、若き頃のイルカ爺さんの姿が・・・・



”ずきゅ〜ん”

”どきゅう〜〜ん”







若き日のイルカ爺さんは、黒目のチャーミングな、ベリーキュートなお兄さん
だった。




写真には、ギャンブルで有名なサスベガスで、トロフイーを持って、微笑んで
いた。




爺さんは美人ギャンブラーだった。








現在、カカシからみて、推定70歳、でももし、後、50年若ければ・・・・


俺のタイプだ!!


(そ、おか!!★)




カカシは魔法使いなのだ。



カカシは企みました。




残りのお茶をすすり、



カカシは妄想に走る。




甘い恋愛を、






カカシは、自分が持ち歩いている、鞄の中から小さな瓶を何本か取り出しま
した。




オレンジの液体に魔力をおくりこみました。
















夕方近く、相変わらず外は雨、

イルカ爺さんはマーケットで秋刀魚を買ってもどりました。




「ところで、カカシ王子、王子様のお国はどちらなのですか?」


「はい、わたくしは、南の大国、むはめは王国の第一王子です」


「ほお〜」

むはめは王国は海の美しい楽園だ。



イルカ爺さんの暮らしている、小さな村とは違う。







(そうか、この王子についていけば、もしかしたら、とくをする!)












そんなことを、爺さんは想像してプチ幸福でした。




王子の為によく焼けた秋刀魚と、茄子で味噌汁を大サービスをしたのです。





むはめは王国とは、あかるさまにでまかせで、


カカシの生まれは「スダコ王国」

その昔、唄って踊れるタコがいたとう伝説があった。





カカシ王子は旨そうに飯を食っている。




それにしても・・・・



爺さんは何年ぶりかに誰かと一緒に飯を食った。





子供も妻もない彼は寂しい生活をおくっていた。




これでも、若い頃は一流のギャンブラーだったのだ。



人生とは上手くいかないものなのだ。






一人暮らす老人には、毎日のように、お年寄りを騙すような、電話がかかっ
てきます。




次第に爺さんの心は寒いものになりました。







「ごちそうさまでした」



ぺろり、


美し青年は手を合わせた。








「お口にあいましたかな?」


「はい、・・・イルカ爺さん、ほんのお礼ですが、むはめは王国名産のみかん
ジュースをお飲みください」


1本のヤク●トのようなドリンクはみかん色。



「なんと珍しい!!」



全く疑わず、爺さんは自称みかんジュースを飲みほした。






”かああああ””






ぽろり。





爺さんの体温が急激に上昇していった。




流れる血液はどくどくと、身体の中で暴れ回っていた。


くらくらする。




”ぱたん”






爺さんは失神してしまった。













次に爺さんが気がついたのは、2階の寝室のベットの上だった。




「いったい、わたしは??」




「だいじょうぶ、君は眠っていただけさ」



「きみ?」


銀色の髪の王子はベットサイドにたち、丸い鏡を爺さんに渡した。



「そ、そんなばかな・・・」




鏡には、信じられないものが写しだされていました。



ぴちぴちと、若い姿のイルカ爺さん。



驚愕のあまり、イルカ爺さんは3分間、汗を吹きました。




「ああ〜なんという、可憐なお方だ、私の心はあなたに盗まれてしまいまし
た!!」

「はあ?」




どうやら、王子はイルカを気にいってしまったようだ。





「では、この責任をとっていただきましょう!」



”きらり”




鋭く、カカシの瞳が光ました。


「ああ〜〜れえええ〜〜〜」






「18歳未満のおかたはご遠慮ください」











濃厚な一夜だった。





「カカシさん・・」


「じゃあ〜いこうか」




欲張り爺さんは、美しい青年と生まれ変わったように、




王子様と田舎の村を後にしました。



これから、どうなってまうのでしょう!



そう、「人生はギャンブルだ」

だよね。






10.10.24.


トップへ
戻る