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ランチタイムの悲劇 前編
どこの世界にもブームというものがある。
この春、カカシをはじめ上忍たちの間ではマイ弁当を持参しての任務にでるのがお決まりだった。
この日もイルカ先生が眠い目をこすりながら、カカシに手作り弁当をこしらえていた。
「ありがとう、ございます」
「気にいっていただけるか、・・・・今日って皆さん集まって会議ですよね」
「ええ、まあ〜ガイなんかも来ますよ」
ガイは果たしてどんな弁当を持って来るのか?
少し想像すると怖い。
「カカシ先生、レシピみてつくったからあまり美味しくなかったらごめんなさい」
「いいんですよ。先生の作ってくれたものなら俺はなんでも」
カカシはイルカの頬にキスをした。
綱手を中心に豪華な顔ぶれがそろう。
カカシをはじめ上忍仲間のアスマと紅、そしてガイ新人のネジなどである。
メンドクサイ話し合いもイルカ先生のランチのことを考えるだけでソワソワする。
「あああ〜眠かった!」
休憩時間。
ガイは大きなあくびをした。
アスマと紅はそろって同じ弁当だ。
見せつけてくれる。
ネジは若者らしく携帯食だ。
世代の相違だ。
そして、ガイ。
ガイはクーラーボックスを持参していた。
中からは生の肉や魚がそして野菜。
「あんた何考えてんのよ」
ガイは生のままバリバリ食べ始めた。
「やはり恒に体力のつくものを何でも食べるそれぞ忍の心得、どうだカカシお前も一枚」
「いらね〜よ!」
流石珍獣と呼ばれてしまうだけのことはある。
カカシは即座に断った。
カカシは仲間から少し離れた席でイルカのお弁当をひらいた。
箱は二つ、
一つからは丸い形の珍しいパンにカラフルにハムやツナなどが挟まった綺麗なサンドイッチ。
(へえ〜かっこいい)
そしてもう一つをカカシは開いた。
手のこんだ温野菜のサラダだ。
(凄いイルカ先生!)
カカシは感激した。
そういえば昨年のことラーメン缶がランチボックスに入っていて死ぬほど驚かされたがイルカはカカシの為に頑張ってくれたのだ。
「あら、すごいイルカもやるわね、ベーグルサンドなんて」
紅をはじめ仲間がカカシの周りに集まってくる。
「どれもらうか」
ぬうっとごつい手が二本カカシの大事なベーグルに伸びた。
「や、やめろ〜〜〜〜〜」
ガイとアスマである。
カカシは焦った。
残りはあと一つしかない。
カカシは奪われぬようそれを持って部屋を飛び出した。
屋上に上がる。
(ああ〜〜)
少し肌寒いがここならば誰にも邪魔させない。
平和に過ごすが一番。
最後の一つのベーグルを手に持ちカカシは屋上のフエンスによりかかった。
その時、
”メリメリメリ”
カカシの身体を支えきれなくなった古いフェンスはもろくも壊れた。
”ひゅうううう〜〜”
幸い屋上から落下したくらいでどうにかなる上忍ではない。
まるでネコのように地面に軽く着地した。
”べちょ”
気がつくと最後のベーグルは無残にも地面の上で潰れていた。
(しゅん)
肩を落とすカカシに仲間たちが優しく自分の残りのお弁当を分けてくれた。
しかし、生肉も案外食べるといけるもんだ。
頑張って早起きして作ってくれたイルカには済まなかった。
カカシは唯一無事だった温野菜のサラダをかみしめた。
近頃は奥様にお弁当を作ってもらえない御主人が多いですが、
やはり心のこもったお弁当って素敵ですね。
なおこの話は後編へと続きます。
090304.
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月が見ている
抱きししめると小さな息をついて、
ほんの少しだけ身体を震えている。
「イルカ先生・・・・・・・・」
暗がりの中、顔をのぞきこむ。
もう何度もこんな風に抱き合っているのに、
イルカ先生は何時も初めてのように身体を震わせた。
「こわいですか?」
低く小さくカカシはささやいた。
小さくイルカは首をふる。
「窓の外」
「えっ?」
窓の方にイルカは視線をおくる。
何の気配もない。
「月が見ているんです、何時も」
「見せつけてやりましょう」
安心させるようカカシはイルカに優しいキスをした。
愛の行為はいつだってイルカ先生は受けるのが精一杯、
恥じらいながらも甘い息をもらす。
俺はますます夢中で彼を抱いた。
月の灯りが薄っすらと暗い部屋にさしこんでくる。
イルカ先生の肢体を照らしている。
(きれいだな)
声に出すときっと彼はまた恥らってしまうから、自分の中で言ってみる。
月灯りの中、彼はぐっすりと眠る。
安らかな表情にまた、思わず口ずけたくなる。
月がみている。
そうかも知れない。
きっと月は俺とイルカ先生に嫉妬しているかも知れない。
「邪魔しないでよ」
カカシはカーテンを閉めた。
カカシは再びするりとイルカの隣にもぐりこんだ。
そっとたおやかな身体を抱き寄せて、
今宵も朝まで・・・・。
090525.
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かしこまりました!
”初めてのおとまり”
積み重ねた努力が何時か実る時が来た。
カカシは鞄に荷物を詰めながら一人感激していた。
かねてから、片想いし続けていた中忍先生。
お茶に誘い、お食事に誘い、メールを交わし、映画にいき、一つずつ一つずつ階段をのぼるように、そうして半年、カカシはついにイルカに自分の気持ちを打ち明けた。
”好きです、俺の恋人になってください”
悲鳴をあげて逃げられるのを覚悟で、
ところが、イルカはにっこりと笑った。
”おれもカカシ先生が好きです”
これは何かの夢かはたまた俺の妄想なのか、
とに角、今夜はイルカ先生のお部屋に初めてのお泊り。
夜が待ちどうしい。
カカシには一つ疑問があった。
純情なイルカ先生はもしかしたらまだ童貞かもしれない。
俺がいきなり襲いかかったりしたら、
どうなってしまうんだろう?
そんなことを頭で考えながらカカシは歯ブラシやパジャマを鞄に詰めた。
心に下心。
胸にもみっちり下心。
下半身、良好。
俺は準備マンタンだ。
でも、イルカ先生は?
どうしているだろう?
今頃お部屋で一人で赤くなって恥らっているかも知れない。
カカシは妄想の世界で遊んだ。
その頃イルカはお客様の為に「おもてなし料理」を作っていた。
今夜はゆっくり二人で帰る時間を気にせずお酒を呑んで。
そしたら、
「イルカ先生〜」
(いゃ〜〜〜〜)
案の定、二人でちゅうしている場面を想像して、イルカはおもわずサラダボールを落としてしまった。
キッチンにレタスが散らばる。
「あ〜〜あ〜」
気を取り直しレタスを拾う。
どんな風にカカシ先生を誘おう。
”一緒にお風呂に入りませんか”
”今夜は好きにしてください”
「きゃ〜〜〜〜〜」
再びイルカはサラダボールを落とした。
夕方、二人は木ノ葉の商店街のファーストフードで待ち合わせをしていた。
イルカは気合を入れて30分前に到着した。
「あれ?」
すでにカカシが来ていた。
手には何時もの本。
(俺がいるのにまたあんな本を)
きいい〜〜
イルカは「イチャパラ」に嫉妬した。
あの本は自来也様が書いているR18の本、
まさか、カカシ先生は今夜の俺とのプレイを考えて、
(いゃ〜〜〜)
「あのう、お客様御注文は?」
ファーストフードの店員はカウンターの前でぼお〜っとしているイルカに声をかけた。
「好きにして」
仕方なく無難にコーヒーを出した。
「待ちました?カカシ先生」
「いえ、今来たばかりです」
ナルトたちの話では、カカシ先生は遅刻癖があるという話なのに、今までイルカとの約束に遅れたことなどなかった。
むしろ何時もイルカより先に来ている。
そして必ずあの本を読んでいる。
二人は店を出た。
イルカはカカシの少し前を歩いてアパートまで案内している。
「どうぞ狭いところですが」
”ぴかぴかぴか”
昨夜徹夜で掃除した部屋は輝いていた。
カカシは部屋にあがり上着を脱いだ。
そしてズボンをおろした。
「あ、あの〜カカシ先生まだ着いたばかりですから」
「すみません、ここがあなたの部屋だと思うと裸になりたくて」
「えっ?」
パンツ一枚で口布をしたカカシは言う。
何時もカカシの顔を覆っている口布、
早くその下の素顔が見たい。
「あのう、マスクはとらないんですか?」
「ふふ、のちほどじっくりと」
カカシはパンツに手をかけた。
まさか、パンツまで脱ぐ気なのか、
「すみません、あなたの部屋だと思うと」
”かああ〜〜”
やはりイルカ先生は純情だった。
恐らく男の裸など見たことないだろう。
(そんな訳ないだろう、イルカも男なのに)
二人は食事をしながらお酒をかたむけた。
「あなたの瞳にお星様がうつっています」
「え?」
カカシは何時イルカを抱きしめて、キスするかそんな計画で頭がいっぱいだった。
イルカの手料理はカカシの好物の秋刀魚料理だ。
カカシはそれをすべて食べつくしてお皿も舐めた。
可愛いイルカ先生が作ったものだから、
イルカも満足そうだった。
それにしてもイルカ先生は何時も隙だらけだと思っていたが、
ナカナカ今夜は隙がない。
警戒されているのかも知れない。
イルカはグラスをテーブルの上に置いた。
「そろそろお風呂沸かしますね」
「お願いします」
カカシは正座した。
これから始る神聖な二人の儀式のことを考えると今すぐにでも服を脱ぎ捨てたかった。
イルカ先生はバスタオルを持って戻ってきた。
「おれ、脱いだらすごいんです!」
「ええ〜〜〜〜!!」
脱いだら凄いって、まさかアソコが俺より立派とか?
脱いだら実はマッチョだったとか?
カカシは焦った。
次ぎにイルカは小さな瓶を持って来た。
「どうぞ土の里から取り寄せたスタミナ剤です」
カカシは勧められるまま、それを飲んだ。
「じゃあ〜カカシ先生御一緒に」
「かしこまりました!」
あああ〜〜
天にも昇るようなイルカとのファーストキスはお風呂の中。
アパートの風呂にしては広い。
お湯にアヒル隊長が泳いでいた。
それから、どうしたって?
むふふ。
二人だけでね甘い時を
「ああ〜もうだめ」
「カカシ先生、もっとお〜」
純なイルカ先生はタフだった。
何度も何度も身体を重ねたはずなのに、
一向に疲れをみせない。
黒い大きい瞳は夢見るひとみで俺のことをみた。
ただ一晩中俺はイルカ先生と愛し合った。
「うに〜〜〜」
気がつくとカカシは自分の部屋。
鞄にパジャマを詰めたまま眠っていた。
どうやら俺は興奮のあまり眠っていたようだ。
(興奮して眠れるかは疑問だ)
上忍ならでは高度な技だ。
「しまった!」
イルカとの待ち合わせ時間が迫っていた。
カカシは鞄を持って立ち上がった。
これから始まる恋の儀式。
希望を胸いっぱいに。
カカシは部屋を出た。
090527.
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まっているから 仔カカイル
”タッタッタッ”
カカシ君は今年5歳になる銀色の髪の美しい男の子です。
カカシ君のお父さんは里でも有名な凄い忍です。
カカシ君も一日も早くお父さんのような強くて立派な忍になる為、日夜修行に励んでいます。
そんなカカシ君に今、大切なお友達が出来ました。
その子の名前はうみのイルカちゃん、
明るくて可愛くてカカシ君は初めて逢った時からイルカちゃんが大好きになりました。
それまで同じ位の歳のお友達がいなかったカカシ君。
修行と任務に追われた毎日にぱっと明るいお花が咲いたのです。
それを恋だということを知ったのはカカシ君がもっと大人になってからです。
「イルカちゃん、今日、何してあそぶ?」
「おいしゃさんごっこ!」
二人は今日もカカシ君が作った秘密のアジトの中。
アジトは神社の大きな木の下にありました。
大人と同様の術を使いこなせるカカシ君は木の下に小さな住居を作りだしたのです。
そこにはトイレや冷蔵庫そしてカカシ君がインターネットで買いそろえたコスプレの衣装がありました。
二人は白衣を着ました。
「カカチせんせえ、きゅうかんです!」
「何?それは大変、すぐオペを!」
小さな犬のぬいぐるみが患者さんです。
「あっ!イルカちゃんもうこんな時間!」
気がつくと夕方の5時を過ぎてしまいました。
二人で遊ぶ時間は楽しくてすぐ過ぎていくのです。
「イルカちゃん、明日からしばらく会えないよ」
イルカちゃんはおおきな瞳に少しだけ哀しそうな表情を見せました。
「父さんと任務」
「うん、このあいだきいた。・・・・きょうつけてカカチ」
「ありがとう、お土産買ってくるね」
「まってるから、・・・・・・イルカまってるから」
カカシ君はイルカちゃんをきちんと御家まで送り届けました。
「カカチこれ」
帰り際イルカちゃんはポケットから何か出してカカシに握らせました。
それは小さなスプーンです。
「これスプーン?」
「しゃわせのおまもり」
「ありがとう!」
カカシはそれを握りしめた。
「それ何だカカシ?」
自宅に戻ってご飯も食べずカカシ君はイルカちゃんから貰ったスプーンを眺めていました。
小さなスプーンはまるでイルカちゃんのようです。
「これ、イルカちゃんからもらった」
「へえ〜幸運をすくうお守りだな」
「そういう意味があるんだ」
父、のサクモは笑った。
(可愛いことしているな、子供たちは)
「カカシ明日は早い、はやく飯食って今夜は寝ること」
「はい!」
今夜は父のサクモがカカシにチャーハンを作ってくれました。
父さんの作るものの中で唯一チャーハンだけは美味しかったのです。
カカシ君は荷物の中にイルカちゃんから貰ったスプーンを布にくるんでしまいました。
2週間は長いけど、俺にはこれがあるから大丈夫。
明日の為に。
カカシ君はベットに入りました。
その頃。
うみのさんの御家では、
イルカちゃんが折り紙で鶴を折っていました。
「ずいぶん折ったね」
にっこりとお父さんのうみのさんが感心そうにいいました。
「うん、せんこ、つくる、カカチがはやくかえるように」
「そう、イルカは優しいね」
うみのさんはイルカちゃんの頭を撫でました。
小さな子供たちの小さな恋はちょっとだけせっないものだった。
090628.
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カカスケ 後編
同時刻、奥の寝室からカカシの父、サクモはリビングを覗いていた。
可愛い黒髪の青年だった。
でも、何処かで会ったことがあるような?
大きな黒い瞳にしっぽ頭?
以前に会ったことが・・・
思いだせない。
(カカシの奴)
息子はあのコが好きなのだろうか?
(めんこいなあ〜)
”ググ〜〜”
ナチュナルに空腹だった。
(俺のこと忘れているな)
”仕方ないね”
サクモは口布をつけた。
そうするとますますカカシそっくりだった。
ただ髪はサクモの方が長い。
そして部屋を出た。
イルカは目をこすった。
カカシと居るリビングの奥の部屋からカカシ先生がもう一人出てきた。
「カカシ先生・・・どうして二人も?」
それにはカカシも焦った。
まさか父、がノコノコ出てくるとは!
考えきれない。
「と、ちょっとあんた、何考えてんの?」
「カカシ君、お兄様にお食事をプリーズ」
「お兄様!」
何と言うことだろう。
イルカは衝撃をうけた。
カカシそっくりのカカシのお兄様はイケイケに素敵な男性だった。
”ぽおお〜〜”
そんなこんなで(どんなだよ)
父、サクモは兄、「カカスケ」と名乗った。
何故カカスケなのか?
”カカシすけべえ”の略だそうだ。
折角のイルカとのディナーを壊された。
父はすまして兄のふりをしてイルカ先生と楽しそうに冗談を言い合っていた。
イルカ先生もとても楽しそうだ。
(悔しい)
「では、カカシ先生、カカスケお兄様今夜は有難うございました」
もう時刻は遅く、イルカは鞄を持った。
そしてカカシの耳元で小さく言った。
「次回は俺に夕飯作らせてくださいね」
「は、は、はい!!是非〜〜」
”じ〜ん”
イルカが帰っていった後もカカシは感激で股間を押さえていた。
「興奮しとるなあ〜おまえ」
カカスケことサクモがカカシの代わりに後かたずけをしている。
実はカカシの部屋がとてもかたずいていたのは、父が息子の部屋の汚さに情けなくなり掃除してくれたのである。
早くに妻を亡くしたサクモは綺麗ずきだった。
「あのコいいこだね」
「ああ〜里一番気立てのいい人さ」
イルカ先生は素晴らしい。
「お前他の奴にとられるなよ。その前にとっとと襲ってしまえ」
「襲う?」
何と言うことを言う父なのだろう?
この世にヨミガエッタ父との生活もあと少し。
カカシは思い出に何か父の願い事をひとつ叶えてあげようと思った。
少しだけ親孝行。
「ではイルカ君とデートを」
「駄目だ、だめええ〜〜〜〜」
カカシは怒った。
「相変わらず子供だなお前は・・・・父さんお前とお風呂にはいりたいな」
「風呂ですか?」
何だか平凡だ。
望みとしてはスケールが小さい。
昔、カカシが幼い頃はよく父と入浴していた。
カカシは先に服を脱ぎバスルームに入った。
”カラカラ”
「おじゃましま〜〜す」
父は後から少し恥ずかしそうに入って来た。
その目線がカカシの特大のアソコにくぎずけになる。
「カカシ、立派になったな」
「当然さ父さんの息子だもん。息子も立派さ」
「そうかじゃあ、今夜は俺がしごいてやろう」
”バコッ”
カカシは父をオケで殴った。
親子みずいらずの楽しい夜がふけていく。
そして期日の1週間がすぎ父、サクモ、カカスケは帰っていった。
これでカカシもまた通常の一人暮らしが始まった。
ほんの少しだけ寂しかったが・・・。
今夜はイルカ先生がディナーを作ってくれる。
ラーメンディナー。
(わくわく)
「あのう、カカスケお兄様は?」
「帰りましたよ、家に」
イルカは少しがっかりしたようだった。
「残念です。少し俺のタイプだったから」
”グサッ”
こともあろうに、
よりによって、
イルカ先生はカカシそっくりのカカスケ兄さんに気があったようだ。
(きいいい)
カカシは父にやいた。
悔しいけど「いい男だ」
ほんわりと味噌の香りがただよう。
イルカが腕を振るったスペシャル味噌ラーメン。
約束どうりにイルカ先生の手料理だ。
「イルカ先生のお手製なんて俺感激です」
「そんなただのもやしラーメンです」
「だって大好きな人の作ったものですから」
「へっ?」
イルカはカーッとタコのように赤くなった。
でもすぐに柔らかく微笑んだ。
「カカシ先生」
「イルカ先生」
湯気の出ている味噌ラーメンの前で二人は見つめあった。
”バタン”
その時、寝室の扉が勢いよくあいた。
二人の動きが止まる。
「すまん、カカシもう1週間だけ置いてくれ・・・・あっちで四代目と大喧嘩してしまってな」
”ズル”
カカシはコケた。
恋の進みはゆっくりとゆっくりとまるでカタツムリのごとく。
「カカスケお兄様〜〜」
カカスケにお手製のラーメンを御馳走するイルカ。
恋敵が自分の父だと思うとちょっと複雑な、はたけカカシ27歳の秋の出来事。
090508.
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カカスケ 前編
ああ〜ついに降り出したか・・。
任務の帰り、報告をすませはたけカカシはその足で街に出た。
昼過ぎから空は暗く今にも雨が降り出しそうだったのに。
傘を忘れた。
ポッポッと頭や肩に落ちる雨の中を小走りに走る。
その時、一軒のパン屋から見覚えのあるしっぽ頭を見つけた。
(イルカ先生!)
それはアカデミーの教師であり受け付けの華である中忍のうみのイルカだ。
愛しい愛しいイルカ先生だ。(カカシの一方的感情)
イルカは青い傘をさした。
ちらりとこちらを向く。
「カカシさん、どうしたんです?こんな雨に傘もささないで」
「いえ、傘を忘れてやられましたよ、この雨に」
あはは。
明るく笑ってみせる。
「よろしければ半分入られませんか?送りますよ」
「えっ!」
(イルカ先生と俺が愛、愛、傘!)
カカシは舞い上がった。
思わず股間を押さえた。
「どうしました?」
「いえ、雨の日は落ち着かなくて」
というのは言い訳でホントはイルカ先生とあいあい傘が出来ると想像しただけで、カカシの息子が元気になっただけ。
「どうぞ」
”おくります”
イルカはこの日は非番で街に食料の買出しに出たところだ。
きっかけはそんな些細なことから始まる。
カカシは自宅にイルカを招きいれた。
「いいんですか?お邪魔します」
イルカは緊張しているのかキョロキョロしている。
最高級のマンションだ。
「どうせ俺一人ですし、何かつくりますよ。傘のお礼に食べてください」
カカシはタオルを二枚持ってきて、イルカに一枚渡した。
半分傘を譲ったイルカは身体が濡れていた。
「髪ぬれちゃった」
イルカはそう言って高く結んでいる髪のゴムをとった。
バサリとセミロングの髪をおろす。
(ごっくん)
髪をおろした彼は麗しく色気ムンムンだった。
再び股間を押さえそうになるのをカカシはこらえた。
「カカシ先生のお部屋綺麗にされてますね」
「そうですね、親父が綺麗好きでしたので」
親父というのはあの有名な「白い牙」はたけサクモである。
実は今、カカシはその親父のことで隠しごとを抱えていた。
それは昨日、
子供の頃に亡くなったはずのサクモが唐突に鏡の中から現れたのだ。
理由は四代目からあの世で依頼された忍務の為だという。
父はカカシの子供の頃と同じ若いままだった。
どうやら、あの世では歳はとらない。
ほぼ現在のカカシと同年で二人は双子のごとく似ていた。
「イルカ先生、テレビでも観てくつろいでください」
「は〜い」
カカシはそう言って奥の寝室に消えた。
寝室にはカカシそっくりの美青年はたけサクモがDSで脳トレをやって楽しんでいた。
「悪い、父さん大切なお客さんなんだ。いい子に大人しくしていて」
あの世からサクモがヨミガエルなんて世間に知られたら大事だ。
極秘にしなければならなかった。
四代目の術でよみがえったサクモは予定では1週間の滞在で、後残りは5日。
でも、居座る気満々の父だった。
「ねえ〜ねえ〜あのコ可愛いじゃない、カカシ君、だあれ?」
「イルカ先生です。ナルトの元のアカデミーの担任の」
「ふう〜ん」
嬉しそうに父は笑った。
「あんた、変な気おこさないでよ」
「わかった。それよりカカシ飯!!」
「もう父さんは〜〜〜〜」
「久しぶりに会った息子に甘えて何が悪い」
サクモは昼はカカシの部屋でしのび、夜間に極秘に任務をこなしていた。
(今夜は自来也ちゃんの家にいってみるか)
カカシからもらった「チョココロネ」をぱふぱふ食べる。
口のまわりにはチョコだらけ、サクモは紙パックの牛乳をちゅう〜ちゅう〜した。
カカシは馴れた手つきでパスタをゆでた。
「わあ〜カカシ先生お料理得意なんですね」
イルカは黒目を輝かせた。
「一人暮らしが長いから・・・・そういうイルカ先生もお一人でしょ?」
イルカはポリポリ頭をかいた。
「俺はラーメン専門です!」
何かわびしいイルカの独身ライフが脳裏を走った。
”こんな美人が毎夜ラーメンしか食べていないなんて、一種の犯罪だ”
「今夜は貝柱とズッキーニのクリームソースです」
「はあ?」
スパゲッテーのイメージがナポリとミートのイルカには驚きだった。
「あれ?お皿が三枚でてますね」
”ぎく”
父さんの分ですとは答えられない。
「いえ、残ったら冷凍して保存します」
すかさず誤魔化す。
二人はテーブルを囲んだ。
コンポから美しいピアノのメロディが流れる。
「何かこうしていると恋人同士みたいですね」
「え?」
イルカはひいた。
「いえ、なんでもありません・・・・・・でも、イルカ先生ストレートにおききしてもいいですか?
現在お付き合いしている方は?」
”ぶるぶる”
イルカは左右に首を振った。
「あなたみたいな人がお一人だなんて」
「そういうカカシさん、は恋人いるでしょう?それも沢山」
”ぶるぶるぶる”
「俺は沢山恋人なんていません・・・でも片想いの相手はいます」
二人はフォークでくるくるパスタを巻いた。
「こんな美味しいスパゲッテー初めてです」
麺と具財が見事に調和していた。
「ラーメンばっかりじゃあ身体に毒ですよ・・・サラダもどうぞ」
カカシは温野菜にドレッシングをかけてくれた。
「カカシ先生が片想いだなんて」
「はい・・・・・」
「どんな方です?美人でしょうね。それでいて頭もよくてお料理が得意」
カカシはプッと吹いた。
「ま、確かに美人ですよ・・・・でも叶わぬ恋なんです」
「そ、それってまさか相手の方に御主人がいるとか?」
イルカは誤解した。
カカシほどの男が惚れる相手、
しかも片想い。
訳ありと普通は想像する。
「じつは相手は男性なんです」
”ずるっ!”
イルカは椅子から落ちた。
知ってはいけない秘密を耳にした。
あの写輪眼のカカシは同性が好きだなんて!
「あっ、まってください。ケシテ男が趣味ではないです。ただたまたま恋した相手が男だったそれだけです」
イルカはハンカチで汗をふいた。
「ワインどうぞ」
「はい」
外はまだ雨がぽっぽっ降っている。
★後編は来週に。
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記憶
白くて小さな手が俺を包み込む。
遠い、昔むかしの記憶が時としてよみがえる。
(母さん)
それは唯一記憶の片隅に残っている母親の記憶。
「イルカ先生、手を出してください」
カカシはイルカとビールを呑みながらしばしの団欒を楽しんでいた。
明日からはまた他里へ任務。
「えっ?なにかいただけるんですか?」
イルカは子供のように目を輝かせ両手を差し出した。
カカシは自分の手でイルカの右手をとった。
イルカの手は大きくもなく小さくもない。
そして色も白くない。
少しだけふっくらとした優しい手をしていた。
「なんだ、手相ですか?占いは嫌です」
「いいえ、イルカ先生の手が見てみたくなって」
「じゃあ〜俺にもカカシ先生の手を見せてください」
イルカはカカシの右手を両手で包みこんだ。
暖かい。
カカシの記憶の中の手も同じだった。
「カカシ先生の手って指が長くて白くてきれい」
「褒めすぎですよ」
「だってきれいなんです」
俺にはほとんど母親の記憶はない。
ただ、イルカ先生を見ていると、
もしかしたら俺の母親はこの人に似ているのではないかと思う。
遠い母の記憶がわずかに俺の中に残っていて、
そして自然にイルカ先生に惹かれた。
なんてね。
時々おもうんだよね。
カカシはぎゅっとイルカの手を握った。
出来ることならもう一度あの白い手を握りたかった。
何故だか夏が近くなると、ふと思いだす。
俺の記憶。
090617. |
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メビウス
”おかしいんだ”
”おかしいんだ”
確かに「忍者証明書」は家の中にあるはずなのに。
イルカは部屋をひっくり返す勢いで探した。
現在、イルカの大切な人、はたけカカシは任務で5日ほど不在。
二人がお付き合いを初め半年。
そしてついに二人は同じ部屋に住むことになった。
そう、憧れの同棲生活。
それが2ヶ月前。
今が一番甘くて一番幸福な時期であった。
ただカカシは里を誇る上忍であるから不在がちだ。
イルカは待つということで、待つ相手がいる幸福も味わっていた。
気がつくと二人の新居は泥棒に入られたように荒れ狂っていた。
ようやく目的のものは出てきたが、
部屋は目茶目茶だ。
リビングも寝室もぐちゃぐちゃだ。
それからトイレやお風呂は彼が留守ということで掃除をさぼっていた。
イルカは腕まくりをした。
一つ。
二つ。
部屋の荷物をどかしばじめた。
積み上げていく単純作業を繰り返す。
衣類は汚れたものは洗濯にその他はたたむ。
何度もたたんでもたたんでも終わらない。
よくこれだけ散らかせたと思う。
そして3時間が経過した。
なのにいっこうに部屋は荒れたさまだった。
三時間前と同じ、いや、その時よりも酷い惨状なのは何故だろう?
「ああ〜」
少しイルカは腹が減った。
イルカはキッチンに行き、唯一ここだけは何時もどうりで、そこでカップ麺を食べた。
仕事に出ることも忘れ、
イルカの長い、長い一日が続いた。
今回の任務は木ノ葉の近隣で早く戻れる。
自然とカカシの口元から笑みがこぼれる。
里で待っているあの人にもうすぐ会える。
早く抱きしめてキスの雨を降らしたい。
土産には彼の好きなものを買いまくった。
「カカシさん、何かすごい荷物ですね、土産買いすぎですよ」
「そおお」
同行した楊枝男=特別上忍の不知火ゲンマは何か言いたそうな目でカカシを見た。
「なによ、文句ある?」
「それを一人で?」
「いいじやない」
「甘いもの駄目でしたよね」
「あのね、人は進化するの」
二人でぐたぐたと話ながら里のゲートをくぐる。
カカシはその足で早速受け付けを訪ねた。
早く彼の顔が見たかった。
ところが、この日シフトでここに居るはずのイルカの姿が見えない。
「あのう、今日はイルカ先生は?」
「それが、イルカの奴一昨日から体調不良で、こんなこと初めてで」
同僚の年長の中忍が困り顔で答えた。
”何だって”
一昨日から、
カカシにとっては一大事。
カカシは報告を忘れ二人の新居に走った。
スペアーキーで中に入る。
「これは・・・・・・・・・・」
カカシは目を疑った。
二人の愛の巣は見るも無残に散らかりまくっていた。
その中を朦朧とした顔でイルカ先生が一人座りこんでいた。
「イルカ先生!」
カカシは名を呼んだ。
虚ろな瞳でイルカは顔をあげた。
「できない・・・・かたずけられない・・・・・」
そんな馬鹿な事ってあるのだろうか?
カカシが戻り丸三日間イルカ先生は高熱をだして木ノ葉病院のお世話になっていた。
その間カカシは応援に上忍仲間の紅とアスマにかたずけの手伝いを頼んだ。
勿論後日酒を奢る約束で、
現在カカシとイルカが同棲しているのを知っているのはこの二人だけだった。
仲間の協力もあり部屋はかたずいた。
紅は流石出来る女だけあって部屋は見違えるほどぴかぴかになった。
これなら、すぐにでもイルカ先生に帰ってきてもらえる。
「でもいったい何でこんなことに・・・・」
カカシは疑問を口にだした。
「もしかして、あれかしら、部屋がかたずけられない、主婦とかで問題になっている」
「とんでもないな〜」
アスマが笑った。
カカシはイルカをむかえに病院に走る。
「カカシ先生〜」
「イルカ先生〜」
二人は抱き合った。
再会を喜びあった。
綺麗に見違えるような二人の愛の巣。
「俺、あんなに熱があったなんて・・・・全然自分では気がつきませんでした。・・・ただ掃除しても掃除しても部屋が散らかっていくし、もしかしたら悪い幻術にかかっているのかもって・・」
「案外それは正しいかもしれません」
「ホント?」
「嘘です!」
「もおお〜」
その時イルカは重大な事に気がついた。
やっと見つけた「忍者証明書」がない。
「ないっっ!!ないいい〜〜〜」
再び悪夢は繰り替えされるのであった、。
090611.
★なお、後日談は明日の日々のネタメモにて、
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ライトアップレイン
(この傘きれい)
カカシが持ち帰った青い傘。
広げてみると小さく内側に水玉模様。
「かわいいでしよ」
「はい。でもこれレデイスでは?」
「いえ、メンズです・・・・先生に持ってもらいたくて」
”傘って縁起いいんですよ、末ひろがりだから”
”有難うございます”
イルカは大事にとじて、それを傘たてに納めた。
お酒を用意する。
「明日からまた少しあえないね」
「ええ・・・」
少し寂しそうにカカシは笑った。
イルカは立ち上がって箪笥の引き出しをあけた。
「これ、この前アカデミーの近くのコンビニでみつけたんです」
それは「塩キャラメル」
「へえ〜これなら俺も食べれます」
カカシは嬉しそうにベストのポケットにしまった。
あれから何日がたっただろう。
朝、目が覚めると窓の外が暗い。
TVをつけるとその日は雨模様。
(そうだ)
イルカはカカシからもらった青い傘をさして出かけた。
不思議と気分も身体も軽い。
青い傘の中から小さく水玉がキラキラ輝いている。
雨は嫌だけれど、
任務に遠くでる恋人を想いながらも、
イルカの足取りは軽かった。
090126.ネタメモより。
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ポジション
ここ2,3日イルカ先生は元気がない。
何時もニコニコしている先生がご飯を食べながら”フ〜ツ”とため息をついている。
(何があったんだ?)
直球に訊きたかったが、イルカも大人、他人に話したくないことだってある。
カカシは悶々とした。
その日カカシは火影である綱手に用件があった。
執務室の前に立つ。
中から聞き覚えのある声。
カカシはドアの前に立つ。
(ピクピク)
”俺こんなの嫌です”
”いいだろう。イルカ可愛いぞ”
”でもお〜〜”
(あのクソババアついにセクハラか!)
カカシは思い切りドアを開けた。
そして目を見張った。
清楚なドレス姿のイルカ。
何時も上で高く結んでいる髪をおろしている。
「かわいいねえ」
部屋にはシズネとナルトも同席していた。
「綱手様どういうことか説明してもらいまひょ」
綱手は笑った。
シズネもナルトも笑った。
「今年のアカデミーの文化祭で”ロミオとジュリエット”を公演する。それでイルカがジュリエットに選ばれた」
「な、なんですって〜!そんなの女の先生でいいじやないですか」
綱手はにやにやと笑った。
「イルカがジュリエットならばチケットが売れるんだよ・・・TV局は乗り出して来るだろうし、他里から団体のツアー客もくる。里の景気もあがるぞ」
「里おこしですか!?」
カカシはがりがり頭をかいた。
一番気になる事を口にした。
「それで誰が相手のロミオなんです?」
「俺だってばよお」
ナルトが胸をはった。
「お、お前10年早いだろう。イルカ先生とつりあわないだろう?・・・何考えてんだか」
「そうカリカリすんなよ。カカシ先生。・・・俺だってこうすれば」
”ドロン”
ナルトは大人に変化した。
四代目の面影が残る背のすらりとした美青年。
「さあ、イルカ先生練習だってばよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
”ガンガン”
それ以来カカシの頭痛が止まらなくなった。
イルカはというと毎晩台本を読んでいた。
台詞が多く大変だった。
綱手が狙ったとうりイルカのジュリエットは話題となり、チケットも発売3分でソールドアウトになった。
「でもこの話、最後に二人とも亡くなるんですよね」
「ええ、悲劇なんですから」
「先生のドレス可愛かったです」
”ぽっ”
イルカは照れて赤くなった。
しかし、ムカつくのは相手役のナルトだ。
あいつにロミオ役をとられたことだ。
”うむ”
カカシは一人悪だくみをした。
「アカデミー文化祭」
ナルトは頑張って早起きした。
アカデミーの入り口にはカカシ先生が立っていた。
「なに、カカシ先生まだ文句あんの?」
「いや、ナルト、俺も二人を応援に来たよ。・・・・そうだ差し入れもってきた」
「へえ〜カカシ先生も気が利くな」
ナルトは上手く騙された。
眠り薬がもられたお握りを片手にナルトは眠りこけた。
倒れたナルトを保健室に運ぶ。
(終わりまで寝ててもらおう)
その頃イルカは緊張しまくっていた。
シズネとサクラに手伝ってもらい、本番なのでお化粧までしていた。
「イルカ先生とっても綺麗」
「そおですか?」
「ドレスがお似合いです」
「う〜〜ん」
男に女装させて”似合うというシズネとサクラのセンスはずれていた。
(カカシ先生観に来てくれるかな)
ナルトが相手役だと知って切れていたけど。
ホントやきもちやくんだよ、カカシ先生は。
刻々と舞台の本番がせまってくる。
イルカはナルトを探した。
(寝坊してるのかあいつは〜〜)
まさかカカシに薬をもられたなんて知らずイルカはナルトを心配した。
「ロミオとジュリエット〜チケット安いよお〜」
舞台のチケットはダフ屋まででる始末。
文化祭は盛り上がり大勢のギャラリーがイルカのジュリエットを観にきた。
イルカはドレス姿で舞台に立った。
息を飲む。
開演を知らせるベルが鳴り、幕があがる。
「おお〜ロミオ〜ロミオさまはどこ〜〜〜」
ドレス姿の可愛いイルカに沢山のフラッシュが光る。
そしてライトはジュリエットイルカからロミオの方に
”げっ!”
口布をした怪しいロミオ。
「カカシ先生」
カカシはイルカの手をとった。
しかし全く台詞など覚えてないので、
カカシは初めて自分の失敗に気がついた。
客席がざわざわしている。
「何か言ってください、カカシ先生」
イルカが小声で言う。
今は舞台を進行させることが先刻だ。
カカシは胸をはった。
「ええ〜本日はお日柄もよく、お集まりいただき有難うございます。都合により今日のお芝居は中止します」
”なんだってえ〜!”
イルカはおろおろした。
よりによってカカシがそんな事を言うなんて、すべてがぶち壊しだ。
ギャラリーは怒った。
当然だ。
折角の舞台が目茶目茶だ。
カカシに向かって沢山の座布団が投げられた。
幕はおりた。
「もう〜馬鹿、馬鹿!カカシ先生どうしてそんなに馬鹿なんですか!」
イルカは怒って怒って大変だった。
「俺台詞一生懸命覚えたのに〜〜〜」
カカシはのほほんとお茶を飲んだ。
”誰にも譲るものか、恋人のポジション”
081010.
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