STORY

2007年11月10日

疑惑



皿の上にタワシが乗っていた。

カカシは目を疑った。



深夜ガイたちと呑んで酔っ払ってイルカの部屋に帰宅した。
「イルカ先生。何か食べ物ある?」
ほろ酔いでカカシは笑う。
「どうぞ」

イルカは皿にタワシを乗せて出した。
「ナニこれ?」
「コロッケです!」
”きっぱり”
とイルカは言った。

目が座っていて怖い。




カカシはイルカに対して最近後ろめたい事件があった。


数日前飲み屋で酔って金髪の女に声をかけた。
美しい女だった。

(何故気が付いた?)

まさか、ガイの奴・・・余計なことを。

「俺はもう寝ます。・・どうぞゆっくり食べてください。コロッケ」
低い声でイルカは言ってベットに転がった。



カカシは残りものの白米に寂しくふりかけをかけて食べた。


その晩はイルカはカカシの相手をしてくれなかった。

(あんにゃろう〜ガイ,明日覚えていろ〜)


結局あの金髪の女とはあの後どうしたのか?

記憶がない。







すがすがしい朝だ。
「熱い朝だな〜リ〜よ走るぞ!!」
「ハイ、ガイ先生!」
”キラッ”

ガイは愛弟子リーと今日も修行に励んだ。

二人は演習場を100周していた。

その前を腕を組みカカシが立ちふさがった。
「おお〜カカシ。お前も青春の熱い汗をかくか!」
「カカシ先生、おはようございます!」
”キラリ”
リーの歯が光る。
「ちょっと来い!」
カカシは走るガイの腕を掴みひきずった。



そしてそのままズルズル人気のない場所へ。
「お、お前は俺に今、いゃらしいことをしょうといしているな」
”ぽっ”
ガイは恥らった。
「んな訳ね〜だろう」

カカシはあの数日前の事をガイに問い詰めた。
「俺はイルカには言ってない」
「ふ〜ん。じゃあ、なんであんなに壊れているの先生は?」
「俺はイルカには言わないが紅にはいった」
「バカ!!」
カカシはガイを張り倒した。



どうやら紅経由で話が漏れたらしい。


カカシは紅を探した。




その頃。

演習場。
紅は自分の班の演習に付き合っていた。
キバにシノとヒナタ。
めいめいに三人は修行に汗を流した。

その側で紅はのんびり化粧をなおしていた。



そこにカカシが血相を変えて走って来た。
「紅、出て来い。勝負だ!!」

行き成りの事に紅班の三人は固まった。
恐ろしさのあまり赤丸がきゅ〜きゅ〜とないた。

「ちょっとカカシ何よ突然・・・・あんた、それより任務じゃないの?」
「にん・・・む?」
”ああっ!!”

カカシは夢中だったのですっかり一番大切なことを忘れていた。

「知らないわよ。この遅刻魔。五代目怒るわよ〜うふふふふ」
楽しそうに紅は笑った。
「勝負はおあずけだ!」


カカシは悔しながらも自分の任務に走った。






そしてその夜。

カカシは紅を探した。
どうせどこかの店で大酒くらっているのだろう。
美しいくノ一は酒が好物なのだ。



カカシは心あたりのある店を訪ね歩いた。

目立たぬようアスマに変化した。(かえって目だっている)
3軒目の店にアスマの姿のカカシが入った。

そしてカウンター席を見て驚いた。
紅とイルカが二人で並んで座っていたのだ。

「もう〜よしなさいよイルカ。・・・飲みすぎよ」

「いいんです」
「酔いつぶれてもおんぶしてあげないわよ」

そこへアスマの姿のカカシが現れる。
「あら、アスマ」
「よう、お二人さん。仲がいいようだな」
「アスマさん!」
イルカは訴える瞳でアスマを見た。
「きいてアスマ。・・・このあいだカカシがね、ガイと飲み会して、あいつ金髪の女にちょっかい出したのよ」
「ふ〜ん、で?」
「ところがね、その女とんでもなかったの」
「紅さん言わないでください。情けないから」
イルカは手を振る。
「どんな女だったんだ?」
「ニューハーフだったの、ふふふカカシってマヌケね」
「ええ!?」
アスマ(カカシ)は驚いた。
金髪美人は男?

「ね、イルカただそれだけの事なの。もう立ち直りなさい・・・それにカカシあんたも反省するの」
"パシッ”
紅はアスマの姿のカカシの頭をはたいた。
”どろん”
カカシは自分に戻る。
「カカシ先生・・・」
イルカは涙をこする。

「なんだ〜紅気が付いてたのか」
「当たり前よ。本物のアスマは側に来ると足の匂いがするのよ」
紅はポリポリ頭をかいた。

「イルカ先生・・・ごめん、いくらお酒がはいっていたとしても、あなたを裏切るようなことをして・・」
「もういいんです。・・・・俺こそごめんなさい」

二人は照れ笑いをした。
「全くいゃあ〜ね・・・・カカシ今夜は奢りなさいよ」

仲のよい二人にちょっとジエラシーの紅だった。








二人は深夜の街を寄り添って歩いた。
「カカシ先生もしあなたが本当に浮気したら、罰として食べてもらいます。
コロッケ」


そう言って笑うイルカの瞳は本気だった。





END


2007年11月03日

行列の出来ちゃう俺☆



毎夜あの人の夢を見る。

何時もあの人は優しく微笑んでいた。

その身体を抱きしめる。
強く。
強く。
抱きしめる。


そんな夢だった。





初めは遠くから盗み見ていた。
子供達とアカデミーの校庭で遊ぶ無邪気な姿。


ナルトが縁で二人は知り合った。


その時から彼の事が気になった。



カカシの想いはいつしか恋に変化していった。


偶然をよそおい何度も帰り道待ち伏せした。

やっと二人で呑みにいく仲になれた。





今夜も二人は里の何時もの居酒屋で会っていた。

お酒のはいったイルカの顔は赤い。
黒い瞳は潤んでいた。
「カカシ先生、そろそろ今夜は帰らないと・・・」

イルカが時計を見た。

まだ9時である。
「え?」
「スミマセン。今夜は仕事が残っているんです」
すまなそうにイルカは言った。
「じゃあ帰らないと」


二人は立ち上がった。
「あのう・・・アパートまで送ります」
イルカはクスリと笑った。
「俺、一人でも歩けます」
「いえ、最近この界隈にテンゾウという変態が出るという噂があります」
カカシは嘘をついた。
少しでも二人でいたかった。
「じゃあお願いします」



二人はゆっくり夜の街を歩いた。






イルカのアパートが見えてきた。

カカシは思い切って彼の腕を掴み引き寄せた。
「カカシ先生!」
イルカの身体が震えていた。

そんな彼にカカシは口付けた。




イルカはタタッとアパートに駆け込んだ。

今のは純情なイルカには刺激が強かったかもしれない。

カカシはそう思いながなも、
えろい気持ちでいっぱいだった。

”あの人と”
”あの人と一日も早く”

”えっちな仲になりたい!”







トボトボ。
大分時間的に冷え込んできた。
呑んだ酒もさめてきた。


カカシは自分の部屋を目指し歩いていた。

木ノ葉銀座のほとんどの店が閉まっていた。

路地裏に入った時、
道の端に白い髪の老人がうずくまっていた。


カカシはちらりと見たが係わらないよう通り過ぎようとした。
「そこの親切な若者よ」
「はぁ?」
老人が口を開いた。
「ワシはお腹をすかせた哀れな年寄りだ」
「そうなんですか。じゃあ」
カカシは無視して行こうとしたが、
老人がベストの裾を掴んで離さない。







〜もうしょうがないね〜

カカシは老人を飯屋に連れていった。
白い髭にサングラス。
服はアロハシャツに背中には亀の甲羅を背負っていた。
何処かで見たことのあるコスプレだった。


老人はがつがつ親子丼を食べていた。
「もう、5日も食べてらんでのう〜」

何かカカシはいけないものに係わってしまったのかも知れない。



老人は親子丼3杯とカレーライス2皿、そしてデザートにアイスまで食べている。
「御馳走さまでした」
手を合わせる。
「全くどんな腹なんだよ・・・爺さん今夜は俺が払うけど、ちゃんと家に帰るんだな」
”しくしくしく”
老人は泣きはじめた。
「帰る場所もない哀れな年寄りを、置き去りにするのか?!あんたは鬼か!!」

店中に聞こえる声で爺さんは言った。

〜〜わああああ〜〜




カカシは仕方なく老人に一夜の宿をかした。



そしてこの物語はこの老人と出逢ったことから始まる。






翌日。
カカシは老人を綱手に引き渡す事に決めた。


老人はカカシに手でおいでおいでをした。
「ん?なあに?」
「ちょいと耳をかせカカシ」
「あ・・・ああ・・・・」
どうやらナイショ話があるらしい。
カカシは老人に顔を寄せた。
”ベロリン”
爺さんはカカシの耳を、
みみを、
舐めた。
「ひい〜〜〜〜〜〜!!」

カカシは卒倒した。




気が付くと老人はカカシにぼこぼこにされていた。
「全く、近頃の若いもんは血の気が多くての〜」
「この変態じじい!」
「まあ〜怒るな…カカシ、お前さんにお礼というてはなんだが、ええ物をやろう」
老人はアロハのポケットから金色の鈴をだした。
「すずじゃない」
「そうだ・・・しかしこの鈴はただのもんじゃあない。・・・この鈴を鳴らして願い事を言うと、なんともれなく3つのお願い事が叶う有難いものじゃ」
「ふ〜ん」
カカシは半信半疑に受け取った。











綱手に老人を引き渡し、
カカシは再び自分の部屋に戻る。
今回の任務は明日からである。
それまでカカシにとて大切な休みなのだ。


夕べはあの爺さんのイビキがヒドクて眠れなかった。



カカシは部屋着である黒のノースリーブに着替えた。
若い頃からお気に入りである。
ふと着替えた時にポトリとあの鈴が落ちた。
(まさかねえ〜)

カカシは何気にそれを試す。
「少年チャンプの来週号!!」

”どさっ!!”

何とカカシの前にまだ発売されていない雑誌が落ちてきたのだ。
「うそ〜まだ水曜なのに!」

何てスゴイんだ!

カカシはドキドキした。


彼の願いは一つ。
”イルカせんせい”

やっぱりえっちしたいけど、どうせするならゴージャスでスペシャルなえっち!

カカシはあれこれ考えて、
鈴を鳴らした。
「イルカ先生30名様御一行到着!」
”ボン!”


カカシの前に30人のイルカの団体が現れた。


カカシはうはうはした。





30名のイルカはいっせいにカカシを見て恥らった。
そして言った。
「カカシ先生〜はや〜くう〜」

カカシは服を脱ぎ捨てた。




”ああ〜夢なのか〜”
たまらない。

カカシは片っ端からイルカたちの服を脱がせ淫らな行為に夢中になった。
お金は払っていないし、未成年でもなく、同意なので問題はなかった。(?)


イルカたちは色っぽく、
カカシに様々なサービスをしてくれた。

このイルカもあのイルカも全部俺のものだ。




カカシとイルカたちの行為は夜まで続いた。

(ん?なんか苦しい)

気が付くと、

カカシはチャクラを大量に消耗していた。




カカシははっとした。
”明日は大切な任務”
「ああ・・・もう駄目〜」
気を失いそうなところに、
裸のイルカたちが行列を作って、嬉しそうにカカシのえっちを待っていた。
悲鳴が出るほど嬉しい行列だが・・・。

このままでは本当にやばい。


カカシは最後の力で鈴を取った。
「かえって〜みんな!」

”どろん”

イルカ30名様御一行は消えた。



がらりとした部屋に、

チャクラのきれたカカシが残った。
そして部屋中に散らばるテッシュペーパーの山。


カカシは倒れた。









次ぎに目が覚めた時。
彼は木ノ葉病院のベットの上だった。



チャクラがきれて倒れているところを、集合時間になって現れないカカシを迎えに来たアスマが発見したのだ。



裸でカカシは倒れていた。
その周りには使用済みのテッシュ。

アスマはその事を黙秘した。
同じ独身男として他人事ではなかったのだろう・・。





カカシはぼんやりと30名のイルカの団体さまのことを考えていた。

病室のベットの脇に花が飾られていた。

”コトリ”
音がして、
病室にイルカが入って来た。
「イルカ先生」
「もう、大変だったんですよ・・・任務はガイ先生に代わって頂きました・・・・大丈夫ですか?」
「え、ええ・・・」
色々思い出すと恥ずかしい。
「そういえば、カカシ先生のお部屋に発売前の少年チャンプがあったって、アスマ先生が・・」
イルカは不思議そうに言う。
と、いう事はあれは本当にあった出来事なんだ。




イルカはカカシの為に林檎をむいてくれた。
「でも、カカシ先生・・どうしてお部屋にいてチャクラきれなんて・・雷切でもされたんですか?」
イルカは首をかしげた。
「ええ・・・まあ〜似たような」
カカシはヒクヒク笑った。







カカシは退院した。
イルカに付き添われ自分の部屋に戻った。


部屋には大量の使用済みデッシュペーパーがあちこちに散らばっていた。
イルカは「いゃ〜〜!」と言って顔を覆った。


そしてカカシも「いゃ〜ん」と言って顔を隠した。



何だかんだ言っても二人は好きあっているのだ。


『いゃ〜〜ん』


二人は同時に叫んだ。





後日、あの鈴は今回のお礼としてアスマの手に渡った。


果たしてアスマの使い道とは?


END





2007年10月27日

黒い野望

ONLYYOUあのカカシとの恋物語からはや数ヶ月・・・・。



ポタリ、ポタリと水音がする。

暗い洞窟なのかそこには、蝋燭の灯りだけの世界・・・。

低く念仏のような声が響く。

あたりは薄っすらと香をたいているのか煙い。


そこには世にも奇妙な集団が儀式を行っていたのだ。







このところ暑い毎日
夏も本番だった。
風呂あがりのビールは最高だった。


イルカはこの日は受付の日だった。
あまり人の出入りもなくのんびりしていた。

ぼんやりと先日のカカシとの会話を思い出す。

”イルカ先生。今週の木曜日、仕事がひけたらボーリングに行きませんか?”
カカシの口からボーリングは以外だった。
”でも俺やったことないんです”
”大丈夫俺も初めて”
”カカシ先生・・・あのうナルトも誘ってやっていいですか?”
”ええ、それならサクラも誘って皆で盛り上がりましよう!”
と、いう事でその日の夜4人でボーリングに行くことに決定した。

その事を考えるとイルカはわくわくした。
きっとサクラもナルトも喜んでくれるだろう・・・。






定時でかたずけて、イルカは待ち合わせした商店街に向かった。
てくてく。
今夜は蒸すな・・。

イルカは汗をかいた額をハンカチでぬぐった。
その時、道の端に一枚の黄色い紙を見つけた。



”サービス券
お一人様一杯。
一楽。

一楽のサービス券だ!
ごくり。
イルカは唾をのんだ。
素早く辺りを確認する。
誰もいない。
”だ、駄目だ。落し物はおまわりさんに届けるよう、何時もアカデミーで子供達に教えているんだ”
心の中で天使の姿のイルカがいった。
”いいじゃないか、別に名前が書いてある訳でもないんだ。へっへっへっ大好きなラーメンが食べられるんだぜ”
悪魔の姿をしたイルカが囁いた。



そっとイルカは手を伸ばした。
イルカは悪魔に負けた。
券を拾い何事もなかったように歩く。
すると5メートル先にまた一楽のサービス券。

イルカは拾った。


一枚、二枚。
券が落ちている。

イルカは夢中で拾った。

そして気が付いた時、
イルカは落とし穴に落ちた。

実に巧妙な罠だった?




待ち合わせの時間になってもイルカは現れなかった。
「遅いわね、イルカ先生。・・・残業かしら?」
心配そうにサクラが言った。
「いや、今日は定時だと言っていた」
イルカに何か起きたのか?
「んじゃ、俺ちょっと見てくるってば」
ナルトが腰をあげた。

何か嫌な予感がカカシをよぎった。





ピタリ。
ピタリ。
水滴がイルカの頭に落ちた。
気が付くとイルカは目隠しをされて転がされていた。
逃げられないよう後ろで手を縛られていた。

冷たい場所だ。
なにかスルメのような匂いがする。

誰かがふいにイルカにちかより目隠しをとった。
「ふっふっふっ・・気が付いたようだな。中忍先生」
どこかで聞いたことのある声だ。
そうだ、あの子供たちのお弁当を盗んだ。
「おまえは変態のタイツ男!!」
話をしたのはあの背の高いタイツ男のリーダーだった。
「残念ながら、我々は変態ではない・・・聞いて驚くなよ。・・・我らこそ、悪の秘密組織その名を『ブラックチエリー』ようこそアジトへ」
「ふ〜ん」
イルカはあんまり驚かない。
「そんなことよりお前たち、何の目的で俺を」
イルカの視界には相変わらず醜いタイツ男の集団が写る。
「うみのイルカ。お前のことはすべて、持っているパンツの枚数まで調べさせてもらった。・・・・よくも我らの野望を踏みにじってくれたな。スーパーイルカ!」
イルカは驚いた。
「おれはスーパーイルカじゃない!!」
「しらばっくれていられるのも今のうちだ。ふっふっふ。今日はこの前のお礼をたっぷりしてやろう・・・びびるなよ・・これより72時間お前をごーもんし続ける!!」
”ヒ〜〜ッ”
男達は奇声をあげた。
「ええっ!?」
イルカは震えた。
そして叫んだ。
「ご〜かん、いゃあ〜〜!!」
黒タイツたちはばたばたコケた。
「ち、ちがう〜我らにその趣味はない。・・・全く少し可愛いくらいで、拷問だ!」

ヒ〜〜ッ
ヒ〜〜〜ッ


ブラックチエリーの手下たちは奇声をあげながら、拷問の支度を始めた。


イルカの耳にヘッドホンをつける。
「なにを・・・」
(恐ろしい)
なんとか逃げないと、イルカは頭を巡らせた。

折角の楽しいボーリングが台無しだ。


イルカの前にカセットデッキが置かれた。
「わ〜珍しい、今どきカセット!」
思わずイルカは目を丸くした。
「これは呪いの唄だ。・・・・この唄を聴いて今まで無事でいられた者は一人もいなかった」
タイツのリーダーはニヤニヤ笑った。

そして、「再生」と漢字で書かれたボタンを押した。
「あああ〜〜あああ〜〜〜!」
イルカは苦しみ始めた。
イルカが耳にしたのは、
何と恐ろしいことだろう、
明石○さんまの唄う「大都会」
(30歳以上の人しかわからない〜〜)
イルカは歯を食いしばり5分間を耐えた。
「ほほう〜これに耐えるとはたいしたもんだな。しかし、お楽しみはこれからだ」
男は手下に合図した。
いったい今度はなにを・・・。


何か上の方から紐が降りてきた。
紐の先端には大きくて艶々した夏の恐怖がついていた。
巨大ゴキブリ。

「いゃああああ〜〜!!」
イルカはそれが嫌いだ!

イルカはもがいた。
”ピトリ”
真っ黒なそれはイルカの額に触れた。

イルカは失神した。
(助けて〜カカシ先生!)
薄れていく意識のなか恋人を呼んだ。









一方、
イルカは定時でそそくさと帰ったということがわかった。
カカシはパックンを呼び出した。
「大変なんだ、イルカ先生が行方不明なんだ」
「なに?イルカが?よし任せろカカシ」
パックンは追跡を始めた。

それにカカシ、ナルト、サクラが従った。


果たしてイルカに何がおきたのだろう?






次ぎにイルカが意識を取り戻したとき。
イルカの前には大きな写真のパネルが置かれていた。
それは、恋人カカシの素顔の写真。
「おまえら、これは・・・・これは、カッコイイ!!」
タイツ男たちは集団でコケた。
「うみのイルカ、貴様がはたけカカシとえっちな仲だという事は捜査済みだ。ふふふふ」
タイツ男たちは同人誌を片手に赤面していた。

おそらくオンリーイベントで買いあさったらしいH本を持っているのだろう。
”いゃ〜らしい〜”
”いゃ〜らしい〜”
タイツたちはイルカを取り囲み連呼した。
「か、カカシ先生と付き合ってなにが悪い!!」
開け直ってイルカが叫んだ。


パンパン。
リーダーは手を叩いた。
その合図に数人のタイツ男がペンキを持って現れた。
「よし、まずは眉毛だ、アレックスいけ!!」
名指しされたむっちり系のタイツ男が、
こともあろうに、
美しいカカシの素顔の写真に、
げじげじ眉毛をペイントした。
「ひ、ひどい〜〜!!」
ゲジマユなんて、
ありえない!!

イルカは嘆いた。

「次ぎだ、岡田、髭を描け!!」
眼鏡をかけた岡田という細いタイツ男はカカシの鼻の下に髭を描いた。
「これぞ、加藤ちゃん、ぺっ!だ・・・どうだ恋人を侮辱される気分は?」


イルカは悔しくてぎりぎり歯をくいしばった。

何処までも卑劣な連中だ。








その頃カカシ達一行はイルカが落ちた穴までたどり着いていた。

そこは商店街から離れた無人の寺だった。

中に入ると不自然な穴。
「この穴妖しすぎる!」
サクラが言った。
「ああ、パックン確かにイルカ先生の匂いなんだな?・・・他には?」
「ああ〜他には線香となんだかムレた足の匂いがいっぱいする。カカシ
、この中にはイルカの他に何人もいるぞ」

いったい何者なのだろう?
「じゃあ、俺いくってばよ。イルカ先生を絶対助ける」
飛び込もうとするナルトをカカシが止めた。
「待て、ナルト。一度に全員で入るのは避けるべきだ。・・・トラップが仕掛けられているかもしれない・・・・、まず、俺が入るもし30分して俺がもどらない時には火影さまに連絡するんだ」


カカシは穴に侵入した。





相変わらず下らない拷問が続いていた。
「うはははは〜これからが本番だ・・・スーパーイルカ、よくも我らの野望をうちくだいてくれたな」
「野望って、いったい何のことだ!!」
イルカは睨みつけた。
「それは、アカデミーをこの”ブラックチエリー”の支配下に置くことだ・・子供たちは皆我らと同じ美しい黒のコスチュームをつけそして、夢のような黄金のエルドラドを築きあげるのだ!!」
「な、なんだと・・・・」

子供たちにそんな酷いことを!!

野望と呼ぶにはあまりに陳腐なものだ。

(許せない〜〜!!)



少しずつイルカの中で怒りのボルテージがアップしていった。


”説明しよう!
うみのイルカは普段はちょっと食いしん坊の中忍教師、ただ彼の怒りが頂点にたっした時、彼は正義の白き戦士、スーパーイルカに変身するのだ!”
以上。”

「そうだ、まだ特別のが残っていた。セバスチャン例のをやるんだ!」
青い瞳の手下はカカシの写真にペイントを始めた。
「そ、それだけは〜〜」
イルカの声が震えた。

カカシの顔は白く塗られていた。
「どうだ、馬鹿殿様にされた気分は。あははは」
「ゆ、ゆるせ〜ないい!!」

”くるくるくるくる〜”
イルカの髪のしっぽが高速で回転し始めた。


”どど〜〜ん!”
彼の怒りが頂点にたっして、

スーパーイルカが登場した。

美しい白いタキシードに真紅のマントがはためいた。
「どうやら、やっと正体を現したようだな、スーパーイルカ!!」
「大切なアカデミーをお前たちになど渡さない!・・・・カカシ先生によくも!・・・もうお前たちの野望は終わりだ!」
スーパーイルカは床を蹴って飛んだ。
”ヒイ〜〜ツ”
その周りを黒タイツの構成員たちが取り囲む。

戦いが始まった。

各自、竹やりや鞭などの武器を持っていた。
中にはマヨネーズを持ったよくわからないのまでいた。

”イルカ、チョップ”
”イルカ、キック”
”イルカヘッド”

華麗にスーパーイルカは敵を倒した。

ふと見るとこそこそと例の黒タイツのリーダーが自分だけ逃げようとしている。

「待て、お前だけは絶対に許さない!」
スーパーイルカは右手を前に伸ばし、拳を握った。

「イルカバズーカー!!」
彼の腕がロケットとなり発射された。


ブラックチエリーのアジトは爆発した。

スーパーイルカ恐るべし。

”ゴオオオオオ”
真っ白な煙がたちこめた。





その爆発のさなかカカシがそこに飛び込んできた。
何事なのか?
「イルカ先生!」

辺りの壁がくずれ瓦礫とかしていた。


その中にイルカが倒れていた。

カカシはイルカを抱き上げ素早く、すべてが崩壊する前にそこ脱出した。










カカシはイルカを自分の部屋に運んだ。
幸い怪我もなくイルカはすぐ元気になった。

ただ、その穴の中でのことはほとんど覚えていなかった。


でも何よりも無事でイルカ帰ってきてくれた事が一番だった。








数日後。
先日果たせなかったボーリングに皆ででかけた。


ナルトとサクラは若いからすぐコツを掴んだ。
一方、大人二人は全くである。

「イルカ先生大丈夫だってば?」
「へ〜」
イルカはへなへなだった。

何度やってもガーターだった。

「そろそろ休む?」
カカシが笑いながら言った。
「ん、そうだ。みんな俺いいもの持っているんだ」
イルカは例の拾った一楽のサービス券を出した。

全部で12枚。
ということは一人3杯ラーメンが食べれる。
「す、すごいってば、先生」
ナルトが一枚手にした。
「ねー先生よく持っていましたね」
カカシも覗く。
「でも、先生何でそんなに持っているの?」
サクラが首をかしげた。
拾ったとは口が裂けてもいえない。

「あ、あれ?先生〜良く見るってば」
ナルトがイルカにサービス券をひっくりかえして見せた。



その券の裏にはペンで”偽者”と書かれていた。

「は、・・・ははは・・・・」


力なくイルカは笑った。



END

☆このスーパーイルカは8月にUPしたONLYYOUの続編です。








2007年10月20日

セピア 後編


同じ頃。
ひと寝入りしたはたけサクモは、カカシが流れ着いたポイントに姿を現した。

あらかじめ流れ着く場所は計算済みであった。



そこには大きなテントにたき火。

”誰かがいる”

”クンクン”

サクモは匂いをかいだ。

何ともいえないいい香りだ。

”これは人間の雄のフェロモンだ”



サクモは近寄った。


そこには一人の青年が魚を料理していた。
真っ黒な美しい髪に輝く大きな瞳。
何ともいえず、魅力的な青年だ。

そして、同じく青年を小さくしたような人形のような子供と自分の息子はいた。
「父さん!」
カカシはギクリとした。

サクモはしらじらしく言った。
「息子を助けていただいて有難うございます!」
いかにも、私は息子を探していましたという演技をしてみせる。
「では、あなたがカカシ君のお父さんですね」
「はたけサクモです」
サクモはイルカの父の手を取った。
そしてふっとニヒルに笑ってみせる。
「趣味はカラオケとダンス。・・・あなたは?」
「お、おれは・・・・」
うみの(イルカ父)は思わずぼーっとした。
二人は二人だけの世界にはいってしまった。

このはたけサクモと名乗った男は妖しいまでに美しい。



「ねえ〜父ちゃん」
現実の世界にうみのは戻された。
「この子は?」
「息子のイルカです」
「そっくりですね」
「イルカ、カカシ君のお父さんだよ」

イルカは父親の影に隠れた。
(このおじちゃん、あやしい)


”よろしかったら、はたけさんも一緒にバーベキューをしませんか”

サクモは”ババッと、
イルカたちのテントの隣に得意のテントを出した。
(テントはいい)

サクモはにんまりと笑った。



息子のカカシは、
イルカに優しく毛布をかけてもらいテントの中で休んだ。
「イルカちゃん・・・・」
「どーしたの?カカチ兄ちゃん」
「スープ美味しかった・・・・あんなの初めて」

日頃暖かい家庭の料理を口にすることがない。
カカシには忘れられない味になりそうだ。
「カカチ兄ちゃんの父ちゃん強そうだね」
「あの、クソ親父」
「クソおやじ?」
イルカは丸い瞳をますます丸くした。
「何でもないよ」
「あ、そうだカカチ兄ちゃんお菓子食べる?」
「お菓子?」
「父ちゃんにナイショ」

イルカは父の鞄からくすねたかりんとうをだしてきた。
カカシはそれを見てびっくりした。
「う、うんこ?!」
イルカはコケた。



うんこにそっくりな菓子は食べると甘い。







その晩は二組の親子が楽しい一夜をすごした。

火で釣った魚を焼き、

親同士は酒をくみかわし、
子供たちはじゃれあって遊ぶ。

「あいつがあんなに笑うなんて・・」

サクモは楽しそうなカカシを見てどきっとした。

毎日修行にあけくれているカカシに遊ぶ友達もいない。

「何だか兄弟みたいですね」
「ええ〜・・うみのさん。ところでイルカ君のお母さんは?」

うみのの瞳がうるっとなった。
「きかないでください」
「泣かないで下さい・・・あなたのような美しい人の涙は見たくありません」
「そんな・・・・美しいだなんて・・・」
「さあ、もっと飲んで・・・この酒は南国の名酒です」

うみの(イルカ父)は進められるままに飲んだ。


そして思い切り酔った。





「さあ、子供たちはもう寝る時間だ。・・・二人ともこっちのテントだ」
サクモは邪魔な子供たちを片方のテントに連れていった。
「カカシ、イルカ君を守るんだ。いいな」
「はい」

二人は仲良く寝袋に入った。


そして大人のテントには、
サクモとうみのの二人きりだ。
「少し今夜は飲みすぎてしまいました」
赤い顔でうみのは言った。
「子供らは寝かせました・・・・これからは大人だけの素敵な時間です」


サクモは酒の瓶とグラスを出した。
「これは?」
「自来也さまから頂いた特別の酒です」
「あの三忍の?すご〜い」
「健康酒ですよ」
うみのは感激した。
そしてついでもらった酒を飲み干した。


すべてはサクモの計画どうり・・・。

「ああ〜〜」
全身が熱い。


健康酒は実は媚薬だったのだから。

「こっち、きて・・・」

サクモはうみのの服を脱がせた。
細くスタイルは良かった。

ぷんぷんといい匂いがする。

(こんな御馳走久しぶりだ)


サクモは狼になっていた。

テントという空間はサクモを酔わせた。




うみのはサクモに押し倒されいていた。
「だ、だめです・・・俺には妻と子供が〜〜」
「いいじゃないですか〜」
「ああああ〜〜」
下半身をなぞられうみのはのけぞった。







カカシはドキドキしていた。

隣にはイルカちゃんが寝ている。

こんなに楽しかったのは久しぶりだった。

何時も怖い父が今夜は楽しそうだった。



明日になったら、イルカちゃんともお別れだ。
厳しい父との修行に戻る。

”このまま別れたくない”


カカシは子供なりに考えた。

カカシは父の持っている本を思いだした。


そして眠るイルカに呪文を唱えた。


イルカちゃんが次ぎに自分と逢った時、
自分のことを好きになるように。


カカシは術をかけた。

それまでに、イルカちゃんの事が気にいってしまった。






深夜・・・。

カカシは隣のテントからもれてくる声に耳をすませた。
(なに?)

カカシは寝袋から出た。


そっと気配を殺し隣のテントを覗く。
「〜〜〜〜〜〜!!???」

中では子供の教育じょうに良くないことがおこなわれていた。



カカシは自分のテントに引き返した。
(父さんが〜イルカちゃんの父さんを〜〜)


二人の父たちは裸でいけないことをしていた。


カカシは興奮してなぜだかその晩は眠れなくなってしまった。





果たして彼はどんな大人に育つのだろう・・・・。






テントの中に明るい太陽がさしこんでくる。


カカシは一足先に目覚めた。

恋人のイルカはまだ眠っている。

「テントか・・・」

テントに泊まると今でもあの時のことが思いだされる。

あの時の父たちはもういない。



二人は大人になっていた。

大人になって再会した。

あの時にカカシの術が効果があったのかイルカはカカシの恋人となっていた。




カカシは水をくみに外に出た。
河が流れている。

その河べりに二人の男が立っていた。

カカシは目を疑った。

銀色の髪のサクモとそしてイルカの父が、カカシを見てニコニコ笑っていたのだ。
「おやじ!」

カカシははっとした。


二人の姿は一瞬ですうっと消えてしまった。

「今のは?」

まるで俺とイルカ先生を見守っているように・・・。

「カカシ先生!」

少し遅れてテントからイルカがでてきて、ぼーっとしているカカシに声をかけた。
「どうしたんですか?顔色があおいです」
「いえ・・・イルカ先生、今日何日です?」



カカシは思い出した。

それは父サクモの命日。



今は亡き偉大なる父親に、
カカシはそっと心の中で手を合わせた。



END




2007年10月12日

セピア 前編




山道で親子がとぼとぼ歩いていた。
険しい山だ。

父は長身に白銀の髪。
そして父親と同じ色の髪の少年。
歳は5つくらいだろう・・。


カカシの父親は里では有名な男だった。
白い牙と呼ばれ、人気もありファン倶楽部まであるそうだ。

カカシにとっては厳しい父だった。


今日も二人で修行をする。
「父さん、お腹がすいた」
カカシは朝から何も食べていなかった。

カカシには父親はいるが母はいない。
父は死んだというが、自来也のおじさんは、本当は逃げたと教えてくれた。
「そうか、そろそろ飯にするか」
サクモは背負っていた荷物をおろした。
中に手をいれ小さな箱を出した。
水と栄養玉だ。
「ねえー父さん訊いていい?」
「なにー?」
サクモはタバコをくわえた。
「俺の母ちゃんはどこにいったの?」
サクモはふう〜とタバコの煙をはいた。
「お前が生まれてすぐ死んだよ」
「嘘だ、父さんが女遊びばかりするから逃げたって」
”バシッ”
父はカカシをはたいた。
”やっぱり逃げられたんだ”

カカシは腹の中で思った。







二人は再び山道を歩いた。

前方に岩がごつごつした崖が見えてきた。

その下には河が流れている。

「カカシ、ちょっと来い」
サクモはカカシを崖の上に呼んだ。
「はい」
「この下を覗いてみろ」

カカシはおそるおそる下を見た。

崖の下には広い河が流れている。
”ドン”
何ということだろう?
父は我が息子を崖から突き落としたのである。
「うああああああ〜〜〜〜!!」
カカシはまっ逆さまに落ちた。
「ま、ちいと過激な修行だが、おれも昔親父からやられたし」

さあて、暫く休むか。

サクモは伸びをして、
携帯用マットを取り出し、ごろんと横になった。








もう一組の親子が河ぶちでのん気にテントをはってキャンプをしていた。
「父さん、サカナ、サカナ」
イルカは今年4歳になる。
父親とおそろいの黒髪を上で束ね、いたずらっぽい瞳の愛らしい子供だった。
「かーちゃんも来れば良かったのに」
一瞬、明るい父の顔が曇った。

子供のイルカには話せないことだが、
妻は今、実家に帰ってしまったのだ。

イルカの父は精一杯の笑顔を浮かべた。
「さあ、イルカお魚を沢山とって、焼いて食べよう!」
「わ〜い!」
無邪気に4歳のイルカは喜んだ。

まさか自分の母が実家に帰っているとは知らず。


イルカは父とサカナを釣った。



”どんぶりこ”
”どんぶりこ”

二人が魚釣りをしていると、
そこには、大きな桃ではなく、
人間が流れてきた。


それはサクモに突き落とされたカカシである。
「ひ〜〜どざえもん!!」
イルカ父はびびった。
「えっ、どらえもん?どこ?」
どうやら親子そろって天然のようだ。


人が流されている。
子供だ。
助けないと!
イルカの父は河に入った。
流される子供を掴み助け出した。

子供は銀色の髪に口布をしていた。
服装からいって忍びである。


イルカ父は助け出した子供を横たえた。
「大丈夫生きている。・・・・イルカ毛布!」
「はい父ちゃん!」
イルカはちょこちょこテントの中に消えた。





俺はもう死ぬかもしれない。
カカシは朦朧としたせ界を彷徨っていた。
ふんわりと何か暖かいものに包まれる。
ここは何処?
天国?

カカシは目をあけた。

天国には黒い瞳のとびっきり可愛い天使がいた。
子供の天使は背中に羽ではなく、「一番」という文字の服をきていた。

天使はカカシを見て。
にっこり笑った。

”それが、はたけカカシ、5歳。うみのイルカ4歳の初めての出会いだった。
「父ちゃん、おきたよ」
「そうか良かった」
そして、天使をそのまま大人にしたような男が現れた。
その男も何故か背中に「一番」とプリントされた服を着ていた。
(一番って、何が一番なんだ?)
「イルカ、スープ作ってきて」
「は〜い」
天使はイルカという名前だった。



カカシはこの親子に命を救われたのだった。



○後編へ




2007年10月05日

負けるもんか!



早朝のまだ暗い中彼は起き出した。

今日も一日が始まる。

弁当屋「かかし」の店長、はたけカカシは真面目な青年だった。
毎日きちんと起きて店の惣菜の仕込みをする。
「フンフンフン」
鼻歌まじりに楽しそうに仕込みをした。

彼の夢はこの街で一番の弁当屋になることだ。

そして昨日彼にはとても嬉しいことがおきた。
アルバイトを雇ったのだ。
「カカシ店長、メンコロ2つ入りました!」
明るくアルバイトの青年は笑顔で言った。
「ああ」
"ナンテ素敵な笑顔なんだろう”

てきぱきと働く青年にカカシはぽ〜っとした。
「あのう?俺の顔になにかついていますか?」
「いや、良く働くねイルカ君は」
「そうですか〜」
照れくさそうにアルバイト店員のうみのイルカは頭をかいた。


カカシ店長はイルカ君に想いをよせた。
(働き者で可愛い奥さん)

カカシは妄想に走る。
二人で公園で手を繋いで歩いたり、
浜辺でキスしたり〜
そして〜そして〜〜ああ〜〜
興奮のあまりカカシは鼻血を吹いた。

彼はシャイなのだ。

そんな幸福者の弁当屋に一大事が起きた。
"お客さんが来ない!”
"朝から一人も”
「お、おれ外に出てくる」
カカシはエプロンのまま店を飛び出した。
「店長」

そんな彼を見てイルカは胸を痛めた。





原因は「かかし」の店と公園をはさんで反対側に新しい店がオープンした。
黒山の行列ができている。
「あかつきキッチン」
黒い制服の怪しげな男たちが弁当を売っていた。


その日の売り上げは今までで最低だった。

気分が滅入っているカカシにイルカは明るく、
「店長、誰にも負けない新しい弁当を作りましょう!」
はっとしてカカシは顔をあげた。
そうだ、落ち込んでいても何も始まらない。





二人は毎日閉店後も新しいお弁当の開発に挑んだ。
「イルカ君、少し休んで」
長時間働き続けるイルカをカカシは心配した。
「大丈夫です。俺頑張れます!」
「きみ・・・・」
カカシはふわっとイルカの髪に手を触れた。
「気が付いたら君のことが好きになっていた」
「ええ〜〜〜!!」
イルカは腰をぬかすほど驚いた。
まさか男のカカシから告白されるなんて!
店長はそういう趣味の人だったんだ。
イルカは汗をたらした。

(ああ〜イルカ君が怯えている。そうだ〜俺たちは男同士、今、危険な愛に目覚めるなんて現実にはないんだ!)


カカシはどっぷりと落ち込んだ。
「お、お友達でいましよう」
イルカは優しく微笑んだ。
せめてもの供養だ。





カカシはその後も店が終わってから、弁当作りに励んだ。
ライバル「あかつきキッチン」に負けられない。
「てんちょう・・・」
(少し顔色が悪いみたいだ)
先日の告白の件以来二人はぎくしゃくしていた。
イルカもけしてカカシのことが嫌いではない。

イルカは決心した。
「あかつきキッチン」を偵察してやる。


イルカは客のまぎれ行列に並んだ。
「こ、これは〜〜」
イルカは一口食べた。
「ああ〜おいしい〜」
”はっ”
"俺は騙されている!”

だってこの弁当は良く見ろ、ただの梅干だけの日の丸弁当じゃないか!
こんな弁当に行列が出来るなんて、
何か裏がある!

イルカは思った。




その夜。
イルカは「あかつきキッチン」の店の中に忍びこんだ。
裏口から入ったイルカは暗闇でコケタ。
そして豪快に積み上げてある米に突っ込んだ。
”ドサドサ”
「ううう〜〜〜〜〜」
「何だ今の音は!」


イルカは気が付くと「あかつきキッチン」の怪しい店員たちに取り囲まれていた。
「ああ〜オイラこいつ知ってる。・・・あの売れないかかし弁当の店員だ・・・うん」
「なんですって〜あのダサい弁当屋の〜それで我々のお店を偵察に」
イルカは恐ろしくて震えた。
その時、
「彼を放してもらおう!」
イルカと同じくカカシも店に忍び込んでいたのだ。
「だれだ!」
あかつきの副店長の鬼鮫がぎろりと睨みをきかせた。


カカシは鬼の面に派手な着物姿。
「あっ、オイラテレビで観たことある。ソゲキングだ!」
「なにを言っているんですデイダラ、派手な着物といえば松平○でしょう〜ねえ、
イタチ店長も黙ってないで何か言ってやってください」
カカシはコケタ。
「時代劇知らないのか〜も〜も〜からあ〜生まれたあ〜〜も〜も〜たろう〜!!」
「カッコイイ!!」
イルカだけが喜んでいた。

しかしあかつきのメンバーたちは世代的に「桃太郎侍」は通用しなかった。
これはカカシのマニアに走りすぎた選択ミスだ。
「ほう、桃太郎か、だったらきび団子をよこせ!」
今まで大人しく話しを聞いていたイタチ店長が目を光らせた。
彼は大の甘党だった。

カカシは刀を抜いた。
「仕方ありませんね〜このソゲキングは私たちが少し遊んであげましょう〜」
「駄目だ、鬼鮫きび団子は俺のものだ!」
「は?」
「おい〜イタチ団子なら後でオイラが買ってやるから〜もう〜」
「このいんちき弁当屋、天誅下してやる〜〜!」
カカシ一人がシリアスだった。

イルカはその騒ぎにまみれて店を出た。
「さあ〜走って!」

気が付くとイルカは桃太郎侍と手を取り合って走っていた。


店ではまだきび団子のことで仲間同士もめているようだ。


「ありがとう・・・店長」
「なぬ?!」
”ばれてんねん!”
(恥ずかしい)

「あ、そうだ俺あそこから弁当のレシピ盗みました!」
ナカナカイルカ君はおりこうさんだった。
「ありがとう」
「カッコよかったです」
”ちゅっ!”
イルカはカカシ店長の頬にキスをした。
〜くらり〜
思わず嬉しくて、
世界が薔薇色に染まった。





「あかつきキッチン」の弁当はインチキだった。
米の中にいい気持ちになるキノコを混ぜて炊いていたのだ。
"これなら必ず勝てる!”



カカシは再び新作弁当に取り組んだ。


今夜も彼は閉店後店に立った。


そんなカカシの為にイルカは差し入れに街のパン屋に入った。
チョココロネを買う。
店長の好物らしい(特に形が)
「てんちょ〜」
パンの袋を持って店に上がりイルカは思わず袋を落とした。
「〜〜〜〜〜〜〜!!」

そこにはカカシ店長が倒れていたのだから。

日々の激務がたたり、
彼は高熱を出していた。






イルカはカカシの身体を必死で抱え二階にある彼の部屋にその身を運んだ。

イルカは手当てを始めた。
とに角頭を冷やさないと。



(くるしい〜〜)

重いい頭で目が覚めた。
ぼんやりと目を開けると店の二階の自分の部屋だ。
そして彼は布団に寝ていた。
隣にはイルカ君がイビキをかいて寝ている。
”まさか二人はもうえっちしてしまったのか?”

イルカも目覚めた。
「てんちょう〜〜」
くすん。くすん。
イルカは泣き出した。
「イルカ君!」
「このまま死んでしまうんじゃないかって思ったら辛くて〜」
イルカはカカシの胸に飛びついた。
「で、できたんだ!新作弁当!」
「ほんと?」
”わ〜〜っ”

二人は抱き合って喜んだ。
「有難う・・・君のおかげだ」
「カカシ店長・・・・俺もあなたのことが好きです」
100万両の笑顔。



二人は長いながいキスを交わした。






ついに「かかし弁当」の誕生だ!
その道のりは辛く厳しいものだった。


発売当日は長い長い列が出来た。

二人は張り切って弁当を売った。
あふれんばかりの笑顔で。

何時の間にか残りもあとわずかとなった。
(あと少し・・・これが終われば・・・ふふふ)

カカシは店ひけた後のイルカ君とのお楽しみを考え嬉しくて鼻をふくらませていた。
その時、最後のお客が立った。
「かかし弁当9個それから、きび団子をだしてもらおうか!」
「ひい〜〜!!」

戦いはまだ続くのだろうか?

負けるものか!
まけるもんか!

負けるもんか!!



END






2007年09月29日

あした





今夜もさっぱりした。

お風呂に入って気分は最高だった。

イルカは脱衣所で思い出したように体重計に乗った。
「ああ〜〜〜いゃあ〜〜〜!」
針が動く。

イルカは体重計から降りた。
先週より3KG多い。

”どんより”

イルカはお通夜の夜のように暗くなった。

先週はカカシが焼肉の食べ放題に連れていってくれた。


「痩せないと・・・」

太ってしまったらヒロインは勤まらない。

イルカは考えた。
(まず、ご飯を減らさないと)
ご飯を減らすなんて、俺はそんな残酷なこと出来ない。
イルカの命の次に大切なカカシではなくご飯。(カカシには言えない)



何とか楽をして痩せたい。
PCを開き楽そうなダイエットを検索した。


「ふ〜〜つ」
考えていたら腹が減った。
イルカはキッチンに入り冷蔵庫を開いた。
そしてバタンと閉めた。
「がまん、がまん」
イルカはお水を飲んでまた部屋に戻った。


その時、カカシがイルカのところに来た。
カカシは小さい箱を手にしていた。
「カカシ先生、おかえりなさい」
「これ、不死身屋のケーキです。一緒にたべましょう!」
「わあ〜〜!」
一瞬喜んで、
イルカは硬直した。

「いりません!」
きっぱり。

カカシは驚いた。

「大丈夫ですか?イルカ先生熱でもあるんですか?」
何時もなら喜ぶケーキ。
なのにイルカは横をむいた。
「さ、さては、イルカ先生の偽者か!!」
カカシは構えた。

戦闘モードに切り替わっていた。
「違います!カカシ先生!」
イルカは慌てた。
部屋で雷切なんかされたらたまらない。
「俺は本物です。・・・紅茶いれますね」

イルカは取り繕った。

カカシは落ち着いた。





「ダイエットですか・・・」
「はい。当分甘いものは」
「じゃあ、このケーキ全部俺がもらいます」
「へ?」

カカシはおいしそうに苺の乗ったケーキをイルカの分まで食べた。



イルカはその晩ケーキバイキングに行く夢を見た。


”ぐ〜〜つ”
深夜イルカは目覚めた。
隣でカカシがスースー寝ている。
ちょっと首を絞めてやりたい気分だった。

ケーキを食べ終えた後、
「イルカ先生から食欲をとったらただの中忍ですね」
といって笑ったのだから、
あまりに酷い暴言だ。


二人が付き合って3ヶ月そろそろ関係がだれてきたのかもしれない。


イルカは心の中で強くダイエットを決意した。







カカシはイルカの変貌に驚いていた。
イルカは毎日野菜を中心のヘルシーメニューにキャベツダイエットを実行した。
お酒に誘ってもナビカナイ。
大好きな「一楽」にも通わない。


きっと心の中は辛いのだろう・・。

カカシはお土産に春雨ヌードルや寒天ゼリーを買ってきた。


恋人として全面的に協力することに決めた。





カカシの協力も手伝い2週間後イルカは少しウエイトが減った。
「イルカ先生・・・ますます素敵になりましたね」
カカシはイルカの頭をなでた。
イルカも満足そうだった。

誰よりも恋人のカカシに認めてもらいたい。

イルカはカカシの胸に飛び込んだ。





その日はイルカの受付の日であった。
イルカはてきぱきと仕事をかたしていた。

そこにがやがやとイルカの元の教え子たちが入ってきた。
ナルトとチョージとキバだった。
「よう、お前たちしっかりやっているか?」
「あったりまえだってば〜」
ナルトは嬉しそうに今日の任務の武勇伝を語る。
「あ、そうだイルカ先生も参加しませんか?」
チョージがポテートを食べながらのんびり言った。
「さんか?」
「ああ、そうだっばよ〜今度一楽でラーメンの大盛り10杯制限時間で食べきれば賞金が出るんだって・・・」
「本当か?」
イルカは思わず乗り出した。



そういえば一楽も御無沙汰だ。
「えーと今度の日曜ですよ、イルカ先生・・・俺たちも出るし一緒に出ましょう」
キバも言った。
ワンワンと赤丸もすすめる。
「え・・・・でも10杯なんて・・・」
「先生賞金出るってよ〜」
"賞金”

”うつとり〜”


イルカは誘惑に負け返事をしてしまった。





そして日曜日がやってきた。

一楽の前には人だかりが出来ていた。
アヤメがマイクを握る。
「さあ、皆さん〜制限時間ないに10杯です、頑張ってください!」


イルカとチョージ、ナルトにキバが挑戦者だ。

笛が鳴る。
合図とともに四人はラーメンを食べ始めた。


イルカの見たところナルトとキバは大したことはない。
ライバルはチョージ。
大食いのチョージ。


イルカの読んだとうりナルトとキバは半分くらいでリタイアした。
イルカとチョージは横目でばちばち視線で戦った。
「せんせい。ボク負けない!」
「俺だって〜」


8杯目が終わり順調に9杯目にさしかかった。
ナカナカいい勝負だ。

イルカは何気なく顔を上げ黒山の人だかりを見た。
その中にカカシの姿を見つけた。

イルカははっとして箸を落とした。
(俺はなにをしているんだ)




イルカは勝負に負けた。


レースが終わり一人しょんぼりとしているイルカにカカシが近寄ってきた。
「これ、飲んで」
ウーロン茶だった。
「カカシ先生・・・」
「俺、今日任務が早く終わったんです。で、イルカ先生と映画でも観ようかなって」
「ごめんなさい・・・」
「賞金おしかったですね」
カカシは優しく言った。
「おれ・・・」
「いいじゃないですか。また明日っからやりなおせば・・・さあ映画いきましょう」
「はい」

イルカは目をこすった。







朝もやの中規則正しく走る二人のシルエットがあった。

イルカはジョギングを始めた。
カカシからの提案だった。



カカシの言った明日を信じて。



早朝の冷たい風が心地よかった。



END






2007年09月26日

恐怖

「一楽」のラーメンがいい香りだった。

イルカは割り箸をわり、
ラーメンをすすった。
しかし、
すすっても、
すすっても、

いっこうにラーメンは減らない。
(今日はやけに盛りがいいなあ〜テウチさん大サービスだ)

イルカは頭の隅でそんなことを考えた。

”ズルズル”
”ズルルルル”


そして彼は、
二十四時間必死でラーメンをすすり続けた。

(もう、いらない!)
(もう食べられない!)


ついに力つきてイルカは倒れた。





気が付いた時イルカは「木ノ葉病院」のベットに寝かされいた。
「お、おれは・・・・?」

心配そうなカカシとナルトの顔。

「もう大丈夫です。・・・あなたは敵に強力な幻術をかけられていたのです」
「えっ?幻・・・・術」

思いだそうとするが頭が痛い。



「もう大丈夫だってばよ。イルカ先生」
ナルトがお水を渡してくれた。
それをゴクリとイルカは飲み干した。

「何でもその術はその人の心の奥底にある欲望に働きかける恐ろしいものだそうです」
カカシが説明した。
「よ、よくぼう・・・・?」
(俺のよくぼう・・・・?)



3日後。
イルカは退院できた。
カカシとナルトに付き添われ家に帰ることになった。
「丁度いい、イルカ先生退院のお祝いに一楽によりましょう!」
「カカシ先生もたまにはいい事言うってばよ」

ナルトも大賛成。
「いちらく・・・・」

イルカは考えた。




三人は並んで一楽のカウンターに座った。

湯気の出たラーメン。

そして、彼はすべて思い出した。

「ぎゃああああああ〜〜!」



あの二十四時間の死闘を・・・・。


END




2007年09月21日

戦利品

恋とは盲目だ。
ここにも一人完全に盲目なる男がいた。
彼の名ははたけカカシ。
写輪眼のカカシ、コピー忍者、里を代表する忍である。

カッコイイカカシにも唯一の弱点があった。
その弱点とは彼の現在の恋人うみのイルカであった。


イルカはアカデミーで子供たちに忍術を教えている平凡な中忍だ。
そしてちょっと天然な男だった。
しかし、カカシの瞳には世界一美しく可憐な恋人なのだ。

「明日のお休みにカカシ先生と行きたいところがあります」
可愛くおねだりする瞳でカカシに甘える。
「そうですか・・・二人っきりで出かけましょう!」
「本当ですか!」
イルカは黒い瞳をきらきらさせた。
「で、どちらへ?」
「勿論、激安スーパー”激忍”のタイムサービスです!」
「タイムサービス!?」
「ええ、明日は月に一度の朝市で・・・お魚にお肉にお野菜〜ああ〜夢みたいです〜」
「ゆめ・・・みたい・・・・」

イルカは張り切ってお出かけの準備を始めた。


カカシは知らなかった激安スーパーでの激しいバトルを・・・。







「ゲキニン」
には早朝から行列が出来ていた。
イルカはカカシに買い物メモを渡した。
「俺はお魚とお野菜に行きますので、カカシ先生はお肉をお願いします・・・・木ノ葉牛サーロインを確保してください!!」
肉を買うのね。
軽くカカシは考えた。



午前9時。
スーパーが開店した。
”ドドドドドド!”
人々が店になだれこんだ。


気が付くとイルカはその波に乗って入ってしまったようだ。

カカシは圧倒されながら、
後を追う。



店は大まかに野菜コーナー。魚コーナー。肉コーナーとエリア別になっていた。

まずは、野菜売り場からアナウンスが流れた。
”え〜只今より木の葉産大根一本1両!!”

”わ〜〜〜〜っ!”
恐ろしい勢いで客たちは野菜売り場に走る。
そして魚屋からも、
”タイムサービス!これより10分間マグロの刺身1パック10両!”
”わ〜〜〜〜つ!!”
恐ろしいスピードで今度は魚屋に人が移動していく・・。
(なんだこれ?)

カカシは人の行列を見て目を疑った。
イルカが沢山いるのだ。
そう、イルカは多重影分身をつかい両方に並んでいたのだ!
スゴイ執念だ。


カカシは暫く口を開けて恋人の姿を見ていた。
その時、一人のイルカがつかつか歩いてきた。
本体らしい。
「カカシ先生、何ぼ〜っとしているんですか!・・・お肉お願いします!」
「はい・・・」
その時、
ついに肉コーナーからのアナウンスが流れた。
”ただ今より、木ノ葉牛サーロイン2枚セット〜〜
”きた!”
カカシは主婦たちと共に走った。
行列に並ぶ。
しかし、人が多すぎてこのままでは売り切れてしまう。
「仕方ないね」
カカシは忍術を使い列の先頭に移動した。
肉のパックを掴む。
だが、もう一つの手がしっかりそのパックを掴んでいるのだ。、
1Pの肉をめぐった相手の顔を見てカカシはぎょっとした。
「おまえは・・・暁の」
「おや、こんなところでお会いするとは。お久しぶりですねえ〜カカシさん。・・・・このお肉は残念ながら暁のものです」
干柿鬼鮫は完璧ないでたちだった。
割烹着に買い物用のエコバック。
どこから見ても完璧な主婦だ。
「この肉は渡せない!」
カカシは額あてをずらした、
”きや〜〜〜!”
いきなり始まったカカシと鬼鮫のバトルに人々はひいた。
二人は睨みあった。
ポトリと思わず、肉のパックを落とす。
その刹那肉のパックをかっさらう人物が現れた。
眼鏡をかけたあの男は!
「カブトか!」
「なんですって〜あれは大蛇丸のところの家政婦〜お待ちなさい!」

カカシと鬼鮫は逃げるカブトを追った。

”スタスタスタ”
カブトは走った。
(大蛇丸さまボクはやりました)
カブトは想像した。
このサーロインステーキを持ち帰れば大蛇丸さまは喜び、カブトをいいこいいこして可愛がってくださるだろう・・。
アホな想像だった。

しかし、カカシも鬼鮫も甘くはなかった。
二人はスーパーの裏でカブトを待ち伏せた。
「さあ〜それをかえしてもらおうか」
空が何時の間にか暗くなってきた。
風は生暖かくふいた。
”ゴロゴロ”
空を雷が光る。
まるで、この世の終わりのようだった。
”ゴクリ”
カブトは唾をのんだ。


そして次の瞬間カブトは二人にボロボロにされた。



「さあ、後はカカシさんあなただけですねえ〜」
鬼鮫は笑った。

カカシは懐から一本のビデオテープを取り出した。
「見ろ、鬼鮫・・・このテープは木ノ葉の秘蔵テープ。うちは一族の華麗なるVTRだ・・・・なかにはイタチの子供時代の映像も入っている・・・・欲しいだろう?どうだこれと引き換えで」
カカシは交渉を始めた。
「これは〜〜〜」
鬼鮫は買収された。


カカシは勝った。
実はそのビデオの中身はガイ一族のホームビデオだった。

鬼鮫は騙され嬉しそうにビデオを持ち帰った。
後でイタチにしめられるんだろう・・。

カカシは肉を手にした、



スーパーの外では野菜や魚をたっぷり買い込んだイルカが幸福そうににこにこ笑っていた。
”俺はこの笑顔さえあればいい”


「疲れましたね。イルカ先生」
「はい。喉かわきました」
「じゃあ〜これからアイスでも食べて帰りましよう!」




二人は楽しそうにその戦利品を持った。


熱い一日だった。


あなたの為なら、俺はどんなことでもしてしまうだろう・・・。



激安スーパーの戦いは明日も続くであろう・・。




END


2007年09月13日

てのひら


夕刻から雨が降った。
冷たい雨だ。
「なぁ、ちょっとくらいいいだろう、カカシ?」
「そうですよ。最近付き合い悪いですよ、カカシさん」

ガイとゲンマに誘われカカシは居酒屋に入った。


三人は早速ビールを注文した。

酒好きなやっらで任務の後は必ずこうだ。

(早く帰って寝たい)

カカシは疲れていた。
「そういえば、この間雑誌で読んだんだけど、『不幸の手』というのが載っていたんです」
「トイレから出てくるあれか?」
ガイとゲンマは笑った。
「いえ、こういう手の持ち主は不幸な人が多いという・・」
「ふ〜んどんな手?」
ガイは自分の大きな手を広げた。
「色は白く、指は長く細く美しいそういう手だそうです」
ゲンマはいった。
「ああっ!!」
二人は同時にカカシを見た。
「なによ」
「カカシ、手だせ」
「嫌だよ」
そう言いながら、
(それって俺の手だ)


カカシは思った。


カカシはナーバスだった。
「かえる・・・・」

止める二人を見捨てて店を出た。







カカシは傘をさしトボトボ歩いていた。
任務だらけの毎日。
楽しいのはイチャパラ読むことくらい。

心が寒い・・・。



カカシは部屋に帰っても食料がないことに気が付きスーパーによった。

閉店間際で値引きされていた。

(あっ、お弁当が一つ残っている)
カカシは手をのばした。

と、同時にそれを掴むもう一つの手が・・・。


二人の男が同時に一つの弁当を買おうとしていた。
「イルカ先生!?」
「あっ!カカシ先生!」

それはナルトたちのアカデミー時代の教師で、名前はうみのイルカ。


イルカは手をひっこめた。
「どうぞ!」
「いえ、イルカ先生こそ」

二人はきまずくて照れ笑いをした。








「どうぞ・・・狭い部屋ですけど・・・」
カカシは成り行きでイルカの部屋に立ち寄った。

二人であの弁当とパンを買いたして夕食を共にすることになった。





イルカは優しい笑みを浮かべながら、
”インスタントですみません”
と、味噌汁を出してくれた。

瞳が丸くて大きくてこの人、可愛いなとカカシは思った。


イルカの部屋はさっぱりとしたワンルームだった。



カカシはふと、イルカの手が気になった。
この人はいったいどんな手をしているのだろう?
「あのう・・・なにか?」
真剣に自分を見るカカシに不思議そうに首をかしげる。
「イルカ先生。手を見せてください」
イルカは両手を差し出した。

柔らかくて暖かな手はあまり大きくはない。
「手相ですか?」
「いえ、俺の手と違ってやわらかいです」
「あ・・あの、恥ずかしいです!」
イルカは赤くなっていた。


カカシは手をはなした。



気が付くとナーバスは消えていた。
何だかとても暖かい。
「お茶いれますね・・・」
イルカは立った。

カカシに暖かいお茶をいれてくれた。
「あの・・・・カカシ先生って器用なんですね」
「どうして?」
「だって覆面したままご飯食べるなんて・・・・それずっとしたままなんですか?」

子供みたいにそして真面目にイルカは訊いた。
「いえ、これは家ではとります」
イルカはカカシに興味をもったみたいだ。

カカシは笑った。
「特別にお見せします」
「へっ?ええ???」
思いがけないことにイルカは焦った。


ゆっくりと覆面をはずす。

そしてカカシは美しく微笑した。
「イルカ先生・・・その手で俺を暖めて・・・」





月日が流れた。

気が付くとカカシには優しい恋人が出来ていた。

やわらかい手の人だ。



そしていっしかあの『不幸の手』の話も忘れてしまった。



幸福は自分の手で掴むものなのだから・・・。




カカシは今、幸福だった。

END







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