懺悔の小部屋〜50号室〜
〜罪深い仔羊達よ!悔い改めよ!〜
ウキフカセ部所属・管理人の懺悔
| 釣行日 | 2007年10月6日(土)〜7日(日) |
| 時間 | 6日 14:30〜17:30 7日 14:00〜17:00 |
| 場所 | 清水市内某所 |
| 釣法 | 短竿による落とし込み釣り |
| 釣果 | クロダイ(31cm・46cm) |
清水みなと 昇天流れ旅 |
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♪ 旅ぃ ゆけばぁ〜 駿河の国にぃ 茶の香りぃ〜 ♪ あれは5年くれぇ前の事だったでしょうかねぇ、 三河の大親分、大脇の立五郎さんが遠路清水の宿場にまでやって来なさったのは。 一体どんな了見で駿河の国くんだりまで来なすったのかは知りませんがね、清水といやぁこれも伝説の任侠、次郎長親分のシマじゃありませんか。 世に聞こえる大親分があんな小さな港町に二人も揃っちまったんだ、世間じゃ一発触発だってんで、そりゃもう大騒ぎでさぁ。 いやね、あっしは別段興味もなかったんですが、実は世話になったまるみ屋の旦那がこの立五郎親分と懇意にされてるとかで、旦那の言うには、 「あたしが行って仲を取り持ってやらなきゃ、あの親分何をしでかすか判らないからねぇ。」 ってなお考えで、どうやらわざわざ清水まで出向いて行きなさるおつもりだ。 けど、そこは江戸でも一二を争う大店の旦那様だ、大っぴらにヤクザの揉め事に口出しするってのも何かと世間体も悪いんでしょう、その筋に顔の効く渡世人をあれこれ探してらっしゃったそうで、何度かまるみ屋に草鞋を脱いだ事のあるあっしにその白羽の矢が当たった・・・とまぁ、そんな按配でさぁ。 まぁ、あっしも頼まれれば嫌とは言えねぇ男稼業だ、しかも世話になったまるみ屋の旦那の頼みとあっちゃ、命張ってでも旦那の男を立てるってのが渡世の道理ってもんでしょう。 早速早籠を飛ばしてまるみ屋の旦那共々清水みなとまで足を運んだんでさぁ。 ところがどっこい、そこまで気合いを入れて清水まで出向いたってぇのに、肝心要の立五郎親分は呑気に釣りなんかしてるじゃねぇですかい! 「旦那、こりゃ一体どうなってるんだい!?」 すると、まるみ屋の旦那、 「ふぉ〜 ふぉっ ふぉっ ふぉっ。久蔵さん、どうかお気を悪くしないで下さいまし。実はこの度の一件、このまるみ屋が仕組んだ一世一代の大芝居だったんでございますよ。」 訳の判らねぇまま聞いた旦那の話ってのは、まぁ大筋でこんなもんでさぁ。 何でも、三河と清水ってのは、もうとっくに手打ちをしちまっていて、今回の立五郎親分の清水行きは、云わば次郎長親分の招きによるもんだったって言うじゃねぇかい。 その頃清水の港じゃぁ、そりゃあ大そうな黒鯛が水揚げされていて、チヌ釣りに目のねぇ立五郎親分は、まぁ云わば次郎長親分のお客人よ。 この物騒なご時世に、のんびり釣り糸なんか垂らしてる訳だ。 そこでまるみ屋の旦那は考えた。 チヌ釣りと言やぁ、関東の鉄砲玉「バラシの久蔵」も、腕はともかく、そのバカさ加減じゃ右に出るモンは滅多にいねぇ。 一朝事ある時にゃぁ、立五郎親分の力になってくれるだろってんで、この機会にあっしと立五郎親分を引き合わせておこう・・・。 とまぁ、そんな算段だったらしいんでさぁ。 けどね、あっしもその筋じゃぁ「鉄砲玉」と恐れられた男だ、いくら世話になった旦那の頼みでも、この目で見て納得した男でなけりゃぁ一緒に仕事はしたくはねぇやい。 痩せても枯れても一匹狼、滅多な事じゃ徒党は組まねぇってのが、あっしの生き方でござんすからねぇ。 ところがだ、 初めて会った立五郎親分てのが、また何とも懐の広いお方だ。 あっしなんかが10人束になっても敵わねぇ、そんな気にさせる腕っ節と肝っ玉は、流石三河で恐れられた伝説の大親分よ。 あっしは一目で惚れたね。 こりゃぁ何が何でも親子の杯を貰いてぇ・・・とまで思ったんだが、ところがどっこい立五郎親分ってのはやっぱり器が違うお方よ。 「おう、久!今日からおめぇは俺の兄弟だ!」 ・・・と、こうでさぁ。 いや〜、嬉しかったね〜。 その日のうちに兄弟の杯を交わし、あっしは晴れて立五郎さんの弟分になった・・・と、まぁこういう訳でさぁ。 まぁそんないきさつなんで、これからは「兄ィ」と呼ばせてもらいますよ。 おっと、枕の話が思いがけず長くなっちまった。 まぁそんなこんなで兄ィとはそれ以来、三河と横浜に別れちゃいるが、お互い気心の知れた兄弟でさぁ。 名護屋の宿に訪ねて行けば、そりゃぁもう一家を挙げての歓待ぶりだ。 いやさ、男ってのはあれッ位懐が広くなけりゃいけねぇや。 ただね、そんな兄ィだが、あっしゃ一点だけ申し開きのできねぇ事があったんでさぁ。 それは、兄ィから教わったチヌ釣りの技、短竿の落とし込み・・・ってヤツなんですがね、この方法であっしは只の1枚もチヌをかけた事がねぇんですよ。 いや、正確に言うと、掛けた事はある・・・但し上げちゃぁいねぇ。 そう、初めて兄ィと会ったあの日、清水の港でとんでもねぇ大物を取り逃がしちまった事から、あっしの苦悩の毎日が始まったって訳でさぁ。 時は流れて5年、 ・・・あっという間でしたねぇ。 だけど未だにあっしは兄ィ直伝の落とし込みでチヌを上げられねぇ。 ところが先だっての事、昔の仲間から久し振りに集まねぇかって、そんな便りが届いたんでさぁ。 で、その場所がなんと清水・・・。 清水と聞いた途端に、あっしの萎えていた気持ちにもう一遍火が点きましたねぇ。 兄ィに恩返しするなら、何としてもこの清水の港でチヌを上げるしかねぇって。 寄合の刻限より随分早く清水に乗り込んだあっしは、まずはこれまた兄ィ直伝の方法で餌を調達、 それから腹ごしらえにと入った蕎麦屋、こいつがまた旨ぇのなんのって! 「そば処 さかき」 あの有名な羽衣の松からそう遠くねぇから、清水は三保に行ったら一遍寄ってみるといいや。 おっと、また話が逸れちまった。 そんなこんなで腹ごしらえができたあっしは、いよいよ5年前に煮え湯を飲まされたあの場所で仇討ちの一本勝負でさぁ。 兄ィから教わった事をそのまんま、何度も何度も繰り返していたら・・・。 ようやく、本当にようやく来てくれましたぜ、涙の1枚が! 計ってみたら一尺そこそこと、この場所にしちゃこまい1枚だが、あっしにとっちゃぁ値千金の1枚よ! 名護屋の兄ィよ、あっしゃぁついにやったよ! まぁ黒鯛師としちゃ決して納得のできる大きさじゃねぇが、そこはあっしの義理に免じて、このはしゃぎッ振りも勘弁しておくんなせぇ。 何てったって5年越しの想いが叶ったんだ、その夜の寄合じゃぁついつい酒も進んじまって、危うく落ちちまうところでしたよ。 実はその翌日、もう一遍出て、運良く今度は一尺五寸程の良型を上げる事ができましてね、 今回の清水への旅は、思わず昇天しちまった・・・とまぁ、こんな話でさぁ。 いやいや、つまらねぇ話を最後まで聞いてもらって、ありがとさんよ。 つまらねぇついでに、最後にもう一言だけ言わせておくんなせぇ。 兄ィよ、こいつがあっしが釣った2枚の黒鯛だぁ。 とくと見ておくんなせぇ。 兄ィの見たがってる歳無しは・・・次の機会の楽しみに取っておくことにするぜ。 |
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